図鑑.netブログ- zukan.net -

http://blog.zukan.net/blog/

2012年2月 2日

古事記に登場するカシの木

ico_weather_hare.gif

 二〇一二年は、古事記が編纂されてから、千三百年の節目の年です。これにちなんで、さまざまな行事が行なわれます。このブログでも、便乗させてもらいましょう(笑)
 古事記には、たくさんの動植物が登場します。今回は、その中から、カシ(樫)の木を取り上げますね。古事記の中のカシは、不思議な出来事と共に語られます。
 その不思議な出来事は、垂仁天皇の段にあります。垂仁天皇が、曙立王【あけたつのおう】という人物に、「うけい」をさせました。
 「うけい」とは、「誓い」と「占い」を一緒にしたようなものです。「もし、○○したら、吉か凶か、吉ならば、××が起これ」という具合に、宣言します。古事記の時代の日本では、「言霊【ことだま】という力がある」と信じられていたのですね。
 曙立王が「うけい」をすると、鷺巣池【さぎすのいけ】にすむサギが、落ちて死にます。もう一度「うけい」をすると、サギが生き返ります。これは、良いしるしでした。
 さらにもう一度、曙立王が「うけい」をします。今度の「うけい」で、カシが登場します。葉広熊白檮【はびろくまかし】と呼ばれた、立派なカシの木です。
 曙立王の「うけい」により、葉広熊白檮は、一度枯れます。次に、生き返ります。サギと同じく、これも、良いしるしでした。
 古代日本では、空を飛ぶ鳥は、神秘的な存在とされました。カシの木は、その鳥と並んで、こんな「魔法」の場面に登場します。おそらく、カシの木も、神秘的な存在とされていたのでしょう。それを示す場面が、もう一か所、古事記にあります。
 その場面では、カシの葉を髪に挿すことが、歌われています。それは、長寿を祈る呪術でした。冬でも常緑のカシに、生命力を認めたのでしょう。
 古事記に登場するカシが、現在のどの種に当たるのかは、わかっていません。日本には、アカガシ、アラカシ、ウバメガシ、シラカシなどの種が自生します。カシとは、ブナ科コナラ属のうち、常緑の種を総称した呼び名です。
 現代人が見れば、地味な木でも、古代人には、神秘に溢れた存在だったのでしょうね。
図鑑↓↓↓↓↓には、カシの仲間のアカガシ、アラカシ、ウバメガシ、シラカシが掲載されています。
ban_zukan.net.jpgインターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、カシの仲間を取り上げています。また、カシの仲間を食べる生き物も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
オークは、楢(ナラ)の木? 樫(カシ)の木?(2011/10/28)
古代の「ははそ」の正体は?(2010/08/13)
アシナガバチ? いえ、カシコスカシバです(2008/09/15)
などです。

2012年1月30日

白いガンや黒いガンがいる?

ico_weather_hare.gif

 ガン(雁)は、日本で、古来、親しまれた渡り鳥ですね。古語では、「かり」と呼ばれました。和歌にたくさん詠まれています。越冬するために、秋に日本にやってきます。
 多くの場合、ガンと呼ばれるのは、マガンという種です。けれども、この一種だけが、ガンとされるのではありません。カモ目【もく】カモ科の鳥のうちで、おおむね、ハクチョウより小さく、普通のカモより大きい種を、ガンと呼んでいます。
 日本に来るガンとしては、マガン、ヒシクイ、カリガネ、サカツラガン、コクガン、ハクガンなどの種があります。中でも、マガンとヒシクイの飛来数が多いです。カリガネ、サカツラガン、ハクガンなどは、わずかな数しか見られません。
 江戸時代以前の日本には、今よりも、ずっと多くのガンが、日本に来ていました。
 例えば、ハクガンです。ハクガンは、名のとおり、全身がほぼ真っ白なガンです。一見、小さなハクチョウか、ガチョウのようです。個体によっては、青灰色のものもいます。
 江戸時代の文献によれば、当時の江戸湾―現在の東京湾―には、雪が積もったように見えるほど、ハクガンの群れが来たといいます。それが、今では、マガンなどの群れに混じって、ほんの数羽が見られるだけです。
 白いガンばかりでなく、黒いガンもいます。コクガンです。コクガンは、ハクガンに比べれば、日本に来る数が多いです。とはいえ、少ない年には、数十羽しか見られません。
 コクガンは、年により、日本への飛来数が、大きく異なります。多い年には、数百羽が見られます。なぜ、このように数が違うのかは、まだ解明されていません。
 昔の日本には、もっと恒常的に、もっとたくさんのコクガンが来たと考えられています。確実なデータがないため、推定ですが。
 現在の日本では、コクガンは、国の天然記念物に指定されています。それでも、なかなか、飛来数は増えません。いったん減った生き物を増やすのは、大変です。
 日本に来るのに、コクガンは、北極圏から、三千kmもの長距離を飛んでくると推定されています。こんな長旅をしてくる鳥たちは、あたたかく迎えたいですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、ガンの仲間のマガン、ヒシクイ、コクガンが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、ガンの仲間を取り上げています。ガンに近縁なカモやハクチョウも取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
魚か鳥か? シマアジ(2011/03/14)
カモは水に潜るか?(2006/11/27)
シジュウカラガンとヒナ(2006/06/02)
雁(ガン)の恩返し(2006/01/16)
白鳥(ハクチョウ)は冬の使者(2006/01/11)
などです。

2012年1月27日

イチイ(一位)は、位の高い木?

ico_weather_hare.gif

 冬でも、青々と葉を茂らせている木を、常緑樹と呼びますね。日本には、たくさんの常緑樹があります。その中の一種が、イチイです。イチイ科イチイ属に属します。
 イチイは、北海道から九州まで分布します。どちらかといえば、寒い地方に多いです。北海道や東北で、よく見られます。街路樹などにされることも、多いです。
 イチイとは、変わった種名ですよね。この名の由来には、いくつかの説があります。有力なのは、「昔、イチイの木材を、笏【しゃく】の材料にしたから」という説です。
 笏とは、朝廷で、威儀を正すために用いる物でした。そのために、「一位」という高い位が与えられたといわれます。この説が正しいとは限りません。他の説もあります。
 イチイには、オンコ、アララギなどの別名があります。オンコとは、北海道などでの方言名です。よく誤解されますが、アイヌ語名ではありません。
 アイヌ語では、イチイは、クネニと呼ばれるそうです。クネニの意味は、「弓になる木」です。アイヌの人たちは、伝統的に、イチイで、狩猟用の弓を作りました。
 イチイ属の他の種で、同じ用途にされたものがあります。ヨーロッパイチイです。
 ヨーロッパイチイは、名のとおり、ヨーロッパに分布します。ヨーロッパでは、旧石器時代から、この木で弓が作られてきました。古い地層から、ヨーロッパイチイ製の弓が見つかっています。中世のヨーロッパでも、この木の弓が、武器に使われました。
 イチイ属のラテン語の学名Taxusは、弓という意味を持ちます。ヨーロッパイチイが、弓に使われたことに由来します。
 ヨーロッパイチイと、日本のイチイとは、外見が似ます。どちらも常緑樹で、赤い果実がみのります。果実の赤い部分―仮種皮という部分です―は、食べられます。
 両種は、木材の性質も似ています。成長が遅いために、材が稠密【ちゅうみつ】になり、丈夫な木材となります。弓に使われるのは、それなりの理由があるのですね。
 イギリスの古い教会には、ヨーロッパイチイがあることが多いそうです。神聖な木とみなされたのでしょう。笏にされた日本のイチイと、どこかしら通じますね。

図鑑↓↓↓↓↓には、イチイが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.netぜひご利用下さい。

過去の記事でも、神聖視された常緑樹を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
仏像の材料になったのは、何の木?(2011/11/04)
サカキ(榊)は、神さまの木?(2008/12/22)
【とびら】に挿すトベラの木(2007/01/29)
悠仁【ひさひと】さまのお印はコウヤマキ(高野槇)(2006/09/14)
クリスマスツリーはモミではない?(2005/11/28)
などです。

2012年1月23日

擬態【ぎたい】は命がけ、ツマキチョウ

ico_weather_ame.gif / ico_weather_kumori.gif

 冬、ほとんどの昆虫は、活動を停止しています。野外では、飛んだり歩いたりしている昆虫を、見かけなくなりますよね(一部に、例外はあります)。
 冬の昆虫たちは、どうやって過ごしているのでしょうか? 種によって違います。成虫でいる種も、幼虫でいる種も、蛹【さなぎ】でいる種も、卵でいる種もあります。
 成虫や幼虫でいる場合も、じっと動かないのが普通です。体力を消耗しないためです。「それなら、最初から、動かない卵や蛹でいればいいのに」と思いますよね。なぜ、成虫や幼虫で、動かないまま越冬する種がいるのかは、わかっていません。
 卵や蛹で越冬すれば、「食べ物を探さなくて済む」、「動き回る体力を使わなくて済む」などの利点があります。けれども、欠点もあります。敵に見つかっても、逃げることができません。ですから、何としても、見つからないようにしなければなりません。
 例として、ツマキチョウというチョウ(蝶)の一種を、挙げてみましょう。
 ツマキチョウの成虫は、年に一度、春にだけ現われます。成虫は、夏になる前に、産卵して死にます。卵から孵化【ふか】した幼虫は、一か月もすると、蛹になります。
 蛹は、そのままずっと、夏・秋・冬を過ごします。翌年の春に、やっと羽化【うか】して、成虫になります。一年の大部分を、蛹で過ごすわけです。
 ツマキチョウの蛹は、細長い形をしています。頭に当たる部分が尖って、棘【とげ】のようです。色は、木の枝に似た色です。これで、枝に付いていれば、植物の一部にしか見えません。植物の棘に擬態することで、長い蛹の期間、難を逃れています。
 同じく、蛹で越冬するチョウは、何種もいます。中に、やはり、蛹が擬態している種があります。スミナガシです。スミナガシの蛹は、虫食いのある枯れ葉にそっくりです。その姿で、冬に、木の枝からぶら下がっています。蛹と見抜くのは、難しいです。
 スミナガシと、ツマキチョウとは、近縁ではありません。スミナガシは、タテハチョウ科に属します。ツマキチョウは、シロチョウ科です。遠縁でも、冬を乗り越える厳しさには、変わりありません。生き抜く手段として、同じ方法を選んだのですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、ツマキチョウが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、チョウの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
チョウ(蝶)には、春型と夏型がある?(2011/04/11)
肉食性のチョウ(蝶)がいる?(2010/08/09)
森林の妖精? ゼフィルスたち(2010/06/14)
チョウ(蝶)の学名は、美女だらけ?(2010/01/11)
冬に飛ぶ蝶(チョウ)もいる?(2006/01/13)
などです。

2012年1月20日

ラフレシアは、世界最大の花か?

ico_weather_yuki.gif / ico_weather_ame.gif

 世界で最も大きい花は、何という植物に咲くのでしょうか?
 この疑問に答えるのは、少し難しいです。「花」をどう定義するかにより、答えが違います。花には、「複数の花が集まって、一つの花のように見える花」と、「完全に一つで、独立した花」とがあるからです。
 「一つで独立した花」のうち、最大なのは、ラテン語の学名を、ラフレシア・アルノルディイRafflesia arnoldiiという種に咲きます。この種には、日本語名はありません。日本に分布しないからです。単に「ラフレシア」といえば、たいてい、この種を指します。
 ラフレシア・アルノルディイのつぼみは、キャベツくらいの大きさがあります。形も、キャベツにそっくりです。これが開くと、直径90cmほどの、赤い花になります。
 こんなに大きい花は、木に咲くのでしょうか? それとも、草でしょうか? どちらでもありません。ラフレシアの仲間には、葉も茎も幹も枝も、根もないからです。
 ラフレシアの仲間は、花だけが、地面から、忽然と現われます。なぜ、そんなことができるのでしょうか? 寄生植物だからです。ラフレシアの本体(花以外の部分)は、他の植物の根に食い入って、生活しています。そこから、直接、花が地面へと伸びます。
 栄養分も水分も、すべて、宿主の植物から奪われます。これなら、光合成をして栄養を作る葉も、土から水分を取る根も、必要ありませんね。要らない器官を全部なくして、花だけが残りました。花は、繁殖に必要だからでしょう。
 植物学者にとっては、これが、困ったことです。葉も茎も根もないのでは、分類の手がかりが少なすぎます。巨大な花は、あまりにも特異で、類縁の見当がつきません。
 このため、ラフレシアの仲間は、ラフレシア科ラフレシア属という、独自のグループに分類されてきました。ところが、近年、分子生物学が発達したおかげで、別の分類が出てきました。トウダイグサ科ラフレシア属ではないか、というのです。
 トウダイグサ科の種は、日本にも、たくさん分布します。「日本のトウダイグサが、世界最大の花の仲間かも?」と想像するのは、楽しいですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、ラフレシアは載っていません。けれども、近縁かも知れないトウダイグサ科の種が掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、トウダイグサ科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アカメガシワの芽は、なぜ赤い?(2010/04/12)
一度滅びて、復活? ナンキンハゼ(2009/11/02)
桐油は、キリ(桐)からは採れない?(2009/07/10)
ポインセチアはクリスマスの花?(2006/12/14)
などです。

2012年1月16日

コトクラゲは、深海生物か?

ico_weather_hare.gif

 今回は、海の珍しい生き物を紹介しましょう。コトクラゲです。
 クラゲといえば、普通は、海を泳ぐものですよね。ところが、コトクラゲは、泳ぎません。海底の岩などに付いています。形も、普通のクラゲと違い、笠形ではありません。古代ギリシャの竪琴【たてごと】に似た形です。だから、「琴クラゲ」です。
 コトクラゲが珍しい理由は、二つあります。一つは、めったに捕獲できないからです。もう一つは、分類が、多くのクラゲと違うからです。
 めったに捕獲できないのは、数が少ないからでしょうか? そうではないかも知れません。たまたま、ヒトが行きにくい場所にいるだけで、数は、さほど少なくないかも知れません。どのような場所に多くいるのか、まだ、わかっていないのです。
 コトクラゲは、深海生物だと報じられることがあります。それは、間違いではありません。実際に、水深200mを越える海で、見つかっています。
 けれども、深海にしか、いないわけではなさそうです。コトクラゲ、もしくは、コトクラゲに近縁な種が、ダイバーが行ける、浅い海でも見つかっています。
 分類の話をしましょう。コトクラゲは、有櫛動物門【ゆうしつどうぶつもん】というグループに属します。お馴染みのミズクラゲや、カツオノエボシなどのクラゲは、刺胞動物門【しほうどうぶつもん】に属します。門という、大きなレベルで、分類が違います。
 有櫛動物門の中でも、コトクラゲは、変わった部類に入ります。多くの有櫛動物たちは、刺胞動物のクラゲと同じように、海中を泳ぎます。でも、コトクラゲは、泳ぎません。
 コトクラゲは、有櫛動物門の中の、扁櫛目【へんしつもく】というグループに属します。扁櫛目は、クシヒラムシ目【もく】とも呼ばれます。このグループは、多くの種が、海底の物に付いて暮らします。他の生き物に付くこともあります。
 コトクラゲについては、わかっていないことだらけです。深海にいるものと、浅海にいるものとが、同一種なのかどうかも、不明です。そもそも、見ることが難しいために、研究が進みません。研究が進めば、扁櫛目の中から、新種が見つかりそうです。

図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、コトクラゲは載っていません。けれども、同じ有櫛動物【ゆうしつどうぶつ】のツノクラゲが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、コトクラゲと同じ有櫛動物【ゆうしつどうぶつ】を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
海中の透明で長いもの、な~んだ?(2010/04/01)
クラゲは刺胞【しほう】動物? 腔腸【こうちょう】動物?(2007/08/24)
新種のクシクラゲ? 発見(2007/06/13)
クラゲと付いてもクラゲでない? ツノクラゲ(2006/07/29)
などです。

2012年1月13日

ヒース? エリカ? エリカ属の植物たち

ico_weather_hare.gif

 近年の日本には、外国から来た園芸植物が、多いですね。おかげで、冬の花壇も、賑やかになりました。本来の日本にはなかった、冬の花が咲くからです。
 冬に咲く園芸植物の一グループに、エリカがあります。エリカとは、ツツジ科エリカ属に属する種の総称です。エリカ属は、日本には自生しません。ヨーロッパ、アフリカ、西アジアに、五百以上もの種が、自生します。
 エリカ属には、日本語名が付いている種が少ないです。もともと、日本になかったためですね。ジャノメエリカ、シラユキエリカなど、ほんの数種しかありません。
 あとの種は、ラテン語の学名や、英語名で呼ばれます。エリカ・グラキリスErica gracilis(ラテン語の学名)、ファイア・ヒースFire Heath(英語名)などです。
 ヒースとは、エリカ属の英語名です。日本語では、エリカ属をエリカと呼んでも、ヒースと呼んでも、間違いではありません。ヘザーHeatherという英語名もあります。
 たくさんの種のうち、日本に入ってきたのは、ごく一部です。日本にあるのは、主に、南アフリカ原産の種と、ヨーロッパ原産の種です。
 アフリカといえば、熱帯の印象が強いですね。けれども、アフリカにも、温帯の地域があります。南アフリカの一部がそうです。日本に入ったエリカには、その地域原産の種が多いです。日本で冬に咲くエリカは、ほとんどが、南アフリカ原産の種です。
 エリカ属の花は、小さな釣鐘型をしています。同じツツジ科の、ドウダンツツジや、アセビの花に似ています。形が似るのは、おそらく、同じような昆虫に、花粉を運んでもらうためでしょう。具体的には、ミツバチなどの、ハナバチの仲間と思われます。
 ドウダンツツジや、アセビの花をよく見ると、釣鐘型の口の部分が、少し、反り返っています。この部分は、ハナバチが止まる足がかりになります。エリカ属の花も、同じように反り返っています。同じ機能を持つのでしょう。
 日本の冬には、ハナバチの仲間は、ほとんど飛びません。せっかく咲いても、花粉を運んでもらえないわけです。エリカ属にとっては、残念なことでしょう。

図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、エリカ属の植物は載っていません。けれども、エリカ属に似たドウダンツツジや、アセビが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、ツツジ科の植物を取り上げています。また、ツツジ科の植物を食べる動物も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
緑のない植物がある?(2011/05/13)
ジャノメエリカ(2011/01/30)
トラフシジミは、草食性のトラ(虎)?(2009/11/20)
節分にアセビ(馬酔木)?(2008/01/28)
などです。

2012年1月 9日

コウモリは、なぜ冬眠するか?

ico_weather_hare.gif

 冬、爬虫類や両生類は、冬眠しますね。彼らは、変温動物だからです。寒さに耐えて活動することが、できないのですね。(一部に、例外はいます)
 哺乳類や鳥類は、冬眠しません。恒温動物だからです。寒くても、体温を保つことができるために、活動できます。でも、中には、例外がいます。
 例えば、コウモリです。日本に分布するコウモリは、多くが、冬眠します。
 なぜ、コウモリは、哺乳類なのに、冬眠するのでしょうか?
 すべてのコウモリが、冬眠するわけではありません。日本に分布するうちでは、オガサワラオオコウモリと、クビワオオコウモリとが、冬眠しません。どちらも、小笠原や沖縄など、亜熱帯にいる種です。この二種以外の日本のコウモリは、冬眠するといわれます。
 棲む地域によって、「冬眠する/しない」が決まっているのでしょうか? コウモリは、哺乳類なのに、寒さに弱いのでしょうか?
 コウモリが寒さに弱いというより、コウモリの食べ物が、寒さに弱いのです。
 日本に分布するコウモリは、前記の二種のオオコウモリ以外は、昆虫を食べます。ここに、鍵があります。昆虫は、寒さに弱いですね。日本の冬には、多くの昆虫が、活動を停止します。コウモリにとっては、食べ物を得られない状況です。
 この危機を回避するために、コウモリは、「冬眠する」技を身に付けたと考えられます。食べずに休眠していれば、飢えて死ぬことは、ありません。
 コウモリと似た生活をしながら、コウモリとは違う方法で、危機を回避しているものたちがいます。同じく、空を飛ぶ鳥類です。鳥類の中には、ほとんど昆虫ばかりを食べる種がいます。ヨタカ、キビタキ、サンショウクイ、カッコウ、ツバメなどです。
 鳥類に詳しい方なら、これらの種名を見て、ぴんと来たでしょう。前記の鳥は、みな、夏鳥です。春から夏、昆虫が多い季節にしか、日本にいません。
 同じ危機に対するのに、鳥は、渡りをすることを選びました。コウモリは、冬眠することを選びました。なぜ、こうなったのかは、まだ、解明されていません。

図鑑↓↓↓↓↓には、日本のコウモリが、十種以上掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、コウモリを取り上げています。また、ヨタカなど、昆虫を食べる鳥も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
オガサワラオオコウモリは、小笠原唯一の哺乳類?(2009/10/26)
どれがどの種? コウモリの種名(2009/06/08)
引越しは嫌い? ヒナコウモリ(2008/09/19)
ヨタカは醜い鳥か?(2006/07/14)
渡るツバメ、越冬するツバメ(2005/10/17)
などです。

2012年1月 6日

一種ではない? アオリイカ

ico_weather_kumori.gif

 日本人は、海産物が好きですね。魚以外で、よく食べられる海の生き物に、イカの仲間がいます。スルメイカ、コウイカ、ヤリイカなどの種名を、聞いたことがおありでしょう。
 中で、高級なイカとして知られるものに、アオリイカがいます。日本各地の漁港で、水揚げされています。土地ごとに、さまざまな方言名で呼ばれます。ミズイカ、モイカ、シロイカ、アカイカ、バショウイカなどです。
 方言名を使うのは、悪いことではありません。それぞれの土地では、親しみのある名でしょう。けれども、学術的に研究する場合には、方言名は、悩みのタネになります。同じ種なのに、違う名で呼ばれたら、混乱しますよね。
 このために、標準和名というものが決められています。アオリイカの場合は、「アオリイカ」が標準和名です。ラテン語の学名は、Sepioteuthis lessonianaとされます。
 「アオリイカ」は、北海道から沖縄までの、広い範囲の海に、分布するとされています。土地ごとに方言名があるのは、分布が広いためですね。
 ところが、近年、困った事態が起きています。「アオリイカ」と呼ばれるイカの中には、複数の種があるのでは?というのです。明らかに、外見や生態の違うものが、混じっているからです。少なくとも、三種には分けられるだろうといわれています。
 最終的には、きちんと種名が分けられて、おのおの「○○アオリイカ」といった種名が付くでしょう。もちろん、ラテン語の学名も、それぞれ、違ったものが付くはずです。
 しかし、現在のところは、まだ、標準和名も、ラテン語の学名も、分けられていません。もう少し研究が進まないと、ちゃんと命名できないようです。
 でも、違いがあるなら、それを示す名前が必要ですね。研究者のあいだでは、仮の名前が付けられて、三種が区別されていると聞きます。「アオリイカの中の通称:白イカ」、「アオリイカの中の通称:赤イカ」、「アオリイカの中の通称:クァイカ」という具合です。
 この中で、通称:赤イカと、通称:クァイカは、南方系です。沖縄や小笠原に多いです。本州以北にいるのは、通称:白イカだろうといわれています。

図鑑↓↓↓↓↓には、アオリイカが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、イカの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
モンゴウイカ(紋甲イカ)というイカは、いない?(2009/12/28)
光るイカは、ホタルイカだけじゃない?(2009/06/22)
海中を泳ぐ槍【やり】? ヤリイカ(2008/02/18)
世界最大のイカは、ダイオウイカではない?(2007/02/23)
コウイカとヤリイカはどう違う?(2006/11/10)
などです。

2012年1月 2日

シンビジウムは、シュンラン(春蘭)の仲間か?

ico_weather_hare.gif

 明けましておめでとうございます。さて、今日は冬の花屋さんを覗いてみましょう。華やかなのに、驚きます。温室で育てられた花が、たくさん売られています。中で、華麗さを誇るのが、洋蘭の仲間ですね。
 洋蘭と呼ばれるランには、非常に多くの種類があります。その一つに、シンビジウムと呼ばれるグループがあります。シンビデュームなどとも呼ばれます。
 シンビジウムとは、一種だけを指す名ではありません。ラン科シンビジウムCymbidium属に属する種の総称です。シンビジウムという名は、ラテン語の学名Cymbidiumを、英語風に読んだものです。ラテン語では、キンビディウムという感じの発音になります。
 シンビジウム属は、日本語名で、シュンラン属と呼ばれます。日本に自生するシュンランや、カンラン(寒蘭)も、この属に属します。
 こう書くと、驚く方がいるでしょう。シンビジウムといえば、派手な「洋蘭」を代表するグループですね。対して、シュンランやカンランは、「東洋蘭」と呼ばれます。東洋蘭は、とても地味です。わび・さびを体現した花、といえます。
 こんなに違うもの同士が、近縁なのですね。外見の印象が、分類上の近縁さを示すとは限りません。洋蘭・東洋蘭といった区別も、あくまで、文化上の慣習です。シュンラン属のように、同じ属でも、洋蘭と東洋蘭とに分けられることもあります。
 洋蘭のシンビジウムは、原産地が東南アジアです。ミャンマー、タイ、ベトナムなど、熱帯地方に自生します。それらの原種が、ヨーロッパに持ち込まれ、交配されて、華麗な栽培品種が作られました。ヨーロッパで品種改良されたために、洋蘭と呼ばれます。
 いっぽう、東洋蘭とされるシュンラン属は、日本、中国、台湾に自生するものです。シュンラン、カンラン、ホウサイラン(報歳蘭)などの種です。これらの種も、地味でも、観賞用に栽培されます。一部に、たいへん熱心なファンがいます。
 東洋蘭は、一時期、熱心すぎる人々によって、乱獲されました。このために、野生では、ほとんど絶滅している種もあります。今は、もはや、野生のものを、むやみに取れる時代ではありません。栽培品種だけでなく、野生種も残したいですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、シュンラン属(シンビジウム属)のシュンランが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、ラン科の植物を取り上げています。また、ラン科と紛らわしい植物も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
カトレヤは、雑種だった?(2011/01/03)
イトランは、ランの仲間か?(2010/12/27)
スズラン(鈴蘭)は、ランではない?(2010/05/07)
イグ・ノーベル賞のバニラ【Vanilla】の研究とは?(2007/10/18)
ベトナムで、新種の発見ラッシュ(2007/09/27)
などです。

2011年12月30日

ピラカンサとは、植物の種名か?

ico_weather_hare.gif

 冬は、花が咲く植物が少ないですね。冬枯れの風景に、彩りを添えてくれるのが、果実を付ける植物たちです。
 庭や公園で、冬に、びっしりと赤い果実を付けた木を、見たことがありませんか? それは、たいてい、ピラカンサと呼ばれる木です。ピラカンサとは、バラ科トキワサンザシ属に属する種の総称です。トキワサンザシ、タチバナモドキなどの種があります。
 ピラカンサという呼び名は、トキワサンザシ属のラテン語の学名から来ています。Pyracanthaというラテン語を、英語風に発音すると、ピラカンサになります。本来のラテン語風に発音すれば、ピラカンタです。この名は、種名ではなく、属名です。
 トキワサンザシ属の種は、多くが、観賞用に、庭木などとして植えられます。果実が美しいからですね。常緑なので、緑の葉も、冬の光景をなごませてくれます。
 従来の日本では、トキワサンザシとタチバナモドキが、よく植えられました。この二種は、姿が似ています。わかりやすい違いは、果実の色です。トキワサンザシは、真っ赤な果実がなります。タチバナモドキのほうは、橙【だいだい】色の果実です。
 この属の種は、すっかり日本に根づいているように見えますね。けれども、どの種も、日本原産ではありません。トキワサンザシは、西アジア原産です。タチバナモドキは、中国西南部原産です。他に、ヒマラヤ原産のカザンデマリなどがあります。
 トキワサンザシと、タチバナモドキは、明治時代に日本に渡来しました。カザンデマリは、昭和の初期です。一つの属として見れば、百年ほども前から、観賞用に親しまれているわけです。道理で、まるで日本原産種のように見えるのですね。
 近年では、トキワサンザシ属内の種を交配して作った、園芸品種が増えました。それら園芸品種は、もちろん、野生種とは違います。それぞれ、品種名が付いています。生物学的には、雑種ですので、明確な種名を決めがたいです。
 このため、園芸品種は、大ざっぱに、ピラカンサと呼ばれることが多いです。同じ「ピラカンサ」といっても、園芸品種のこともあれば、野生種のこともあるわけです。

図鑑↓↓↓↓↓には、トキワサンザシが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、冬に果実を付ける植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
鳥をだます? マユミやニシキギ(2010/12/06)
ナンテンの赤い実は、鳥のため?(2010/01/15)
生垣のスター、サンゴジュ(珊瑚樹)(2009/10/12)
サンキライ? いえ、サルトリイバラです(2008/12/08)
八十年越しの純愛? アオキ(青木)(2008/02/04)
などです。

2011年12月26日

海辺のひそかな昆虫、ウミコオロギ

ico_weather_hare.gif

 昆虫は、陸上動物の中で、最も栄えているといわれますね。確かに、昆虫の種数の多さは、圧倒的です。大ざっぱな計算でも、百万種以上いるとされています。
 それに対して、例えば、哺乳類の種数は、四千種未満といわれます。鳥類や魚類などの脊椎【せきつい】動物すべてを合わせても、四万七千種程度だろうとされます。昆虫の繁栄ぶりは、まさに桁【けた】違いですね(生き物の種数については、異説もあります)。
 そんな昆虫たちが、苦手とする場所があります。海です。海を生活場所とする昆虫は、とても少ないです。しかし、まったくいないわけではありません。
 その中から、海辺に棲む昆虫の仲間を取り上げてみましょう。ウミコオロギです。
 ウミコオロギは、名のとおり、コオロギの仲間です。海岸に棲みます。石のごろごろした海岸に多いといわれます。実際には、種によって、すみかが違います。
 ウミコオロギの仲間は、なん十種もいます。中に、「ウミコオロギ」という種名の種がいます。単に「ウミコオロギ」というと、種名ウミコオロギを指すのか、ウミコオロギの仲間全体を指すのか、わかりにくいですね。このため、種名ウミコオロギには、ナギサスズという別名が付いています。ナギサスズを、正式な日本語名とすることもあります。
 ウミコオロギの仲間は、日本の海岸にも分布します。場所によっては、そんなに珍しいものではないそうです。その割に、見たことがある方は、少ないでしょう。
 その理由は、ウミコオロギの仲間が、夜行性だからです。昼間は、岩陰などに隠れています。おまけに、彼らは、鳴きません。鳴くための翅【はね】が、退化してしまっています。翅がないだけで、姿かたちは、陸のコオロギと似ています。
 ウミコオロギの仲間には、海岸の洞窟に棲む種もいます。そういった種は、ウミコオロギの中でも、特に研究が進んでいません。調査しにくい場所に棲むからです。
 日本の沖縄県でも、洞窟に棲むウミコオロギが見つかっています。おそらく新種だろうといわれます。他の地域でも、海岸をよく調べれば、新種のウミコオロギがいるかも知れません。調査が進むといいですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、ウミコオロギの仲間は載っていません。そのかわり、日本のコオロギの仲間がが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、コオロギの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
日本の誇る虫文化【むしぶんか】(2009/09/14)
便所コオロギ? いえ、カマドウマです(2009/02/06)
都会派のコオロギ、アオマツムシ(2006/10/02)
鈴虫はマツムシ、松虫はスズムシ?(2005/10/03)
などです。

2011年12月23日

リュウノウギクのリュウノウ(竜脳)とは?

ico_weather_kumori.gif

 二〇一二年の辰年【たつどし】にちなんで、今回も、「竜」の名が付く生き物を取り上げましょう。リュウノウギク(竜脳菊)です。キク科キク属の一種です。
 竜の脳の菊とは、不思議な種名ですね。この種名は、竜脳【りゅうのう】という物質から来ています。植物全体に、竜脳に似た香りがあるため、この名が付きました。
 では、竜脳とは、何でしょうか? リュウノウジュ(竜脳樹)という植物から採れる、薬用物質です。痛み止めなどに使われます。
 リュウノウギクと、リュウノウジュとは、近縁なのでしょうか? 違います。リュウノウジュは、フタバガキ科リュウノウジュ属に属します。
 リュウノウジュは、日本には自生しません。マレー半島、スマトラ島、ボルネオ(カリマンタン)島などの東南アジアに自生します。熱帯の植物です。大きな木になります。
 対して、リュウノウギクは、日本に自生します。南東北から四国にかけて分布します。木ではなく、草です。高さは、せいぜい1mくらいにしかなりません。
 リュウノウジュのほうも、植物全体に、竜脳の香りがあります。竜脳は、リュウノウジュの木材の中から取り出されます。けれども、現在では、竜脳の採取は、ほとんど行なわれていないそうです。代用になる物質があるからです。
 リュウノウギクのほうは、薬にならないのでしょうか? 民間療法で、リュウノウギクの葉を、肩こりや腰痛に使う、と聞いたことがあります。あくまで民間療法ですので、どこまで効くかは、わかりません。商業的に、薬にされてはいないようです。
 リュウノウギクには、白い、可憐な花が咲きます。いかにもキクらしい形の花です。観賞用に、栽培されてもよさそうです。昔の人も、そのように考えたのでしょう。リュウノウギクは、普通に栽培される「小菊」の原種になったといわれます。
 原種といっても、リュウノウギクだけから、小菊ができたのではありません。キク属の複数の種が交配されたと推測されています。正確なところは、わかっていません。
 栽培される小菊は華やかですが、野生のリュウノウギクも、美しいと思います。

図鑑↓↓↓↓↓には、リュウノウギクが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、キク科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アキノタムラソウは、タムラソウと近縁か?(2011/09/09)
菊展の隠れた主役? イソギク(2010/11/15)
コウヤボウキは、高野山の帚【ほうき】?(2010/10/01)
新種が続々、アザミ(2009/09/11)
九月九日は菊の節句(2006/09/09)
などです。

2011年12月19日

カモ? いえ、カイツブリです

ico_weather_hare.gif

 冬、日本では、カモの仲間がたくさん見られます。夏を北国で過ごして、冬を日本で過ごすカモが多いからです。住宅地の水場でも、冬に行くと、意外に多くのカモ類がいます。手軽なバードウォッチングの場として、冬の水場は、お勧めです。
 今回は、そのようなバードウォッチングの場で、役立つことを、お教えしましょう。
 水上をすいすい泳ぐ鳥は、どれもみな、カモの仲間に見えますね。けれども、時には、カモでない種が混じることがあります。よくいるのが、カイツブリです。
 カイツブリは、一般的なカモより、小型です。特徴は、ひっきりなしに、水にもぐることです。よく、カモがやるように、水面にお尻だけ出して、逆立ちはしません。全身を水に浸して、水中にすっかり隠れて、見えなくなります。
 カモに見える中に、小さくて、しょっちゅう潜水している鳥がいたら、それは、カイツブリの可能性が高いです。見分けられたら、ちょっと、鼻が高いですね(笑)。
 ただし、カモの仲間にも、よく潜水する種がいます。御注意下さい。潜水カモと、カイツブリとを見分けるには、嘴【くちばし】を見るとよいです。カモの嘴は、平たいですね。カイツブリの嘴は、カモと違って、平たくありません。
 カイツブリは、足にも特徴があります。もし、上陸しているカイツブリを見つけたら、観察に挑戦して下さい。水上にいることが多いので、機会は少ないですが。
 カモの足には、水かきがあります。水をかいて、泳ぎやすいようになっているのですね。ところが、カイツブリの足には、水かきがありません。指のあいだが、水かきでつながっておらず、一本一本、離れています。こんな足で、なぜ、うまく泳げるのでしょうか?
 よく観察すると、カイツブリの足の指は、とても太いです。これは、弁足【べんそく】と呼ばれる足です。この太い足の指で、巧みに水をかくことができます。水中での細かい動きには、弁足のほうが、適しているようです。
 このように、カイツブリは、カモの仲間とは、かなり違います。このため、カモ科ではなくて、カイツブリ科に分類されています。

図鑑↓↓↓↓↓には、カイツブリが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、水鳥の仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
魚か鳥か? シマアジ(2011/03/14)
昔は神さまだった? アビ(2010/02/05)
秋にも繁殖する? バン(2009/9/18)
カモは水に潜るか?(2006/11/27)
カモメは冬にしかいない?(2006/10/23)
などです。

2011年12月16日

ジャノヒゲとは、「ヘビのヒゲ」の意味か?

ico_weather_hare.gif

 生き物の種名には、時おり、明らかに意味が通じないものがあります。例として、植物の「ジャノヒゲ」を挙げてみましょう。
 ジャノヒゲを漢字で書けば、「蛇の髭」です。ヘビ(蛇)にヒゲなんて、ありませんよね。なぜ、こんな種名が付いたのでしょうか?
 じつは、ジャ(蛇)という言葉は、ヘビを指すとは限りません。龍を指して、ジャと呼ぶことがあります。長崎県などで、そう呼ぶようですね。また、現実にはあり得ない、空想的に大きな大蛇を指して、ジャと呼ぶこともあります。
 おそらく、ここをお読みの皆さんは、龍の絵を御覧になったことがあるでしょう。龍の顔には、ヒゲがありますね。「ジャノヒゲ」とは、あのような龍のヒゲを指す名です。葉の形が細長いのを、龍のヒゲに譬えたのだといわれます。
 ジャノヒゲには、「リュウノヒゲ(龍の髭)」という別名があります。こちらのほうを、正式な日本語名(標準和名)にしてくれれば、わかりやすかったですね。
 困ったことに、ジャノヒゲのラテン語の学名にも、日本語の混乱が持ち込まれています。
 ジャノヒゲ属のラテン語の学名を、Ophiopogonといいます。このラテン語は、ずばり、「ヘビのヒゲ」という意味です。「ジャノヒゲ」という日本語名を、愚直に「ヘビのヒゲ」と解釈して、ラテン語に翻訳してしまいました。
 ジャ(蛇)や龍の名からは、いかめしい植物が想像されますね。けれども、実際のジャノヒゲには、なんら、いかめしいところはありません。普通の草です。この草のどこをもって、ジャや龍が連想されたのかは、わかりません。
 ジャノヒゲは、庭や公園によく植えられます。常緑のため、冬でも地面を緑に覆ってくれます。その点が、好まれるようです。
 しかし、ジャノヒゲの魅力は、何といっても、種子にあるでしょう。秋から冬にかけて、瑠璃【るり】色の、美しい種子が付きます。果実ではなく、種子です。果皮が、早くに取れてしまうのですね。瑠璃色の種子が、冬枯れの風景を彩ってくれます。

図鑑↓↓↓↓↓には、ジャノヒゲが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、龍(竜)が名に付く生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
リュウグウノツカイは、一種ではない?(2011/12/12)
竜の胆【きも】が薬になる? リンドウ(2011/12/09)
これでも魚類です、タツノオトシゴ(2011/12/05)
緑のない植物がある?(2011/5/13)
などです。

2011年12月12日

リュウグウノツカイは、一種ではない?

ico_weather_hare.gif

 二〇一二年の干支、辰【たつ】は、十二支のうちで、唯一、架空の動物です。けれども、まるで実在するかのように、多くの伝承がありますね。「海の底に、竜が棲む竜宮がある」という話などが、代表的です。夢のある伝承ですね。
 日本人は、ある魚に、龍宮の名を付けました。リュウグウノツカイです。いかにも、深い海の底にいそうですね。そのイメージどおり、深海魚です。深さ200mほどの海で、生活していると考えられています。背びれの一部が長く、美しい姿をしています。
 他の深海魚と同じように、リュウグウノツカイの生態も、ほとんど知られません。観察が難しいからです。普段、どんな姿勢で泳いでいるのかさえ、意見が割れています。「立ち泳ぎをしている」説と、「普通の魚のように、横に泳いでいる」説とがあります。
 めったに人目に触れないにもかかわらず、リュウグウノツカイの名は、深海魚の中では、知られているほうです。名前の印象が強いことと、体の大きさによるのでしょう。
 リュウグウノツカイは、全長が2~3mになります。大きなものでは、5mを越えます。長さは、硬骨【こうこつ】魚類の中で、最長です。深海魚では、異例の大きさです。
 硬骨魚類とは、軟骨ではなく、硬い骨を持つ魚のグループです。魚の中から、サメやエイ―彼らは、軟骨魚類です―を除いたものが、硬骨魚類と思っていいです。
 リュウグウノツカイは、長らく、太平洋・大西洋・インド洋に、同じ一種が分布していると思われてきました。ほぼ、全世界の深海にいると思われてきたわけです。
 しかし、以前から、「リュウグウノツカイと呼ばれる中には、複数の種が含まれるのでは?」という意見がありました。リュウグウノツカイ科リュウグウノツカイ属には、二、三種が含まれるかも知れません。
 リュウグウノツカイとは、正式な日本語の種名(標準和名)です。ラテン語の学名については、やはり、意見が割れています。図鑑やウェブサイトにより、学名が違います。
 もし、リュウグウノツカイ属が、二、三種に分割されるとしたら、それぞれ、違う種名が付くでしょう。でも、「リュウグウノツカイ」の名は、残して欲しいですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、リュウグウノツカイは載っていません。けれども、深海に起源を持つウナギや、キアンコウが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、深海魚を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
複数の科が、一つの科に? 魚の分類が変わる(2009/01/29)
超深海でも活発なのは、シンカイクサウオ?(2008/11/11)
本当にあった不思議なカレイの話(2008/01/25)
ラブカはなぜ「生きている化石」か?(2007/01/27)
鮟鱇(アンコウ)鍋にはならないチョウチンアンコウ(2006/02/03)
などです。

2011年12月 8日

竜の胆【きも】が薬になる? リンドウ

ico_weather_kumori.gif

 植物の中にも、「竜」の名が付く種があります。今回は、その一種を取り上げましょう。リンドウ(竜胆)です。日本の東北以南の草原に、自生します。
 リンドウの花は、秋の風情を表わすものとして、愛されてきました。『枕草子』や『源氏物語』にも、「りんだう」(リンドウ)が登場します。どちらも、秋の場面です。
 リンドウという名は、漢字名の「竜胆」を、「りゅうたん」と読んだことに由来します。「りゅうたん」がなまって、「りんだう」、「りんどう」になりました。
 こんな愛らしい花の植物に、なぜ、「竜胆」などと、大仰な名が付いたのでしょうか? これは、リンドウの根に原因があります。リンドウの根は、漢方薬に使われます。薬効成分があるのですね。その成分は、とても苦い味がします。
 根の苦い味を、竜の胆に譬えたのだそうです。竜は、もちろん、架空の生物ですが、その胆は、極めて苦いものと考えられたようです。
 平安時代より、もっと古い時代には、リンドウは、「ゑやみぐさ」【えやみぐさ】と呼ばれました。「ゑやみぐさ」の意味については、いくつかの説があります。
 一つの説は、やはり、根の苦さに由来するといいます。あまりに苦いため、「根をなめると、笑み【ゑみ】が止まってしまう」から「ゑやみ草」だというのです。
 別の説では、「ゑやみ」は、「疫病を止める」意味だといいます。薬効に注目した説ですね。けれども、現在の科学では、「リンドウの根には、疫病を止めるほどの作用はない」とされています。医療が未発達の時代には、疫病に処方されることもあったでしょう。
 漢方薬に使われるのは、リンドウの中でも、主に、トウリンドウ(唐竜胆)と呼ばれる亜種です。日本のリンドウと同じ種ながら、亜種が違います。トウリンドウは、中国大陸・朝鮮半島・日本の対馬に分布します。
 リンドウの苦みについては、面白い話があります。イタリアのお酒カンパリや、フランスのお酒スーズの苦みは、リンドウの一種、キバナリンドウの成分によるといわれます。日本風にいえば、これらは、「竜の胆のお酒」でしょうか。

図鑑↓↓↓↓↓には、リンドウが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、漢方薬にされる植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ナンテンの赤い実は、鳥のため?(2010/01/15)
センダン(栴檀)とは、どんな植物?(2009/05/04)
謎の植物、茱萸【しゅゆ】とは?(2008/09/01)
茅の輪【ちのわ】くぐりの「茅」とは、どんな植物?(2007/06/29)
ハンゲとハンゲショウの関係(2006/07/01)
などです。

2011年12月 5日

これでも魚類です、タツノオトシゴ

ico_weather_hare.gif

 来年、二〇一二年は、辰年【たつどし】ですね。それにちなんで、竜に似た生き物を取り上げましょう。タツノオトシゴ(竜の落とし子)です。
 タツノオトシゴの仲間は、いつも立ち泳ぎをしています。魚には見えませんね。けれども、立派な魚類です。トゲウオ目【もく】ヨウジウオ科タツノオトシゴ属に属します。
 タツノオトシゴ属には、なん十種もの種が属します。中に、「タツノオトシゴ」という種名の種が含まれます。一般的には、タツノオトシゴ属全体を指して、タツノオトシゴと呼ぶことが多いです。みな、種名タツノオトシゴと、似た姿をしているからです。
 面白いことに、タツノイトコや、タツノハトコという種名の魚もいます。この二種は、ヨウジウオ科タツノイトコ属に属します。科が同じですから、タツノオトシゴの近縁種と言えます。が、属が違うので、「タツノオトシゴの一種」とは、言えません。
 タツノイトコや、タツノハトコは、タツノオトシゴとは違って、立ち泳ぎをしません。普通の魚と同じく、横になって泳ぎます。しかし、顔を見ると、タツノオトシゴと似ています。口が尖った顔です。もう一つ、尾で物に巻き付くのも、共通の特徴です。
 ヨウジウオ科には、タツノオトシゴ属や、タツノイトコ属でなくとも、「尾で物に巻き付く」魚たちがいます。トゲヨウジ、スミツキヨウジなどの種です。これらの種には、尾びれがありません。尾は、巻き付くことに特化しているからです。泳ぎには使われません。
 すべてのヨウジウオ科の魚が、「尾で巻き付く」のではありません。普通の魚と同じように、尾びれを持ち、普通に泳ぐ種もいます。ヨウジウオ、ノコギリヨウジなどの種が、そうです。でも、彼らの顔は、やはり、タツノオトシゴに似ています。
 興味深いことに、ヨウジウオ科には、英語でシードラゴンsea dragon(海の竜)と呼ばれる種が、なん種か、います。外国の人から見ても、この仲間には、竜を思わせるところがあるのでしょう。ちなみに、シードラゴンたちは、巻き付く尾を持ちません。
 どうやら、ヨウジウオ科の尖った顔が、竜を連想させるようです。タツノオトシゴの場合は、ごつごつした外皮も、竜らしいですね。よくぞ、この名を付けたと思います。

図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、タツノオトシゴは載っていません。けれども、広い意味でタツノオトシゴと近縁な(同じトゲウオ目【もく】)アオヤガラ、ヘラヤガラが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、タツノオトシゴの仲間を取り上げています。また、干支にちなんだ動物も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アマミノクロウサギは、生きている化石か?※二〇一一年の干支、ウサギの仲間です。
海藻に擬態【ぎたい】? ヘラヤガラ(2010/11/26) ※ヘラヤガラは、広い意味で、タツノオトシゴと近縁です。「たつのこ」という方言名があります。
「ゴンボネズミ」の正体は?(2010/11/19)※二〇一一年の干支、ウサギの仲間です。
最小の脊椎動物?が発見される(2009/02/14)
などです。

2011年12月 2日

ただの雑草じゃない? スズメノヒエ

ico_weather_ame.gif

 住宅地の道端でも、よく見れば、いろいろな草が生えていますね。よくある種の一つに、
スズメノヒエという種があります。イネ科スズメノヒエ属の一種です。
 スズメノヒエ(雀の稗)とは、面白い種名ですね。名に反して、ヒエ(稗)には、あまり似ていません。なぜ、ヒエの名が付いたのかは、不明です。
 ヒエは、イネ科ヒエ属に属する植物です。スズメノヒエとは、同じイネ科ですから、近縁と言えます。ただし、属のレベルでは、分類が違います。
 では、スズメノヒエの「スズメ(雀)」のほうは、なぜ、付いたのでしょうか? こちらも、正確なところは、わかりません。
 じつは、他にも、「スズメノ○○」という種名の草があります。スズメノカタビラ、スズメノテッポウ、スズメノヤリ、スズメノエンドウなどです。
 これら「スズメノ○○」は、ほとんどが、道端の雑草とされるものです。「何かの形に似るけれども、そのものではなくて、小さく、役に立たない植物」に、「スズメノ○○」と付けられるようです。スズメが使う道具や、食べ物に見立てたのでしょう。
 スズメノヒエも、現在の日本では、「特に、役には立たない植物」とみなされています。本家のヒエが、食用植物とされるのとは、大きく違います。
 ところが、スズメノヒエとごく近縁な種が、重要な栽培植物とされる地域があります。インドです。ここでは、スズメノコビエという種が、食用植物にされています。局地的ではありますが、主食になる穀物が取れる草として、重要な作物です。
 また、西アフリカでは、野生のスズメノコビエを採取して、穀物として食べます。栽培はしないものの、「ただの雑草」扱いでないことは、確かです。
 スズメノコビエは、イネ科スズメノヒエ属に属します。この種は、日本の関東以西にも分布します。アフリカからユーラシア大陸、日本まで、分布が広い植物です。
 日本では、スズメノヒエと同じく、スズメノコビエも、「ただの雑草」扱いです。でも、いつか、これらの草が、日本でも、重要な生物資源になる日が来るかも知れません。

図鑑↓↓↓↓↓には、スズメノヒエが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、イネ科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
芝【しば】と柴【しば】との違いは?(2011/05/20)
カヤという草はない?(2011/01/28)
茅の輪【ちのわ】くぐりの「茅」とは、どんな植物?(2007/06/29)
ササ(笹)とタケ(竹)はどう違う?(2006/06/26)
人間とは持ちつ持たれつのススキ(2006/10/01)
などです。

2011年11月28日

謎の種名、ショウマ(升麻)とは?

ico_weather_kumori.gif

 生き物の種名には、時おり、意味のわからないものがあります。例えば、植物の場合ですと、ショウマ(升麻)という種名が挙げられます。
 草の一種に、ショウマがあります。この種は、日本には自生しません。中国に分布します。種名のショウマは、漢字名の「升麻」を、日本語で音読みしたものです。
 漢字名「升麻」の意味には、諸説があります。どれが正しいのか、わかっていません。
 ショウマには、いくつか近縁な種があります。それらの種には、「○○ショウマ」という種名が付くものが多いです。サラシナショウマ、イヌショウマなどの種が有名です。
 ショウマ、サラシナショウマ、イヌショウマは、みな、キンポウゲ科サラシナショウマ属に属します。近縁な種同士に、似た名が付くのは、当然だと思えますね。
 ところが、ショウマと近縁ではないのに、「○○ショウマ」の名が付く種もあります。アワモリショウマ、トリアシショウマ、キレンゲショウマ、ヤマブキショウマなどです。
 前記のうち、アワモリショウマとトリアシショウマとは、ユキノシタ科チダケサシ属に属します。キレンゲショウマは、ユキノシタ科キレンゲショウマ属に属します。ヤマブキショウマは、バラ科ヤマブキショウマ属に属します。
 とても、ややこしいことがあります。キレンゲショウマとは別に、レンゲショウマという種があるのです。よく御覧下さい。種名に「キ」が付くかどうかだけの違いです。
 レンゲショウマとキレンゲショウマとは、近縁ではありません。レンゲショウマは、本家のショウマのほうに近縁です。キンポウゲ科のレンゲショウマ属に属するからです。
 なぜ、近縁でもない種同士に、同じ「ショウマ」の名が付いたのでしょうか? 何か、共通点があるのでしょうか? これについても、はっきりとは、わかっていません。
 ただ、どれも、細かく枝分かれする草である点は、共通しています。アワモリショウマとヤマブキショウマのように、遠縁でも、似た花が咲く種同士もあります。
 けれども、そんな草は、他にもたくさんあります。ことさらにショウマと付ける理由は、不明です。分類を調べる際には、種名にとらわれないことが、必要ですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、キンポウゲ科のサラシナショウマ、イヌショウマ、レンゲショウマが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、紛らわしい種名の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アキノタムラソウは、タムラソウと近縁か?(2011/09/09)
シカクイ? フトイ? クサイ? 藺【い】の仲間たち(2011/07/08)
ウメじゃない梅がある?(2011/02/18)
雪割草【ゆきわりそう】と、ユキノシタは、違う? 同じ?(2011/02/04)
楓【かえで】? いえ、楓【ふう】の木です(2010/11/29)
などです。

2011年11月25日

地球を制覇? ワラジムシの仲間たち

ico_weather_hare.gif

 子どもの頃、ワラジムシやダンゴムシと遊んだことが、ありませんか? 地面の落ち葉などをどけると、下から、ぞろぞろ出てきますね。小さくて、脚がたくさんある虫です。
 ワラジムシとダンゴムシとは、外見がそっくりです。見分け方は、以前、このブログで取り上げました(ワラジムシとダンゴムシとは、どう違う?(2008/11/3))。
 ワラジムシやダンゴムシにそっくりな生き物は、海にも棲んでいます。グソクムシ(具足虫)の仲間です。ワラジムシやダンゴムシと同じく、節足動物門【せっそくどうぶつもん】軟甲綱【なんこうこう】等脚目【とうきゃくもく】に属するグループです。
 大昔、等脚目が地球に現われたばかりの頃は、どの種も、海に棲んでいたと考えられています。グソクムシの仲間は、そのまま、何億年も経っても、海に棲み続けています。
 いっぽう、同じ等脚目から、陸へ進出するものも現われました。現在のワラジムシやダンゴムシは、そのグループです。海から陸へ、生活を大転換したわけです。今では、とてもそうとは信じられないほど、陸で普通に見られますね。
 中には、陸の岩に、穴を開けて棲むものまで現われました。以前、ブログで紹介したとおりです(虫が島を壊す? ナナツバコツブムシ(2007/06/28))。また、フナムシ―海辺の陸に棲みますね―も、同じ等脚目です。そういえば、ワラジムシに似ていますよね。
 海に棲む仲間も、負けていません。グソクムシの仲間には、深海に棲むものがいます。500mから700mくらいの海底に多いと聞きます。時には、4000mを越える深海でも見られます。陸の地中から深海まで、なんと多様な環境にいるのでしょう!
 かけ離れた環境に棲むもの同士でも、共通点があります。例えば、陸のダンゴムシでも、海のグソクムシでも、歩くための脚の数は、七対(十四本)です。これが、等脚目の特徴なのですね。全長1cmほどの種でも、30cmになる種でも、同じ数です。
 他にも、共通する特徴があります。彼らは、大きくなるために、脱皮をします。その時、体の前半分と後ろ半分と、半分ずつ脱皮します。どの種でも、このやり方が同じです。
 七対の脚で、どこにでも進出した彼らは、地球の覇者かも知れませんね。

図鑑↓↓↓↓↓には、等脚目【とうきゃくもく】のオカダンゴムシ、フナムシ、ワラジムシが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、等脚目の仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ワラジムシとダンゴムシとは、どう違う?(2008/11/03)
オーストラリアのサンゴ礁で、数百の新種を発見(2008/09/25)
新種・珍種がざっくざく、南硫黄島【みなみいおうとう】(2008/06/10)
虫が島を壊す? ナナツバコツブムシ(2007/06/28)
などです。

2011年11月21日

ヘビ? いえ、アシナシトカゲです

ico_weather_hare.gif

 「爬虫類で、脚のないもの、何だ?」と訊かれたら、何と答えますか? きっと、誰もが、「ヘビ」と答えるでしょう。それは正しいです。けれども、「完全な答え」とは言えません。ヘビ以外にも、脚のない爬虫類が、存在するからです。
 たいていの方は、驚くでしょうね。「爬虫類の中で、脚のないものをヘビと呼ぶ」と思っている方が、ほとんどでしょう。じつは、違います。
 トカゲの仲間にも、脚のないものがいます。それも、一種ではなく、何百種もいます。
 有名なのは、アシナシトカゲの仲間です。アシナシトカゲとは、アシナシトカゲ科に属する種の総称です(分類には、異説もあります)。日本にいる普通のトカゲと、そんなに遠縁ではありません。よく知られるのは、ヨーロッパアシナシトカゲという種です。
 ヒレアシトカゲ科というグループもあります。この仲間も、ぱっと見た限りでは、脚がないように見えます。よく観察すると、退化した後ろ脚が、ひれ状に体に付いています。このために、「ヒレアシ」トカゲと名づけられました。
 ヒレアシトカゲ科は、ヤモリ科に近縁だとされます。「鳴き声を出す」など、ヤモリ科と、共通する特徴があるからです。普通に日本にいるヤモリとも、比較的、近縁です。
 ミミズトカゲというグループもいます。このグループは、厳密には、トカゲでも、ヘビでもありません。ミミズトカゲ亜目【あもく】という名でまとめられています。分類学では、「科」よりも、「亜目」のほうが、上位のグループです。
 互いに近縁でないトカゲのあいだで、なぜ、「脚がない」という共通の特徴が表われるのでしょうか? これについては、わかっていません。
 脚がないトカゲの種は、ほぼ全世界に分布しています。世界的に見れば、珍しくないのですね。ところが、日本には、脚がないトカゲは、一種も分布しません。このために、日本人には、脚がないトカゲは、馴染みがありません。
 なぜ、日本には、脚のないトカゲがいないのでしょうか? これも、わかっていません。もしも日本にいたら、伝説のツチノコのようだったかも知れませんね。

図鑑↓↓↓↓↓には、脚のないトカゲは載っていませんが、日本に分布するトカゲのうち、九種が掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、トカゲの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ホオグロヤモリは、国際派?(2011/05/23)
キノボリトカゲは、駆除すべき?(2010/12/31)
日本に、新種のトカゲあらわる?(2010/04/09)
日本最大のトカゲとは?(2009/08/14)
コモドオオトカゲは、有毒だった?(2009/05/21)
などです。

2011年11月18日

香りの木は、神の木か? クロモジ

ico_weather_kumori.gif

 紅葉や黄葉の季節ですね。普段は目立たない植物でも、この時期になると、美しさに、はっとすることがあります。例えば、クロモジ(黒文字)の仲間などが、そうです。
 クロモジとは、クスノキ科クロモジ属に属する樹木の一種です。あまり大きくなりません。せいぜい、高さ5メートルくらいです。日本の野山に、普通に自生しています。
 この季節、クロモジは、見事に黄葉します。同じ時期に、果実もみのります。クロモジの果実は、黒くて、つやつやしています。黄葉との対比が、素敵です。
 クロモジ属の種は、クロモジに限らず、黄葉が美しい種が多いです。ダンコウバイ、アブラチャン、シロモジ(白文字)などの種です。
 黄葉以外に、クロモジ属の種には、重要な共通点があります。材に、良い香りがあることです。根や、種子から採れる油にも、良い香りがあるものが多いです。クロモジ属には、共通する良い香りの成分が含まれているためです。
 クロモジといえば、爪楊枝【つまようじ】を思い浮かべる方がいるでしょう。昔から、クロモジは、高級な爪楊枝の材料にされてきました。香りが良いからです。同じ属のダンコウバイなども、爪楊枝にされることがあります。
 現在でこそ、爪楊枝くらいにしか使われませんが、ずっと昔のクロモジは、もっと尊い場面で使われたのでは、と考えられています。そのように考えられるのは、その名残りと思われる使い方が、伝わっているためです。
 例えば、昔の東北地方では、狩りの獲物の一部をクロモジの木にはさんで、神さまに捧げる儀式をしたそうです。また、昔の山陰地方などでは、小正月(一月十五日ごろ)に作る餅花【もちばな】を、クロモジの木で作ると決まっていました。
 これらの例から、昔のクロモジは、神さまに捧げられる木だったと推測できます。なぜ、そのようにされたかといえば、やはり、良い香りの木だからでしょう。
 英語では、クロモジ属の植物を、spicebushといいます。spice(香料)の名は、クロモジ属にふさわしいですね。主に、アメリカクロモジという種が、この名で呼ばれます。

図鑑↓↓↓↓↓には、クロモジ属のクロモジ、シロモジ、ダンコウバイ、アブラチャンが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、良い香りのある植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
日本にも、タイムが生える?(2011/06/10)
桂【けい】とは、どんな植物?(2010/11/22)
センダン(栴檀)とは、どんな植物?(2009/05/04)
フジバカマは桜餅【さくらもち】の香り?(2007/09/10)0
などです。

2011年11月14日

二十世紀末に新種発見、クジラの事情

ico_weather_kumori.gif

 「新種発見」という言葉には、ときめきを感じますね。世界では、毎年、たくさんの新種が発見されています。その割には、ニュースであまり見ませんね?
 なぜかと言えば、ほとんどの種が、小さくて、目立たないからです。ニュースになるのは、ごく一部の種だけです。よほど特徴のあるものだけですね。
 二十世紀の終わりに、日本で、とびきりの新種が発見されました。どこがとびきりかといえば、大きさです。なんと、全長が10メートル以上にもなる生き物が、一九九〇年代まで、発見されずにいました。それは、クジラの新種でした。
 新種は、ツノシマクジラと名づけられました。標本が、山口県の角島【つのしま】近海から、得られたためです。ツノシマクジラは、ヒゲクジラの一種(ナガスクジラ科の一種)です。大きさや生態などは、よくわかっていません。調査が進んでいないためです。
 こんなに大きな生き物が、なぜ、二十世紀末まで、発見されなかったのでしょうか? ツノシマクジラが、他種のクジラと混同されていたからです。ニタリクジラという種と、混同されていました。ニタリクジラも、ナガスクジラ科に属します。
 ニタリクジラと、ツノシマクジラとは、外見が似ます。海中では、外見を詳しく観察することが、難しいですよね。混同されていたのは、無理もありません。
 ややこしいことに、ニタリクジラそのものが、他種のクジラと混同されてきた歴史があります。混同の相手は、イワシクジラという種です。イワシクジラも、ニタリクジラと外見が似ます。昔は、ニタリクジラも、イワシクジラの中に含められていました。
 つまり、ツノシマクジラ、ニタリクジラ、イワシクジラという、よく似た三種がいるわけです。昔は、この三種は、すべて同一の「イワシクジラ」という種だと思われていました。そこから、ニタリクジラが分離され、さらに、ツノシマクジラが分離されました。
 二十一世紀になってから、もう一種、別の種が、ニタリクジラから分離されました。カツオクジラという種です。この種も、日本近海に棲みます。こんなに新種の発見が相次ぐとは、クジラの世界には、まだまだ、未知のロマンがあるということですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、ニタリクジラが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、クジラの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
水族館にいないイルカとは?(2010/03/26)※イルカは、クジラの仲間です。
アカボウクジラの歯の謎が、解ける?(2008/12/25)
タスマニアで、座礁したクジラの救出作戦(2008/12/02)
哺乳類で、最も長生きなのは、クジラ?(2008/08/01)
イルカがクジラを救助した!?(2008/03/15)0
などです。

2011年11月11日

甘柿と渋柿とがあるのは、なぜ?

ico_weather_ame.gif

 カキ(柿)は、日本の秋の味覚ですね。カキの中に、甘ガキと渋ガキとがあるのは、皆さん、御存知でしょう。同じ種の中で、なぜ、味が違う果実があるのでしょうか?
 じつは、カキの果実は、もともと、渋いものしかありませんでした。甘いものは、後から、突然変異でできたと考えられています。
 カキの渋みは、タンニンという成分の味です。甘ガキには、タンニンが入っていないのでしょうか? そうではありません。甘ガキにも、タンニンがあります。
 では、どうして、甘ガキには、渋みを感じないのでしょう? 甘ガキと渋ガキとでは、違う性質のタンニンが入っているからです。
 渋ガキのタンニンは、水溶性(水に溶ける性質)です。このために、口に入れると、口中の湿り気に溶けて、渋みを感じます。
 いっぽう、甘ガキのタンニンは、不溶性(水に溶けない性質)です。口の中で、溶けだしません。おかげで、タンニンの渋みが感じられないわけです。
 甘ガキとは、突然変異によって、タンニンの性質が変わったカキなのですね。
 甘ガキが生まれたのは、日本です。日本人が、甘ガキを、品種として固定させました。今では、世界の各地に、日本起源の甘ガキが栽培されています。
 カキの原産地は、日本ではなく、中国だといわれます。日本には、奈良時代ころに入ってきたという説が、有力です。
 中国には、元来、渋ガキしかありませんでした。前記のとおり、渋ガキのほうが起源だからです。現在でも、世界的には、渋ガキのほうが、ずっと多く栽培されています。
 渋ガキは、そのままでは、食べられませんね。渋を抜いて、食べられるようにされます。「渋を抜く」とは、「水溶性のタンニンを、不溶性にする」加工をしているわけです。
 タンニンの性質を変えるには、温度など、いくつかの要素が関わります。温度が低いと、渋が抜けきれません。甘ガキでも、寒い地方で栽培すると、渋くなってしまうことがあります。このため、甘ガキの産地は、温暖な西日本に多くなっています。

図鑑↓↓↓↓↓には、カキノキ(柿の木)が掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、さまざまな果物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
スイカの故郷は、どこ?(2011/09/02)
ザクロが人肉の味というのは、本当?(2007/09/28)
チンパンジーの贈り物はパパイア?(2007/09/13)
花が咲かないのに実がなる? イチジク(2006/10/06)
お釈迦さまも食べた? レモン(2006/08/21)などです。

2011年11月 7日

魚の養殖を支えるワムシ(輪虫)

ico_weather_hare.gif

 ヒトにとって重要でも、存在が知られない生き物は、多いものです。今回は、そういう生き物を取り上げましょう。ワムシです。
 大部分の方は、ワムシという生き物の名を、聞いたこともないでしょう。水産業に携わる方なら、聞いたことがあるかも知れませんね。
 ワムシは、水中に棲む生物です。淡水中に多いです。海中にも、少数の種がいます。とても小さくて、普通、肉眼では見えません。いわゆるプランクトンの仲間です。淡水の動物性プランクトンとしては、ミジンコと並んで、最も平凡なものの一つです。
 ミジンコは、よく、魚の餌になりますね。ワムシも同じです。淡水魚を養殖する場合には、餌にするために、ワムシも養殖することがあります。
 特に、ワムシは、稚魚の餌として重要です。小さいからですね。体の小さい稚魚は、小さい餌しか食べられません。ワムシがいなかったら、自然界でも、養殖の場合でも、稚魚たちは、深刻な餌不足になるでしょう。淡水魚がいなくなります。
 ワムシは、淡水の生態系を支える存在です。私たちの食卓を、底辺で支えてくれています。そんなワムシは、何の仲間でしょうか? ミジンコと近縁なのでしょうか?
 違います。ミジンコは、節足動物門【せっそくどうぶつもん】というグループに属します。ワムシは、輪形動物門【りんけいどうぶつもん】というグループに属します。門というのは、とても大きな分類単位です。大きく分類が異なる、ということです。
 ワムシとは、輪形動物門に属する種の総称です。ワムシという種名の種は、ありません。主な種として、ツボワムシ、ドロワムシ、スジワムシ、ヒルガタワムシなどがいます。
 ワムシ(輪虫)や、輪形動物という名は、なぜ、付いたのでしょうか? 文字どおり、体の一部が、輪のように見えるからです(種によっては、例外もあります)。
 平均的なワムシの姿は、釣鐘を逆さにしたような形です。その「釣鐘」の口の部分に、細かい毛がたくさん付いています。毛が動くと、口の部分が、くるくると回転する輪のように見えます。顕微鏡で観察すると、なかなか愛らしいと感じますね。

図鑑↓↓↓↓↓には、アツボワムシが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、水中のプランクトンを取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
産み分け自在? ミジンコの繁殖事情(2010/07/05)
サルパとは、どんな生き物?(2007/05/31)
豊作の妖精ホウネンエビ(2006/05/15)
などです。

2011年11月 4日

仏像の材料になったのは、何の木?

ico_weather_hare.gif

 文化の秋ですね。今回は、文化財に関する生き物を紹介しましょう。
 日本には、たくさんの仏像があります。国宝や、重要文化財に指定されているものも多いですね。日本の仏像は、外国のものと比べ、木製のものが多いことが、特徴です。
 日本の仏像に使われているのは、どんな木でしょうか? これまでは、漠然と、ヒノキが多いと考えられてきました。ヒノキは、昔から、材木として重要視されてきたからです。
 これは、確かな証拠があってのことではありませんでした。全国の仏像を、詳しく調べたわけではなかったのです。「尊い仏像を作る木は、尊ばれたヒノキだろう」という推定にすぎませんでした。なぜ、詳しい調査がされなかったのでしょうか?
 それは、仏像が尊いものだからです。多くの仏像は、現役で、信仰の対象です。材を調査するとなれば、仏像を削らなければなりません。「そんなことは、畏【おそ】れ多くて、とてもできない」のが、実情です。
 けれども、近年になって、様子が変わってきました。仏像の材を、調査できるようになってきたのです。信仰心が薄れたのでしょうか? いえ、違います。科学の進歩によるところが、大きいです。ほんの少しの材でも、種類などがわかるようになりました。
 古い仏像は、修復作業に出されることがあります。その時に、仏像からはがれた小さな破片などが、手に入ります。それらが、科学的な調査に用いられます。
 調査によれば、仏像の材料は、カヤ(榧)の木が多いことが、わかってきました。
 カヤは、イチイ科カヤ属に属する一種です。日本の東北地方南部以南に、自生します。栽培されることもあります。普通の民家より、神社や寺に多いです。
 カヤは、材木として、古くから使われてきました。碁盤【ごばん】や、将棋盤の材料として、有名です。それが、なぜ、仏像にも使われるのでしょうか?
 はっきりしたことは、わかっていません。カヤの木の「香り」が尊ばれたからでないかといわれます。カヤの材木は、新しいうちは、削ると、とても良い香りがします。香りを放つ仏像は、人々の信仰心を託すのに、ふさわしかったのかも知れませんね。

図鑑↓↓↓↓↓には、カヤ(榧)が掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、材木に使われる樹木を取り上げています。また、文化財に関連する生き物も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
マンサクは、「魔女のはしばみ」?(2011/03/04)
神聖な木工の材料、ツゲ(2010/10/11)
センダン(栴檀)とは、どんな植物?(2009/05/04)
カツオブシムシは文化財の敵?(2007/10/19)
悠仁【ひさひと】さまのお印はコウヤマキ(高野槇)(2006/09/14)
などです。

2011年10月31日

アカコッコの分布の謎

ico_weather_hare.gif

 日本の天然記念物の一つに、アカコッコという鳥がいます。「コッコ」という種名が、面白いですね。この名からは、ニワトリが想像されますが、アカコッコは、ニワトリの仲間ではありません。ツグミの仲間(ツグミ科の一種)です。
 アカコッコは、なぜ、天然記念物に指定されたのでしょうか? 分布域が狭くて、珍しい鳥だからです。現在のところ、アカコッコの繁殖地として確認されているのは、日本の伊豆諸島と、トカラ列島だけです。特に、伊豆諸島の三宅島のものが、知られます。
 伊豆諸島も、トカラ列島も、決して広くない島々です。このように、限られた地域で繁殖する生き物は、絶滅しやすいです。災害が起こったり、敵が侵入したりすれば、一撃で絶滅しかねないからです。アカコッコも、絶滅が心配されています。
 アカコッコの分布については、謎があります。伊豆諸島とトカラ列島という分布域が、飛び離れていることです。なぜ、こんな分布なのか、わかっていません。
 謎をかき立てるのは、アカコッコが、長距離を飛べることです。アカコッコの中には、伊豆諸島から、日本の本土へ飛んできて、冬を越すものがいます。伊豆半島や、相模湾の沿岸で、姿が確認されています。越冬するだけで、繁殖は確認されていません。
 長距離を飛べるのなら、狭い島でばかり暮らさずに、本土へ分布を広げてもよさそうですね? けれども、実際には、そうなっていません。アカコッコたちは、島で繁殖することを、選び続けています。
 となると、余計に、飛び離れた分布が謎ですね。アカコッコは、なぜ、どうやって、互いに離れた地に、繁殖地を求めたのでしょうか?
 伊豆諸島のアカコッコと、トカラ列島のアカコッコとのあいだに、行き来はあるのでしょうか? 遠く離れていても、同種の繁殖相手を求めて飛んでゆく、などということが、あるのでしょうか? これらについても、わかっていません。
 行き来があるのなら、アカコッコの未来が、少し明るくなります。繁殖相手を選べるのは、良いことだからです。この分野の調査が、進むとよいですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、アカコッコが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、分布域が限られた生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
大陸とのつながりを示す? ナミエガエル(2011/06/27)
美しい偏食ヘビ、リュウキュウアオヘビ(2009/12/14)
日本最大のネズミは、ケナガネズミ(2008/11/10)
メグロはメジロと仲良し?(2007/11/12)
貝に卵を産む? 不思議な魚たち(2007/03/30)
などです。

2011年10月28日

オークは、楢(ナラ)の木? 樫(カシ)の木?

ico_weather_hare.gif

 読書の秋ですね。ヨーロッパの文学を読んでいると、「オークの木」が、よく登場します。オーク―英語のつづりは、oak―とは、どんな樹木でしょうか?
 日本では、オークは、カシ(樫)や、カシワ(柏)などと訳されてきました。けれども、この翻訳は、正確とは言いがたいです。最近の辞書ですと、ナラ(楢)となっていることが、多いですね。そちらのほうが、正確です。
 オークとは、一種の植物だけを指す言葉ではありません。ブナ科コナラ属に属する種の総称です。普通は、コナラ属の中で、冬に落葉する種を、オークと呼びます。
 日本語では、冬に落葉するコナラ属は、ナラと総称されることが多いです。ですから、オーク=ナラとして、間違いではありません。
 では、なぜ、昔の辞書では、オークが、カシやカシワになっていたのでしょうか? じつは、カシも、カシワも、同じブナ科コナラ属に属するからです。カシもナラも一緒に、オークと呼ばれることもあります。近縁なうえ、姿も似るため、混同されたのですね。
 一般的には、コナラ属の中で、常緑の種を、カシと総称します。カシワというのは、コナラ属の中の、ある一種です。カシワは、冬に落葉します。
 カシワは、ヨーロッパには分布しません。カシ(常緑のコナラ属)は、ヨーロッパにも分布するものの、南部の一部にあるだけです。どちらも、ヨーロッパでは、馴染みが薄い樹木です。ヨーロッパ文学で、「オーク」とあれば、ナラの可能性が高いでしょう。
 オークは、古来、ヨーロッパ人に尊重されてきました。例えば、古代ギリシアでは、オークが、「主神ゼウスの聖木」とされました。古代ギリシアのドドナの神託所では、巫女が、聖なるオークの葉ずれの音を聴いて、神託を出したといわれます。
 ヨーロッパの古い文明、ケルトでも、オークは神聖な木でした。古代ケルトには、ドルイドという聖職者階級がいました。ドルイドの名は、古代のケルト語の「オーク」を表わす言葉に由来するといわれます。オークを崇拝していたのでしょう。
 植物のことを知って読めば、文学作品は、いっそう味わい深くなると思います。

図鑑↓↓↓↓↓には、ブナ科コナラ属のアカガシ、アラカシ、ウバメガシ、シラカシ(以上カシ類)、コナラ、ミズナラ(以上ナラ類)、カシワ、クヌギが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、ブナ科コナラ属の植物を取り上げています。また、ブナ科コナラ属の植物に付く昆虫も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
古代の「ははそ」の正体は?(2010/08/13)
森林の妖精? ゼフィルスたち(2010/06/14)
アシナガバチ? いえ、カシコスカシバです(2008/09/15)
柏餅【かしわもち】は、なぜカシワで作られる?(2008/05/05)
昆虫にも「ミミズク」がいる?(2007/07/09)
などです。

2011年10月24日

大鯰(オオナマズ)は、実在するか?

ico_weather_kumori.gif

 日本の民話には、とてつもなく大きい鯰(ナマズ)が登場することがありますね。例えば、茨城県の鹿島神宮にまつわる話で、語られます。「ヒトが乗れる大きさがある」などと言われたりします。そのような大型のナマズは、日本にいるのでしょうか?
 日本で、最も普通に見られるナマズの仲間は、「ナマズ」という種名のものです。他種のナマズと区別するために、マナマズと呼ばれることもあります。この種は、言われるほど大きくなりません。せいぜい、60cmくらいです。
 もっと大きくなるナマズの仲間が、日本にいます。日本に分布するナマズで、最大なのは、ビワコオオナマズという種でしょう。この種は、全長1mほどになります。
 ビワコオオナマズは、民話の大鯰のモデルなのでしょうか? そうとは限りません。「オオナマズ」といっても、全長1mでは、ヒトが乗るには、小さすぎますね。
 加えて、ビワコオオナマズは、分布が限られています。日本国内でも、琵琶湖と、淀川水系にしか分布しません。前述の鹿島神宮の場合などは、そもそも、ビワコオオナマズが分布しない地域です。話が成り立ちませんね。
 じつは、江戸時代より前には、普通のナマズ(種名ナマズ)も、鹿島神宮付近には、分布しなかったのではないかといわれます。
 種名ナマズは、本来、西日本にしか分布しなかったようです。種名ナマズの分布は、ヒトによって、広げられました。食用になるためです。東日本の人々にとっては、見慣れぬ不気味な魚だったのかも知れません。そのため、民話の材料にされたのでしょうか。
 民話や伝説の大鯰は、誇張されたものでしょう。あくまで「お話」です。
 それでも、ビワコオオナマズは、日本の淡水魚では、最大級の種の一つに入ります。ビワコオオナマズと同等か、それ以上に大きくなる淡水魚と言えば、日本の在来種では、イトウ、チョウザメ、オオウナギ、コイくらいしかいません。
 なお、海外へ目を向ければ、巨大なナマズの種が、たくさんいます。それこそ、ヒトが乗れそうなオオナマズもいます。それらの種は、ぜひ、水族館で、御覧下さい。

図鑑↓↓↓↓↓には、ナマズ科のナマズ、ビワコオオナマズが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、ナマズを取り上げています。また、大型になる日本の淡水魚を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
日本最大の淡水魚とは?(2010/07/26)
ウナギとオオウナギとは、違う? 同じ?(2010/05/21)
しゃべるナマズがいる?(2006/08/11)
ナマズ(鯰)は地震を予知するか?(2006/05/30)
などです。

2011年10月21日

ゴマノハグサ科は、大分裂中?

ico_weather_kumori.gif

 植物の中に、ゴマノハグサ科という分類グループがあります。この科は、伝統的には、四千種以上を含む、大きなグループでした。有名な種としては、園芸植物のキンギョソウや、道端で見られるオオイヌノフグリが含まれます。
 ところが、最近、この科は、解体されつつあります。生物学が進んで、「ゴマノハグサ科には、近縁でない種同士が含まれる」ことが、わかってきたためです。
 ゴマノハグサ科の分類は、組み直されている最中です。このために、同じ種でも、図鑑やウェブサイトにより、違う分類にされていることが、少なくありません。
 中には、科の下の分類グループである属についても、組み直されている種もあります。おかげで、ゴマノハグサ科の分類は、混乱しているのが、現状です。
 一例を挙げてみましょう。ウリクサ(瓜草)です。いわゆる道端の雑草の一種です。
 ウリクサは、マクワウリに似た果実が実るところから、この名が付きました。とはいえ、ウリのように、つるにはなりません。小さな草です。果実も、マクワウリより、ずっと小さいです。よく見なければ、果実があるかどうかも、わかりません。
 伝統的には、ウリクサは、ゴマノハグサ科とされてきました。けれども、前述の理由により、ゴマノハグサ科ではないとされることが多くなりました。
 どの科に含めるのかは、まだ揺れています。アゼトウガラシ科とされる場合や、オオバコ科とされる場合があります。
 そもそも、ウリクサは、どの属に含まれるのかも、揺れています。独自のウリクサ属とする説もあれば、アメリカアゼナなどと同じアゼトウガラシ属とする説もあります。
 ウリクサの分類は、「アゼトウガラシ科アゼトウガラシ属」になったり、「オオバコ科ウリクサ属」になったりするわけです。伝統的なゴマノハグサ科を含めて、これ以外の科と属との組み合わせも、あり得ます。これでは、まったく別の種のようですね。
 ゴマノハグサ科に限らず、生物学では、こういう事態が、いつ起こるかわかりません。正確な情報を得るには、チェックを怠らない姿勢が必要です。

図鑑↓↓↓↓↓には、ゴマノハグサ科のウリクサ、アメリカアゼナなどが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、分類が混乱している生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
属名で混乱中、ヒエンソウ(飛燕草)の仲間たち(2011/05/27)
分類が混乱中、カエデの仲間(2010/11/01)
カジカ(鰍)の迷宮(2009/12/21)
とろろの材料になるのは、ヤマイモ? ヤマノイモ?(2008/11/07)
ギンブナ(銀鮒)の種名は、大混乱中(2008/10/28)
などです。

2011年10月17日

宿主をあやつる、フクロムシの驚異

ico_weather_hare.gif

 寄生生物という名の響きは、ちょっと怪しげですよね。実際、寄生生物には、私たちの想像を絶する生活ぶりのものが多いです。
 今回は、そのような寄生生物の仲間を紹介しましょう。フクロムシです。
 磯で、カニやヤドカリの腹部に、袋状のものが付いているのを、見たことがありませんか? それは、フクロムシの一種かも知れません。
 フクロムシの仲間は、海に棲みます。カニ、エビ、ヤドカリなどの節足動物に寄生します。最も目にする可能性が高いのは、おそらく、ウンモンフクロムシという種でしょう。この種は、磯によくいるイソガニ、イワガニ、ヒライソガニに寄生するからです。
 ウンモンフクロムシは、一見、カニの卵のように見えます。カニの腹部から、フクロムシの体の一部がはみ出して見えるため、「卵を抱いている」と勘違いされやすいです。
 カニの卵のように見える部分は、フクロムシの体の一部です。エキステルナと呼ばれます。この部分には、フクロムシ自身の卵が、いっぱい詰まっています。
 フクロムシの本体は、カニの体内にあります。こちらは、インテルナと呼ばれます。インテルナは、植物の根のように、カニの体中に張り巡らされています。この部分が、カニから栄養を奪います。カニにとっては、災難ですね。
 災難は、他にもあります。寄生された宿主は、繁殖ができなくなるのです。
 なぜ、そうなるのでしょうか? 繁殖とは、とてもエネルギーを使う行為だからです。フクロムシにとっては、宿主から取れる栄養が、減ることになります。「そんな行為は許せない」とばかりに、フクロムシは、宿主の繁殖能力を奪います。
 ウンモンフクロムシに寄生されたカニが、雄だった場合は、さらに悲劇的なことになります。雄なのに、雌のようにふるまうカニになります。まるで卵を抱く雌のように、カニは、フクロムシのエキステルナの世話をします。
 宿主のカニは、結局、フクロムシの繁殖の手伝いまでさせられます。外見からは、袋のようにしか見えない生き物が、ここまでするとは、自然の驚異の一つですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、ウンモンフクロムシの宿主となるイソガニ、イワガニ、ヒライソガニが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、寄生生物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ススキの下で、何を思う? ナンバンギセル(2010/09/10)
恐るべき?社会寄生、トゲアリ(2010/07/12)
年に二回、花が咲く? エゴノキ(2010/05/28)
ハリガネムシ(針金虫)は、ヒトに寄生する?(2008/08/27)
キチョウの雄(オス)が雌(メス)になる?(2007/09/03)
などです。

2011年10月14日

仲間は、地球の裏側に? アケビ

ico_weather_hare.gif

 アケビは、一定以上の年齢の方には、懐かしい食べ物かも知れませんね。日本の野山に生える、代表的な果実です。つるになる植物です。
 アケビとは、アケビ科アケビ属に属する一種です。アケビ科に属する種を、アケビと総称することもあります。この仲間は、どれも、似た果実を付けます。長円形で、皮の色が、紫っぽいことが多いです。果実は、食べられます。ほんのり甘く、美味しいです。
 日本の野山には、アケビ以外にも、アケビ科の種が分布します。ミツバアケビ、ムベなどです。どの種も、昔は、子どもが喜ぶおやつだったそうです。店で売られるのではありません。野山で取って食べるものでした。素朴で、身近な植物だったのですね。
 そんなアケビ科には、大きな謎があります。分布に関する謎です。
 アケビ科の植物は、多くが、日本を含む東アジアに分布します。それと飛び離れて、南米のチリに分布する種があります。なぜ、こんなおかしな分布なのでしょうか?
 この謎は、解かれていません。このような分布は、他の生き物でも、あまり類がありません。いったい、どうやったら、こんな分布になるのでしょう?
 私が知る範囲では、ラクダ科の分布が、アケビ科に似ています。植物ではなく、動物ですが。ラクダ科も、ユーラシア大陸と、南米大陸とに、離れて分布します。
 ラクダ科の場合は、なぜ、こんな分布になったのか、ある程度、解明されています。
 ラクダ科は、北米大陸で誕生したと考えられています。そこから、あるグループは、ユーラシアへと分布を広げました。別のグループは、南米へと分布を広げました。
 後に、故郷の北米では、ラクダ科は絶滅してしまいます。ユーラシアのグループと、南米のグループだけが、生き残りました。飛び離れた分布になったのは、そういうわけです。
 もしかしたら、アケビ科にも、こんな歴史があるのかも知れません。でも、今のところ、何の証拠もありません。北米で、アケビ科の化石でも見つかれば、面白いですね。
 アケビは、日本では、平凡な植物です。平凡でも、進化の謎を秘めています。その謎は、地球をまたにかけています。そう考えると、神秘を感じますね。

図鑑↓↓↓↓↓には、アケビ科のアケビ、ミツバアケビ、ムベが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、分布に謎を秘めた生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
大陸とのつながりを示す? ナミエガエル(2011/06/27)
ハブが知る? 南西諸島の成立の秘密(2010/11/05)
ヨーロッパ独りぼっち? レンギョウ(2010/03/12)
生き別れの親類が再会? ヤマボウシとハナミズキ(2008/05/19)
大山椒魚(オオサンショウウオ)は冬眠しない?(2007/02/05)
などです。


2011年10月10日

騙すつもりはないけれど、テントウダマシ

ico_weather_hare.gif

 生き物の名前には、「○○モドキ」や「○○ダマシ」と付くものがありますね。特に、昆虫に多いです。今回は、その中から、「テントウダマシ」を紹介しましょう。
 テントウダマシとは、昆虫のうちで、甲虫目【こうちゅうもく】テントウダマシ科に属する種の総称です。名のとおり、外見が、テントウムシの仲間に似ています。
 テントウダマシと、テントウムシとは、あまり近縁ではありません。テントウムシのほうは、同じ甲虫目でも、テントウムシ科に属する種の総称です。
 ややこしいことに、テントウダマシ科は、科の名前自体に、混乱があります。テントウダマシ科ではなく、テントウムシダマシ科とされることもあります。
 ところが、単に「テントウムシダマシ」と呼ぶと、テントウダマシ科以外の種を指すことがあります。テントウムシ科のうち、二種が、そのように呼ばれます。
 その二種とは、ニジュウヤホシテントウと、オオニジュウヤホシテントウです。この二種は、どちらも、農作物の害虫として有名です。多くのテントウムシが、益虫とされる中で、イメージに反します。テントウムシダマシと呼ばれるのは、そのためでしょう。
 これらの種をテントウムシダマシと呼ぶことや、テントウダマシ科をテントウムシダマシ科と呼ぶことは、明らかに、紛らわしいですね。避けたほうがいいと思います。
 本物のテントウダマシ科のほうは、菌類(キノコの仲間)を食べる種が多いようです。ヨツボシテントウダマシ、ルリテントウダマシなどが、菌類を食べる種です。
 多くのテントウムシと同じように、益虫とされる種もいます。例えば、キイロテントウダマシがそうです。この種は、農作物の害虫となるカイガラムシを食べます。
 キイロテントウダマシは、名に反して、体色が黄色ではありません。赤です。なぜ、「黄色」という名が付いたのか、調べてみましたが、わかりませんでした。
 テントウダマシ科と誤解されやすいものに、テントウゴミムシダマシの仲間がいます。彼らは、テントウダマシ科ではなく、ゴミムシダマシ科の一群です。外見は、テントウムシにそっくりです。昆虫の世界には、よくよく、紛らわしいものが多いですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、ヨツボシテントウダマシが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、「○○ダマシ」や「○○モドキ」と付く生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
カミキリムシ? いえ、カミキリモドキです(2011/07/05)
盗人呼ばわりは、濡れ衣? コクヌスト(2010/06/27)※ゴミムシダマシ科のコクヌストモドキを取り上げています。
影が薄い? ジョウカイモドキ(2010/03/19)
ミールワームとは、どんな虫?(2008/03/28)※ゴミムシダマシ科のキマワリなどを取り上げています。
などです。

2011年10月 7日

盗人みたいにこっそり付く? ヌスビトハギ

ico_weather_hare.gif

 森の中や、草の茂ったところを通ると、衣服に、植物の果実が付いてくることがありますね。植物の中には、動物の体にくっつきやすい果実を付けるものがあります。動物に運んでもらって、広い範囲に子孫を増やそう、という狙いです。
 ヌスビトハギ(盗人萩)は、そういった植物の代表的なものです。ヌスビト(盗人)という名が、面白いですね。こんな名が付いたのには、二つの説があります。
 「この果実の形が、盗人の足跡に似るから」というのが、一つです。もう一つの説では、「ヒトや、その他の動物にこっそり付く様子が、盗人のようだから」といいます。どちらの説が正しいのかは、わかっていません。
 どちらにせよ、ヌスビトの名は、果実がくっつく様子から付けられたようです。そこが一番、目立つ特徴だからでしょう。では、ハギ(萩)のほうの由来は?
 ヌスビトハギの花は、ハギの花の形に似ています。同じマメ科だからです。花が似るために、ハギの名が付きました。
 とはいえ、ハギの一種かといえば、そうは言い切れません。ハギとは、マメ科ハギ属に属する種の総称だからです。ヌスビトハギは、マメ科ヌスビトハギ属に属します。「外見が似ていて、分類的にも近縁だけれど、少し違う」ややこしい関係です。
 ヌスビトハギ属には、ヌスビトハギと似た種が、いく種も含まれます。おまけに、同じヌスビトハギの中でも、変異が多いです。亜種も、いくつもあります。このため、ヌスビトハギ属の種を確定するのは、容易ではありません。
 じつは、ヌスビトハギとは、マルバヌスビトハギという種の一亜種です。マルバヌスビトハギには、他にも、ケヤブハギ、ヤブハギなどの亜種があります。いろいろな亜種を含めたマルバヌスビトハギは、日本国外にも、広く分布します。
 お隣の中国では、ヌスビトハギ属の植物を、薬に使うそうです。日本のヌスビトハギにも、薬効があるのでしょうか? だとすれば、ヌスビトハギは、不名誉な名にもかかわらず、人の役に立つことになりますね。

図鑑↓↓↓↓↓には、が掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、マメ科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
淀殿草【よどどのくさ】とは、どんな植物?(2011/4/14)
タンキリマメで、痰【たん】が切れる?(2011/1/10)
エニシダは、魔女の帚【ほうき】になる?(2009/4/6)
藤(フジ)のつるは右巻き?左巻き?(2007/4/19)
ハギという植物はない?(2005/9/27)
などです。

2011年10月 3日

野ネズミは、ネズミ科じゃない?

ico_weather_hare.gif

 ネズミの仲間は、とても種が多く、数も多いです。世界のほとんどの地域で、最も平凡な哺乳類と言えます。日本も、例外ではありません。
 大きく分類すると、ネズミの仲間は、齧歯目【げっしもく】というグループに入ります。齧歯目には、ニホンリスや、ムササビ、ヤマネなども含まれます。
 日本の野山には、アカネズミ、ヒメネズミ、ハタネズミ、ヤチネズミなどのネズミ類が棲みます。いわゆる「野ネズミ」とは、これらのネズミの総称です。
 伝統的には、これらの「野ネズミ」たちは、齧歯目の中のネズミ科に分類されてきました。ところが、最近、その分類が、見直されています。ネズミ科に入らない「野ネズミ」がいるのでは、といわれるようになりました。
 例えば、ハタネズミを挙げてみましょう。ハタネズミは、日本の「野ネズミ」の一種です。各地で普通に見られます。ただし、北海道と四国には、分布しません。
 ハタネズミは、齧歯目ネズミ科ハタネズミ亜科に属するとされてきました。現在も、そのように書いている図鑑やウェブサイトもあります。けれども、新しい考えでは、ハタネズミは、齧歯目キヌゲネズミ科ハタネズミ亜科に属するとされます。
 日本の「野ネズミ」では、スミスネズミやヤチネズミも、ハタネズミと同じ分類とされます。新しい考えでは、これらの種も、ネズミ科ではなく、キヌゲネズミ科になります。
 キヌゲネズミという名を聞いて、ぴんと来る方もいらっしゃるでしょう。キヌゲネズミとは、ハムスターの日本語名です。ハムスターと呼ばれるのには、複数の種がありますが、どの種も、齧歯目キヌゲネズミ科に属します。
 日本の「野ネズミ」が、すべて、キヌゲネズミ科にされたのではありません。以前と同じく、ネズミ科に分類される種もあります。アカネズミやヒメネズミなどです。
 ハタネズミや、スミスネズミや、ヤチネズミは、同じ「野ネズミ」のアカネズミやヒメネズミと近縁だと思われてきました。それが、最近の研究によれば、同じ齧歯目でも、ハムスターのほうに、より近縁だとわかってきたわけです。

図鑑↓↓↓↓↓には、ハタネズミ、ヤチネズミ、スミスネズミ、アカネズミ、ヒメネズミなど、日本の「野ネズミ」が掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、ネズミの仲間を取り上げています。また、ネズミの仲間と紛らわしい哺乳類も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
「ゴンボネズミ」の正体は?(2010/11/19)
ジネズミは、ネズミじゃない?(2010/10/15)
鳥の巣? いえ、カヤネズミの巣です(2009/10/02)
日本最大のネズミは、ケナガネズミ(2008/11/10)
再発見! オキナワトゲネズミ(2008/03/07)
などです。

2011年9月30日

ナス(茄子)の故郷は、どこ?

ico_weather_hare.gif

 ナスは、日本で平凡な野菜ですね。少なくとも、奈良時代には、日本で栽培されていたことがわかっています。ナス科ナス属に属する植物です。
 身近な野菜なのに、ナスには、謎が多いです。例えば、ナスの原産地がどこなのかは、わかっていません。今のところ、インド原産説が有力です。
 インドでは、紀元四世紀の文献に、ナスが現われるそうです。また、サンスクリット語(古代のインドで使われていた言語)には、ナスを表わす言葉が、三十三もあるといいます。早い時代から、ナスが利用されていた証拠ですね。
 インドに行くと、非常に多くのナスの品種に出会います。この品種の多さも、インド原産説を支える証拠です。「原産地であれば、早くから品種改良が進んで、品種が多くなるだろう」というわけです。
 日本のナスは、濃い紫色をした果実ばかりですね。形は、やや細長い卵型が、大部分です。まれに、丸かったり、キュウリのように細長かったりする品種があります。
 けれども、外国のナスは、もっと変異に富んでいます。形も色も、さまざまです。
 形でいえば、日本のようなナス型以外に、ミニトマトに似た丸型や、30cm以上にもなる細長型や、ひしゃげたトマトのような形もあります。色も、日本のような濃い紫以外に、赤、オレンジ、黄、緑、茶色、白などがあります。縞模様のナスさえ、あります。
 中には、白くて卵型をしているため、卵にそっくりなナスもあります。英語で、ナスを、eggplant(卵の植物)といいますね。英語圏で、最初にナスを見た人は、こんなナスの品種を見たのかも知れません。
 ナスの原種は、どんな植物だったのでしょうか? これについても、わかっていません。
 原種と目される野生種のナスは、数種あります。正確にいえば、「数種あるかも知れない」状態です。野生のナス属の研究そのものが、進んでいないからです。
 野生のナス属は、アフリカの北部から西アジア、インド、東南アジアなどに分布します。ナスの故郷は、インドではなく、アフリカや東南アジアの可能性もあります。

図鑑↓↓↓↓↓には、ナスが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、日本の野菜を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
キャベツとブロッコリーとは、同じ種か?(2011/02/25)
平城京の野菜? ニラ(韮)(2010/04/30)
ニンジン(人参)がいっぱい?(2009/09/04)
昔は主食だった? サトイモ(2008/06/27)
キュウリは、なぜ「胡瓜」と書く?(2007/08/17)
などです。

2011年9月26日

小笠原諸島のトカゲたち

ico_weather_kumori.gif

 今年、二〇一一年に、日本の小笠原諸島が、世界遺産に登録されましたね。小笠原諸島には、素晴らしい自然環境があるからです。今回は、そこの生き物たちから、二種を紹介しましょう。どちらも、日本国内では、珍しい種の爬虫類です。
 小笠原諸島には、トカゲの仲間が、何種か分布します。有名なのは、オガサワラトカゲと、オガサワラヤモリでしょう。この二種は、名が似ていても、実態は違います。
 オガサワラトカゲのほうは、小笠原の固有亜種だとされます。「亜種」という点に、ご注目下さい。オガサワラトカゲは、ボウトンヘビメトカゲという種の亜種だといわれてきました。ボウトンヘビメトカゲは、太平洋の島々に、広く分布する種です。
 ところが、「オガサワラトカゲは、ボウトンヘビメトカゲとは別種だ」という意見が出てきました。だとすれば、オガサワラトカゲは、小笠原の固有種ということになります。
 いっぽう、オガサワラヤモリのほうは、小笠原の固有種でも、固有亜種でもありません。日本国内では、沖縄諸島や大東諸島にも分布します。世界的には、太平洋やインド洋の島々に、広く分布します。中米や南米にまで、分布を広げています。
 オガサワラヤモリの分布が、こんなに広いのには、理由があります。それは、彼ら(彼女ら)の繁殖方法によります。これについては、以前、ここのブログで取り上げました(雌(メス)しかいないトカゲがいる?(2007/03/06))。
 オガサワラヤモリは、特異な繁殖方法を生かして、今なお、分布を広げ続けています。小笠原でも、世界の他の地域でも、絶滅しそうだという話は、聞きません。
 対して、オガサワラトカゲは、絶滅が危ぶまれています。彼らが独立種だとすれば、そもそも、分布域が、とても狭いです。小笠原諸島が、唯一の分布域です。
 世界遺産になったとはいえ、小笠原は、自然の楽園ではありません。近年は、外来種の問題が大きいです。クマネズミや、グリーンアノールなどの外来種が、在来種を脅かしています。外来種が来た島では、オガサワラトカゲの数が、大きく減ったといわれます。
 世界遺産は、登録して終わりではなく、私たちの手で、守り続けなければなりませんね。


図鑑↓↓↓↓↓には、オガサワラトカゲとオガサワラヤモリが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、小笠原諸島の生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
海中のオブジェ? パイプウニ(2007/11/16)
メグロはメジロと仲良し?(2007/11/12)
大洋に生きるオガサワラトカゲ(2007/11/9)
ヤシ? いいえシダの木です。マルハチ(2007/11/02)
雌(メス)しかいないトカゲがいる?(2007/03/06)
などです。

2011年9月23日

一つの種に、二種の花? センボンヤリ

ico_weather_hare.gif

 多くの植物は、花の咲く季節が、決まっていますね。春に咲く花は、毎年、春に咲きます。たまに、季節外れに咲くこともありますが、それは、あくまで少数派ですね。
 ところが、中には、年に複数回、花を咲かせる植物があります。花期が長くて、ずっと咲いているのではありません。連続していない季節に、花を咲かせるのです。
 実例を挙げてみましょう。センボンヤリという種です。キク科に属します。
 センボンヤリは、春と秋とに、花を咲かせます。しかも、春の花と秋の花とでは、姿が違います。花だけ見たら、別種かと思うほどです。
 春のセンボンヤリの花は、タンポポに似ています。「白くて、花びらがまばらなタンポポ」という感じです。実際、センボンヤリには、ムラサキタンポポという別名があります。白い花なのに、なぜ「ムラサキ」かといえば、花びらの裏側が紫だからです。
 秋のセンボンヤリの花には、花びらがありません。加えて、つぼみの姿のままで、開くこともありません。長い茎の先に、茶色い毛が、細長く付いているように見えます。
 この姿を、毛槍【けやり】―昔の武士が使いました―に見立てたのですね。長い茎が並ぶ様子から、センボンヤリ(千本槍)という種名が付きました。
 秋のセンボンヤリの花は、閉鎖花【へいさか】と呼ばれるものです。これは、自家受粉をするための花です。他の花から花粉をもらわず、自分の雄しべの花粉を、自分の雌しべに付けます。これができれば、他の花から、花粉を運んでもらわなくて済みますね。
 閉鎖花があれば、花粉の運び手がいなくても、どんどん繁殖できます。こんなに有利なら、なぜ、センボンヤリは、すべての花を、閉鎖花にしなかったのでしょうか?
 それは、自家受粉の欠点をカバーするためだと考えられます。自家受粉だけしていると、自分と同じ遺伝子を持つ子孫しか、できません。いろいろな遺伝子を持つ子孫がいれば、他が全滅しても、誰かが、生き残る確率が高くなります。
 ひょうきんな名に似合わず、センボンヤリは、しっかり者のようですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、センボンヤリが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、キク科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
菊展の隠れた主役? イソギク(2010/11/15)
コウヤボウキは、高野山の帚【ほうき】?(2010/10/01)
ふきのとうは、食用花?(2010/02/12)
新種が続々、アザミ(薊)(2009/09/11)
田で平たくなるから、タビラコ(田平子)?(2009/01/16)
などです。

2011年9月16日

神話に彩られたヒエ(稗)の起源

ico_weather_hare.gif

 日本人は、お米を主食にしていますね。けれども、昔から、そうだったわけではありません。現在のように、日本のどこでも、いつでも、イネが順調に育つとは、限らなかったからです。天候不順などのため、イネが育たないことも、よくありました。
 イネだけに頼って生活していたら、イネが全滅した時点で、食べ物がなくなってしまいますよね。それは、避けなければなりません。このため、昔の人は、イネ以外の穀物も、主食にできるように、育てていました。
 ヒエや、アワや、キビという穀物の名を、聞いたことがありませんか? これら三つは、どれも、イネと同じイネ科に属する植物です。イネと同じくらい昔から、日本で栽培されてきました。現在では、主食にされませんが、昔は、主食にされることもありました。
 中でも、ヒエは、北海道や東北地方で、よく栽培されました。寒さに強い植物だからです。昔は、寒い地方でイネを育てるのは、大変なことでした。
 昔の北海道では、先住民のアイヌ民族が、ヒエを栽培し、主食にしていました。日本人がイネを尊ぶように、アイヌ民族は、ヒエを尊びました。
 アイヌ民族の神話には、オキクルミという英雄が、天界からヒエを持ち帰ったとあります。人々のために、主食になる食べ物を、隠し持ってきたと伝わります。
 日本の神話にも、ヒエが登場します。『日本書紀』の、保食神【うけもちのかみ】の段です。保食神の遺体の眼から、ヒエが生えてきたといいます。ヒエ以外に、イネやアワやムギも、保食神の遺体から生えました(『古事記』には、少し違う神話が載ります)。
 保食神から生まれたヒエは、イネやアワやムギと一緒に、人々の食べ物として、天照大神【あまてらすおおみかみ】から下されました。この神話からしても、古代日本では、ヒエが、重要な食べ物だったと推測できます。
 ヒエの原種は、イヌビエだといわれます。イヌビエは、ユーラシア大陸に、広く分布する植物です。日本でも、普通の雑草です。分布が広すぎて、原産地がどこなのか、わかっていません。神話と違い、科学では、ヒエの起源は、まだ解明の途上です。

図鑑↓↓↓↓↓には、ヒエの原種のイヌビエが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、神話に登場する植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
平城京の野菜? ニラ(韮)(2010/04/30)
木花開耶姫【このはなさくやひめ】は、ウメの女神だった?(2010/02/19)
謎の「カブラ・ライン」とは?(2007/10/29)
悠仁【ひさひと】さまのお印はコウヤマキ(高野槇)(2006/09/14)
などです。

2011年9月12日

エミール・ガレの愛したトンボとは?

ico_weather_hare.gif

 トンボは、昔から、日本人に愛される昆虫ですね。古事記や万葉集にも、「あきづ」の名で、トンボが登場します。古代に、「あきづは」といえば、トンボの翅【はね】のように、透き通って美しいものの譬えでした。
 これが、ヨーロッパへ行くと、事情が違います。トンボの英語名は、dragonflyですね。直訳すれば、「ドラゴンの飛ぶ虫」です。この名に、トンボの印象の悪さが表われています。
 ヨーロッパのドラゴンは、東洋の龍とは違いますね。完全な悪役です。その名が付けられたのですから、良い印象のはずがありません。
 おそらく、ヨーロッパの人々は、トンボの肉食性を見て、ドラゴンの名を付けたのでしょう。他の昆虫を襲う様子が、ドラゴンのように、恐ろしく見えたのでしょうか。
 けれども、すべてのヨーロッパ人が、トンボを嫌うわけではありません。ヨーロッパにおいて、トンボの印象を変えるのに、大きく貢献したと思われる人がいます。
 その人は、フランスのエミール・ガレです。ガラス工芸の分野で、著名ですね。十九世紀後半から、二十世紀の初頭にかけて活躍しました。
 彼の作品には、トンボがよく登場します。例えば、そのものずばり、蜻蛉【とんぼ】と名の付いた作品があります。脚付杯【あしつきはい】《蜻蛉》です。ガラスの杯の外側に、大きなトンボが貼りついています。
 この杯には、「うちふるえる蜻蛉【とんぼ】を愛する者これを作る」(原文は、フランス語)という銘があるそうです。
 ガレのトンボ好みは、日本の美術に影響されたといわれます。ヨーロッパで印象が良くないトンボを、あえて取り入れた点に、日本に対する造詣の深さを感じます。
 ガレが好んだのは、どんな種のトンボでしょうか? これを知るのは、難しいです。美術品に表わされるトンボは、生物学的に正確だとは限らないからです。
 それでも、推測してみれば......「うちふるえる蜻蛉」ですから、ギンヤンマのような、力強い印象はありません。幽玄なカワトンボ科の種でしょうか。

図鑑↓↓↓↓↓には、が掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、トンボを取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
田んぼに飛ぶのは、早苗【さなえ】とんぼ?(2009/05/25)
「かげろう」の正体は、イトトンボ?(2008/10/03)
越年【おつねん】トンボは、本当に年を越す?(2007/12/28)
とんぼの眼鏡は水色めがね? シオカラトンボ(2007/05/04)
精霊【しょうりょう】トンボとはどんなトンボ?(2006/08/12)
などです。

2011年9月 9日

アキノタムラソウは、タムラソウと近縁か?

ico_weather_kumori.gif / ico_weather_hare.gif

 植物の中には、種名に「秋の~」と付くものがあります。アキノキリンソウ(秋の麒麟草)、アキノタムラソウ(秋の田村草)、アキノノゲシ(秋の野芥子)などです。
 これらの種には、それぞれ、似た種名の別種があります。アキノキリンソウに対しては、キリンソウ(麒麟草)が、アキノタムラソウに対しては、タムラソウ(田村草)が、アキノノゲシに対しては、ノゲシ(野芥子)があります。
 既存の種名に、「秋の」を付けたのですから、これらは、当然、秋に見られる植物だと思いますよね。「姿も似る」と思うのが、普通でしょう。ところが、そうとは限りません。
 例えば、アキノキリンソウと、キリンソウとを、比べてみましょう。
 アキノキリンソウは、名のとおり、秋に花を咲かせます。キリンソウは、初夏から夏に、花を咲かせます。この点はいいのですが、アキノキリンソウと、キリンソウとは、姿が似ていません。黄色い花が咲く点が、共通しているだけです。
 しかも、アキノキリンソウと、キリンソウとは、近縁でもありません。アキノキリンソウは、キク科に属します。キリンソウは、ベンケイソウ科です。
 アキノタムラソウと、タムラソウとの場合は、もっと、違いがはなはだしいです。
 アキノタムラソウは、初夏から秋が花期です。タムラソウは、秋が花期です。「秋の」が付かないタムラソウのほうが、秋に咲く、不思議なことになっています。
 アキノタムラソウと、タムラソウとは、外見も、まったく似ていません。アキノタムラソウは、細長い柄に、オドリコソウに似た花が、ぽつぽつと咲きます。タムラソウのほうは、アザミにそっくりな花が咲きます。「棘のないアザミ」という表現が、ぴったりです。
 さらに、分類も違います。アキノタムラソウは、シソ科です。タムラソウは、キク科です。これほど違う種に、なぜ、共通する種名が付いたのかは、わかっていません。
 アキノノゲシと、ノゲシとの場合は、これまでの例とは、違います。この二種は、同じキク科に属します。姿も似ています。花期は、アキノノゲシのほうが、秋です。ノゲシは、春から秋にかけてです。このくらい似ていれば、種名が似るのも、納得できますね。
図鑑↓↓↓↓↓には、アキノキリンソウ、キリンソウ、アキノタムラソウ、タムラソウ、アキノノゲシ、ノゲシが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、紛らわしい種名を持つ植物を取り上げています。また、今回取り上げたキリンソウについても、載っています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
キリンソウの名の由来は?(2011/07/01)
「ウコン」に御注意(2011/06/17)
芝【しば】と柴【しば】との違いは?(2011/05/20)
ヤマブキ(山吹)? いえ、違います(2011/04/29)
シャガは、「日本のアイリス」か?(2011/04/22)
などです。

2011年9月 5日

チドリは、病気を治す鳥?

ico_weather_hare.gif / ico_weather_kumori.gif / ico_weather_ame.gif

 「ところ変われば、品変わる」と言いますね。生き物にも、これは当てはまります。同じ分類グループに属するものでも、地域により、印象が違うことが、よくあります。
 例を挙げてみましょう。チドリ(千鳥)という鳥がいますね。生物学的には、チドリ目【もく】チドリ科に属する種を、チドリと総称します。日本には、イカルチドリ、コチドリ、シロチドリ、メダイチドリなどの種が分布します。どの種も、水辺に棲みます。
 和歌がお好きな方なら、チドリは、お馴染みの鳥でしょう。多くの和歌に、「千鳥」が詠まれていますね。昔の日本人は、水辺の風情を表わす鳥として、チドリを好みました。
 ただし、和歌の「千鳥」は、現在のチドリだけを指すものではありません。水辺に群れ集う鳥一般―シギなども含みます―を指して、「千鳥」としたようです。
 日本の紋様(文様)にも、「千鳥」は、よく登場しますね。「波に千鳥」、「千鳥格子【ちどりごうし】」、「群千鳥【むれちどり】」などの紋様があります。紋様の場合も、和歌と同じく、現在のチドリ以外の鳥も含みます。
 いずれにせよ、「千鳥」は、日本人には、親しみやすく、好ましい鳥とされました。これが、ヨーロッパへ行くと、おもむきが変わってきます。
 ラテン語の学名では、チドリ科チドリ属のことを、Charadrius【カラドリウス】といいます。この名は、カラドリウスCaradriusという、伝説の鳥の名から取られました。
 ヨーロッパの伝説によれば、カラドリウスは、病人の予後を知る鳥でした。この鳥を病人のそばに置くと、治らない病気の場合は、そっぽを向きます。治る病気であれば、くちばしを開いて、病気を呑みこみます(!) おかげで、病人は快復します。
 むろん、こんな超能力を持つ鳥は、実在しません。伝説だけの存在です。どういうわけか、この伝説のカラドリウスと、実在するチドリとが、混同されたのですね。実在するチドリ属の鳥に、Charadriusという学名が付けられました。
 この学名に引きずられてか、ヨーロッパでは、チドリは、神秘的な鳥という印象があるようです。日本での親しみやすさとは、ずいぶん違いますね。

図鑑↓↓↓↓↓には、イカルチドリ、コチドリ、シロチドリ、メダイチドリが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、チドリの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
シロチドリの画像(2010/11/10)
メダイチドリの画像(2010/09/29)
長距離飛行のチャンピオン? シギとチドリ(2010/04/05)
フタオビチドリの画像(2008/06/03)
チドリはなぜ千鳥足で歩く?(2006/07/24)
などです。

2011年9月 2日

スイカの故郷は、どこ?

ico_weather_hare.gif / ico_weather_kumori.gif / ico_weather_ame.gif

 夏に大活躍する果物が、スイカですね。ちょっと前まで、たらいや井戸水でスイカを冷やす光景が、日本のどこでも見られました。日本の夏とは、切り離せない果物です。
 けれども、スイカの原産地は、日本ではありません。どこだと思いますか? 「漢字で西瓜【すいか】と書くからには、西のほうから伝わったのでは?」と思いますよね。
 確かに、スイカは、西から伝わりました。スイカの原産地は、なんと、アフリカです。
 遠いアフリカから日本へ、どうやって来たのでしょう? 二つの説があります。
 一つは、「中国を経由して伝わった」説です。この説によれば、江戸時代前期の十七世紀、隠元【いんげん】というお坊さんが、中国から日本へ、スイカの種子を持って帰ったといいます。中国へは、それ以前に、陸伝いにスイカが入っていたようです。
 隠元という名に、ぴんと来た方がいるかも知れませんね。そう、このお坊さんは、インゲン豆の語源になった人です。スイカの種子と一緒に、インゲン豆の種子も持ち帰ったといわれます(この時に持ち帰られたのは、別の種の豆だという説もあります)。
 スイカの来日経路には、もう一つの説があります。こちらの説によれば、安土桃山時代に、ポルトガル人が、日本に持ち込んだといいます。
 当時のポルトガル人は、世界をまたにかけて、大貿易をしていました。アフリカにも、インドにも、東南アジアにも、日本にも、貿易基地を持っていました。
 「ポルトガル人持ち込み」説が正しいなら、ひょっとすると、スイカは、ポルトガル人の手で、直接、アフリカから来たのかも知れませんね。
 スイカの故郷が、アフリカのどこなのかは、はっきりしていません。暑くて、乾燥した地方であるのは、間違いなさそうです。「人類は、スイカの水分を求めて、栽培を始めた」と考えられるからです。アフリカのカラハリ砂漠の風習が、それをうかがわせます。
 カラハリ砂漠の人々には、伝統的に、スイカの果肉を砕いて「飲む」風習があります。水が入手しにくい砂漠では、それが、水分を取る手軽な方法なのですね。カラハリ砂漠には、野生のスイカもあることから、ここがスイカの故郷だという説もあります。

図鑑↓↓↓↓↓には、スイカが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、さまざまな果物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ミカン? いえ、カラタチです(2009/02/13)
ザクロが人肉の味というのは、本当?(2007/09/28)
チンパンジーの贈り物はパパイア?(2007/09/13)
花が咲かないのに実がなる? イチジク(2006/10/06)
お釈迦さまも食べた? レモン(2006/08/21)
などです。

2011年8月29日

セミは、カメムシの仲間か?

ico_weather_hare.gif

 セミの仲間は、都市部でも、よく見られますね。姿より、鳴き声のほうが目立ちます。日本に住んでいれば、セミの声を聞いたことがない人は、いないでしょう。
 大声のために、セミの仲間は、古くから知られた昆虫でした。「研究が進んで、何でも、わかっているだろう」と思いますよね? ところが、そうとばかりは言えません。
 例えば、セミの分類は、二十一世紀に入る頃から、変わっています。
 広い意味では、セミは、カメムシの仲間です。昆虫綱【こんちゅうこう】の中の、カメムシ目【もく】に属します。このカメムシ目の分類が、今、議論されています。
 以前のカメムシ目は、カメムシ亜目【あもく】と、ヨコバイ亜目とに二分されていました。セミの仲間(セミ科の昆虫)は、ヨコバイ亜目のほうに入れられていました。
 現在では、この分類法は、ほとんど使われません。ヨコバイ亜目というグループは、なくなりました。カメムシ亜目のほうは、残っている場合もあります。学説により、違うのですね。カメムシ亜目ではなく、カメムシ下目【かもく】とされることもあります。
 カメムシ目の中身を、どのように分類するかは、確定していません。現段階では、セミ科の昆虫は、カメムシ目頸吻【けいふん】亜目セミ上科【じょうか】に属する、とされることが多いです。セミ上科セミ科の昆虫を、一般的に、セミと呼びます。
 「亜目」・「下目」・「上科」などは、聞き慣れない言葉でしょう。これらについては、以前の記事「亜目や亜科の『亜』とは、なに?」(2009/8/28)を参照して下さい。
 このように、生き物の分類が変わることは、よくあります。特に、近年は多いです。それは、分子生物学の発達によるところが大きいです。
 分子生物学により、遺伝子を、直接、調べられるようになりました。これによって、外見が似ていなくても、近縁なもの同士を割り出せるようになりました。
 しかし、分子生物学は、万能ではありません。例えば、セミの幼虫の生活を知りたいなら、実際に土を掘って、土中の幼虫を見るしかありません。文字どおり、泥臭い仕事です。このような泥臭い仕事こそが、生物学の基礎を支えています。

図鑑↓↓↓↓↓には、セミ科の昆虫が八種掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、セミの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
孵化【ふか】と羽化【うか】とは、どう違う?(2008/08/29)
空蝉【うつせみ】とは、どんなセミ?(2008/06/30)
ニイニイゼミ 抜け殻3点観察(2007/07/29)
アブラゼミの羽化直後の観察(2007/07/18)
セミ(蝉)の幼虫は何年生きる?(2006/07/03)
などです。

2011年8月26日

ヒマワリは、日にしたがって回るか?

ico_weather_hare.gif

 ヒマワリは、いかにも夏の花ですね。草ですが、低木かと思うほど大きくなります。その上に、黄色い大きな花が咲く様子は、太陽が花に化身したようです。
 多くの国で、ヒマワリは、太陽に関連した名で呼ばれます。日本語名のヒマワリ(向日葵)も、そうですね。ラテン語の学名Helianthusも、「太陽の花」の意味です。
 日本語名の「ヒマワリ」は、「日回り」に由来するといわれます。この花は、太陽の動きにしたがって、向きを変える、というのです。本当でしょうか?
 全面的に本当だとは、言えません。この花が、太陽の動きにしたがうのは、つぼみの間だけです。花が開く頃には、ほとんど動かなくなります。
 にもかかわらず、多くの国で、この花は、「太陽に従う」と信じられてきました。それにちなんだ神話や伝説もあります。有名なのは、ギリシャ神話でしょう。
 ギリシャ神話には、「太陽の花」にまつわる話があります。クリュティエーという名の妖精が、「太陽の花」に身を変えました。彼女は、太陽神アポロンに恋していました。そのため、愛しい神の姿を追って、太陽のほうを向く、というわけです。
 この「太陽の花」は、ヒマワリだとされることが多いです。けれども、それは、明らかに間違いです。なぜなら、ギリシャ神話が生まれた頃、ヨーロッパには、ヒマワリがなかったからです。ヒマワリの原産地は、北米大陸です。
 ヨーロッパにヒマワリが入ったのは、十六世紀のことです。ヨーロッパ人が、アメリカ大陸に到達した後です。日本に来たのは、十七世紀といわれます。
 では、ギリシャ神話の「太陽の花」は、何だったのでしょうか? それは、キンセンカ(金盞花)ではないかとされています。
 キンセンカには、夏の印象は、あまりありませんね。しかし、その黄金色の花は、太陽を思わせます。原産地が、ギリシャのある南ヨーロッパなのも、強力な証拠です。
 とはいえ、ヒマワリが「太陽の花」だという印象は、人類共通のようです。南米のペルーでも、ヒマワリは、「太陽の花」として、信仰の対象でした。

図鑑↓↓↓↓↓には、ヒマワリが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、神話や伝説に関わる生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
最小の座を争う、ミソサザイとキクイタダキ(2010/07/19)
海の毛虫も蝶(チョウ)になる? ウミケムシ(2010/03/15)
木花開耶姫【このはなさくやひめ】は、ウメの女神だった?(2010/02/19)
そっくりさんがいっぱい、スジエビ(2010/02/01)
チョウ(蝶)の学名は、美女だらけ?(2010/01/11)
などです。

2011年8月22日

オコゼ? いえ、オニカサゴです

ico_weather_ame.gif

 オコゼと呼ばれる魚を、御存知ですか? 海の岩礁にいる魚です。白身で、美味しい魚として知られます。美味しさに反して、外見が醜いことでも、有名です。
 じつは、オコゼと呼ばれる魚には、複数の種が含まれます。正式な種名(標準和名)を「オコゼ」という種は、いません。たいてい、「○○オコゼ」という種名が付きます。オニオコゼ、ハオコゼ、ミシマオコゼなどです。
 中には、「○○オコゼ」という標準和名ではないのに、「オコゼ」と呼ばれる魚もいます。それらの多くは、「○○カサゴ」という標準和名が付きます。イズカサゴ、エボシカサゴ、オニカサゴなどです。なぜ、こんなことになっているのでしょうか?
 昔の日本人は、「オコゼ」と「カサゴ」とを、あまり区別しなかったのですね。岩礁地帯に棲んで、ごつごつした外見の魚は、みな「オコゼ」か「カサゴ」と呼んだようです。中で、特に醜いものを、「オコゼ」と呼ぶことが多かったと見られます。
 現在の分類学では、「○○オコゼ」と「○○カサゴ」とは、近縁とは限りません。例えば、ミシマオコゼは、スズキ目【もく】ミシマオコゼ科に属します。ハオコゼは、カサゴ目【もく】ハオコゼ科に属します(分類には、異説があります)。この二種は、遠縁ですね。
 ややこしいことに、「○○オコゼ」と、「○○カサゴ」には、遠縁なものと、近縁なものとが混じっています。例えば、イズカサゴとオニカサゴとは、同じカサゴ目フサカサゴ科に属します。科のレベルまで同じなので、これは、近縁な種同士といえます。
 「○○カサゴ」の中でも、オニカサゴは、鬼という種名にふさわしいです。外見が恐ろしげなのを、鬼にたとえたのですね。もう一つ、オニカサゴには、毒があります。毒を持つのは、背びれの棘【とげ】です。この点も、鬼にふさわしく思われたのでしょう。
 オコゼと呼ばれる種の多くは、オニカサゴのように、背びれの棘に毒を持ちます。ヒトに対しても、強烈に作用する毒が多いです。しかも、彼らは、海中の岩にそっくりです。ダイバーの方などは、うっかり手を置いたりしないよう、御注意下さい。
 そんな毒魚でも、食べれば美味しいです。鬼より怖いのは、ヒトの食欲ですね(笑)


図鑑↓↓↓↓↓には、オニカサゴ、カジカなど、オコゼと呼ばれることがある魚が掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、オコゼと呼ばれることがある魚を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
カジカ(鰍)の迷宮(2009/12/21)※標準和名カジカという魚も、オコゼと呼ばれることがあります。
カサゴ(笠子)は、似たもの同士の一族(2007/11/26)
秋に美味しい鰍【かじか】(2006/11/13)
などです。

2011年8月19日

盆花【ぼんばな】とは、どんな花?

ico_weather_ame.gif

 月遅れお盆の時期ですね。日本では、古来、「御先祖さまの霊が、この世に帰ってくる時期」といわれます。この時期に、お墓参りをしたり、仏壇を整えたりしますね。
 お墓や仏壇に供える花を、盆花、精霊花【しょうりょうばな】、仏さん花【ほとけさんばな】などと呼ぶことがあります。ある特定の種の花を、こう呼ぶこともあります。
 特定の種を、盆花などと呼ぶ場合は、ちょうど、お盆の頃に花が咲く種を指すことが多いです。お墓や仏壇に供えるのに、ちょうどいいからでしょう。
 盆花と呼ばれる植物は、たくさんあります。私が調べた範囲でも、三十種以上はあります。中で、有名なのは、ミソハギという種でしょう。
 ミソハギは、ミソハギ科ミソハギ属に属する一種です。ハギと付いても、ハギの仲間(マメ科)ではありません。夏に、赤紫色の花を咲かせます。北海道から九州に分布します。日本の多くの地方で、お盆に供える花として使われます。
 ミソハギには、よく似た近縁種があります。エゾミソハギという種です。ミソハギと同じく、ミソハギ科ミソハギ属に属します。花期も、分布域も、ミソハギと同じです。外見も、そっくりです。エゾミソハギも、盆花と呼ばれることがあります。
 キキョウ、オミナエシ、カワラナデシコ、フジバカマなど、秋の七草の仲間が、盆花と呼ばれることもあります。この時期から、花が咲き始めるからでしょう。昔から、日本人に、お盆に供える花として、使われてきたのだと思います。
 日本に自生する植物ばかりが、盆花と呼ばれるわけではありません。外来種にも、そう呼ばれるものがあります。センニチコウや、ヒャクニチソウなどです。
 外来種でも、自生種でも、夏に長く咲き続ける花が、よく盆花と呼ばれますね。夏の日射しに、すぐにしおれるようでは、お盆のお供えにできないからでしょう。逆に言えば、外来種でも、夏に強い花は、重宝がられました。
 他にも、オトギリソウ、サルスベリ、ヤブカンゾウなど、多くの植物が、盆花とされます。どれを盆花とするかは、それぞれの地方によるのでしょう。

図鑑↓↓↓↓↓には、ミソハギをはじめ、キキョウ、ヒャクニチソウ、オトギリソウ、ヤブカンゾウなど、盆花と呼ばれる植物が掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事で、盆花と呼ばれることがある植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
万葉美人の象徴? オミナエシ(2010/09/24)
サルスベリの木の肌は、なぜ、すべすべ?(2009/07/31)
常夏【とこなつ】の花とは、どんな花?(2008/08/20)
古代の「朝顔」は、キキョウ(桔梗)?(2008/08/08)
毒にも薬にもなるオトギリソウ(2006/06/02)
などです。

2011年8月15日

鬼も美女もいる? オニグモの仲間たち

ico_weather_hare.gif

 生き物には、「オニ○○」という種名のものが、よくいますね。大型の種に、よく付けられます。今回は、その一種を取り上げましょう。オニグモです。クモの一種です。
 オニグモは、確かに、日本産のクモの中では、大きいほうです。けれども、最大種ではありません。日本最大のクモといわれるのは、オオジョロウグモという種です。
 オニグモは、日本全国で、普通に見られるクモです。家の軒下などにも多いです。いかにもクモらしい、大きな円形の網を張ります。網を張るのは、夜だけです。夜行性なのですね。毎日、夕方に張った網を、朝には片づけてしまいます。
 人家の近くで、夜、円形の網を張っている、灰色っぽい大きなクモがいたら、それは、オニグモの可能性が高いです。必ずそうであるとは限りません。
 ややこしいのは、「オニグモ」と呼ばれるクモが、正式な種名オニグモでない場合があることです。方言で、他種のクモを「オニグモ」と呼ぶことがあります。逆に、正式な種名オニグモを、方言で、別の名で呼ぶこともあります。ますます、ややこしいですね。
 正式な種名オニグモは、コガネグモ科オニグモ属に属します。このグループに属する種は、ほとんどみな、「○○オニグモ」という種名が付きます。
 中に、アカオニグモという種と、アオオニグモという種がいます。赤鬼と青鬼とが、揃っているところが、面白いですね。これら二種の種名は、体色から付いています。アカオニグモは、腹部が赤く、アオオニグモは、腹部が薄青いです。
 ただし、アカオニグモの雄(オス)は、腹部が赤くありません。黄色っぽいです。大きさも、雌(メス)よりずっと小さく、別種のように見えます。
 じつは、クモの仲間は、みなそうです。雌のほうが、雄よりずっと大きく、種の特徴がわかりやすいです。例えば、アオオニグモの場合も、雄は、雌よりずっと小さいです。腹部も目立たず、青いクモというよりは、緑色のクモに見えます。
 オニグモ属には、ビジョオニグモという種もいます。「鬼」に「美女」とは、思いきった種名ですね。クモ好きの方に言わせると、この種の雌は、「美女」揃いなのだそうです。


図鑑↓↓↓↓↓には、正式な種名オニグモが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、クモの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
クモの中の目利き? ハエトリグモ(2010/10/29)
人面グモ? いえ、ハナグモです(2009/04/10)
女武者の闘い? コガネグモのクモ合戦(2007/06/04)
ジョロウグモの理【ことわり】(2006/10/19)
人家の頼もしい用心棒、アシダカグモ(2006/08/25)
などです。

2011年8月12日

学名も和名も混乱中、チョウセンアサガオ

ico_weather_hare.gif

 生き物の名前には、地名が付くものが、よくあります。原産地の地名が付いているなら、わかりやすくて、いいですね。ところが、実際には、そうとは限りません。
 例として、チョウセンアサガオ(朝鮮朝顔)を挙げてみましょう。これは、夏に、白い花を咲かせる植物です。もともと、日本には自生しませんでした。江戸時代に、薬用植物として入ってきました。現在の日本では、野生化した個体も、見られます。
 チョウセンアサガオという種名でも、この種は、朝鮮半島が原産地ではありません。インドあたりが原産だとされます。種名に「朝鮮」と付いたのは、江戸時代の日本にとっては、朝鮮半島が、外国を象徴したからでしょう。「外国の植物」の意味合いでした。
 日本は、江戸時代に、鎖国していましたね。その中にあって、李氏【りし】朝鮮(当時の朝鮮半島にあった国)は、日本と外交関係を持つ、数少ない国でした。
 チョウセンアサガオの種名については、また別に、紛らわしいことがあります。種名に「アサガオ」と付いても、アサガオの仲間ではありません。アサガオは、ヒルガオ科に属しますが、チョウセンアサガオは、ナス科に属します。
 チョウセンアサガオには、いくつもの近縁種があります。その一種に、ケチョウセンアサガオ(毛朝鮮朝顔)という種があります。この種の分類が、混乱しています。
 そもそも、ケチョウセンアサガオは、正式な日本語名(標準和名)が、定まっていません。複数の日本語名がある状態です。ケチョウセンアサガオ以外に、アメリカチョウセンアサガオ、ツノミチョウセンアサガオという日本語名があります。
 「アメリカ」チョウセンアサガオなんて、矛盾した種名ですね。チョウセンアサガオの仲間で、北米が原産であることから、この名が付きました。
 ケチョウセンアサガオと、アメリカチョウセンアサガオとは、同種だという説と、違う種だという説と、両方あります。それにともない、ラテン語の学名も、複数あります。どれが正しい学名なのかも、定まっていないようです。
 チョウセンアサガオの仲間について、調べる場合は、種名や分類に御注意下さい。

図鑑↓↓↓↓↓には、ケチョウセンアサガオが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、混乱しやすい種名を持つ植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ウメじゃない梅がある?(2011/02/18)
雪割草【ゆきわりそう】と、ユキノシタは、違う? 同じ?(2011/02/04)
楓【かえで】? いえ、楓【ふう】の木です(2010/11/29)
桂【けい】とは、どんな植物?(2010/11/22)
忘れ草【わすれぐさ】とは、どんな植物?(2010/08/25)
などです。

2011年8月10日

コムラサキ

ico_weather_hare.gif

コムラサキ 画像
和名:コムラサキ
学名:Callicarpa dichotoma
>110810_1.jpg
>110810_2.jpg

※画像をクリックすると大きな画像が見られます。

東京 港区【2011.08.09】

2011年8月 8日

さえずりは、真似【まね】に始まる? 鳴く鳥たち

ico_weather_hare.gif

 暑いですね。だからといって、空調の効いた室内にこもるのは、もったいないです。高原や森林へ出かけましょう。天然の涼しい風が、心身をいやしてくれます。
 高原や森林では、鳥のさえずりが聞こえますね。それらの鳥の声も、人をいやしてくれます。中には、複雑な節回しで鳴く鳥もいます。まさに「鳥の歌」と言えます。
 そのような「歌」を歌う鳥に、クロツグミがいます。名のとおり、ツグミ科の一種です(分類には、異説もあります)。ほぼ日本全国で、夏鳥として見られます。雄の背が黒いのが、特徴です。雌の背は、褐色です。雌雄ともに、腹部に黒い斑点があります。
 多くの鳥では、さえずりの節回しは、決まっています。ところが、クロツグミは、そうではありません。地域や、個体によって違います。ウグイスの「ほーほけきょ」や、カッコウの「かっこう」のように、わかりやすい声ではありません。
 なぜ、クロツグミの鳴き声は、複雑で、変異が多いのでしょうか? これは、「クロツグミが、他の鳥の声を真似るからではないか」と考えられています。どうやら、個々のクロツグミは、周囲の鳥のさえずりを取り入れて、自分独自の節回しを持つようです。
 そのような習性を持つ鳥は、他にも、日本にいます。例えば、キビタキです。ヒタキ科に属する一種です。クロツグミと同じく、ほぼ日本全国で、夏鳥として見られます。
 キビタキの雄も、複雑な節回しでさえずります。鳴き方には、やはり変異が多く、とても同一種が鳴いているとは思えないこともあります。キビタキも、周囲の鳥の鳴き声を真似て、自分のさえずりに変異を付けているようです。
 キビタキやクロツグミは、なぜ、こんなことをするのでしょうか? はっきりとは、わかっていません。けれども、一つの仮説があります。
 それは、「より複雑な鳴き方をした雄のほうが、雌にモテる」というものです。冗談みたいですね。でも、本当にこういう考えがあります。複雑な「歌」を歌うのは、難しいことです。より難しいことができる雄のほうを、雌が評価する、ということらしいです。
 鳥でも人でも、難しいことに挑戦する姿は、格好よく見えるのかも知れません(笑)

図鑑↓↓↓↓↓には、クロツグミ、キビタキが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、鳥のさえずりについて取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
経読み鳥【きょうよみどり】とは、どんな鳥?(2011/05/09)
オオルリは瑠璃色【るりいろ】じゃない?(2007/08/03)
鵺【ぬえ】の正体はトラツグミ(2006/08/04)
田植えを促【うなが】す? ホトトギス(2006/05/03)
モズはなぜ秋にさえずる?(2005/09/19)
などです。

2011年8月 5日

ユリの仲間は、チョウと仲良し?

ico_weather_kumori.gif / ico_weather_hare.gif

 ユリの仲間は、日本の夏を代表する花と言えるでしょう。日本には、多くのユリの種が、自生しています。以前、ブログで取り上げたとおりです(聖母マリアと白百合【しらゆり】の関係(2006/5/18))。栽培植物としても、ユリは、人気がありますね。
 ユリの仲間は、どれもみな、似た形の花を咲かせます。でも、種によって、少しずつ形が違います。上向きに咲くスカシユリ、横向きに咲くヤマユリやテッポウユリ、下向きに咲くオニユリやカノコユリなどがあります。
 花屋に勤めたことのある方や、園芸をやる方や、華道をやる方などは、ユリの花を扱う時、気づいたことがありませんか? ユリの花粉は、とてもくっつきやすいですよね。服などに付いてしまうと、なかなか取れません。これは、なぜでしょうか?
 この花粉が、ユリの花の最大の特徴かも知れません。花において、主要な目的を果たすものだからです。昆虫の体に付いて、運んでもらいやすいようになっているのです。
 ユリの花に来る昆虫のうち、主なものは、チョウ(蝶)の仲間です。チョウは、体が鱗粉【りんぷん】に覆われていますね。さらさらした花粉では、鱗粉にはじかれて、くっつくことができません。このために、ねばねばした花粉になっています。
 ユリの仲間では、雄しべと雌しべとが、長く伸びている花が多いですね。ヤマユリやカノコユリなどが、特に目立ちます。これにも、意味があります。
 チョウの仲間は、「花の奥にもぐり込む」ことができません。翅【はね】が大きいからです。チョウは、花の表面に軽く止まって、蜜を吸います。そのような状態のチョウに、花粉を付けたり、付いた花粉を受け取ったりするには、どうしたらいいでしょうか?
 ユリの花は、「雄しべと雌しべとを長くする」ことで、問題を解決しました。長い雄しべに、粘る花粉があれば、離れたところのチョウの翅にも、花粉が付けられます。長い雄しべと雌しべとは、花にとまるチョウの足場にもなります。
 よくできた花ですね。けれども、ヒトにとっては、粘る花粉は好ましくないこともあります。花屋で売られるユリは、たいてい、花粉のある部分が取り除かれています。

図鑑↓↓↓↓↓には、ヤマユリ、テッポウユリ、スカシユリ、ウバユリなどが掲載されています。ban_zukan.net.jpgインターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、ユリに近縁な植物や、ユリに似た植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
忘れ草【わすれぐさ】とは、どんな植物?(2010/08/25)
テッポウユリ(2010/05/19)【画像】
テッポウユリ(2009/05/27)【画像】
聖母マリアと白百合【しらゆり】の関係(2006/05/18)
などです。

2011年8月 1日

海中の植物園? サンゴの仲間たち

ico_weather_kumori.gif

 海の生き物には、「ウミ○○」といった種名が付くものが、多いですね。「○○」には、陸の生き物の名が入ります。私たちが、陸の生き物のほうを、見慣れているためでしょう。中には、動物なのに、植物の名が付くものもあります。例えば、サンゴの仲間です。
 サンゴの仲間は、脚がありません。まるで陸上の植物のように、移動しないで暮らします。そのうえ、ひらひらした触手が、葉や花びらを連想させます。
 けれども、サンゴは、植物ではありません。動物です。刺胞動物門【しほうどうぶつもん】花虫綱【はなむしこう、または、かちゅうこう】というグループに属します。
 今回は、植物の名が付いたサンゴの仲間を、紹介しましょう。
 ハナヤサイサンゴというサンゴの一種があります。ハナヤサイとは、カリフラワーの日本語名です。群体の様子が、カリフラワーに似るために、こんな名になりました。
 ハナヤサイサンゴは、花虫綱の中の、イシサンゴ目【もく】ハナヤサイサンゴ科に属します。同じ科には、ショウガサンゴ(生姜サンゴ)という種名のものもいます。
 イシサンゴ目といえば、熱帯の海のサンゴ礁を形成する、主なグループです。このグループでは、ミドリイシ科が有名ですね。スギノキミドリイシ、サボテンミドリイシなどの種があります。やはり、群体の様子から、種名が付いています。
 他に、イシサンゴ目には、ウミバラ科というグループもあります。スジウミバラ、レースウミバラなどの種があります。どんな美しいサンゴだろうと思いますよね。でも、私が見た限りでは、「海の薔薇」という名は、ちょっと大げさだと思います(笑)
 ウミバラ科には、キッカサンゴという種もあります。菊花サンゴという意味の種名です。こちらも、菊の花に見えるかと言われれば、難しいかも知れません。
 イシサンゴ目のビワガライシ科には、アザミサンゴという種があります。ふさふさと触手を伸ばす様子が、アザミの花に見えたようです。
 前記の種は、どれも、熱帯のサンゴ礁で見られるものです。種名は、やや牽強付会でも、健康なサンゴは美しいです。熱帯の海へ行ったら、ぜひ観察してみて下さい。

図鑑↓↓↓↓↓には、ハナヤサイサンゴ、ミドリイシの一種などのサンゴが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、サンゴの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
海の生き物と遊ぼう、よしもとおもしろ水族館(2011/04/09)
世界最長寿のサンゴが発見される?(2009/04/04)
白保【しらほ】のサンゴは普通と違う? アオサンゴ(2008/11/17)
宝石の珊瑚【さんご】はサンゴ礁のサンゴか?(2007/03/05)
サンゴ礁と台風の関係(2005/09/02)
などです。

2011年7月29日

分類が混乱中、ギボウシ(擬宝珠)

ico_weather_ame.gif

 夏によく見られる園芸植物に、ギボウシの仲間があります。紫から白色の花を、涼やかに咲かせます。葉にも、白い斑【ふ】が入っていたりして、美しいものが多いです。
 ギボウシの仲間は、日本で、古くから栽培されていました。江戸時代には、すでに、いくつもの園芸品種がありました。それを、シーボルト―江戸末期に来日しましたね―が、ヨーロッパに伝えたといわれます。ヨーロッパでも、たくさんの品種が作られました。
 おかげで、現在の私たちは、いろいろなギボウシの品種を楽しむことができます。ところが、これには、困ったこともあります。ギボウシ類の分類が、混乱してしまいました。
 日本に、もともと自生していたのは、オオバギボウシ、コバギボウシ、イワギボウシなどの十数種だとされます。これらは、みなギボウシ属に属する種です。ギボウシ属の種は、容易に交雑して、繁殖力のある子孫を残します。
 このため、江戸時代以前に、いくつもの種を交配させて、園芸品種が作られました。現在の園芸品種の中には、起源がわかっていないものも、多いです。起源がわからないまま、古い園芸品種同士を交配させて、新しい園芸品種が作られることもあります。
 こんな状態ですから、ギボウシ属の中に、いく種が属するのか、もともと野生にあった種はどれなのか、はっきりとは、わかっていません。
 加えて、混乱に拍車をかけていることがあります。ギボウシ属自体の分類が、揺らいでいるのです。
 伝統的には、ギボウシ属は、ユリ科に属するとされてきました。けれども、最近の植物学では、ユリ科の分類が、大きく見直されています。これまでユリ科とされていた属が、他の科に分類されることが増えました。
 最近の分類では、ギボウシ属は、リュウゼツラン科に属するとされることが多いです。しかし、この分類も、確定したものではありません。クサスギカズラ科に属するとされることもあります。クサスギカズラ科は、別名、キジカクシ科や、アスパラガス科とも呼ばれます。残念ながら、混乱した状態は、まだしばらくは続きそうです。

図鑑↓↓↓↓↓には、、ギギボウシの一種、コバギボウシが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、分類が混乱している生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
可憐なスミレ(菫)の仲間たち(2011/04/01)
分類が混乱中、カエデの仲間(2010/11/01)
カジカ(鰍)の迷宮(2009/12/21)
貝類は、昔、ミミズだった? カセミミズ(2009/09/25)
桐【きり】の名前で、きりきり舞い?(2009/05/08)
などです。

2011年7月25日

眼も脚もない? カイガラムシの不思議

ico_weather_hare.gif

 皆さんは、「昆虫の特徴は?」と訊かれて、答えることができますか?
 脚が六本ある。そうですね、正しいです。体が、頭と胸と腹との三つに分かれている。これも正しいです。複眼【ふくがん】という眼を持つ。これも、昆虫の特徴です。
 ところが、例外があります。前記の特徴がない昆虫も、いるのです。
 その例外の一つが、カイガラムシの仲間です。カメムシ目【もく】カイガラムシ上科【じょうか】に属する昆虫たちです。カイガラムシという名でも、貝の仲間ではありません。
 農業や園芸をやる方なら、カイガラムシは、御存知でしょう。この仲間は、農作物や園芸植物の害虫として知られます。彼らは、みな、植物食です。口を植物に突き刺して、栄養のある液を吸います。吸われ過ぎれば、植物が弱ってしまいます。
 カイガラムシは、植物の上で一生を過ごします。食べ物の上で、一生、暮らすわけです。これなら、食べ物を探して、動き回る必要はありませんね。このために、多くのカイガラムシの種は、脚をなくしてしまいました。
 ずっと動かずにいるなら、眼も必要ありません。脚をなくしたカイガラムシの多くは、複眼もなくしました。さらには、頭・胸・腹という、体の区分まで、なくした種が多いです。そのような動きやすい体は、必要ない、ということでしょう。
 でも、敵に襲われたら、どうするのでしょうか? 脚がないのでは、逃げようがありませんよね。彼らの多くは、逃げるより、隠れることを選んでいます。
 カイガラムシの多くの種は、体の上に、綿【わた】状のものや、蝋【ろう】状のものを背負っています。おかげで、彼らは、まるで昆虫には見えません。植物に付いたごみくずのように見えます。「昆虫」を食べるつもりの動物には、見つかりにくそうです。
 先に、カイガラムシは、害虫として有名だと書きましたね。このような昆虫は、研究が進んでいるのが普通です。けれども、カイガラムシは、この点でも例外です。分類さえ、定まっていません。カイガラムシ上科の中で、どの種が、どの科に入るのか、研究者によって意見が違います。身近な昆虫でも、謎が多いことの例ですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、カイガラムシの一種、ツノロウムシが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事で、カイガラムシと同じように、植物の害虫といわれる昆虫を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
冬越しは木の中で、カミキリムシたち(2011/02/07)
実盛虫【さねもりむし】の正体は、ウンカ?(2008/08/06)
謎の円盤UFO? いえ、カメノコハムシです(2008/03/10)
横に歩くのは何のため? ヨコバイ(2008/02/25)
イネクロカメムシは福田【ふくだ】の虫?(2007/10/08)
などです。

2011年7月22日

登山者を慰める? フウロソウの仲間たち

ico_weather_kumori.gif

 そろそろ、夏山登山の季節ですね。登山の際には、山の花々を眺めるのも、楽しみの一つです。山地では、平地では見られない植物を、見ることができます。
 山の花の中で、代表的なのが、フウロソウの仲間でしょう。フウロソウ科フウロソウ属に属する植物です。この仲間は、日本では、山地に生えるものが多いです。
 フウロソウとは、不思議な響きの名ですね。漢字では、風露草と書きます。漢字名は、高原の草にふさわしいですね。美しい名前だと思います。
 山地に生えるフウロソウには、ハクサンフウロ、シコクフウロ、アサマフウロ、ミツバフウロ、グンナイフウロなどの種があります。どの種も、薄いピンクから濃いピンクの花が咲きます。登山の疲れをいやす花として、登山者に愛されています。
 もちろん、美しいからといって、決して採取しませんように。山の植物は、平地では育ちません。平地の暑い気候に、耐えられないからです。
 フウロソウ属の種のうちには、ヨーロッパと日本とで、同じ種が分布しているものがあります。例えば、ヒメフウロという種です。
 ヒメフウロは、日本では、本州中部地方の山地と、四国の剣山系に分布します。ヨーロッパでは、山地ではなく、平地で普通に見られるようです。日本より、ヨーロッパのほうが、ずっと涼しいからですね。このような例は、他の植物でもあります。
 「山登りをする体力はないけれど、フウロソウの花を見てみたい」方も、いらっしゃるでしょう。山や、ヨーロッパまで行かなくても、フウロソウの花を見ることはできます。平地に生えるフウロソウがあるからです。
 ゲンノショウコ(現の証拠)という草を御存知でしょうか? 日本では、道端でも見られる野草です。この種は、フウロソウ属に属します。山のフウロソウより小ぶりですが、ピンクの愛らしい花が咲きます。
 日本では、ゲンノショウコは、民間の薬草として有名ですね。文字どおりの「高嶺の花」が多いフウロソウ属にあって、庶民派(庶民の味方)と言えるかも知れません。

図鑑↓↓↓↓↓には、ゲンノショウコが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、山地や高原に多い植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
日本にも、タイムが生える?(2011/06/10)
植物の世界は、「虎の尾」だらけ?(2009/11/16)
ノリウツギは、カミキリムシと仲良し?(2009/07/03)
古代の「朝顔」は、キキョウ(桔梗)?(2008/08/08)
などです。

2011年7月18日

カンガルーは、有袋目【ゆうたいもく】か?

ico_weather_kumori.gif

 オーストラリアは、珍しい生き物が多いことで、知られますね。中でも、体に「袋」を持つ哺乳類が有名です。カンガルーや、コアラや、バンディクートなどですね。
 カンガルーなどの「袋」は、子を育てるためのものです。この「袋」が特徴的なので、かつて、カンガルーなどの仲間は、有袋目【ゆうたいもく】というグループに分類されていました。「袋」のある哺乳類は、すべて、有袋目だとされました。
 ところが、近年、様子が変わってきています。同じように「袋」がある哺乳類同士でも、縁が遠いものがある、とわかってきました。このために、有袋目という分類グループは、解体されつつあります。言い換えれば、有袋目というグループ分けは、古い分類です。
 例えば、カンガルーの分類は、どうなったでしょうか? 現在では、カンガルーは、有袋目ではなく、カンガルー目【もく】とされることが多いです。カンガルー目は、双門歯目【そうもんしもく】と呼ばれることもあります。
 カンガルー目には、コアラも属します。その他、ウォンバットや、フクロモモンガや、フクロギツネも、カンガルー目です。
 バンディクートは、どうでしょうか? 彼らは、バンディクート目【もく】です。タスマニアデビルは? フクロネコ目【もく】です。フクロネコ目には、フクロネコや、フクロアリクイも、属します。絶滅したフクロオオカミも、フクロネコ目とされます。
 かつて有袋目とされた哺乳類は、オーストラリア以外にも、分布しますね。南米と北米にいるオポッサムなどです。現在では、オポッサムは、オポッサム目【もく】に属するとされることが多いです。
 このように、かつての有袋目は、ばらばらの目【もく】にされました。もはや、「有袋」(袋を持つ)という分類単位には、まったく意味がないのでしょうか?
 そんなことは、ありません。「有袋目」は消滅しても、「袋」のある哺乳類同士には、何らかの類縁があると考えられています。どのような関係なのかは、はっきりわかっていません。このため、漠然とした有袋「類」という言葉が、現在も使われています。

図鑑↓↓↓↓↓には、袋のある哺乳類は載っていませんが、日本の哺乳類が八十種以上が掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、「袋」のある哺乳類の仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
インドネシアのパプアで、新種の哺乳類を発見(2007/12/19)
カリフォルニア州サンディエゴに住んでおります(2006/09/26)※ここの説明では、古い分類「有袋目」で説明してあります。
カンガルーは有袋類といわれますよね。(2006/06/01)※ここの説明でも、古い分類「有袋目」で説明しています。
ワラビーとカンガルーの違い(2005/09/29)
カンガルーの袋の内側は、どうなっているの?(2005/09/15)
などです。

2011年7月15日

クマツヅラは、魔法の植物?

ico_weather_hare.gif

 生き物の中には、ごく狭い範囲にしか分布していない種と、広く分布している種とが、ありますね。今回は、後者のものを取り上げましょう。クマツヅラ(熊葛)です。
 クマツヅラとは、不思議な種名ですね。この名の由来は、わかっていません。姿を見ると、普通の草です。特に変わった点はありません。夏に、淡紅色の花を咲かせます。
 クマツヅラの分布は、とても広いです。日本では、本州以南、沖縄まで分布します。ユーラシア大陸をまたいで、ヨーロッパにまで、同じ種が分布します。
 英語では、クマツヅラを、ヴァーヴェインvervainやヴァーベナverbenaと呼びます。ヴァーベナという名に、聞き覚えのある方もいるでしょう。園芸植物の中に、ヴァーベナと呼ばれるものがあります。日本語名で、ビジョザクラ(美女桜)と呼ばれるものです。
 ビジョザクラは、クマツヅラと同じく、クマツヅラ科クマツヅラ属に属します。が、こちらは、園芸品種の総称です。一つの種ではありません。
 同じ「ヴァーベナ」と呼ばれても、クマツヅラと、ビジョザクラとは、違います。英語の翻訳ものなどでは、この二つが、混同されていることがあります。御注意下さい。
 ヨーロッパでも、日本でも、クマツヅラは、ありふれた草です。愛らしい花が咲くとはいえ、特に目立つ草ではありません。ところが、意外なことに、この草は、英文学によく登場します。なぜでしょうか?
 クマツヅラは、古代のさまざまな文明で、聖なる草とされていたからです。魔除けになると信じられました。「この草を持っていれば、悪い妖精のいたずらに遭わない」などといわれました。(良い)魔法の植物とみなされていたのですね。
 そうなったのには、理由があります。この草には、何らかの薬効があるようです。古代から、世界の各地で薬草にされました。漢方でも、馬鞭草【ばべんそう】という名で、使われています。ヴァーベナと似た名なのは、面白い偶然ですね。
 クマツヅラは、「後から日本に持ち込まれた帰化植物ではないか」といわれます。もし、そうだとしたら、昔の人は、その薬効を知って、持ち込んだのかも知れませんね。

図鑑↓↓↓↓↓には、クマツヅラが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、妖精や魔法と関わりがある(とされた)植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
オオイヌノフグリは、妖精の花?(2011/03/18)
北国の魔法の植物? イケマ(2010/01/01)
ヒカゲノカズラは、日陰に生える?(2009/12/07)
三月三日は草餅【くさもち】の節句?(2007/03/02)
クリスマスの飾りは豊饒【ほうじょう】のしるし、ヤドリギ(2005/12/12)
などです。

2011年7月11日

謎の生物、ブンブクチャガマ

ico_weather_hare.gif

 ブンブクチャガマという生き物の名を、聞いたことがおありでしょうか? 漢字では、分福茶釜、または、文福茶釜と書かれます。冗談みたいな名ですね。でも、これが、正式な日本語名(標準和名)です。
 こんな面白い名が付いたのは、どんな生物でしょうか? ウニの一種です。専門的に言えば、棘皮動物門【きょくひどうぶつもん】ウニ綱【こう】に属します。
 彼らは、他のウニと同じく、海に棲みます。全身、棘だらけです。けれども、恐ろしい生き物ではありません。普段は、海底の砂や泥にもぐって生活しています。
 普通のウニは、球形の体に、棘がありますね。ところが、ブンブクチャガマの体は、球形ではありません。なんと、ハート形です。なぜ、こんな形なのでしょうか?
 それは、彼らの生態と関係がある、と考えられています。球形より、ハート形のほうが、砂や泥の中を進むのに、都合の良い形のようです。
 ブンブクチャガマには、近縁な種が何種もいます。ネズミブンブク、セイタカブンブク、オカメブンブク、ヒラタブンブクなどの種です。どれも、ウニ綱ブンブク目【もく】に属する種です。ブンブク目の種は、おおむね、姿も生態も似ています。
 中には、深海に棲むブンブク目の種もいます。ウルトラブンブクという種です。怪獣の名前みたいですが、これが標準和名です。
 「ウルトラ」ブンブクの名が付いたのは、ブンブク目の中で、とても大きい種だからです。とはいえ、10cmから15cmくらいです。普通のブンブクチャガマは、5cmくらいです。もともと、この仲間は、そんなに大きくないのですね。
 ウルトラブンブクは、大きさ以外にも、変わった点があります。ブンブク目なのに、普段、海底にもぐっていないらしいのです。なぜそうなのかは、わかっていません。
 ブンブク目のウニは、研究があまり進んでいません。砂や泥にもぐっていて、観察しにくいためでしょう。それにしては、面白い名を付けたものだと思います。ウニの研究者には、独創的な方が多いのでしょうか?(笑)

図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、ブンブクチャガマは載っていません。かわりに、日本近海のウニの仲間が、十種ほど掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、ウニの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
タコノマクラの花びら模様は、いったい何?(2008/01/25)
突然の人気者? スカシカシパン(2008/01/10)
海中のオブジェ? パイプウニ(2007/11/16)
棘だけでは足りない? ウニの防御作戦(2007/08/11)
などです。

2011年7月 8日

シカクイ? フトイ? クサイ? 藺【い】の仲間たち

ico_weather_kumori.gif

 畳を作るのに使う草を、御存知ですか? イグサ(藺草)ですね。イグサ科イグサ属に属する一種です。単に、イ(藺)と呼ばれることもあります。
 イグサ科イグサ属の種は、互いに似たものが多いです。イネのように、葉も茎も細長いです(イネは、まったく別のイネ科です)。花は茶色っぽく、地味です。
 イグサ属の種は、生える環境も似ています。淡水の水辺に生えます。例えば、畳に使うイグサは、栽培されますが、多くの場合、水田で栽培されます。
 イグサと近縁で、しかも、紛らわしい種名の植物があります。クサイ(草藺)という種です。同じイグサ科イグサ属に属します。道端で、普通に見られる草です。
 クサイという種名は、「臭い」と聞き間違えられそうですね(笑) でも、種名の由来は、「イ(藺)の仲間で、普通に見られる草だから」でしょう。
 ところが、イグサに近縁ではないのに、イ(藺)という種名が付く植物があります。カヤツリグサ科の植物に、そういうものが、何種かあります。
 どうやら、昔の人は、「水辺にばさばさと生える、細長い草」を、まとめて藺【い】と呼んだらしいです。このために、遠縁の植物にも、イ(藺)の種名が付きました。
 イグサ科ではない藺【い】の一種に、シカクイ(四角藺)があります。カヤツリグサ科ハリイ属の一種です。茎の断面が「四角い」ために、こんな名になりました。
 同じハリイ属には、ハリイ(針藺)や、マシカクイ(真四角藺)などの種が属します。マシカクイは、茎の断面が「真四角」、つまり「正方形」のため、この名になりました。
 「四角」があれば、「三角」もあります。サンカクイ(三角藺)という種名の植物があるのです。茎の断面が「三角」であることから、この名が付きました。この種も、カヤツリグサ科です。属は、ホタルイ属です。
 同じカヤツリグサ科ホタルイ属には、フトイ(太藺)という種名のものがあります。女性の前で種名を言ったら、怒られそうですね(笑) 他に、ホタルイ属には、ホタルイ(蛍藺)、カンガレイ(寒枯藺)などの種もあります。

図鑑↓↓↓↓↓には、イグサ科のイ(藺)とクサイ(草藺)、および、カヤツリグサ科のカンガレイ(寒枯藺)とサンカクイ(三角藺)が掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、面白い種名の生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
地獄の釜の蓋【じごくのかまのふた】とは、どんな植物?(2011/03/25)
ゴジュウカラは、シジュウカラより年上?(2009/12/11)
スベスベマンジュウガニの名の由来は?(2008/08/18)
突然の人気者? スカシカシパン(2008/01/10)
カサゴ(笠子)は、似たもの同士の一族(2007/11/26)
などです。

2011年7月 5日

カミキリムシ? いえ、カミキリモドキです

ico_weather_hare.gif

 今の季節は、昆虫が豊富ですね。そろそろ、カミキリムシやコガネムシなどの、夏に多い昆虫たちも出てきます。
 カミキリムシは、代表的な森林の昆虫です。けれども、中には、住宅地で見られる種もあります。明かりを求めて、人家に飛び込んでくることもあります。子供の昆虫採集の対象にもなりますね。比較的、ヒトに身近な昆虫といえます。
 ところが、カミキリムシの種を同定しようとすると、苦労することが少なくありません。その原因には、いくつかあります。二つほど、挙げてみましょう。
 第一は、カミキリムシの種が多いことです。日本に分布するカミキリムシは、八百種以上もいるとされます。これでは、どの種なのか、迷うのも無理はありませんね。
 第二は、カミキリムシに似て、カミキリムシではない昆虫がいることです。カミキリムシの一種だと思って、図鑑などで調べても、出てこないわけです。
 カミキリムシに似た昆虫のグループには、ジョウカイボン科、ジョウカイモドキ科、カミキリモドキ科などがあります。カミキリムシとは、カミキリムシ科に属する種の総称です(分類には、異説もあります)。
 中でも、カミキリモドキ科は、名も姿も、カミキリムシと紛らわしいです。姿は、小型のカミキリムシにそっくりです。カミキリ「モドキ」という名は、そこから付きました。
 カミキリムシ科とカミキリモドキ科とは、同じ甲虫目【こうちゅうもく】に属します。しかし、甲虫目の中では、遠縁なグループ同士です。
 カミキリモドキ科の昆虫も、夜、人家の明かりに飛んでくることがあります。花壇や果樹園の花に来ることもあります。この科の成虫には、花の蜜などを食べる種が多いからです。このような生態は、カミキリムシの中の、ハナカミキリの仲間に似ています。
 カミキリモドキには、カミキリムシと、大きく違う点もあります。一部に、毒を持つ種がいることです。そのような種に触れると、かぶれるおそれがあります。でも、すべての種が有毒なのではありません。念のため、触れる際には注意しましょう。

図鑑↓↓↓↓↓には、キバネカミキリモドキ、モモブトカミキリモドキが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、カミキリムシの仲間を取り上げています。また、カミキリムシに似たジョウカイボンや、ジョウカイモドキも取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
冬越しは木の中で、カミキリムシたち(2011/02/07)
影が薄い? ジョウカイモドキ(2010/03/19)
ジョウカイボンとは、どんな昆虫?(2009/05/18)
豪華絢爛【ごうかけんらん】、日本のカミキリムシ(2008/08/15)
トラフカミキリは、スズメバチのそっくりさん(2007/09/21)
などです。

2011年7月 1日

キリンソウの名の由来は?

ico_weather_hare.gif

 梅雨の季節ですね。日本は、雨の多い国です。そのために、生き物も、水が豊富な環境に適応したものが多いです。けれども、日本にも、水が乏しい環境が、ないわけではありません。そのような環境に、適応した生き物がいます。
 例えば、植物では、ベンケイソウ科に属するものが、そうです。ベンケイソウ科の植物は、肉厚の葉を持ちます。茎も太く、水を含んだ感じのものが多いです。体内に、水を蓄えられるようになっています。乾燥に耐えられるわけですね。
 日本に自生するベンケイソウ科には、キリンソウ、コモチマンネングサなどの種があります。コモチマンネングサは、畑や道端で、普通に見られる草です。いわゆる雑草の一種ですね。これは、ベンケイソウ科の種としては、珍しいことです。
 ベンケイソウ科の多くの種は、もっと乾燥した場所に生えます。岩場や、海岸などです。海岸には、海水はありますが、淡水―植物には、必要です―は少ないですね。
 キリンソウは、岩場や海岸、荒れ地に生えます。ベンケイソウ科としては、典型的です。
 キリンソウ(麒麟草)という種名からは、背が高い植物が想像されますね。ところが、実際は、そんなことはありません。では、なぜ、こんな名が付いたのでしょうか?
 この名の由来には、いくつかの説があります。なかで、有力なのが、「本来は、麒麟草ではなく、黄輪草【きりんそう】だった」説です。
 キリンソウの花は、黄色いです。その花が、植物体のてっぺんに、輪状に付きます。だから「黄輪草」と呼んでいたのが、のちに、「麒麟草」に取り違えられた、というのです。
 紛らわしい名の植物として、アキノキリンソウ(秋の麒麟草)があります。アキノキリンソウは、キリンソウとは、まったく別種です。分類上も遠縁です。キク科に属します。
 キリンソウについては、研究者を悩ませていることがあります。分類が難しいことです。
 「キリンソウ」と呼ばれるものの中には、変異があります。この変異が、同種の中の変異に収まるのか、別種に分けたほうがよいのかで、意見が割れています。今しばらくは、キリンソウの種名や分類が、落ち着かない状態が続くでしょう。


図鑑↓↓↓↓↓には、キリンソウ、コモチマンネングサ、アキノキリンソウが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、他種と紛らわしい名を持つ植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ウメじゃない梅がある?(2011/02/18)
雪割草【ゆきわりそう】と、ユキノシタは、違う? 同じ?(2011/02/04)
楓【かえで】? いえ、楓【ふう】の木です(2010/11/29)
桂【けい】とは、どんな植物?(2010/11/22)
などです。

2011年6月27日

大陸とのつながりを示す? ナミエガエル

ico_weather_ame.gif

 日本の南西諸島には、珍しい生き物がたくさんいますね。今回は、その中の一種を取り上げてみましょう。ナミエガエルです。アカガエル科に属するカエルです。
 ナミエガエルは、世界中で、日本の沖縄本島にしか、分布していません。しかも、沖縄本島の中でも、分布域が限られています。大宜味村【おおぎみそん】など、北部の一部でしか見られません。かつては、もう少し南の、名護市周辺でも見られたそうです。
 残念ながら、ナミエガエルの分布域は、だんだん狭くなっているのですね。放っておいたら、彼らは、絶滅してしまうでしょう。そうなる前に、手を打ちたいですね。
 ナミエガエルは、単に、「数が少ないから貴重だ」というわけではありません。日本の動物相を考えるうえで、重要な鍵となる生き物です。彼らは、「中国大陸や、台湾に分布するカエルと、つながりが強い」とわかってきました。
 以前、ナミエガエルは、「アカガエル科のアカガエル属に属する」とされていました。これは、ニホンアカガエル―日本の本土に分布します―などと、まったく同じ分類です。
 ところが、最近では、「ナミエガエルの分類は、違うのではないか」という意見が、有力になってきました。アカガエル科の中の、クールガエル属だという意見です。
 クールガエル属のカエルは、台湾、中国大陸、インドシナ半島などに、広く分布します。つまり、東南アジアに広がっているグループです。もし、ナミエガエルがクールガエル属だとすれば、彼らのルーツは、東南アジア方面にある可能性が高いです。
 クールガエル属の分類については、現在、検討されている最中です。これまで、一種だと思われてきたものが、複数の種に分割されそうな事態も起きています。
 そんな状態ですので、ナミエガエルが、クールガエル属のどの種と近縁なのかは、わかっていません。彼らのルーツがどこにあって、日本の南西諸島まで、どのように分布を広げてきたのかは、これからの研究課題です。
 似たことは、日本本土に分布する他種のカエルでも起こっています。日本のカエルは、思われていたより、東南アジアのカエルと、近縁なのかも知れません。

図鑑↓↓↓↓↓には、ナミエガエルが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、日本のカエルを取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
カエルツボカビ症は、日本が起源か?(2011/01/31)
カジカガエルは、河の鹿(シカ)?(2009/06/05)
平凡なカエルが危機に? アオガエル(青蛙)たち(2008/05/26)
などです。

2011年6月24日

ビールの苦みの正体は?

ico_weather_hare.gif

 お酒が好きな方にとっては、そろそろ、ビールが美味しい季節ですね。初めてビールを飲んだ時、あの苦さに驚いた人は、多いでしょう。
 ビールがオオムギから作られることは、皆さん、御存知だと思います。けれども、あの苦味は、オオムギとは違うものによって、付けられます。ホップという植物です。
 ホップの正式な日本語名(標準和名)は、セイヨウカラハナソウ(西洋唐花草)といいます。ユーラシア大陸に、広く分布する植物です。日本でも、北海道の一部に自生します。
 現在は、野生のセイヨウカラハナソウより、栽培されているもののほうが、ずっと多いでしょう。中世ヨーロッパの時代から、この植物は、ビールの風味づけに使われてきました。日本でも、北海道や東北地方で、栽培されています。
 「セイヨウ」カラハナソウがあるなら、カラハナソウ(唐花草)もあるのでしょうか? あります。日本では、カラハナソウのほうが、広く分布します。中部地方以北の山地に、自生します。カラハナソウは、セイヨウカラハナソウの変種です。
 近年、セイヨウカラハナソウや、カラハナソウの分類が、変動しています。以前は、クワ科カラハナソウ属に属するとされていました。しかし、最近は、アサ科カラハナソウ属とする説が、強くなっています。
 さて、ビールに風味づけをする時には、セイヨウカラハナソウの、どの部分を使うのでしょうか? 俗に、毬花【まりばな】と呼ばれる部分です。花といっても、本当の花ではありません。花が終わった後に付くものです。つまり、果実ですね。
 同じセイヨウカラハナソウでも、毬花が付く個体と、付かない個体があります。セイヨウカラハナソウは、雄と雌とが別々の株になるからです。毬花=果実が付くのは、雌の株だけです。このために、栽培されるのは、雌の株ばかりです。
 カラハナソウも、雄と雌とが別の株になります。雌の株には、セイヨウカラハナソウの毬花と似た果実が付きます。カラハナソウの「毬花」も、ビールの風味づけに使えるのでしょうか? 使えるとしたら、どんなビールができるのか、気になりますね(笑)

図鑑↓↓↓↓↓には、カラハナソウが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、風味づけに使う植物や、お酒に関わる植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ニワトコは、庭の薬箱?(2010/06/23)
イグ・ノーベル賞の、バニラ【Vanilla】の研究とは?(2007/10/18)
三月三日は草餅【くさもち】の節句?(2007/03/02)
お釈迦さまも食べた? レモン(2006/08/21)
などです。


2011年6月20日

イソギンチャクは、闘う?

ico_weather_kumori.gif

 イソギンチャクは、日本の海で、普通に見られる生き物ですね。日本の磯に多いのは、ウメボシイソギンチャクや、ミドリイソギンチャクといった種です。
 水中でひらひらしているイソギンチャクは、平和的な生き物に見えます。ところが、そうとは限りません。隣同士のイソギンチャクで、「闘う」ことがあります。
 ウメボシイソギンチャクを、例に取ってみましょう。この種は、よく、いくつかの個体が集まって、岩などに付いています。その場合、あまり、隣同士で喧嘩しているようには見えません。実際、平和に共存していることも多いです。
 では、「闘う」のは、どんな場合でしょうか? どうやって「闘う」のでしょう?
 イソギンチャクが闘うか否かは、彼らの繁殖と関わっています。同じ遺伝子を持つイソギンチャク同士は、闘いません。それは、「自分と同じもの」だからです。
 ウメボシイソギンチャクなどの種は、クローン繁殖を行なうことができます。クローンとは、「ある個体と、まったく同じ遺伝子を持つ個体」です。いわば、コピーですね。こういったクローン同士では、闘うことはありません。
 闘いになるのは、遺伝子が違う個体同士が、隣になった場合です。互いに、相手を「自分とは違うもの」とみなすからですね。
 遺伝子が違うイソギンチャク同士が、隣り合うと、「闘う」ための、特別な器官を発達させます。どんな器官かは、種によって違います。
 ウメボシイソギンチャクの場合は、周辺球【しゅうへんきゅう】と呼ばれる器官です。触手の周辺に付く、球状の器官です。ナゲナワイソギンチャクなどの場合は、キャッチ触手という、特別な触手が発達します。普通の触手より、太くて長い触手です。
 これらの器官には、相手を突き刺す刺胞【しほう】細胞が、びっしりと付いています。これで、互いに攻撃し合います。たいていは、どちらかがその場から退却して(イソギンチャクは、場所を移動することができます)、闘いが終わります。
 平和そうに見えても、イソギンチャクの世界も、大変だとわかりますね。

図鑑↓↓↓↓↓には、ウメボシイソギンチャク、ミドリイソギンチャクが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、イソギンチャクの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
刺すイソギンチャクがいる?(2010/02/22)
どっちがどっち? スナイソギンチャクと、スナギンチャク(2009/10/05)
管の中の花? ハナギンチャク(2009/04/27)
イソギンチャクは逆さのクラゲ?(2008/04/21)
などです。

2011年6月17日

「ウコン」に御注意

ico_weather_ame.gif

 ウコン(鬱金)といえば、カレーの主原料になる植物ですね。ターメリックturmericという英語名でも知られます。カレーの黄色い色は、ウコンの根茎の色です。
 ウコンとは、ショウガ科ウコン属に属する一種です。古くから、東南アジアやインドで栽培されてきました。もともと野生のウコンは、ないといわれます。栽培されていたものが、野生化したものなら、あります。ウコンは、人間によって作られた栽培植物です。
 ウコンの原種は、キョウオウ(姜黄)という種だとされています。キョウオウも、もちろん、ショウガ科ウコン属に属します。インド原産の植物だといわれます。現在は、インドに限らず、熱帯アジアの各地で栽培されています。
 ウコンも、原種のキョウオウも、薬や健康食品に使われます。サプリメントやドリンク剤の中に、「春ウコン」や「秋ウコン」という名を、見たことがありませんか? 「春ウコン」とは、キョウオウのことです。「秋ウコン」のほうが、本当のウコンです。
 ウコンの近縁種には、ウコンと同じように、何らかの薬効成分があるものが多いです。姿も、互いに似ています。そのために、「○○ウコン」という通称が付いている種が、いくつかあります。前述の、春ウコン=キョウオウなど、その一例です。
 他に、例えば、「紫ウコン」、「夏ウコン」などと呼ばれる種があります。これも、植物学で言うウコンではありません。正式な日本語名(標準和名)を、ガジュツという種です。やはり、ショウガ科ウコン属に属します。
 このように、「ウコン」の名は、乱用されているふしがあります。名前が似ていても、種が違えば、当然、薬効成分が違います。サプリなどを服用する際は、御注意下さい。
 日本では、ウコンの根茎ばかりが注目されがちです。食用や薬用になるからですね。しかし、ウコンの仲間は、花も美しいです。観賞用に栽培されることもあります。
 花屋さんの店先で、クルクマという花を見たことがありませんか? ピンクの花びらが、重なって付いています。これは、ウコン属の一種です。日本では観賞用ですが、タイでは、この種の根茎を、カレーに使うそうです。ウコンらしいですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、ウコンが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、薬効成分がある植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
薬にも害にも、メギ(目木)(2010/10/25)
ナンテンの赤い実は、鳥のため?(2010/01/15)
ニンジン(人参)がいっぱい?(2009/09/04)
謎の植物、茱萸【しゅゆ】とは?(2008/09/01)
毒にも薬にもなるオトギリソウ(2006/06/02)
などです。

2011年6月13日

海の上を歩く鳥? ウミツバメ

ico_weather_kumori.gif
 海の生き物には、「ウミ○○」という種名のものが、よくありますね。今回は、そのような生き物のグループを紹介しましょう。ウミツバメ(海燕)という鳥です。
 ウミツバメとは、ミズナギドリ目【もく】ウミツバメ科に属する種の総称です。単に「ウミツバメ」という種名のものは、いません。みな「○○ウミツバメ」という種名です。
 紛らわしいことに、モグリウミツバメ科という、別の科もあります。同じミズナギドリ目【もく】の中です。モグリウミツバメ科の鳥は、日本には分布しません。
 日本に分布するウミツバメ科には、ヒメクロウミツバメ、コシジロウミツバメ、ハイイロウミツバメなどの種があります。ヒメクロウミツバメや、コシジロウミツバメは、日本国内で繁殖しています。天然記念物に指定された繁殖地もあります。
 ウミ「ツバメ」という名でも、ツバメとウミツバメとは、近縁ではありません。ツバメは、スズメ目【もく】ツバメ科に属する一種です。
 ウミツバメと、ツバメとは、さほど似ているように見えません。海の上をすばやく飛ぶ様子を、ツバメに見立てたのでしょうか? けれども、ウミツバメの飛び方には、ツバメとは違う、大きな特徴があります。
 ウミツバメの仲間は、脚を垂らして飛びます。ひらひらと、脚がひらめいて見えます。こういう鳥は、珍しいですね。他の科の鳥には、あまり見られません。
 ウミツバメの英語名は、この飛び方と関係があるようです。ウミツバメの仲間は、英語で、storm petrelといいます。このpetrelというのは、キリスト教の聖人ペテロに由来するといわれます。聖ペテロには、「湖の水面を歩こうとした」という伝承があります。
 ウミツバメの仲間は、脚を垂らしながら、海面すれすれを飛びます。この様子が、「水面を歩く」ように見えることから、聖ペテロの鳥=petrelと付けられたようです。
 実際には、ウミツバメは、海面を歩いているわけではありません。
 確認されている限りでは、ウミツバメの仲間は、繁殖地が限られていることが多いです。どこの繁殖地も、貴重です。日本の繁殖地も、守りたいですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、ヒメクロウミツバメが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、海鳥を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
昔は神さまだった? アビ(2010/02/05)
都鳥【みやこどり】の正体は、ユリカモメ?(2009/01/23)
夏の海のカモメ? いえ、アジサシです(2008/08/13)
アホウドリの熱愛度は鳥類一?(2007/02/12)
カモメは冬にしかいない?(2006/10/23)
などです。

2011年6月10日

日本にも、タイムが生える?

ico_weather_kumori.gif

 近年は、日本でも、ハーブという言葉が一般的になりましたね。ハーブは、「香草」などと呼ばれることもあります。料理に風味を付けたり、化粧品に使われたりする植物です。
 ハーブherbという言葉は、英語に由来します。そのためか、ハーブと言えば、すべてヨーロッパ原産のものだと思われているふしがあります。
 正確には、日本にも、ハーブと呼べる植物があります。例えば、ヨモギや、ドクダミなどがそうです。ヨモギは、昔から、「体に良い植物」として知られますね。ドクダミも、ドクダミ茶にして、飲んだりします。あれは、ハーブティーの一種といえます。
 けれども、普通は、ハーブといえば、「ヨーロッパ原産の香草」を指すようです。ローズマリー、セージ、タイムなどと、横文字名前で呼ばれる植物です。
 これらの横文字名前のハーブにも、多くのものには、日本語名があります。ただ、それが知られないだけです。中には、正真正銘、日本産のハーブと呼べるものもあります。
 それは、タイムの一種です。正式な日本語名(標準和名)を、イブキジャコウソウ(伊吹麝香草)という種です。シソ科イブキジャコウソウ属に属します。
 タイム―英語のつづりはthyme―とは、シソ科イブキジャコウソウ属に属する種の総称です。時間のタイム―英語のつづりはtime―と同じ発音なので、紛らわしいですね。
 通常、ハーブのタイムと呼ばれるのは、ヨーロッパ原産のタチジャコウソウという種です。料理用に売られている「タイム」は、大概、この種です。
 しかし、イブキジャコウソウを「タイム」と呼んでも、間違いではありません。タチジャコウソウと同じく、良い香りがある植物です。日本の山に自生する種です。
 イブキジャコウソウに、とても近縁な植物が、ヨーロッパにも分布します。そちらは、ヨウシュイブキジャコウソウ(洋種伊吹麝香草)といいます。
 ヨウシュイブキジャコウソウには、「日本のイブキジャコウソウの亜種である」説と、「日本のイブキジャコウソウとは、別種である」説とがあります。どちらが正しいのかは、まだ、わかっていません。

図鑑↓↓↓↓↓には、イブキジャコウソウが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、日本のハーブと言える植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
じつは外来種です、キショウブ(2009/04/24)
ドクダミは、なぜ臭【くさ】い?(2008/06/09)
三月三日は草餅【くさもち】の節句?(2007/03/02)※草餅に使うヨモギを取り上げています。
九月九日は菊の節句(2006/09/09)※キクも、ハーブの一種と言えます。
などです。

2011年6月 6日

トゲアリトゲナシトゲトゲの秘密

ico_weather_hare.gif

 昆虫図鑑をお持ちの方は、開いてみて下さい。そこに、「○○トゲトゲ」という名の昆虫が、載っているでしょうか? 甲虫の仲間です。
 もし、載っていましたら、それは、古い図鑑ですね。現在は、「○○トゲトゲ」という種名のグループは、改名されています。「○○トゲハムシ」という種名になっています。
 トゲトゲ改めトゲハムシとは、甲虫目【こうちゅうもく】ハムシ科トゲハムシ亜科に属する種の総称です。ハムシ科の中で、成虫の体に棘【とげ】がある種が多いことから、かつて「トゲトゲ」と呼ばれました。そのものずばりの名前ですね(笑)
 「トゲトゲ」が、「トゲハムシ」に改名された事情は、わかりません。おそらく、ハムシ科の中の一グループであることを、わかりやすくしたのでしょう。
 トゲハムシ亜科には、棘のない種も存在します。そのような種は、以前は、「トゲナシトゲトゲ」と呼ばれました。現在は、「トゲナシトゲハムシ」になっています。
 しかし、「トゲナシトゲトゲ」にせよ、「トゲナシトゲハムシ」にせよ、矛盾した名前ですよね。このため、最近では、「ホソヒラタハムシ」という名も使われます。ホソヒラタハムシ=トゲナシトゲハムシで、「棘のないトゲハムシ亜科のグループ」です。
 ところが、ホソヒラタハムシ=トゲナシトゲハムシの中には、棘のある種も存在します。そのような種が発見された時、研究者の間で、「どういう日本語名を付けるのか?」と、話題になったそうです。当時は、まだ、トゲハムシが、トゲトゲと呼ばれていた頃でした。
 真っ正直に種名を付ければ、「トゲアリトゲナシトゲトゲ」ですね(笑) この名は、研究者の間で、冗談で使われていたそうです。正式な名ではありません。
 結局、トゲアリトゲナシトゲトゲ、あるいは、トゲアリトゲナシトゲハムシという名は、正式には採用されませんでした。矛盾がはなはだしいですし、長過ぎて、覚えにくいからでしょう。この仲間には、正式な日本語名(標準和名)は、付いていないと思います。
 現在も、トゲアリトゲナシトゲトゲという種名の昆虫が、実在するかのように言われることがあります。それは、事実ではありません。笑い話としては、面白いですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、トゲハムシ(トゲトゲ)の一種、キベリトゲハムシが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、生き物の改名について取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
チョウ(蝶)はチョウ目【もく】? 鱗翅目【りんしもく】?(2008/07/22)
新しい名前で出ています――魚類の改名(2007/02/02)
などです。

2011年6月 3日

伝説の河童の薬草とは?

ico_weather_hare.gif

 河童は、ほぼ、日本全国に伝わる妖怪ですね。恐ろしさと共に、愛嬌のある存在としても知られます。「河童が悪さをして人間に捕まり、河童の薬の作り方を教えて、許された」といった伝説が、各地にあります。
 伝説の河童の薬は、たいてい、薬草でもって作られています。中には、現在まで、製法が伝わる薬もあります。河童が使う薬草とは、どんな植物でしょうか?
 じつは、東北地方の一部で、「かっぱぐさ」、「かっぱそう」などと呼ばれる草があります。なぜかといえば、「河童の薬に使うから」なのですね。その植物の、正式な日本語名(標準和名)は、イシミカワといいます。
 イシミカワとは、変わった種名ですね。この語源は、わかっていません。漢字では、「石見川」と書かれます。けれども、これは当て字ではないかといわれます。
 イシミカワは、日本全国に自生します。決して珍しい草ではありません。むしろ、人里に普通にある雑草です。あまり目立つところがないので、意識されることは、ほとんどないでしょう。瑠璃【るり】色の果実だけは、目立ちます。つる状になる草です。
 この草は、昔から、薬草として知られます。現在では、下痢止めや利尿薬にされます。ところが、江戸時代には、骨折や切り傷の薬にされたようです。
 伝説の「河童の薬」は、大概が、切り傷や打ち身や骨折の薬です。これは、江戸時代のイシミカワの使われ方を、反映しているのでしょう。実際に、イシミカワにそのような薬効があるかどうかは、確認されていません。
 「河童の薬」に使われる薬草は、必ずイシミカワであるとは限りません。他の植物の名が挙げられることもあります。そもそも、伝説ですから、あいまいなことも多いです。
 用途が違うとはいえ、現在まで薬草とされるからには、それなりに効果があるのでしょう。地味な草なのに、そのような薬効を見抜いた人は、すごいですね。
 イシミカワが、「河童の薬」にされた理由は、不明です。昔の人にとっては、イシミカワに、河童と共通する点があったのでしょうか? 面白い謎ですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、イシミカワが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、河童の伝承と関係する生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
カワウソは、河童【かっぱ】の正体?(2010/08/16)
キュウリは、なぜ「胡瓜」と書く?(2007/08/17)
人魚のミイラが実在する?(2007/04/01)
スッポン(鼈)の故郷はどこ?(2007/02/23)
などです。

2011年5月30日

アンモナイトが生きている?

ico_weather_ame.gif / ico_weather_kumori.gif
 アンモナイトといえば、有名な絶滅動物ですね。恐竜が栄えたのと同じ時代に、繁栄しました。タコやイカの親類に当たる生き物です。海に、たくさん棲んでいました。
 誰でも、一度くらい、アンモナイトの復元図を見ているのではないでしょうか? ぐるぐると、ヒツジの角のように巻いた殻を背負い、多くの触手を生やしています。
 恐竜が滅びたのと同じ時期―白亜紀の終わり、約六千五百万年前―に、アンモナイトも、絶滅したといわれます。ところが、一説によれば、アンモナイトの生き残りが、現代にもいるといいます。その生き残りとは、トグロコウイカだとされます。
 トグロコウイカは、深海に棲みます。そのため、普通は、人目に触れることはありません。食用に漁獲されることもありません。ほとんど知られない生き物です。
 トグロコウイカの外見は、普通のイカにそっくりです。復元図のアンモナイトとは、まるで似ていません。なのに、なぜ、「アンモナイトの生き残り」説が出るのでしょう?
 その秘密は、トグロコウイカの胴体部分にあります。胴体には、少し、膨らんだところがあります。その膨らみの中に、ぐるぐると巻いた殻が入っています。この殻の外見も、構造も、アンモナイトの殻に似ています。
 さらに、トグロコウイカには、興味深い特徴があります。頭部(眼のある部分)と触手とを、胴体の中に引っ込めることができるのです。この特徴は、アンモナイトと共通するといわれます。アンモナイトは、殻の中の胴に、頭部と触手を引っ込めました。
 アンモナイトの栄えた期間は、長いです。中には、多様な種が、含まれます。後期の種の中には、外見が、現在のイカに似るものがあったかも知れないといわれます。殻がむきだしではなくて、イカのような肉質で覆われていた、という訳です。
 ぐるぐる巻いた殻が、肉質に覆われていたら......その姿は、まさに、トグロコウイカそのものでしょう。「アンモナイトの生き残り」といわれる理由が、わかりますね。
 トグロコウイカが、アンモナイトの生き残りなのかどうかは、確定していません。もし、そうだとしたら、やはり、深海には、古代のロマンがあると言えますね。
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、トグロコウイカは載っていません。トグロコウイカに似たコウイカ、シシイカ、スジコウイカ、ヒメコウイカなどが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、深海に棲む古代的な生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
日本初の大発見、セイスイガイ(勢水貝)(2010/06/21)
貝類は、昔、ミミズだった? カセミミズ(2009/09/25)
ウミユリ(海百合)は、海底に咲く花?(2008/08/25)
シーラカンスの新種?発見(2007/11/15)
ラブカはなぜ「生きている化石」か?(2007/01/27)
などです。

2011年5月27日

属名で混乱中、ヒエンソウ(飛燕草)の仲間たち

ico_weather_kumori.gif / ico_weather_ame.gif
 花屋さんなどで、デルフィニウムという花を見たことがありませんか? 多くの場合、青い花が、旗竿のように長い茎に、たくさん付いています。花の色は、黄色やピンクのこともあります。華やかなので、パーティ会場などに、よく使われる花です。
 デルフィニウムとは、一種の植物だけを指す名ではありません。キンポウゲ科デルフィニウム属に属する種の総称です。デルフィニウムDelphiniumという名は、ラテン語の学名に由来します。この属の植物は、もとは、日本には、自生しませんでした。
 現在の日本には、外国から帰化したデルフィニウム属があります。普通に見られるデルフィニウムは、栽培品種です。いくつかの野生種を交配して、品種改良したものです。
 デルフィニウム属は、日本語名で、オオヒエンソウ属と呼ばれることもあります。ところが、この名は、確定したものではありません。チシマヒエンソウ属という呼び方もあります。さらには、ヒエンソウ属と呼ばれることもあります。
 前記の日本語の属名のうち、「ヒエンソウ属」だけは、間違いです。それには、以下のような理由があります。
 日本語名を、ヒエンソウという種があります。この種は、以前、ラテン語の学名を、Delphinium ajacisといいました。デルフィニウム属だったのですね。それが、分類が変わりました。現在の学名は、Consolida ajacisです。属は、Consolida属になりました。
 現在では、ラテン語の学名Consolida属のほうが、「ヒエンソウ属」にされています。デルフィニウム属のほうの日本語名は、定まっていません。
 ヒエンソウ属と、デルフィニウム属とは、近縁です。同じキンポウゲ科です。外見も似ます。このため、現在でも、一緒くたに「デルフィニウム」と呼ばれることが多いです。
 他に、まとめて、ラークスパー(英語名larkspurに由来)、ヒエンソウなどと呼ばれることもあります。チドリソウ(千鳥草)という名が、使われることもあります。
 チドリソウの名を、これらの属に使うのは、好ましくありません。別に、ラン科の植物で、この名を持つものがあるからです。紛らわしい名は、避けたほうがいいですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、デルフィニウム属の一種であるセリバヒエンソウが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、紛らわしい名を持つ植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ウメじゃない梅がある?(2011/02/18)
雪割草【ゆきわりそう】と、ユキノシタは、違う? 同じ?(2011/02/4)
楓【かえで】? いえ、楓【ふう】の木です(2010/11/29)
桂【けい】とは、どんな植物?(2010/11/22)
忘れ草【わすれぐさ】とは、どんな植物?(2010/08/25)
などです。

2011年5月23日

ホオグロヤモリは、国際派?

ico_weather_kumori.gif / ico_weather_ame.gif

 生き物の中には、分布が広い種も、狭い種もいます。メディアで話題になるのは、分布が狭い種が多いですね。単純に、珍しいからです。けれども、分布が広い種の生態が面白くないかといえば、もちろん、そんなことはありません。
 今回は、分布が広い種を取り上げてみましょう。ホオグロヤモリです。
 ホオグロヤモリは、爬虫類のヤモリの一種です。有鱗目【ゆうりんもく】ヤモリ科ナキヤモリ属に属します。世界中の熱帯・亜熱帯地域に、広く分布します。日本の南西諸島(徳之島【とくのしま】以南)と、小笠原諸島にも、分布します。
 この種は、昔から、全世界的に分布していたのでしょうか? そうではないといわれます。もとは、熱帯アジアのどこかが故郷だと考えられています。
 原産地がどこかは、わかっていません。分布域が、あまりにも広いためです。
 なぜ、ホオグロヤモリは、世界中の熱帯と亜熱帯に、分布を広げられたのでしょうか? それには、ヒトが関わっていると推定されています。
 人間が、意識して、ホオグロヤモリの分布を広げたわけではないでしょう。家畜ではありませんからね。人間が移住する時、知らないうちに、家財道具などに付いてきたのだろうと考えられています。体が小さいために、気づかれにくいのでしょう。
 日本の南西諸島や、小笠原諸島にいるホオグロヤモリも、ヒトの移住にともなって入ってきたといわれます。いつ、どこから、どのように来たのかは、不明です。
 熱帯・亜熱帯の人家では、ホオグロヤモリは、平凡な生き物です。自然の林より、人家に多く棲みます。彼らは、ヒトには害をなしません。それどころか、人間の役に立ちます。人家の害虫を食べてくれるのです。そのためか、幸運の象徴とみなす地域が多いです。
 人家に棲むおかげで、彼らは、観察しやすい生き物です。仲間同士で鳴き交わしたり、頭や尾を振ったりする行動が見られます。
 東南アジアのホテルなどで見るヤモリは、多くが、ホオグロヤモリです。旅行先で会えたら、幸運の象徴だと思って、観察してみるのも、面白いと思います。
図鑑↓↓↓↓↓には、ホオグロヤモリが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、ヤモリの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
パプア・ニューギニアで、五十以上の新種を発見か?(2009/03/27)
大都会のヤモリ(2007/07/07)
雌(メス)しかいないトカゲがいる?(2007/03/06)
家を守る守宮(ヤモリ)(2006/04/10)
などです。

2011年5月20日

芝【しば】と柴【しば】との違いは?

ico_weather_hare.gif


 日本の昔話を聞いて、疑問に思ったことがありませんか? よく、「お爺さんは山へ、しば刈りに」と語られますね。あの「しば」とは、何でしょうか?
 お爺さんが刈りに行く「しば」は、漢字で書けば、「柴」です。芝生の「芝」とは違います。柴【しば】とは、小さい木のことです。特定の種を指す言葉ではありません。
 昔は、柴を刈りに行くことが、普通の労働でした。薪【たきぎ】などにするためです。
 では、芝生の「芝」のほうは、どんな植物でしょうか?
 じつは、芝【しば】のほうも、一種だけを指す言葉ではありません。丈の短い草のことを、「芝」と総称します。そのうえ、ややこしいことに、正式な日本語の種名として、「○○シバ」と付く種が、いくつもあります。しかも、互いに近縁とは限りません。
 それらのうちで、有名なのは、正式な日本語名(標準和名)を、シバという種でしょう。イネ科シバ属に属する種です。北海道から沖縄まで、日本に広く自生します。
 標準和名シバは、伝統的に、日本の芝生に使われてきました。イネ科の他の種も、芝生に使われます。コウライシバ、コウシュンシバ、ギョウギシバなどの種です。
 コウライシバと、コウシュンシバとは、シバと同じくイネ科シバ属です。ギョウギシバは、イネ科ギョウギシバ属に属します。これら三種は、どれも、日本に自生する種です。他に、日本に自生しない種を使って、芝生を作ることもあります。
 芝生を作るには、それぞれ、その環境に合わせて、種を選びます。どこの芝生も同じ種、というわけではありません。複数の種を、一か所の芝生に使うこともあります。
 園芸業界では、標準和名シバのことを、野芝【のしば】と呼ぶようです。園芸店で高麗芝【こうらいしば】と呼ばれるのは、ほとんどが、標準和名コウライシバではなく、「コウシュンシバ」のほうです。紛らわしいですね。
 標準和名コウライシバは、園芸店では、本高麗【ほんこうらい】、キヌシバなどと呼ばれます。同じように、園芸店では、ギョウギシバをバーミューダグラスと呼んだりします。園芸用語と、生物学で使う言葉とは、往々にして異なります。注意が必要ですね。


図鑑↓↓↓↓↓には、標準和名シバ、ギョウギシバが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事でも、イネ科の植物を取り上げています。また、イネ科の植物に依存して暮らす生き物も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
カヤという草はない?(2011/01/28)
鳥の巣? いえ、カヤネズミの巣です(2009/10/02)
茅の輪【ちのわ】くぐりの「茅」とは、どんな植物?(2007/06/29)
クモにも母性愛がある? (2007/05/09)
などです。

2011年5月16日

アブラムシの不思議な生態

ico_weather_kumori.gif


 昆虫の中に、アブラムシと呼ばれるグループがいます。農業や園芸をやる方は、御存知でしょう。農作物や、園芸植物の害虫として、有名です。
 ちょうど今頃の季節から、アブラムシたちは、猛威をふるい始めます。農業や園芸をやらない方でも、植物の若芽の部分を見てみて下さい。小指の先より小さい昆虫が、びっしりと、付いていませんか? それが、たいてい、アブラムシの仲間です。
 生物学的には、アブラムシとは、カメムシ目【もく】アブラムシ上科【じょうか】に属する種の総称です(分類には、異説もあります)。まったく違うグループの昆虫を、方言名などで、アブラムシと呼ぶことがあります。注意して下さい。
 アブラムシの仲間は、観察しても、面白くないと感じる方が、多いでしょう。彼らの多くは、とにかく、動かないからです。それは、彼らの食べ物と、関係があります。
 彼らの食べ物は、植物の汁です。植物に口を突き刺して、栄養のある汁を吸います。いったん、植物の上に居着いてしまえば、動く必要はありませんね。
 ところが、アブラムシの生活は、よく観察すれば、とても面白いことがあります。
 春から夏にかけて、アブラムシは、爆発的な勢いで殖えます。いつ、どうやって、こんなに繁殖するのでしょう? 調べてみると、この時期のアブラムシには、雌(メス)しかいません。雄(オス)と交尾をしなくても、すべての雌が、次々に子を産みます。
 これでは、爆発的に殖えるわけですね。雄と雌とが互いを探して、出会って、交尾をして、という手間がありません。そのうえ、すべての個体が、繁殖できます。
 アブラムシには、雌しかいないのでしょうか? 不思議なことに、秋になると、雄が現われます。雌から雄が生まれるのですね。その雄が、雌と交尾します。
 雄と交尾した雌は、子ではなく、卵を産みます。この卵が、冬を越します。親のアブラムシは、冬に、みな死んでしまいます。
 アブラムシは、「仲間の数を増やすこと」と、「厳しい冬を越すこと」とを両立するために、この方法を編み出したようです。不思議で、巧みな生態ですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、クリオオアブラムシが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg
インターネット生物図鑑-zukan.net-
http://www.zukan.net
ぜひご利用下さい。

過去の記事で、アブラムシの敵や味方になる生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
肉食性のチョウ(蝶)がいる?(2010/08/09)
アリが植物に登るのは、何のため?(2010/04/16)
果実? いえ「虫こぶ」です、イスノキ(2009/10/19)
テントウムシのおしゃれには意味がある(2007/02/09)
などです。

2011年5月13日

緑のない植物がある?

ico_weather_hare.gif


 新緑の季節ですね。緑は、植物を表す色です。緑のない植物なんて、普通は考えられませんね。ところが、中には、まったく緑色を持たない植物も、存在します。
 そのような植物のうちでは、ギンリョウソウが有名です。日本に自生する種です。
 ギンリョウソウは、森林の下の土に生えます。茎も、花も、果実も、何もかも真っ白です。まさに、「透き通るような白」です。キノコのようにも見えます。
 ギンリョウソウは、キノコではありません。では、なぜ、こんなに真っ白なのでしょうか? 葉緑体【ようりょくたい】を持たないからです。葉緑体は、植物の緑のもとですね。
 葉緑体は、光合成することによって、植物の栄養を作っています。それを持たないなら、ギンリョウソウは、どうやって栄養を得ているのでしょうか?
 秘密は、菌類―キノコの仲間―にあります。ギンリョウソウは、土の中で、菌類に寄生しています。菌類から栄養をもらって、生きています。
 このような植物は、菌従属栄養【きんじゅうぞくえいよう】植物と呼ばれます。腐生【ふせい】植物と呼ばれることもあります。最近は、腐生植物という呼び方は、あまりされなくなりました。誤解されそうな呼び方だからです。
 以前、ギンリョウソウの仲間は、「腐ったもの(腐葉土など)から生える」と考えられました。このために、腐生植物という名が作られました。けれども、それは、間違いだとわかりました。腐生植物という名は、ふさわしくありませんね。
 ギンリョウソウは、分類も揺れています。図鑑やサイトにより、属する科が違います。イチヤクソウ科、シャクジョウソウ科、ツツジ科と、三つの説があります。現時点では、はっきり「どの科が正しい」とは言えません。
 ギンリョウソウ(銀竜草)の名は、どこから付いたのでしょうか? 白い茎の上に、釣鐘型の白い花が咲くのを、「銀の竜」にたとえたようです。格好いい名ですね。
 この草には、「水晶蘭」という別名もあります。もとは、中国語での呼び名です。美しい名ですね。そのために、日本の一部の草花愛好家にも、使われています。


図鑑↓↓↓↓↓には、ギンリョウソウが掲載されています。
ban_zukan.net.jpg