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2010年9月 3日

クズ(葛)の葉は、「うらみ」がましい?

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 クズは、秋の七草の一つに挙げられますね。秋の七草は、万葉集の山上憶良【やまのうえのおくら】の歌に由来します。奈良時代から、はるばる現代にまで伝わっているわけです。日本の文化遺産の一つでしょう。
 けれども、クズの花をしげしげと眺めたことのある人は、少ないのではないでしょうか? クズは、葉がよく茂るので花が隠れやすいのですね。
 クズの花は、フジ(藤)の花と形が似ています。同じマメ科だからです。房になるところも、似ていますね。ただ、色は違います。クズのほうが赤っぽいです。
 フジの花は、ぶら下がって咲きますね。クズの花は、それと対照的に房を持ち上げて咲くことが多いです。時には、つるの具合で下がって咲くこともあります。
 クズの花は、食べられることを御存知ですか? ゆでて酢漬【すづけ】にしたり、天ぷらにしたりすると美味しいそうです。目に美しく、香りも良く、味も楽しめる一品です。クズが雑草になって、困っているなら、試してみたいものですね。
 万葉歌人の山上憶良は、クズの花を愛でました。しかし、他の歌人たちは、クズの花よりも、葉を重視したようです。特に目立つ葉とは思えないのになぜでしょう?
 それは、クズの葉の裏が白いことに、理由があります。風が吹くと、葉がめくれて、白い裏が見えますね。その様子に、秋らしい、わびしい風情を感じたようです。裏が見える「裏見」と「恨み」とを掛け言葉にした和歌がたくさんあります。
 有名な歌として、『恋しくばたずね来てみよ和泉【いずみ】なる信太【しのだ】の森のうらみ葛の葉』があります。これは、「キツネがヒトの女性に化けて、ヒトの男性と結婚した」伝説に関わる歌です。正体がばれたため、キツネは、この歌を詠んで、姿を消します。
 一般的には、このキツネの名は、「葛【くず】の葉」だとされます。これは、おそらく、後付けの説です。歌のほうが、先にあったのでしょう。恨みを述べるのに、「葛の葉」を使うところが、風流ですね。そこから、人々が、想像力を働かせたのだと思います。
 私たち現代人も、たまには、秋の草木に風流を感じたいですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、クズ、「葛の葉」伝説に登場するキツネが掲載されています。
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過去の記事でも、秋の七草を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
常夏の花とは、どんな花?(2008/8/20)
古代の「朝顔」は、キキョウ(桔梗)?(2008/08/08)
フジバカマは桜餅【さくらもち】の香り?(2007/9/10)
などです。

2010年8月30日

間違えられてばかり? コマドリ(駒鳥)の名前

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 日本には、三鳴鳥【さんめいちょう】と呼ばれる鳥がいます。ウグイスとオオルリとコマドリです。三種とも、日本で代表的な、鳴き声の美しい鳥です。
 三種のうち、コマドリは、鳴き声から種名が付いたといわれます。雄(オス)のさえずる声が、駒【こま】=ウマのようだからだそうです。現在では、ウマの鳴き声を聞くことが、珍しいですね。似ているかどうか、確かめるのは難しそうです(笑)
 コマドリは、日本周辺にしかいない種です。江戸時代、日本に来たヨーロッパ人が、ヨーロッパにコマドリを紹介しました。その時に、ラテン語の学名が付けられました。
 紹介者は、コマドリに、Erithacus komadoriという学名を付けた......つもりでした。日本語名の「コマドリ」を、学名に入れるよう、計らってくれたのですね。
 ところが、ここで間違いが起こります。コマドリに近縁なアカヒゲという種とコマドリとが、取り違えられました。このため、コマドリは、Erithacus akahigeという学名になってしまいます。Erithacus komadoriのほうは、アカヒゲの学名になりました。
 英国の童謡、マザーグースを知っている方は、不思議に思うかも知れませんね。マザーグースには、『誰がコマドリを殺したの?』という歌詞が登場します。この『コマドリ』は、日本のコマドリとは違う種なのでしょうか? そのとおりです。
 ヨーロッパには、ヨーロッパコマドリという種が分布します。マザーグースなど、ヨーロッパの詩歌や物語に登場する『コマドリ』とは、ヨーロッパコマドリを指します。
 ヨーロッパコマドリは、日本のコマドリと近縁です。同じコマドリ属に属します。童謡などで、略して『コマドリ』にされてしまうのは無理もありません。
 北米大陸―カナダ、米国、メキシコなど―にも、しばしば『コマドリ』と呼ばれる種が、分布します。こちらも、本当の種名はコマドリではありません。「コマツグミ」です。コマツグミは、日本やヨーロッパの『コマドリ』とはやや遠縁です。ツグミ属に属します。
 外国の文学作品などに、『コマドリ』が登場したら、それは、おそらく、日本のコマドリと同種ではありません。種の同定には、気を使わなければいけませんね。

図鑑↓↓↓↓↓には、コマドリ、アカヒゲが掲載されています。
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過去の記事で、日本三鳴鳥の中の、ウグイス、オオルリを取り上げています。また、日本のコマドリに近縁な新種も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アフリカ中部で、新種の鳥を発見(2008/08/19)。※日本のコマドリに近縁な新種が、アフリカで発見されました。
オオルリは瑠璃色【るりいろ】じゃない?(2007/08/03)
梅にウグイス? いえメジロです(2007/03/12)
などです。

2010年8月25日

忘れ草【わすれぐさ】とは、どんな植物?

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 今の季節、野へ行くと、点々と橙【だいだい】色の花が咲くのが見られます。ユリに似た花です。それらは、ユリではなく、カンゾウ(萱草)の仲間です。
 「かんぞう」と呼ばれる植物には、いくつかの種が含まれます。まったく同名で、漢字名が違うカンゾウ(甘草)という種もあります。紛らわしいため、「萱草」のほうのカンゾウは、近年、ワスレグサという別名で呼ばれることが多いです。
 ワスレグサ(忘れ草)とは、万葉集にも登場する名です。由緒ある名ですね。
 ところが、こちらの名は、ワスレナグサ(忘れな草)と紛らわしいです。ワスレグサとワスレナグサとは、一字違いでも、まったく違う(遠縁の)植物です。
 「忘れ草」とは、意味深長な名ですね。「この花を見ると、憂いを忘れられる」からだといいます。「この花を食べると、憂いを忘れられる」説もあります。
 実際、この花は食べられます。中華料理で、金針菜【きんしんさい】というものを、食べたことがありませんか? あれは、ワスレグサ属の植物の花を干したものです。
 日本には、ワスレグサ属のうち、いくつもの種が分布します。それらのうち、「○○カンゾウ(萱草)」と名が付くものは、ホンカンゾウ(本萱草)という種の変種です。
 つまり、「種」としては「ホンカンゾウ」です。が、通常、その種名は使われません。変種名で呼ばれます。ノカンゾウ(野萱草)、ヤブカンゾウ(藪萱草)、ハマカンゾウ(浜萱草)などです。本家のホンカンゾウは、中国に自生するものに対して使われます。
 ホンカンゾウの変種には、それぞれ特徴があります。花弁の数が多く、ごちゃごちゃした花が咲くのはヤブカンゾウです。海岸に咲くのは、たいてい、ハマカンゾウです。海岸以外の野山で、ユリにそっくりな花が咲くのは、おおむね、ノカンゾウです。
 「憂いを忘れる」ワスレグサの伝承は、中国から伝わったといわれます。中国の古い文献に、『萱草忘憂』とあります。中国の詩人も、ワスレグサ(忘憂草)を詠みました。
 中国の詩人が詠んだのは、ホンカンゾウでしょう。日本の万葉びとが詠んだのは、ノカンゾウでしょうか、ヤブカンゾウでしょうか? 想像が広がりますね。

図鑑↓↓↓↓↓には、ホンカンゾウ(本萱草)の変種であるノカンゾウ(野萱草)、ヤブカンゾウ(藪萱草)、ハマカンゾウ(浜萱草)が掲載されています。
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過去の記事でも、万葉集に登場する植物のうち、食べられるものを取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アサザ、あざさ、どちらが本当?(2010/7/02)。※若葉が食用にされたこともありました。
平城京の野菜? ニラ(韮)(2010/04/30)
可憐なだけでは生きていけない、カタクリ(2008/03/24)
などです。

2010年8月23日

海の毒まんじゅう? イイジマフクロウニ

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 ウニといえば、とげとげの姿でおなじみですね。ウニの仲間は、海藻を食べるおとなしい動物です。そのために、あんな防御方法が必要なのでしょう。
 中には、棘【とげ】だけでなく、毒まで持つウニがいます。例えば、フクロウニ目【もく】に属する種が、そうです。フクロウニ目の種は、主に、深海に棲んでいます。ですから普通は、ヒトの害になることはありません。
 一種だけ、ダイバーに恐れられる種がいます。イイジマフクロウニという種です。この種は、浅い海にいるからです。フクロウニ目には珍しいことです。
 イイジマフクロウニは、日本近海に分布するウニの中では大型です。赤紫のような、独特の色をしています。動く時に、ふにゃふにゃと、少しずつ形がゆがみます。これらの特徴があるため、他種のウニと間違えることは、まずありません。
 イイジマフクロウニがふにゃふにゃしているのは、体が軟らかいためです。普通のウニは、棘の下に、硬い殻があります。フクロウニ目の種は、この殻がまるで袋のように、軟らかいのですね。だから、「フクロ」ウニです。
 殻が軟らかいかわりでしょうか、フクロウニ目の種は、棘に毒を持ちます。イイジマフクロウニの場合、ヒトが刺されると、時に失神するほど痛いそうです。決して、触ってはいけません。ヒトに対して、本当に危険な種の一つです。
 こんなに強力な武器があるなら、イイジマフクロウニは無敵に見えますね。ところが、彼らにも、敵はいます。意外なことに、それは、小さなカニの仲間です。
 海中のイイジマフクロウニを観察すると、縞【しま】模様のカニが載っていることがあります。ゼブラガニというカニの一種です。彼らは、毒棘を持つウニの上で、生活します。イイジマフクロウニ、ラッパウニなどです。
 ゼブラガニは、ウニの毒棘に守ってもらっています。なのに、彼らは、毒棘をむしって、食べてしまいます。このため、「はげ頭」や「モヒカン」状にされているウニが、少なくありません。ウニにとっては、災難ですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、イイジマフクロウニが掲載されています。
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過去の記事でも、ウニの仲間を取り上げています。ウニと同じ棘皮動物【きょくひどうぶつ】のヒトデなども、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
オニヒトデは、サンゴ礁の悪役?(2008/07/18)
突然の人気者? スカシカシパン(2008/01/10)
棘だけでは足りない? ウニの防御作戦(2007/08/11)
などです。

2010年8月20日

万葉時代のハイカラ植物? ケイトウ

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 ケイトウ(鶏頭)という植物がありますね。日本人なら、おそらく、誰もが見たことがあるでしょう。名のとおり、ニワトリ(鶏)のとさかに似た花が咲きます。花壇などに、よく植えられます。野生化して、道端などに咲いているものもありますね。
 ケイトウは、日本の原産ではありません。原産地は、熱帯アジアのどこかだといわれます。はっきりとは、わかっていません。古い時代から、栽培されているからです。
 ケイトウが日本に入ったのは、奈良時代以前です。なぜ、それがわかるかといえば、万葉集にケイトウが登場するからです。
 万葉集では、ケイトウは、「からあゐ【からあい】」と呼ばれます。漢字で書けば、「韓藍」です。「韓の国から来た藍」という意味ですね。当時のケイトウは、外国から伝わったばかりだったのでしょう。知識人が誇る、ハイカラな植物だったのだと思います。
 熱帯アジア原産の植物が、千三百年ほども前にすでに日本に来ていたとは驚きですね。単に花を観賞するためだけに、ケイトウは伝えられたのでしょうか?
 そうではないようです。ケイトウは、染色にも使われた形跡があります。万葉集の歌に、『秋さらばうつしもせむと わが蒔【ま】きし 韓藍の花を』とあるからです。この歌にある『うつし』とは、「色を移す」意味です。
 万葉の人は、着物を染めるのに植物を使いました。ケイトウも、普通に考えれば、衣服の染色に使ったのでしょう。だから、染料植物と同じく、藍【あい】の名で呼びました。
 けれども、ひょっとしたら、違う染色に使ったかも知れません。食べ物の染色です。
 ケイトウの原産地に近い(と思われる)インドでは、ケイトウを、赤いカレーを作るのに使ったといいます。現在でも、インド・パキスタン国境地帯のカシミールでは、「料理にケイトウの花を使う」と聞いています。アフリカでも、ケイトウを食べるそうです。
 日本でも、ケイトウの花が、食用にされたことがありました。奈良時代より、だいぶ下りますが、江戸時代初期の料理書に、ケイトウのレシピが載っています。
 万葉の人は、どんなふうにケイトウを使ったのでしょう? 訊いてみたいですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、ケイトウが掲載されています。
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過去の記事でも、昔、染色に使われた植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
雑草か食草か? コナギとミズアオイ(2010/06/04)※万葉集で、『苗代のこなぎが花を衣【きぬ】に摺【す】り』と歌われます。
アヤメ? いえ、カキツバタです(2010/05/14)※万葉集で、『かきつばた 衣【きぬ】に摺【す】りつけ』と歌われます。
源氏物語のヒロインも嘆く? ムラサキの運命(2008/06/06)
ツユクサの青は、染めものに使える?(2007/08/29)
などです。

2010年8月16日

カワウソは、河童【かっぱ】の正体?

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 夏なので、妖怪の話をしましょうか(笑) 河童【かっぱ】の話です。
 河童は、日本の昔話でおなじみですね。ヒトの子どもにちょっと似ていて、頭にお皿があり、背中に甲羅があるといわれます。水中に棲んで、陸にも上がります。このような生き物は、少なくとも現在の日本には生息していません。
 けれども、日本には、「河童のミイラ」やら「河童の手」といわれるものが、いくつも残っています。これは、どういうわけでしょうか?
 「河童の手」といわれるものを、私は、いくつか見たことがあります。それらのうちには、獣のような毛と爪とが生えたものがありました。明らかに、哺乳類の四肢です。私が見た限りでは、カワウソの手(前足)のようでした。
 カワウソ(川獺)は、河童の正体として、よく名が挙げられます。カワウソと河童とは、共通点が多いからです。水中に棲み、巧みに泳ぐこと。陸にもよく上がること。遊び好きで、時に、自分より大きい動物にもちょっかいを出すこと、などです。
 体の構造だけ見れば、カワウソと河童とは、似ていません。カワウソには、頭のお皿も、背中の甲羅もありません。河童の外見は、カメ(亀)のスッポンにより似ます。
 昔、電灯がなかった頃、夜にものの正体を見極めるのは難しいことでした。まして、水中のものなど、ほとんど形がわからなかったでしょう。水中や水辺の怪しげな影は、みな、河童にされたのではないでしょうか。
 「河童といわれるものを、捕まえてみたらカワウソだった」ことはありそうですね。正体がカワウソだとわかっても、「記念にするために、あるいは、見世物にするために、手(前足)を取っておいた」こともありそうです。
 現在の日本では、河童の目撃談は、聞かれなくなりました。これは、ニホンカワウソがいなくなったのと無関係ではないでしょう。ニホンカワウソは、限りなく絶滅に近い状態です。目撃されたら、河童の目撃談以上に、ニュースになるでしょう。
 ニホンカワウソを失ったことで、日本人は、川の文化の一つも失ったのだと思います。
図鑑↓↓↓↓↓には、ニホンカワウソが掲載されています。
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過去の記事でも、妖怪の正体といわれる生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
実盛虫【さねもりむし】の正体は、ウンカ?(2008/08/06)
ジョロウグモの理【ことわり】(2006/10/19)
妖怪の正体見たりウシガエル(牛蛙)(2006/08/07)
などです。

2010年8月13日

古代の「ははそ」の正体は?

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 同じ種の生き物でも、昔と今とでは呼び名が違う、という場合がありますね。違いすぎて、現代ではどの種に当たるのか、決めかねることもあります。
 例えば、万葉集などで、「ははそ」と呼ばれる植物があります。漢字では、柞【ははそ】などと書かれます。現代の日本では、正式な名称をハハソという植物はありません。
 この植物の正体については諸説がありました。けれども、現在では、ほぼ一つの説に集約されています。「ははそ」はコナラ(小楢)だという説です。
 コナラは、ブナ科に属する樹木です。いわゆる「どんぐり」が実る木の一種です。
 なぜ、コナラが「ははそ」だとわかったかといえば、現在でも方言でコナラを「ははそ」と呼ぶ地方があるからです。少しなまって、「はさこ」、「ほうそ」、「ほそ」、「ほうそなら」などと呼ぶ地方もあります。
 ところが、万葉集には、「こなら」という植物名も登場します。これが、混乱の原因でした。「ははそ」と「こなら=現在のコナラ」とは、別種ではないかというわけです。
 この問題を解く鍵は、万葉集の「こなら」の歌が、東歌【あずまうた】であることです。東歌とは主に、奈良時代以前、中部地方以東(東国)の人々が詠んだ歌です。
 当時は、近畿地方が都でしたね。ですから、近畿地方の言葉が「標準語」でした。東国で使われる言葉は、「田舎の方言」という扱いでした。つまり、東歌にある「こなら」は、「ははそ」の方言名だったのです。現代では、逆転してしまいましたね。
 話は、これで終わりません。昔の「ははそ」には、現代のコナラ以外の種も含まれるようです。どうやら、昔の人は、コナラに近縁で、姿の似た数種もまとめて「ははそ」と呼んだらしいのです。それは、ミズナラ(水楢)、クヌギ(櫟)などの種です。
 ミズナラにも、クヌギにも、「ははそ」、「ほうそ」などの方言名が残っています。
 ややこしいことに、古代のクヌギには、「ははそ」より、もっと一般的な呼び名がありました。「つるばみ」という名です。主に、クヌギの果実―これも、どんぐりです―を指す場合に、「つるばみ」としたようです。古代の名を探るのは難しいですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、コナラが掲載されています。また、ミズナラや、クヌギも載っています。
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過去の記事でも、万葉集に登場する樹木を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
「つまま」の正体は、タブノキ?(2010/06/11)
年に二回、花が咲く? エゴノキ(2010/05/28)
万葉集の「むろのき」とは、ネズミサシ?(2010/04/23)
などです。

2010年8月 9日

肉食性のチョウ(蝶)がいる?

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 近年は、外国産の昆虫が、日本に紹介されることが増えましたね。例えば、フンコロガシなどは、多くの日本人が知っているはずです。「なぜ、日本にはあのような、風変わりで面白い昆虫がいないのか?」と、残念に思う方もいるでしょう。
 じつは、日本にも風変わりで、面白い昆虫はいます。ただ、あまり有名でないだけです。ここで、ゴイシシジミというチョウの一種を紹介しましょう。
 ゴイシシジミは、一見、地味なチョウです。外見には、変わったところはありません。シジミチョウ科の一種です。名のとおり、翅【はね】の裏側に、碁石【ごいし】のような斑点模様があります。このチョウの、どこが変わっているのでしょうか?
 この種の特徴は、食べ物にあります。なんと、ゴイシシジミは、肉食性です。幼虫も成虫も、動物質のものを食べます。普通のチョウは、幼虫も成虫も、植物食ですよね。
 幼虫の食べ物は、アブラムシの仲間です。タケ(竹)やササ(笹)に付くアブラムシの仲間を、とらえて食べてしまいます。成虫の食べ物も、アブラムシに由来するものです。成虫は、アブラムシが分泌する甘い汁―『甘露【かんろ】と呼ばれます』―を吸います。
 普通のチョウの成虫は、花の蜜を吸いますね。だから、花のあるところに、チョウが飛ぶわけです。ゴイシシジミは、花に行く必要がありません。このため、花壇などでゴイシシジミを見ることは少ないです。
 ゴイシシジミが見られるのは、タケやササがあるところです。幼虫も成虫も、そこに食べ物があるからですね。日本では、それほど希少なチョウではない、とされています。
 肉食性のチョウというのは、世界的に見ても、珍しいです。まったくいないわけではありません。主に、シジミチョウ科の中に、何種か確認されています。
 肉食性のチョウには、ゴイシシジミと同じく、アブラムシの仲間を食べる種が多いです。アリの幼虫や、カイガラムシを食べる種もいます。
 私たちの身近にも、ゴイシシジミのような、変わったチョウがいるのですね。日本の自然もじっくり観察すれば、まだまだ、面白いものがあるでしょう。
図鑑↓↓↓↓↓には、ゴイシシジミが掲載されています。
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過去の記事でも、シジミチョウ科のチョウを取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
トラフシジミは、草食性のトラ(虎)?(2009/11/20)
クロマダラソテツシジミ(2008/07/22)
冬に飛ぶ蝶(チョウ)もいる?(2006/01/13)
などです。

2010年8月 6日

ヒシ(菱)は、女神さまの好物?

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 菱形【ひしがた】と呼ばれる形がありますね。◆のような形です。この名は、ヒシという植物に由来します。ヒシは、葉や果実の形が、◆のような形をしています。
 ヒシは、水草です。淡水の池や沼に生えます。スイレンなどと同じく、葉を水に浮かべます。根は、水底の土にあります。長い茎で、水上の葉とつながっています。
 ヒシの果実は、食用になります。ゆでたり蒸したりして食べるそうです。
 日本では、少なくとも奈良時代から、ヒシの果実を食べていたと考えられます。万葉集に、ヒシが登場するからです。『君がため浮沼【うきぬ】の池に菱摘むと』と詠まれています。「あなたのために、わざわざ水上のヒシを摘むんだよ」という意味ですね。
 もちろん、摘んだヒシ(の果実)は、食用にしたのでしょう。生活が厳しい時代に、食べられる物を、食べずに済ませたとは考えにくいです。
 アイヌの人たちも、ヒシを食用にします。アイヌ語では、ヒシの果実をペカンペといいます。「水の上にあるもの」という意味だそうです。
 ヒシを収穫する前に、アイヌの人たちは、お祭りをします。ヒシの実りを感謝し、採取のお許しを願うお祭りです。それだけ、ヒシが重要な食料なのですね。
 ヒシが分布するところでは、どこでも、食用に重視されたようです。日本のヒシと同じ種は、東アジアに広く分布します。「中央アジアや南アジアにまで分布する」説もあります。正確には、ヒシの分布は、わかっていません。
 日本のヒシと同種、または、近縁のヒシ属の一種が、中央アジアや南アジアに分布するのは確かです。ラテン語の学名では、Trapa bispinosa【トラパ・ビスピノサ】という種だろうといわれます。この種も、現地で食べられています。
 Trapa bispinosaの果実は、「ある女神の好物だ」と言い伝えられます。インドの女神、ラクシュミーです。ラクシュミーは、仏教に取り入れられて、吉祥天となりました。
 仏教は、いにしえの平城京で栄えましたね。奈良の薬師寺に、吉祥天の美麗な図が伝わります。吉祥天は、日本のヒシもお気に召したでしょうか。
図鑑↓↓↓↓↓には、ヒシが掲載されています。
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過去の記事でも、水辺の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
雑草か食草か? コナギとミズアオイ(2010/06/04)
スイレンとハスはどう違う?(2006/07/13)
たくましく生きる食虫植物タヌキモ(2005/11/04)
などです。

2010年8月 2日

刺す海藻? いえ、クラゲです

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 海水浴の季節ですね。今回は、海水浴の時注意すべき生き物を紹介しましょう。
 岩場の周りを泳いだ後で、皮膚が痛んだり、みみず腫れのようになったりしたことはありませんか? 「クラゲに刺された」と思うかも知れませんね。でも、海中を見ても、クラゲらしきものがいないとします。では、何に刺されたのでしょうか?
 クラゲの仲間には、一見、クラゲに見えない種もいます。岩場をよく見てみましょう。鳥の羽根のようなものが、生えていないでしょうか? だとしたら、それに刺された可能性があります。「羽根のようなそれ」は、おそらくクラゲの仲間です。
 羽根に似たクラゲの仲間には、「○○ガヤ」という種名のものが多いです。シロガヤ、クロガヤ、フトガヤなどです。ここに挙げた三種は、どれもヒトを刺します。
 「○○ガヤ」の多くは、刺胞動物門【しほうどうぶつもん】ヒドロ虫綱【ひどろちゅうこう】軟クラゲ目【もく】ハネガヤ科に属します。この仲間は、みなクラゲらしくない姿です。同じヒドロ虫綱には、刺すクラゲとして有名な、カツオノエボシが属します。
 ヒドロ虫綱に属する種が、すべて刺すわけではありません。ヒドロ虫綱には、ノーベル賞で有名になったオワンクラゲも属します。オワンクラゲが刺すとは聞きませんね。
 ハネガヤ科の「○○ガヤ」とオワンクラゲとは、比較的近縁です。ヒドロ虫綱の中で、同じ軟クラゲ目に属するからです。それにしては、ハネガヤ科の種とオワンクラゲとは、似ても似つきませんね。オワンクラゲは、クラゲらしい形です。
 「海藻に似た、刺すクラゲ」については、以前も、このコラムで取り上げています(海藻【かいそう】? いいえ、イラモはクラゲです(2007/07/16))。イラモとハネガヤ科の種とは、近縁のように見えますね。ところが、そうではありません。
 イラモは、刺胞動物門の中の、鉢虫綱【はちむしこう】に属します。ハネガヤ科の種とは、綱【こう】のレベルで分類が違います。たいへん大きな違いです。
 分類の違いはさておき、「刺す」点では、イラモもハネガヤ科の種も、注意すべき生き物です。海中の岩場で、それらしいものを見つけたら触らないほうがいいですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、シロガヤが掲載されています。
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過去の記事でも、ヒトを刺す刺胞動物【しほうどうぶつ】を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
海藻【かいそう】? いいえ、イラモはクラゲです(2007/07/16)
鰹(カツオ)を連れてくるクラゲがいる?(2007/05/14)
電気クラゲとはどんなクラゲ?(2006/08/01)
などです。

2010年7月30日

クヌギは、昆虫のレストラン?

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 お子さんたちは、夏休みに入りましたね。夏休みは、自然に親しむ良い機会です。昆虫採集などを、楽しみにされているかも知れませんね。
 お子さんたちに人気があるのは、クワガタムシやカブトムシです。これらの昆虫を捕るには、どこへ行けばよいでしょうか? そう、クヌギ林ですね。クワガタムシもカブトムシも、クヌギの樹液が大好きだからです。
 多くの昆虫が、クヌギの樹液に寄ってきます。ゴマダラチョウなどのチョウ(蝶)の仲間、スズメバチなどのハチ(蜂)の仲間、カナブンなどのコガネムシの仲間、ヘビトンボの仲間、ホシアシナガヤセバエなどのハエの仲間、その他たくさんです。
 クヌギの樹液が出るところは、まるで、昆虫のレストランです。でも、樹液は、いつもあるとは限りませんね。樹液は、樹木が傷ついた部分にしか出てきません。クヌギの「昆虫レストラン」は、たまにしか開店しないのでしょうか?
 そんなことは、ありません。最近の研究で、驚くべきことがわかりました。
 ボクトウガというガ(蛾)の一種がいます。この幼虫は、クヌギの木に、穴を開けて棲みます。けれども、クヌギの木を食べるのではありません。他の昆虫を食べます。クヌギの木を傷つけて、樹液を出させ、そこに集まる昆虫を食べるのです。
 以前、ボクトウガの幼虫は、クヌギの木を食べると思われていました。種名も、そこから付きました。ボクトウ(木蠹)とは、「木に食い入る」という意味です。
 それが、違ったのですね。ボクトウガの幼虫は、肉食でした。少しずつクヌギをかじって、常に樹液が出るようにします。「昆虫レストラン」を、常に開いておくわけですね。
 「レストラン」のお客にとって、ボクトウガの幼虫は、ありがたくて恐ろしいです。クヌギの樹液に夢中になると、自分のほうが食べられてしまうかも知れません。
 とはいえ、クワガタムシやカブトムシは、大きくて、強いですね。ボクトウガの幼虫は、彼らも食べてしまうのでしょうか? これについては、確認されていません。さすがに、食べられないようです。やはり、昆虫の王者ということでしょうか(笑)


図鑑↓↓↓↓↓には、クヌギ
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昆虫のクワガタの仲間、カブトムシの仲間、カナブンやハナムグリの仲間、スズメバチの仲間、ゴマダラチョウ、ホシアシナガヤセバエ、ヘビトンボも載っています。
過去の記事でも、クヌギの樹液に集まる昆虫を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
オオスズメバチ(2009/07/08)
トンボでないトンボがいる?(2006/07/31) ※ヘビトンボは、樹液に寄ります。
スズメバチは喧嘩に強い、でも寒さに弱い(2005/10/24)
などです。

2010年7月26日

日本最大の淡水魚とは?

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 日本で、最も大きくなる淡水魚とはどの種でしょうか?
 これは、答えるのが難しい質問です。生き物の体の大きさには、個体差があるからです。魚のように、水中のものはさらに難しいです。目撃情報が、あてにできないからです。
 釣り人に訊けばいい、とお考えですか? 釣り人の情報は、こと大きさに関しては、割り引いて考えなくてはなりません。諺【ことわざ】に言いますね、「逃がした魚は大きい」と。釣り人は、自分が釣った(あるいは、逃がした)魚は、大きく言うものです(笑)
 このような中で、あえて「日本最大の淡水魚」を決めるとすれば、それは、イトウではないかといわれます。
 イトウは、体長が1mを越えます。大型のものでは、2mを越えます。サケ科の一種です。多くのサケ科の種と同じく、川で生まれて、海で育ち、川で産卵します。
 現在、イトウの分布は、ほぼ北海道に限られます。青森県にごく少数が残っているようです。どちらにせよ、北方系の魚です。関東以南にはいません。
 イトウの大きさに匹敵する淡水魚となると、日本では、ハクレン、コクレン、アオウオ、ソウギョくらいしかいません。これら四種は、外来魚です。しかも、本州の利根川水系など、限られた水域にしかいません。北海道では見られません。
 日本在来の種で、北海道にいる巨大魚となれば、イトウでほぼ決まりです。
 南日本では、オオウナギが最大の淡水魚ではないでしょうか。オオウナギは、普通のウナギとは違う種です。以前、このコラムで取り上げましたね(ウナギとオオウナギとは、違う? 同じ?(2010/05/21))。
 じつは、昔は、北海道に、イトウに匹敵する大きさの淡水魚がいました。チョウザメの仲間です。チョウザメの仲間もサケのように、海で育って、川で産卵します。
 チョウザメの仲間は、研究が進む前に、日本では絶滅してしまいました。どの種のチョウザメが、日本にいたのかもはっきりしていません。
 イトウも絶滅が心配されています。チョウザメの二の舞にはしたくありませんね。


図鑑↓↓↓↓↓には、イトウ
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過去の記事でも、サケ科の魚を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ヤマメからニジマスが生まれる?(2007/09/20)
同じ種なのに名が違う? 桜鱒(サクラマス)と山女(ヤマメ)(2006/03/20)
森を育てるサケ(2005/09/13)
などです。

2010年7月23日

万葉集の「やますげ」の正体は?

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 和歌には、さまざまな動植物が詠まれますね。例えば、『万葉集』の植物だけでも、数十種が登場します。それらの動植物は、現代と同じ名とは限りません。
 『万葉集』の植物の中に、「やますげ」というものがあります。これの正体については、いろいろと議論されてきました。現在では「やますげ」は、一種の植物だけを指すのではないと解釈されています。大きく分けて「やますげ」には二種類あります。
 一つは、スゲの仲間の総称です。もう一つは、現在の名を、ジャノヒゲと呼ばれる種です。ジャノヒゲは別名でリュウノヒゲとも呼ばれます。
 ジャノヒゲは、森林の下の地面に、細長い葉をわさわさと生やします。スゲの仲間も、生える環境は違うものの、細長い葉を生やします。これらの葉が乱れている様子を、万葉の人(奈良時代以前の人)は、思い乱れる様子にたとえて歌いました。
 ジャノヒゲという種名を漢字で書けば、「蛇の髭」です。おかしいと思いませんか? ヘビ(蛇)には、髭【ひげ】なんてありませんよね?
 この謎は、別名のリュウノヒゲ(龍の髭)が解いてくれます。蛇(ジャ)という言葉は、ヘビを指すとは限りません。龍と書いて、ジャと読むこともあります。長崎県の方言などに残ります。つまり、ジャノヒゲの「ジャ」とは、東洋ふうの龍のことです。
 龍の絵を見ると、確かに髭【ひげ】がありますね。ジャノヒゲの葉が生える様子を、龍の髭のようだとしたわけです。この名を付けた人には、この草が、そんなに畏怖すべきものに見えたのでしょうか? 万葉びとの「思い乱れる」の感性とは違いますね。
 ジャノヒゲは、夏に白く小さな花を咲かせます。可憐な花です。その後には、瑠璃【るり】色の、美しい種子がみのります。花にも種子にも、龍を思わせるところはありません。あえて言えば、瑠璃色の種子を、龍の持つ宝珠に見立てたのでしょうか?
 山菅【やますげ】の名は、『枕草子』にも登場します。平安時代にも、ジャノヒゲは、風情がある植物とされたようです。種子以外には、目立つ草とは思えません。ジャノヒゲのどこが、日本人をこんなに惹きつけ続けているのでしょうね。

図鑑↓↓↓↓↓には、ジャノヒゲが掲載されています。また、カンスゲ、ハマスゲ、ヒゲスゲ、ミヤマカンスゲなどの、スゲの仲間も載っています。
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過去の記事でも、万葉集に登場する植物の正体を推理しています。また、ジャノヒゲと近縁なスズランも取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
スズラン(鈴蘭)は、ランではない?(2010/05/07) 万葉集の「むろのき」とは、ネズミサシ?(2010/04/23)
「ねつこぐさ」の正体は、オキナグサ?(2010/03/29)
などです。

2010年7月19日

最小の座を争う、ミソサザイとキクイタダキ

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 日本で最も小さい鳥は何という種でしょうか? 
 これについては、昔から議論があります。どんな生き物でもそうですが、体の大きさには、個体差があるからです。同じ種の中でも、体の大きい個体と小さい個体とがいます。ヒトでもそうですね。種同士で比べるなら、平均的な大きさで比べるべきです。
 ところが、野生の動物で、平均的な大きさを求めるのは難しいことです。たくさんの同種を捕まえて、大きさを測らなければならないからです。「最小の鳥」のように、小さな動物をとらえたり、大きさを測ったりするのは、特に難しいことです。
 現在のところ「日本最小の鳥」には、二種の候補があります。一種は、ミソサザイです。もう一種は、キクイタダキです。どちらも、全長が10cmくらいしかありません。スズメより小さいです。オオカマキリなどの大型の昆虫よりも小さいです(!)
 二種は、分類上は、それほど近縁ではありません。同じスズメ目【もく】ながら、科が違います。ミソサザイは、スズメ目のミソサザイ科に属します。キクイタダキは、スズメ目のウグイス科、または、キクイタダキ科に属します(学説により、科が違います)。
 近縁でなくとも、この二種にはいくつかの共通点があります。
 一つは、分布域が広いことです。二種とも、日本だけでなく、ユーラシア大陸に広く分布します。ミソサザイのほうは、北米大陸にまで分布します。ミソサザイも、キクイタダキも、日本とまったく同じ種がヨーロッパにまで分布します。
 もう一つ、食べ物も共通します。二種とも、昆虫やクモを主に食べます。これは、体が小さいことと関係します。昆虫やクモは、小さいわりに栄養がある食べ物です。小さな鳥にとっては、効率よく栄養が取れるわけですね。
 食べ物と違い、この二種の分布域が、なぜ広いのかはわかっていません。
 小さな鳥なのに、両種とも、各地の神話や伝説に登場することが多いです。小さな体で、いつも、元気いっぱいに動き回っているからでしょう。ミソサザイのほうは、鷦鷯【さざき】という名で、古事記や日本書紀にも登場します。

図鑑↓↓↓↓↓には、ミソサザイ、キクイタダキが掲載されています。
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過去の記事でも、「最小」といわれる生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
かわいい悪魔? イイズナ(2010/01/22)※イイズナは、最小の肉食獣といわれます。
鳥の巣? いえ、カヤネズミの巣です(2009/10/02)※カヤネズミは、日本最小のネズミといわれます。
サルの新亜種と、サンショウウオの新種(2009/07/14)※最小クラスのサンショウウオが発見されました。
などです。

2010年7月16日

浜辺の夜に恋の花? ハマオモト

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 ハマオモトという名を聞いたことがありますか? 植物の種名です。別名を、ハマユウといいます。こちらの名のほうが知られているでしょうね。
 この植物は、正式な日本語名が混乱しています。ハマオモトとハマユウとどちらが正式な日本語名なのか決まっていません。書籍やウェブサイトにより、ハマオモトのほうを正式名称とするものと、ハマユウを正式とするものがあります。
 歴史をたどると「はまゆふ」の名が万葉集に登場します。漢字では、浜木綿と書きます。白い花を、木綿【ゆう】という布にたとえた名です。
 ちなみに、ハマオモトのほうは、葉の形がオモト(万年青)という植物に似ることから名づけられました。
 名のとおりハマオモト(ハマユウ)は、浜に生えます。万葉集でも『み熊野の浦の浜木綿 百重なす 心は思へど直に逢はぬかも』と歌われます。これは、逢いたいのに逢えない人がいて心乱れる様子ですね。「はまゆふ」の花に託して表現しています。
 ハマオモトの花は、花弁が細長いです。雄しべと雌しべも、細長く、外に突き出ています。しべと花弁が入り乱れる様子は、心の乱れを表わすにふさわしいと思います。
 むろん、ハマオモトの花は、人間に歌われるために咲くのではありません。昆虫に花粉を運んでもらうために咲きます。その昆虫とは、スズメガの仲間といわれます。
 スズメガの仲間は、多くのガ(蛾)と同じく夜行性です。このために、ハマオモトの花は、夕方から開き始めます。同時に、香りを放ちます。香りと白い花の色とで、夜、見つけられやすいようになっています。
 スズメガの仲間は、空中にとどまったまま、長い口を伸ばして蜜を吸います。この状態で、スズメガの体に花粉を付けるにはどうしたらいいでしょう? ハマオモトは、雄しべと雌しべを長くしました。花の形には、ちゃんと意味があるのですね。
 植物にとって、花粉を運んでもらうのは、繁殖を手伝ってもらうことです。恋の手伝い、と言えるかも知れません。そう考えると、万葉集の歌はますます意味深いですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、ハマオモト(ハマユウ)が掲載されています。
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過去の記事でも、夜に花が咲く植物を紹介しています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ガを誘惑する? カラスウリ(2009/08/31)
ネムノキは、本当に眠る?(2009/07/24)

2010年7月12日

恐るべき?社会寄生、トゲアリ

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 アリやハチは、社会生活をする昆虫として知られますね。特に、アリは、ほぼすべての種が、社会的な生活をします。社会の規模は、種によって違います。
 一般的なアリですと一つの巣に、一頭の女王アリがいます。加えて、たくさんの働きアリと、兵アリとがいます。働きアリと兵アリとは、すべて女王アリの子です。
 つまり、多くのアリは、「一人のお母さんとおおぜいの子」という家族で暮らしています。ちなみに、「お父さんアリ」は、交尾だけしてすぐに死んでしまいます。
 このようなアリの家族(群れ)は、どのようにできるのでしょうか?
 女王アリは、交尾を終えたあと、一頭で巣を作り始めます。そこで、卵を産み、孵化【ふか】した子を育てます。育った子は、働きアリや兵アリになります。働きアリが育てば女王は、子育てや巣作りに関わりません。産卵だけが仕事になります。
 ところが、中には「親子でない群れ」で暮らすアリがいます。女王アリとまったく血がつながらないのに、働きアリが女王の世話をするのです。
 どうしたら、そんなことが起こるのでしょうか?
 トゲアリという種を例にとってみましょう。この種の女王アリは、交尾のあと驚くべき行動をします。他種のアリの巣に、たった一頭で乗り込むのです。そして、その巣の女王アリを殺します。その後、自分が女王として巣に居座ります。
 アリの巣に、他種のアリが入り込んだら、普通はその場で殺されるはずです。トゲアリの場合は、なぜ、そうならないのか理由はわかっていません。
 トゲアリの女王が乗り込むのは、クロオオアリなどのアリの巣です。トゲアリの女王は、自分が産んだ卵の世話をクロオオアリなどの働きアリにやらせます。
 やがて、トゲアリの働きアリや兵アリが育ちます。巣の中のアリは、次第に、トゲアリに置き換わります。しまいには、完全にトゲアリだけの巣になります。
 このトゲアリのようなやり方を「社会寄生」といいます。なんだか、ずるく見えますね。けれども、これも、自然の中で生き抜くために発達した方法なのでしょう。
図鑑↓↓↓↓↓には、トゲアリ、クロオオアリが掲載されています。
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過去の記事でも、アリの仲間を取り上げています。アリと関係のある植物や哺乳類のアリクイの画像もあります。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アリ(蟻)は、どうやって行列を作る?(2009/07/17)
オオアリクイ(2008/10/09)
可憐【かれん】なだけでは生きてゆけない、カタクリ(2008/03/24)
シロアリとアリとは、どう違う?(2007/06/11)
などです。

2010年7月 9日

ケヤキは、古代の聖樹?

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 ケヤキは、日本人に好まれる樹木ですね。公園樹や街路樹としてよく植えられます。
 公園で、天に向かって、きれいに枝分かれした樹木を見たことがありませんか? ほうきを逆さに立てた感じです。そこが、日本の本州・四国・九州であれば、たぶんそれはケヤキです。冬のほうが、樹形がわかりやすいですね。葉がないからです。
 ケヤキが好まれるのは、この樹形が美しいとされるためでしょう。秋に色づく葉も、美しいです。面白いことに、ケヤキの葉は、紅葉する場合と黄葉する場合とがあります。
 同じ種なのに、なぜ、こんな差があるのでしょうか? これについては、わかっていません。観賞するぶんには、紅葉でも黄葉でも美しいですね。
 昔の人も、ケヤキを「美しい木」と感じたようです。そもそも、「けやき」という名が、「けやけき木」に由来するといわれます。「けやけき」とは「際立っている」とか、「ひときわすぐれている」といった意味です。
 古事記や万葉集にも、ケヤキが登場します。古代には、ケヤキは、「つき」と呼ばれました。漢字で書けば、槻【つき】です。現代でも、人名や地名に、この字がありますね。万葉時代(奈良時代以前)から、親しまれた証拠でしょう。
 万葉集には、「斎槻」という言葉が登場します。「ゆつき」あるいは、「いわいつき」と読みます。「斎」という字は、「神聖なもの」を指します。「斎槻」とは、「神聖なケヤキ」の意味です。古代の人は、ケヤキの美しさを神格化したのでしょうか。
 条件さえ良ければ、ケヤキは、ずいぶん長生きするようです。日本には、「奈良時代以前から生きている」といわれるケヤキがあります。
 私の知る限り、兵庫県の「八代【やしろ】の大ケヤキ」と、山形県の「東根【ひがしね】の大ケヤキ」が、樹齢千五百年ほどといわれます。どちらも、正確な樹齢は、わかりません。千五百年ほどというのは、推定の樹齢です。
 推定が正しければ、これらのケヤキは、少なくとも飛鳥時代から日本の歴史を見てきたことになります。古代人でなくても、その尊さには打たれますね。
図鑑↓↓↓↓↓には、ケヤキが掲載されています。
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 過去の記事でも、万葉集や古事記に登場する樹木を取り上げています。また、それ以外でも、公園などによく植えられる木を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
万葉集の「むろのき」とは、ネズミサシ?(2010/04/23)
生垣のスター、サンゴジュ(珊瑚樹)(2009/10/12)
センダン(栴檀)とは、どんな植物?(2009/05/04)
などです。

2010年7月 5日

産み分け自在? ミジンコの繁殖事情

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 科学技術はどんどん進んでいますね。最近は、ある程度、子供の性別を産み分けられると聞いています。真偽のほどは定かではありません。
 ヒト以外の生き物では、事情が違います。生き物によっては、はるか昔から、雄(オス)・雌(メス)の産み分けをしています。どんな生き物が、産み分けをするのでしょうか?
 例えば、ミジンコがそうです。学校の理科に登場しますね。淡水にいる、小さなプランクトンです。中には海に棲む仲間もいます。
 ミジンコと呼ばれる生き物には、たくさんの種がいます。ここでは、正式な種名をミジンコという種の話をしましょう。淡水に棲む、平凡なプランクトンです。
 種名ミジンコは、卵で繁殖します。けれども、普段は「卵を産む」ことはありません。体内で、卵を孵化【ふか】させて、子供の状態で産みます。
 産まれる子供は普通、すべて雌(メス)です。母親と、まったく同じ遺伝子を持つ「娘」です。生物学的には、クローンと呼ばれるものですね。親の複製です。
 ところが、たまに、雄(オス)が産まれることがあります。どのような仕組みでそうなるのか、完全にはわかっていません。「生息条件が悪くなった場合に、そうなることが多い」のはわかっています。
 仕組みはわからなくても、理由は、はっきりしています。雄が産まれるのは、「遺伝子のプールをかき混ぜて、多様な個体を生みだすため」です。
 生息条件が悪くなったら、それまでと同じ生き方では、生き残れないかも知れません。親の複製では、「それまでと同じ生き方」になる可能性が高いです。それを避けて、多様な生き方の個体を産むなら、多様な遺伝子を持つ子を産むのが早道です。
 雄と雌とがいれば、遺伝子を混ぜ合わせて、多様な遺伝子を持つ子が産まれます。結果として、どの子かは生き残るでしょう。
 ミジンコには、ヒトのような頭脳はありません。なのに遠い昔から、産み分けをしてきました。生き残るためです。小さな体にも、生命の神秘が詰まっていますね。
図鑑↓↓↓↓↓には、ミジンコが掲載されています。
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 ミジンコは、小さいながらも、節足動物【せっそくどうぶつ】の仲間です。過去の記事でも、同じように、淡水に棲む節足動物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
そっくりさんがいっぱい、スジエビ(2010/02/01)
田んぼの生きている化石、カブトエビ(2007/06/08)
豊作の妖精ホウネンエビ(2006/05/15)
などです。

2010年7月 2日

アサザ、あざさ、どちらが本当?

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 蒸し暑い季節ですね。水辺が恋しくなります。水のきれいな湖沼へ行けたら、水面を観察してみましょう。水中から、黄色い花が、顔を出しているかも知れません。
 「水中から、突き出して咲く花」といえば、スイレンかハスを思い浮かべる人が多いでしょう。けれども、スイレンやハス以外でも、そのように咲く花があります。
 例えば、アサザの花がそうです。アサザは、淡水の水中に生える草です。円い葉を、水面に浮かべます。その様子は、スイレンにそっくりです。でも、スイレンとは、遠縁です。スイレンは、スイレン科に属しますが、アサザはミツガシワ科に属します。
 かつて、アサザは、リンドウ科とされていました。現在は、ミツガシワ科です。
 アサザの花は黄色です。よく見ると、花びらのふちが、細かくぎざぎざになっています。これが、アサザの特徴です。日本で、このような花が水面に咲いていれば、アサザと思って間違いないでしょう。
 紛らわしい種として、コウホネがあります。コウホネも、水面に、黄色い花を咲かせます。アサザとの違いは、花びらにぎざぎざがないことです。葉の形も違います。コウホネの葉は、円くありません。細長いです。コウホネは、スイレン科に属します。
 アサザは、古くから、日本人に親しまれました。万葉集や古今和歌集に、アサザを詠んだ歌があります。万葉集では、「あざさ」と呼ばれています。
 奈良時代以前この植物の名は「あざさ」だったようです。それが、平安時代ころに「あさざ」になりました。どこかで濁音【だくおん】が、取り違えられたのですね。
 万葉集の「あざさ」は、髪に挿して、飾りにされています。この花の可憐さに、古代の人も惹かれたのでしょう。古代らしい、素朴な飾りですね。
 残念ながら、古代と比べアサザは、激減してしまいました。水が汚れたり、護岸がコンクリートで固められたりしたからです。絶滅危惧植物に、指定されるほどです。
 とはいえ、嬉しい動きもあります。日本各地で、「アサザ保全プロジェクト」が始まっています。これらのプロジェクトの成果が上がるといいですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、アサザが掲載されています。
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 過去の記事でも、アサザのような、水辺の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
じつは外来種です、キショウブ(2009/04/24)
スイレンとハスはどう違う?(2006/07/13)
端午の節句に欠かせない菖蒲(ショウブ)(2006/04/21)
などです。

2010年6月27日

盗人呼ばわりは、濡れ衣? コクヌスト

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 暑い季節には、昆虫の活動が盛んになります。貯蔵しておいた食べ物に、「虫がわく」のは、今のような季節ですね。
 ヒトの食べ物を食い荒らす昆虫には、たくさんの種があります。中に、コクヌストという種がいます。漢字で書けば、「穀盗人」です。「穀物を盗むやつ」という意味ですね。
 コクヌストは、甲虫目【こうちゅうもく】コクヌスト科に属します。コガネムシやクワガタと同じ甲虫の仲間ですね。コクヌスト科には、他にも多くの種が属します。ほとんどの種に、「○○コクヌスト」という種名が付きます。
 種名コクヌストは、名のとおり穀物に発生します。小麦粉などですね。幼虫も成虫も、穀物を食べます。ところが、「一概に害虫とは言えない」という意見があります。
 というのは、種名コクヌストは、動物質のものも食べるからです。具体的には、他の昆虫を食べます。穀物に発生する、他の害虫を食べてくれるのです。
 とはいえ、種名コクヌストは、実際に穀物を食べることが確認されています。「穀盗人」の名が、まったくの濡れ衣というわけではありません。
 けれども、種名コクヌスト以上に、穀物を食い荒らす昆虫が多くいます。コクヌストばかりが、「盗人」呼ばわりされるのはやや気の毒です。
 例えば、コクヌストモドキという種がいます。名前も姿も、種名コクヌストに似ています。しかし、こちらは、甲虫目ゴミムシダマシ科に属します。
 コクヌストモドキは、世界的な穀物の害虫です。その害は、種名コクヌストのものを、はるかにしのぎます。害虫としては、「もどき」どころか、こちらが本家です。
 ゴミムシダマシ科には、他にも穀物の害虫となる種がいます。ヒラタコクヌストモドキ、コメノゴミムシダマシなどです。いっぽう、本家?のコクヌスト科のほうには、穀物の害虫は少ないです。種名コクヌストが例外なのですね。
 コクヌスト科の種は、大部分が野外で暮らします。ヒトに害を与えません。なのに、科の名前がコクヌスト(穀盗人)とは、誤解されやすいですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、オオコクヌストが掲載されています。
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 過去の記事でも、屋内の害虫となる種を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ミールワームとは、どんな虫?(2008/03/28)
カツオブシムシは文化財の敵?(2007/10/19)
シミは本を食べる?(2006/10/27)
などです。

2010年6月23日

ニワトコは、庭の薬箱?

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 ニワトコという樹木があります。日本の野山に野生する木です。古い家の庭や田舎の道端に、よく植えられています。都市の住宅街でも、見ることがあります。
 何のために、この木は、植えられるのでしょうか? 観賞用でしょうか?
 この木の花や果実は、なかなか美しいです。初夏に、白く細かい花を咲かせます。秋には、真っ赤な果実がみのります。観賞用という面はあるでしょう。
 けれども昔は、それ以上に、重視された面がありました。薬用です。
 この木の花や葉や樹皮などは、さまざまな薬にされました。医療が発達していない時代には、重宝だったのですね。庭などに植えておけば、薬箱の代わりになりました。
 日本のニワトコと同じく、ニワトコ属に属する木が、ヨーロッパにも分布します。セイヨウニワトコという種です。セイヨウニワトコも昔は、いろいろな薬にされたそうです。このため、かつてのセイヨウニワトコは、「田舎の薬箱」と呼ばれました。
 日本でもヨーロッパでも、田舎にニワトコ属の木が多いのは昔の名残です。
 ニワトコ属と人類との付き合いは古いです。日本では、縄文時代の遺跡から、ニワトコの果実が、大量に見つかったことがあります。
 ニワトコの果実は、美味しそうです。が、そのままでは食べられません。縄文人が、ニワトコの果実をどうしたのかはわかっていません。一説では、酒を造ったといいます。
 古事記や万葉集にも、ニワトコが登場します。それらの文献では、「やまたづ」と呼ばれています。今でも、紀伊半島の一部に、ニワトコを「やまたず」と呼ぶ地方があるそうです。他に、ニワトコを、「たず」「たずのき」などと呼ぶ地方もあります。
 古代の和歌で、「やまたづ」は、「迎へ【むかえ】」という言葉の前に付けられています。これは、ニワトコの葉が、常に一対ずつ向かい合わせで付くことから、このような表現になったと考えられています。古代の人は、よく植物を観察していたのでしょう。
 「やまたづ」が登場するのは、どれも、「愛しい人を迎えに行こう」という意味の歌です。古代の人は、地味な木の葉にも想いを込めたようですね。


図鑑↓↓↓↓↓には、ニワトコが載っています。
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過去の記事でも、古事記や万葉集に登場する樹木を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
万葉集の「むろのき」とは、ネズミサシ?(2010/04/23)
アカメガシワの芽は、なぜ赤い?(2010/04/12)
卯月【うづき】に咲くから、ウノハナ?(2009/05/15)
などです。

2010年6月21日

日本初の大発見、セイスイガイ(勢水貝)

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 二〇一〇年の四月、日本の近海で、新種の貝が発見されたという報道がありました。これは、たいへん珍しいグループに属する種です。貝類の進化を知るために、重要です。大発見なのに、あまり話題にされませんでした。ここで紹介しましょう。
 発見された貝は、正式な日本語名(標準和名)を、セイスイガイと名づけられました。この貝が採集された時、使われた船の名「勢水丸」にちなんだそうです。
 セイスイガイは、軟体動物門【なんたいどうぶつもん】単板綱【たんばんこう】に分類されます。普通の貝も、同じ軟体動物門に属します。が、その下の綱【こう】のレベルで、分類が違います。二枚貝なら、二枚貝綱【にまいがいこう】に分類されます。巻貝なら、腹足綱【ふくそくこう】に分類されます。
 これまで、日本近海では、単板綱に属する種は未発見でした。セイスイガイが、どのくらいの大発見なのか、私たちヒトの例でたとえてみましょう。
 ヒトは、脊索動物門【せきさくどうぶつもん】哺乳綱【ほにゅうこう】に属します。通称、哺乳類と呼ばれるグループですね。たとえて言えば「日本列島に一種も哺乳類がいなかったのに、初めて、哺乳類に属する種が見つかった」というのと同じレベルです。
 セイスイガイの外見は、カサガイという巻貝の仲間にそっくりです。けれども、カサガイは、腹足綱に属します。単板綱とは、体の構造がまったく違います。カサガイについては、「所属はどこですか? カサガイたち」(2010/4/19)を参照して下さい。
 セイスイガイは、なぜ、今まで見つからなかったのでしょうか? 深海に棲むからです。約800mの水深から採集されました。三重県の志摩半島沖です。
 単板綱の種は、世界中で三十種ほどしか見つかっていません。じつは、生きている種より、化石のほうが先に発見されました。単板綱は、絶滅したグループだと思われてきたのです。それが、一九五〇年代に、生きている種が発見されました。
 つまり、単板綱の種は、生きている化石です。三億年以上前に栄えて、ごくわずかが生き残ったと考えられています。こんな新種が、まだ見つかるのは楽しいことですね。


図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、セイスイガイは載っていません。かわりに、セイスイガイと同じ軟体動物門【なんたいどうぶつもん】の生き物が、七十種以上載っています。
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新発見のセイスイガイのニュースは、以下に載っています。
志摩沖に新種の貝 三重大研究員ら日本近海で(中日新聞 2010/04/10)
「生きた化石」新種貝発見 三重大研究員ら(西日本新聞 2010/04/09)
3億年前に絶滅の新種貝を公開 三重大研究 グループが発見(西日本新聞 2010/04/10)※セイスイガイの画像があります。

2010年6月18日

「かおばな」の正体は、ヒルガオ(昼顔)?

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 今回は、万葉集に登場する植物を紹介しましょう。「かおばな(容花)」です。旧かな遣いでは、「かほばな」ですね。この花は、現代では、何という植物でしょう?
 この花の正体は、いろいろと議論されてきました。主な説を以下に挙げますね。
1)特定の種名ではなく、単に「美しい花」という意味。
2)カキツバタ説。
3)オモダカ説。
4)ムクゲ説。
5)アサガオ説。
6)ヒルガオ説。
 有力なのは、1)、2)、4)、6)の説です。万葉集の歌からすれば、美しく、目立つ花だったことは間違いありません。2)のカキツバタには、現代の日本で「かおばな」という別名があります。これが、有力とされる理由の一つです。
 5)のアサガオは、奈良時代(万葉集が編纂された時代)には、日本になかった可能性が高いです。このため、有力候補から脱落します。当時、「あさがほ」などと「かほ」の付いた名で呼ばれたのは、ムクゲやヒルガオだといわれます。
 現在では、万葉集の「かおばな(かほばな)」は、ヒルガオ説が、最も有力です。現代の名でも、「かお」が共通しますね。さらに、ヒルガオには、「かっぽー」や「かっぽぐさ」という方言名が残ります。これらは、古代の「かほばな」の名がなまりながら残ったものと考えられます。
 ヒルガオは、今も昔も野の花です。夏に、薄紅の花を咲かせます。その様子は、可憐ですね。目立つものの派手すぎず、万葉集の花にふさわしいと思います。
 ただし、「かおばな=ヒルガオ説」は、確定したわけではありません。歌によっては、明らかに、水辺の花を指すものもあります。ヒルガオは、水辺を好む草ではありません。同じ「かほばな」でも、ヒルガオとそうでないものとがあったのでしょうか。
 水辺の「かおばな」は、カキツバタやオモダカだったかも知れませんね。しかし、『野辺の容花【かほばな】面影【おもかげ】に』と、万葉集に詠まれた様子は、ヒルガオの円い花を思わせます。恋しい人の面影を、花に見立てているからです。
 さて、「かほばな」の正体は、何でしょうか? 皆さんは、どう思われますか?


図鑑↓↓↓↓↓には、「かおばな」の候補であるヒルガオ、カキツバタ、オモダカ、ムクゲ、アサガオが載っています。
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過去の記事で、「かおばな」の候補であるカキツバタ、ムクゲ、アサガオを取り上げています。また、その他の万葉集に登場する植物も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
古代の「朝顔」は、キキョウ?(2008/08/08)
「朝顔」は、謎の植物?(2008/07/21)
ムクゲ(木槿)は昔、朝顔だった?(2008/07/04)
などです。

2010年6月14日

森林の妖精? ゼフィルスたち

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 「蝶よ花よ」という言葉がありますね。この言葉のとおりチョウ(蝶)と花とは、密接な関係にあります。お花畑には、チョウが似合いますよね。
 ところが、お花畑では見られないチョウもいます。つまり、開けていて草花が咲く所では見られません。その中に、ゼフィルスと呼ばれるチョウがいます。
 ゼフィルスとは、シジミチョウ科の中の、ミドリシジミという種に近縁なグループです。正確な分類名でいえば、ミドリシジミ族【ぞく】です。ミドリシジミ属【ぞく】という分類グループもありますので、混同しないで下さいね。この二つは、別ものです。
 通常の生物の分類では、族というグループ名は、あまり使われません。族とは、科と属との間に位置する分類グループです。ミドリシジミ族は、ミドリシジミ属を含むより大きなグループです。ここでは、「ミドリシジミ族」を「ゼフィルス」と呼びましょう。
 生物の分類法については、「生物分類の、目【もく】や科とは、なに?」をお読み下さい。
 昔、ゼフィルスは、チョウの愛好家にとって憧れの的でした。なかなか見られないからです。人目につかない条件がそろっています。今も、憧れる愛好家はいます。
 第一に、森林に棲むこと。第二に、昼間にあまり飛ばないこと。第三に、飛ぶ時には、多く、樹木の上の方を飛ぶこと。これでは、確かに、人目につきませんね。
 森林に棲むのは、幼虫の食べ物の関係です。ゼフィルスの幼虫は、ブナ科やカバノキ科の樹木の葉を食べるものが多いです。コナラ、ミズナラ、カシワ、クヌギ(以上ブナ科)、ハンノキ(カバノキ科)などですね。成虫は、これらの木の森林に棲みます。
 昼間にあまり飛ばないのは、敵を避けるためでしょう。森林には、強敵の鳥が多いですからね。食べ物の都合さえつけば、昼は、隠れているほうが得策です。
 ゼフィルスの成虫の雄(オス)は、縄張りを作ります。縄張りは、木の枝の先の方です。ここに産卵に来る雌(メス)を、つかまえるのですね。同種の雄が来ると追い払います。雄は、縄張りを守るため、雌は、産卵や交尾のために、木の上方を飛びます。
 木の上方でゼフィルスの成虫が、何を食べているのかはよくわかっていません。


図鑑↓↓↓↓↓には、ゼフィルスと呼ばれるチョウのうち、コアカシジミ、ウラナミアカシジミ、ミズイロオナガシジミ、ミドリシジミが載っています。
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過去の記事で、ゼフィルスの幼虫が食べるカシワを取り上げています。また、ゼフィルスと同じく、コナラやクヌギに付く昆虫も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
トラフシジミは、草食性のトラ(虎)?(2009/11/20)
柏餅【かしわもち】は、なぜカシワで作られる?(2008/05/05)
昆虫にも「ミミズク」がいる?(2007/07/09)
などです。

2010年6月11日

「つまま」の正体は、タブノキ?

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 今年、二〇一〇年は、平城京遷都千三百年祭ですね。奈良時代の文化に、関心が寄せられています。奈良時代は、万葉集が編纂【へんさん】された時代です。
 万葉集には、たくさんの動植物が登場します。その多くは、現在とは違う名で載ります。正体がわかっていない動植物もいくつかあります。
 長らく、正体が議論されたものに「つまま」があります。これを歌った短歌が、万葉集に一首あります。大伴家持【おおとものやかもち】が、越中【えっちゅう】に赴任している時に作った歌です。越中とは、現在の富山県ですね。
 歌によれば「つまま」とは、海岸に生えて、大木になる植物でした。これは、タブノキだという説が有力です。タブノキは、日本土着の植物です。私が調べた範囲では、石川県の能登地方に、タブノキを「つままのき」と呼ぶ方言が残っています。
 タブノキは、海岸によく生える木です。山にも生えます。けれども、雪深いところには、生えません。東北や北陸では、海岸沿いにしか生えないようです。常緑樹で、大木になります。万葉集の「つまま」と特徴がよく一致します。
 タブノキと似た木にクスノキがあります。クスノキとタブノキとは、同じクスノキ科に属します。似るのも道理ですね。ややこしいことに、タブノキを、「くすのき」と呼ぶ地方もあります。「くすたぶ」、「いぬぐす」、「たまぐす」などの呼び名もあります。
 じつは、万葉集など奈良時代以前の文献にある「くすのき」の一部は、タブノキを指すという説があります。奈良時代以前には、クスノキは、日本で一般的な木ではなかったからというのです。これは、どういうことでしょう?
 「クスノキは、日本土着の植物ではなく、大陸から人間が持ち込んだ」説があるのですね。そうだったとしても、それは、歴史時代に入る前のことです。だとしたら、奈良時代にはクスノキは、まだ、広く日本に根づいていなかったとも考えられます。
 昔は、タブノキとクスノキとが、あまり区別されなかったのかも知れませんね。あるいは、最初に「くすのき」と呼ばれたのは、現在のタブノキかも知れません。


図鑑↓↓↓↓↓には、タブノキとクスノキが載っています。
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過去の記事でも、クスノキ科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
この木なんの木、ナンジャモンジャの木?(2009/05/29)※地方によっては、クスノキを「ナンジャモンジャの木」と呼びます。
猛毒を食べる? アオスジアゲハ(2009/05/01
などです。

2010年6月 7日

虹色に輝く? タカチホヘビ

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 日本には、普通に思われている以上に多種のヘビがいます。その中には、ほとんど知られない種が少なくありません。普通の人は、なかなかヘビに関心を持ちませんからね。知ってみれば興味深い生き物です。
 タカチホヘビという名を、聞いたことがある人は少ないでしょう。この種は、日本に普通にいるヘビです。本州・四国・九州とその周辺の島々に分布します。北海道や中国大陸にもいるという情報がありますが未確認です。
 日本では普通種なのに、なぜ、知られていないのでしょうか? このヘビが、人目につきにくい生活をしているからです。
 タカチホヘビは、夜行性です。そのうえ、地中にもぐっていることが多いです。これでは、人目につかないわけですね。雨の日には、昼間でも出歩くことがあるそうです。
 彼らは、主に、ミミズを食べます。このために、地中にもぐります。ミミズは、地中にいるものですからね。それ以外に、乾燥を防ぐためにも地中にもぐるようです。
 タカチホヘビの鱗【うろこ】は、普通のヘビと違います。普通のヘビは、鱗が重なり合っています。けれども、タカチホヘビは、そうなっていません。鱗と鱗のあいだが開いて、皮膚が露出しています。このため、乾燥に弱いと考えられています。
 鱗の間隔があいているといっても、普通に見ただけではわかりません。単に、褐色のヘビに見えます。よく観察しないと鱗の違いには気づきません。
 タカチホヘビの体色には、個体差があります。黒っぽく見える個体や黄色っぽく見える個体もいます。中には、虹色に光って見える個体もいます。
 タカチホヘビの鱗は、丸く盛り上がりつやがあります。光の加減によっては、虹色に見えます。特に、頭部が、虹色に光ることが多いです。
 このヘビが、人間に見つかるのは、庭などの石をどけた時や植木鉢を移動した時、土を掘り崩した時が多いです。土中から、突然「虹色のヘビ」が出るかも知れないわけです。日本の内地で、そんなヘビに出会ったら、きっとタカチホヘビでしょう。


図鑑↓↓↓↓↓には、タカチホヘビが載っています。
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過去の記事でも、日本のヘビを取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
美しい偏食ヘビ、リュウキュウアオヘビ(2009/12/14)
ウミヘビ(海蛇)は、危険な毒蛇か?(2008/08/22)
春と秋しか行動しない? ジムグリ(2007/09/17)
などです。

2010年6月 4日

雑草か食草か? コナギとミズアオイ

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 田植えの季節ですね。田に水が入るといろいろな生き物が現われます。農家の方々にとっては、田の雑草となる植物も生えてきます。
 コナギやミズアオイは、水田の代表的な雑草とされます。どちらも、ミズアオイ科の一年草(一年で枯れる草)です。水田のような水場に、好んで生えます。
 現代日本では、コナギやミズアオイは、厄介な雑草です。けれども、昔は、野菜として、食べられていました。そのために、わざわざ植えていたといわれます。
 じつは、コナギもミズアオイも、「元は日本になかった」と考えられています。大陸から稲作が伝わった時、同時に、日本に来たようです。当時は、もちろん食草として、伝えられたのでしょう。食べ物が少ない時代ですからね。
 はっきりと「いついつに来た」と、記録があるわけではありません。両種が日本に帰化したのは、歴史時代より前です。このような植物を、史前帰化植物といいます。
 コナギもミズアオイも、東アジアに広く分布します。おおむね、水田があるところにはこの両種があります。稲作が広がるにつれて両種とも、分布域を広げました。人間が、せっせと運んだからです。その代わりに、食用にされました。
 両種とも、種子ができる前に、食べ尽くさなければ、また、次の年に生えてきます。イネと一緒に作れる野菜として、重宝されたでしょう。
 現在では、コナギもミズアオイも、食べる話を聞きませんね。雑草として、駆除される一方です。ミズアオイのほうは、絶滅寸前です。食べるどころではありません。
 食べられなくなったのには、それなりの理由があるのでしょう。美味しくない、下ごしらえに手間がかかる、採れる量が少ない、などが考えられます。
 しかし、これは、もったいないことだと思います。コナギもミズアオイも、少なくとも奈良時代から、利用されてきました。万葉集にも、両種が登場するほどです。
 ミズアオイはともかく、コナギのほうは、しつこい雑草だそうです。どうせ生えるものなら、万葉の香りを伝える植物として、何かに利用できるといいですね。


図鑑↓↓↓↓↓には、コナギが載っています。
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過去の記事でも、史前帰化植物【しぜんきかしょくぶつ】と考えられるものを取り上げています。また、それ以外にも、古い時代に帰化した生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
モンシロチョウ(紋白蝶)は、日本にいなかった?(2008/04/04)
ハハコグサは、母子草ではない?(2008/02/15)
七草ナズナは、ぺんぺん草(2008/01/07)
などです。
※ハハコグサ、ナズナは、史前帰化植物と考えられています。

2010年5月31日

肉食の背泳選手? マツモムシ

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 これからは、水が恋しくなる季節ですね。水場には、多くの生き物がいます。
 お近くに池や水田がある方は、覗いてみて下さい。水生昆虫たちが、見られるかもしれません。彼らは、水中で暮らすために、さまざまな工夫を凝らしています。
 比較的、目立つ水生昆虫に、マツモムシの仲間がいます。泳ぎに特徴があるからです。
 マツモムシの仲間は、腹を上に向けて泳ぎます。背泳ぎしているわけです。六本脚のうち、一番後ろの脚が発達しています。これで、力強く水を掻きます。
 長い後ろ脚で、背泳ぎしている水生昆虫がいたら、マツモムシの仲間だと思って間違いありません。昆虫に詳しくなくても、覚えやすいですね。
 なぜ、マツモムシの仲間は、背泳ぎするのでしょうか? 落ちてくる昆虫などを、待ちかまえるためと考えられています。
 マツモムシの仲間は、肉食性です。他の生き物を襲って食べます。魚やおたまじゃくしや、他の水生昆虫を襲うこともあります。
 それ以外に、水に落ちてくる生き物が、重要な食料です。落ちてきたものを、すぐ捕まえられるよう、脚のある側(腹側)を、上に向けていると考えられます。この特徴から、英語では、マツモムシの仲間を、Backswimmer(背泳選手)と呼びます。
 マツモムシの仲間とは、カメムシ目【もく】マツモムシ科に属する昆虫を指します。日本には、九種ほどがいるとされています。単に「マツモムシ」という種名の種もいます。日本で最も平凡なのは、おそらく、この種名マツモムシです。
 とはいえ、水生昆虫が「平凡な昆虫」だったのは、昔のことです。近年では、水生昆虫全般の数が減りました。人間が環境を変えたのが大きな原因です。
 護岸工事で、岸をコンクリートで固めたり、害虫駆除のため農薬をまいたりしたら、昆虫たちは生きてゆけません。日本では、ほとんどの水場がそんなふうですね。
 最近は、自然環境を復元したビオトープなども、できるようになりました。それで、すべてが解決するわけではありません。が、歓迎できる試みだと思います。


図鑑↓↓↓↓↓には、マツモムシが載っています。
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過去の記事でも、水生昆虫を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
昆虫一のアクアラング王者? ゲンゴロウ(2009/03/27)
アメンボは、水上のスケーター?(2008/01/18)
コオイムシの雄は子煩悩【こぼんのう】?(2006/05/05)
などです。

2010年5月28日

年に二回、花が咲く? エゴノキ

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 エゴノキは、初夏に花咲く木の一種です。公園や庭に植えられます。雑木林【ぞうきばやし】に多い木でもあります。花の時期には、白い花がびっしりと付きます。枝から吊り下がって咲くので、下側からお花見がしやすいです。
 万葉集にも、エゴノキが登場します。「ちさの木」というのがそれです。今でも、エゴノキを「ちさ」と呼ぶ地方があります。奈良時代の人も、この木の花を愛でました。
 この木を身近に見ている方は、「あれ?」と思うかも知れませんね。この木には、年に二回、花が咲く「ように見える」ことがあります。普通の白い花以外に、白っぽく、小さなバナナのようなものが木に付きます。花のようにも、果実のようにも見えます。
 これは、花でも果実でもありません。「虫こぶ」です。専門的には、虫えい【ちゅうえい】または、ゴールgallと呼ばれます。昆虫やカビなどが、植物に寄生することによって、できるものです。寄生された部分が、異様にふくらんで、果実か花のように見えます。
 エゴノキの「小さなバナナ」のような虫こぶには、エゴノネコアシという名が付いています。バナナ状の虫こぶが並ぶ様子を、「ネコの足」にたとえたのですね。
 エゴノネコアシは、エゴノネコアシアブラムシという昆虫が作ります。アブラムシの一種ですね。このアブラムシは、エゴノキの側芽【そくが】に寄生します。側芽とは、枝の脇に付く芽です。寄生された側芽は、ふくらんで、「ネコの足」になります。
 虫こぶの中でも、エゴノネコアシは、有名な存在です。だからこそ、エゴノネコアシなどという名が付けられました。エゴノネコアシアブラムシにも、面白いラテン語の学名が付いています。Ceratovacuna nekoashi【ケラトヴァクナ・ネコアシ】です。
 エゴノネコアシアブラムシは、エゴノキ以外の植物にも寄生します。イネ科のアシボソ、チヂミザサなどです。このアブラムシは、七月頃、エゴノキを離れて、イネ科植物に移ります。晩秋には、イネ科植物から、エゴノキへと戻ります。
 このアブラムシは、エゴノキとイネ科植物と両方がないと生きていけません。なぜ、こんな不便な生活なのでしょうか? この謎は、まだ解けていません。


図鑑↓↓↓↓↓には、エゴノキが載っています。
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過去の記事でも、初夏に咲く花を取り上げています。また、「虫こぶ」についても取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
果実? いえ「虫こぶ」です、イスノキ(2009/10/19)
生き別れの親類が再会? ヤマボウシとハナミズキ(2008/05/19)
日本一の大輪の花、ホオノキ(2006/05/19)
などです。

2010年5月24日

貝の執念、岩をも削る? ヒザラガイ

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 海の光景を見て不思議に感じたことがありませんか?
 例えば、海辺や海中にある岩です。それらの中には、キノコのような形をしたものがありますね。下側が細くて上が太い形です。なぜ、こんな形になるのでしょうか?
 一般的にはこれは、「波が削ったのだ」といわれます。「波の届く範囲だけ削れるので、下側だけが細くなった」というわけです。
 これは、間違いではありません。けれども、波以外に他の原因でも岩が削られることがあります。生き物の力によってです。
 岩を削るなんて、どんなに強い生き物かと思いますね。ところが、その正体は、小さな貝です。一種ではなく、多種の貝が「岩を削る」のに、参加しているようです。
 中でも、強力な「岩削り貝」と考えられているのがヒザラガイの仲間です。
 多くの方は、ヒザラガイという名を、聞いたことがないでしょう。しかし、おそらく、ほとんどの方が見ているはずです。
 海辺の岩に、楕円形の奇妙な生き物が貼り付いているのを見たことがありませんか? 背に、七、八枚に分かれた、小さな貝殻を背負っています。それが、ヒザラガイの仲間です。海岸では、とても平凡な生き物です。日本にも全国的に分布します。
 ヒザラガイの仲間は、軟体動物門【なんたいどうぶつもん】に属します。普通の巻貝や二枚貝と同じです。でも、巻貝や二枚貝とは、あまり近縁ではありません。
 軟体動物門の中の、多板綱【たばんこう】というグループのものを、まとめてヒザラガイと呼びます。中に、単に「ヒザラガイ」という種名の種もいます。ややこしいですね。
 海岸にいるヒザラガイは、多くが、岩に付く藻などを食べています。彼らは、口に、歯舌【しぜつ】という器官を持ちます。これで、岩の表面ごと食べ物をなめ取ります。
 長い間、たくさんのヒザラガイがそうすると......岩の形が変わります。硬い歯舌で、削られるからです。そのような岩は、もろくなって、波にも削られやすくなります。その結果、岩がまるごと崩れることもあります。小さな貝の大きな力ですね。


図鑑↓↓↓↓↓には、ヒザラガイが載っています。
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過去の記事でも、ヒザラガイのように海岸の岩に貼り付く生き物を取り上げています。また、海岸の岩に穴を開けるナナツバコツブムシも取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ペルセベスとは、どんな生き物?(2009/11/30)
フジツボは富士壷? 藤壷?(2008/09/29)
虫が島を壊す? ナナツバコツブムシ(2007/06/28)
牡蠣(カキ)はなぜ寒い時期が旬か?(2006/02/04)
などです。

2010年5月21日

ウナギとオオウナギとは、違う? 同じ?

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 ウナギは、日本人に親しまれる魚ですね。食用として有名です。それ以外にも、民話や諺【ことわざ】に登場しますね。
 言い伝えの中では、「とてつもなく大きなウナギがいる」ことになっています。「ヒトの身長と同じくらいの長さがある」などといわれます。そんなに大きなウナギは、実在するのでしょうか? 広い意味で言えば実在します。
 普通に食用にされるウナギは、そんなに大きくなりません。食用にされるのは、ニホンウナギやヨーロッパウナギといった種です。これらの種は、大きくなってもせいぜい全長1mくらいです。
 これらのウナギとは別に、オオウナギという種がいます。正式な日本語の種名が「オオウナギ」です。ニホンウナギやヨーロッパウナギと近縁ですが別の種です。
 オオウナギは、全長が2m近くになることがあります。太さも、胴回り50cmほどにもなります。このくらいの大きさになると魚に見えません。大蛇のようです。
 しかも、オオウナギの体色は、ニホンウナギのような「背が黒、腹が白」ではありません。全身が、黄褐色と黒褐色のまだら模様です。ますます魚に見えませんね。
 日本人ですと「オオウナギが食べられるのかどうか」が、気になりますね。食べられはするものの、美味しくないそうです。
 オオウナギは、暖かいところに分布します。日本では、おおむね、和歌山県以南に分布するようです。南西諸島では、ニホンウナギより、オオウナギのほうが数が多いです。
 民話などに登場する「大ウナギ」は、オオウナギをニホンウナギと混同したものではないでしょうか。もしかしたら、言い伝えにある「大蛇」の一部も、オオウナギが正体かも知れません。オオウナギは、雨の夜などに、陸上をはうことがあるからです。
 オオウナギだけでなく、ニホンウナギも陸をはうことがあります。ウナギの仲間は、短い時間なら、陸にいられるのですね。皮膚呼吸ができるからです。こういう点も、昔の人には、神秘的に見えたでしょう。伝説が生まれても不思議ではないと思います。


図鑑↓↓↓↓↓には、ウナギが載っています。
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過去の記事でも、ウナギやオオウナギと紛らわしい大蛇について取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
日本に、大蛇はいるか?(2008/09/26)
ウナギの繁殖の謎は解けたか?(2006/07/21)
ニシキヘビの危険度は?(2005/09/14)
などです。

2010年5月17日

「くいな叩く」のクイナとは?

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 初夏ですね。今の季節には、夏鳥たちが次々に渡ってきます。昔の日本人は、渡り鳥の鳴き声に、季節の風情を感じました。
 夏の季語の一つに「くいな叩【たた】く」があります。「くいな」とは、鳥の一種の名です。「くいな」が鳴く様子を、昔の人は「叩く」と表現しました。「くいな」だけでも、夏の季語とされます。水鳥の一種です。漢字では、水鶏【くいな】と書きます。
 ところが現在、クイナと呼ばれる鳥は、日本の多くの地方では冬鳥です。昔、都があった近畿地方でも、冬にしかいません。これはどういうわけでしょう?
 じつは現在、クイナと呼ばれる鳥と昔「くいな」と呼ばれた鳥とは、種が違います。
 昔、「くいな」と呼ばれた鳥には現在、ヒクイナという種名が付いています。クイナと同じクイナ科に属しますが別種です。体色が赤っぽいため「緋クイナ」と名づけられました。ヒクイナは、日本の多くの地方で夏鳥です。
 昔の人は、おそらく、現在のクイナとヒクイナとの区別が付いていなかったのでしょう。クイナもヒクイナも、水辺の草の中を忍び歩くのが得意です。姿を見るのが難しいです。おまけに、姿が似ています。区別が付かないのは、無理もありません。
 外見が似ていても、鳴き声は違います。クイナのほうは、ビュービューという感じの鳴き声で、連続して鳴きます。ヒクイナのほうは、キョッキョッという感じの鳴き声で、だんだん速いテンポになります。「叩く」という表現が似合います。
 昔の人は、ヒクイナのほうの鳴き方に、「風情がある」と感じたようです。夜、鳴くことが多いのも風情が増すと考えられました。
 この点ヒクイナは、ホトトギスと通じますね。ホトトギスも夏鳥です。夜に鳴くことが多いのも、同じです。ヒクイナとホトトギスは、ともに夏の風情を表わす鳥とされました。昔の人は、夏の宵に響く声に、おもむきを感じたのでしょうか。
 ヒクイナには、ナツクイナという別名があります。夏鳥だからでしょう。対して、クイナのほうには、フユクイナという別名があります。
図鑑↓↓↓↓↓には、クイナもヒクイナも載っています。
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過去の記事でも、クイナの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
秋にも繁殖する? バン(2009/09/18)
シロハラクイナ(2009/05/15)
ツルクイナ(2007/10/24)
ヤンバルクイナは絶滅寸前?(2006/10/02)
などです

2010年5月14日

アヤメ? いえ、カキツバタです

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 アヤメの仲間は、日本人に好まれる花ですね。和歌に詠まれることも多いです。ただし、古代の「あやめ」は、現在のアヤメとは違う植物を指すことがありました(「五月五日は、あやめの節句」(2007/04/30)を参照して下さい)。
 確実に現在のアヤメの仲間で、古代から歌われるのはカキツバタです。万葉集に、カキツバタを詠んだ歌が、七首、載ります。万葉集の時代(奈良時代)や平安時代には「かきつはた」と、濁音なしで呼ばれていたようです。
 カキツバタとアヤメとはそっくりですね。でも、大きく違う点があります。
 カキツバタは、アヤメ科のうちで最も湿った所を好みます。根もとが水に浸るような所(沢や沼地)でないと自生しません。対して、アヤメは、乾いた地面に生えます。
 ハナショウブなどと並びカキツバタは、古くから栽培されてきました。花を観賞するためです。江戸時代の前期には、すでに十を越える品種がありました。
 そのわりに、カキツバタの栽培品種を見ることは少ないですね。ハナショウブ園は、日本各地にあるのに、カキツバタ園はあまり聞きません。私が調べた範囲では、「かきつばた園」は、日本に二箇所しかありませんでした(植物園内のものを除きます)。
 この理由は、「江戸時代後期にハナショウブが人気になったから」のようです。似た花なので、ハナショウブに人気を取られてしまったのでしょう。このため、作出されたのちに、消えてしまった品種もあると考えられます。
 それでも現在、カキツバタの栽培品種は、約七十あるそうです。中には、江戸時代前期から生き残ってきたらしい品種もあります。カキツバタは、日本の誇る園芸植物ですね。品種により、青紫、赤紫、白、青白まだら、水色などの色があります。
 これらの品種が、一同に見られるカキツバタ園はあるのでしょうか? 残念ながら、ないようです。そのような場所が、あってもいいでしょう。古典園芸植物は、文化遺産の一つです。奈良時代からほとんど名が変わらない植物など多くはありません。


図鑑↓↓↓↓↓には、カキツバタが載っています。
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過去の記事で、カキツバタと同じアヤメ科の種を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
じつは外来種です、キショウブ(2009/04/24)
五月五日は、あやめの節句?(2007/04/30)
端午の節句に欠かせない菖蒲(ショウブ)(20060/4/21)
などです

2010年5月10日

サンショウウオのおたまじゃくしとは?

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 春から夏にかけては、おたまじゃくしがたくさん見られる季節です。「おたまじゃくしがカエルの子」であることは皆さん御存知ですね。両生類は、幼生のうちは、水中で暮らします。成体になると、たいていの種は、陸に上がります(例外もあります)。
 両生類には、カエルの他にイモリやサンショウウオがいますね。でも、「イモリやサンショウウオのおたまじゃくし」とはあまり聞きません。彼らの幼生も、おたまじゃくしなのでしょうか?
 答えは、「おたまじゃくしと言えないこともない」です。イモリやサンショウウオの幼生は、確かに水中で暮らします。その点は、カエルのおたまじゃくしと同じです。
 けれども、その体型は、いわゆる「おたまじゃくし」型ではありません。生まれた直後から、手足(四肢)があります。親をそのまま小さくした形といえます。
 親と違うのは、主に次の二点です。
 一つは、首にひらひらした物が付いていることです。これは、鰓【えら】です。水中で呼吸するためのものです。カエルのおたまじゃくしにも、もちろん鰓があります。しかし、外からは見えません。体内にあるからです。
 イモリやサンショウウオの幼生のように、外側に付いている鰓を、外鰓【がいさい】と呼びます。外鰓は、成熟にしたがって退化するのが普通です。
 もう一つ、イモリやサンショウウオの幼生は、親と比べて手足が弱々しいです。おそらく、これでは、陸を歩くことはできません。彼らの手足は、泳いだり水中で体を支えたりするのに使われます。
 おたまじゃくしと言えば、昨年(二〇〇九年)の「おたまじゃくしが空から降る」騒動を思い起こす方がいるでしょう。あれは、どういう原因で起こったのでしょうか?
 当初、山階【やましな】鳥類研究所より「鳥が原因ではない」説が出されました。このため、謎が深まりました。ところが、その後の調べにより「鳥が吐き出したもの」という見解になったそうです。権威ある研究所でも間違えることはあるものです。


図鑑↓↓↓↓↓には、日本の両生類が二十種以上載っています。
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過去の記事でも、おたまじゃくし(両生類の幼生)について、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
世界最小のカエル?が発見される(2009/04/11)※おたまじゃくしにならないカエルの話です。
イボガエル? いえツチガエルです(2007/09/07)
毒がないのに毒蛇? ヒバカリ(2007/07/15)※おたまじゃくしを食べるヘビの話です。
などです。

2010年5月 3日

食虫目【しょくちゅうもく】とは、どんな哺乳類?

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 生物学の世界では、時々分類が変わります。はなはだしい場合には、一つの分類グループが、まるごとなくなることもあります。「そんなことがあるの?」と、びっくりですね。例として、実際に消えた分類グループを挙げてみましょう。
 食虫目【しょくちゅうもく】とは、哺乳類の中にあった分類グループです。正確には、哺乳綱【ほにゅうこう】食虫目という分類グループでした。
 食虫目に属するとされていたのは、モグラ、トガリネズミ、ハリネズミ、テンレックなどです。「○○ネズミ」という種名のものが多いですが、普通のネズミとは遠縁です。普通のネズミは、齧歯目【げっしもく】に属します。
 一九七〇年代から、食虫目の分類には議論がありました。この頃から、食虫目の解体が始まります。「そもそも、食虫目という名がふさわしくない」という意見があり、無盲腸目【むもうちょうもく】という名が提唱されました。
 けれども、無盲腸目の名は、普及しませんでした。普及する前に、目【もく】の解体が進んだからです。一九八〇年代以降、分子生物学の発達が分類を組み替えました。
 かつての食虫目(あるいは、無盲腸目)は、三つの目【もく】に分割されました。テンレック目【もく】、トガリネズミ目【もく】、ハリネズミ目【もく】です。テンレック目は、アフリカトガリネズミ目【もく】とも呼ばれます。
 これらの目【もく】のうち、日本に分布するのはトガリネズミ目だけです。アズマモグラ、ヒミズ、ジネズミ、ジャコウネズミなどが日本にいるトガリネズミ目です。
 日本の哺乳類のうち、昔の食虫目について知りたいなら、トガリネズミ目を調べればよいわけですね。ところが、それで話は終わりません。
 研究されるにつれ、「トガリネズミ目は、一つの目【もく】にするほどのまとまりがない」と言われるようになりました。例えば、「モグラの仲間とジネズミの仲間とは、目【もく】を分けるほどの差がある」というのです。現在のトガリネズミ目も近い将来、分類が変わるでしょう。生物学の発展には、目が離せません。


図鑑↓↓↓↓↓には、元・食虫目【もと・しょくちゅうもく】のオオアシトガリネズミ、カワネズミ、サドモグラ、ミズラモグラなどが載っています。
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過去の記事でも、元・食虫目【もと・しょくちゅうもく】の生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
タンザニアで、新種の哺乳類を発見(2008/04/16)
ネズミでないネズミがいる?(2007/12/21)
日本はモグラの標本国?(2007/01/26)
などです。

2010年4月30日

平城京の野菜? ニラ(韮)

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 二〇一〇年は、平城京遷都千三百年祭ですね。千三百年前、奈良時代が始まりました。当時の人々は、何を食べていたのでしょうか?
 当時の文献を調べると、食べ物がわかります。古事記や日本書紀や万葉集ですね。奈良時代の人々も現代と同じように、さまざまな野菜を食べていました。
 例えば、ニラは、奈良時代から日本にあったとされます。古事記に、賀美良【かみら】という名で登場します。万葉集では、久君美良【くくみら】という名で登場します。
 「奈良時代、ニラを食用にしていた」という明確な証拠は、ありません。けれども、万葉集の歌には、くくみら(ニラ)を摘む様子が詠まれています。
 当時は、今よりもずっと食糧事情が悪いです。食べられる物は、何でも食べたでしょう。手間をかけて摘んでいることからして、きっと食べていたと思います。
 千年以上昔からあってもニラの原産地は、日本ではないと考えられています。原産地は、はっきりとわかっていません。中央アジアという説が有力です。中国の西の端あたり、タジキスタン(タジク)と国境を接するパミール高原付近です。
 パミール高原は、漢字名では、葱嶺【そうれい】といいます。葱(ネギ)の嶺【みね】という意味ですね。この名の理由は、この地域に、ネギやニラの仲間がたくさん生えているからです。ネギとニラとは、同じネギ属に属します。
 栽培されるニラの原種は、ラテン語の学名を、Allium ramosum【アリウム・ラモスム】というものだろうと考えられています。この種には、日本語名はありません。
 アリウム・ラモスムは、モンゴルやシベリアにも分布します。現地では、現在も、この種を食べることがあるそうです。このことから、「モンゴルや中国北部で、アリウム・ラモスムからニラができた」という説もあります。
 どの説にせよ、ニラは、ユーラシア大陸の奥深くで生まれたことになります。それが、奈良時代にはもう、極東の日本まで来ていました。いっぽう、現在のアフガニスタン(タジクの隣)でも、ニラをよく食べるそうです。シルクロードは、つながっていますね。


図鑑↓↓↓↓↓には、ニラが載っています。
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 過去の記事でも、奈良時代に食べられた野菜を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
昔は主食だった? サトイモ(里芋)(2008/06/27)
キュウリは、なぜ「胡瓜」と書く?(2007/08/17)
節分に豆(ダイズ)をまくのはなぜ?(2006/01/23)
などです。

2010年4月26日

どじょっこにも、いろいろいます

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 ドジョウは、日本人に親しい魚ですね。『どじょっこ、ふなっこ』や『どんぐりころころ』など、童謡にも歌われます。そのわりに、生態が知られているとは言えません。
 ドジョウとは、コイ目【もく】ドジョウ科に属する種の総称です。ややこしいことに、ドジョウ科には、単に「ドジョウ」という種名の種もいます。
 日本に分布する種だけでも、ドジョウ科には、十種以上いるだろうといわれます。「だろう」というのは、正確には何種いるのか、わかっていないからです。
 ドジョウ科の種は、どの種も地味です。外見では、区別が付けにくいです。そのうえ、昔は、水田などにたくさんいました。身近すぎて、研究が進まなかったのでしょう。
 日本で最も普通なのは、種名ドジョウです。食用にされるのは、この種です。食用のドジョウには、カラドジョウという別種が混じることがあります。
 他に、イシドジョウ、シマドジョウ、フクドジョウ、ホトケドジョウなどの種がいます。アユモドキ―日本の天然記念物に指定されています―もドジョウ科の魚です。
 種名ドジョウ以外の種は、分布が限られているものが多いです。限られた地域にしかいない、ということです。その地域で、無差別に開発が進んだら絶滅しかねません。
 そういう種は、たいがいの場合、一応の保護はされています。けれども、充分な状態とは、言いにくいです。特に、最近、見つかった種はそうです。スジシマドジョウ、ナガレホトケドジョウなどです。日本でも、最近になって新種が見つかるのですね。
 これらの種には、日本語名はあっても、ラテン語の学名が付いていません(正式な日本語名とは、学名でなく、標準和名といいます)。正式に、学界で認められていません。
 スジシマドジョウは、元は、シマドジョウの中に含まれていました。現在は、シマドジョウと似ていても、違う種とされています。同じように、ナガレホトケドジョウは、ホトケドジョウの中に入れられていました。現在は、違う種になっています。
 このような「新種の発見」は、まだ、あるかも知れないといわれます。「発見されて早々に、絶滅の危機」などということにはしたくありませんね。


図鑑↓↓↓↓↓には、ドジョウ科のドジョウとアユモドキが載っています。
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 過去の記事でも、ドジョウと同じく日本の淡水に棲む魚を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ちょっと待って! メダカの放流(2008/04/25)
貝に卵を産む? 不思議な魚たち(2007/03/30)
鯉(コイ)は本当に滝を登るか?(2006/04/24)
などです。

2010年4月23日

万葉集の「むろのき」とは、ネズミサシ?

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 生き物の中には、複数の名前を持つものがありますね。一つしか名前がない生き物は、少ないです。国や地方により、違う名で呼ばれるのが、普通です。
 生物学の世界では、正式には、ラテン語の学名を使います。混乱を防ぐためです。学名については、「学名と標準和名とは、違う? 同じ?」(2009/08/07))を参照して下さい。
 中には、学名や標準和名が、決まっていないものもいます。困ったことですね。
 例えば、植物のネズミサシが、そうです。この植物は、標準和名(正式な日本語名)が、「ネズミサシ(鼠刺)」なのか「ネズ(杜松)」なのか、決まっていません。
 ネズとは、ネズミサシを省略した呼び名です。ネズミサシとは、面白い名ですね。これは、「葉をネズミ除けに使ったことから付いた」といわれます。ネズミサシの葉は、とげとげしく硬いです。害獣除けには、ちょうど良さそうです。
 ネズミサシには、方言名も多いです。「むろ」「むろのき」「もろ」などという名が、各地に伝わっています。「もろ」は、「むろ」のなまりでしょう。
 「むろ」という名は、起源が古いです。少なくとも奈良時代には、「むろのき」という名がありました。万葉集に「むろのき」を詠んだ歌が、いく首かあります。
 有名なのは、大伴旅人【おおとものたびと】の歌でしょう。彼は、鞆の浦【とものうら】―現在の広島県福山市にあります―で、二首の歌を詠んでいます。
 これらの歌によれば当時の鞆の浦には、大きな「むろのき」(ネズミサシ)が生えていたようです。歌に詠まれるほどですから、目立つ樹だったのでしょう。
 大伴旅人ははかない人の命と比べて、『むろの木は常世【とこよ】にあれど』と詠みました。しかし現在それらしいネズミサシは、鞆の浦にはありません。
 鞆の浦といえば、アニメ映画で有名になりましたね。『崖の上のポニョ』です。
 今鞆の浦は、景観論争で揺れています。樹木一本どころか、浦の景観全体を変える力を、現在の人間は持っています。それほどの力は、良い方向に使いたいものです。鞆の浦のシンボルとして、「むろのき」を植えるなどしてはいかがでしょうか。


図鑑↓↓↓↓↓には、ネズミサシ(ネズ)が載っています。
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過去の記事でも、万葉集に登場する生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
日本のろうそくを灯すのは、ハゼノキ?(2009/10/07)
卯月【うづき】に咲くから、ウノハナ?(2009/05/15)
可憐な少女が鬼母に? ジガバチ(2008/05/09)
などです。

2010年4月19日

所属はどこですか? カサガイたち

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 春は、潮干狩りの季節です。娯楽と実益を兼ねて、海辺へ行く方もいるでしょう。今回は海岸でよく見られる生き物を紹介します。
 海辺の岩に、小さな円錐【えんすい】形の貝殻が、貼り付いているのを見たことがありませんか? ちょっと見たところでは、フジツボに似ています。
 これらの「円錐形の貝」は、フジツボの仲間ではありません。見た目どおり、貝の仲間です。フジツボは、貝よりもエビやカニに近縁です。
 これら円錐形の貝たちは、カサガイ(笠貝)と総称されます。昔の人がかぶった笠に似るからです。よく見ればフジツボとは、形が違います。時おり位置を動くのも、フジツボとの違いです。フジツボは、一度、付いた場所から離れられません。
 貝には、二枚貝と巻貝とがありますね。カサガイは、巻貝の仲間です。専門的には、軟体動物門【なんたいどうぶつもん】腹足綱【ふくそくこう】というグループに属します。
 巻貝の仲間なのにカサガイの殻は、巻いていませんね。なぜでしょう?
 じつは、カサガイと呼ばれる種は、すべてが同じグループに分類されるのではありません。いくつもの遠縁なグループにカサガイ型の種がいます。ただし、どの種も、腹足綱に含まれるのは同じです。腹足綱の中で、どのグループに属するかが違います。
 おそらく、最も多く「カサガイ」型の種が含まれるのは、腹足綱カサガイ目【もく】というグループです。このグループは、原始的な形の巻貝と考えられています。「巻貝が、巻くようになる前の姿」を残しているわけです。
 他に、例えば、有肺目【ゆうはいもく】カラマツガイ科の「カサガイ」たちがいます。このグループは、「普通の巻貝のはずが、巻かなくなった」と考えられています。
 カサガイ目の「カサガイ」も、有肺目の「カサガイ」も、外見はそっくりです。すみかも、同じ海岸です。同じように見えても体の構造は違います。
 「カサガイ」の分類はまだ途上です。腹足綱の分類自体が、組み替えの最中だからです。前記の分類も変わる可能性があります。小さな貝の分類も難しいのですね。


図鑑↓↓↓↓↓には、カサガイ目【もく】のウノアシ、マツバガイ、ヨメガカサが載っています。
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過去の記事で、「カサガイ」と紛らわしいフジツボ、カメノテを取り上げています。また、「カサガイ」と同じく海の岩場に棲む巻貝(アワビなど)や、有肺目の巻貝(カタツムリ)も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
フジツボは富士壷? 藤壷?(2008/09/29)
アワビという種名の貝はいない?(2008/01/14)
カタツムリの殻は右巻き? 左巻き?(2007/06/18)
などです。

2010年4月16日

アリが植物に登るのは、何のため?

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 春です。いろいろな生き物が活動を始めていますね。足もとを見るとアリたちが、忙しそうにしているかも知れません。
 時おり、アリが行列をなして植物に登っていることがあります。これは、何をしているのでしょうか? 多くの場合は、植物に食べ物を求めているのです。
 植物のうえには、アリの食べ物として、主に二種類のものがあります。
 一つは、アブラムシの出す甘露【かんろ】=甘い露です。
 園芸や農業をやる方なら、アブラムシは御存知でしょう。植物に付く小さな昆虫ですね。バラの新芽など、放っておくとアブラムシだらけになります。
 アブラムシは、植物の汁を吸って生きます。植物を弱らせるので害虫とされます。
 アブラムシの甘露とは、アブラムシの排泄物です。これには、たくさんの糖分が含まれます。甘いわけですね。アリは、甘い物が好きですから、アブラムシに寄ってゆきます。甘露をもらうかわり、アリはアブラムシを保護します。
 もう一つのアリの食べ物は、植物の出す蜜です。
 花に蜜があるのは、皆さん御存知ですね。ハチやチョウばかりでなく、アリも花の蜜を食べることがあります。でも、花の蜜以外の蜜のほうが、よく食べられるようです。
 植物に、花の蜜以外の蜜なんてあるのでしょうか? あります。花外蜜腺【かがいみつせん】といって、花以外のところにも、蜜を出す器官があります。
 どの植物にも、花外蜜腺があるわけではありません。ない植物もあります。花外蜜腺が、植物のどこにあるかは種によって違います。
 花外蜜腺は、もっぱら、アリのためにあるようです。アリを呼ぶために、花外蜜腺が発達したといえるでしょう。アリが植物に来ると良いことがあるからです。
 アリは、植物を食べるガ(蛾)の幼虫などを攻撃します。植物は、守ってもらえるわけです。ところが、前記のとおりアリは、アブラムシも保護します。植物の敵と味方と両方を保護するのですね。自然の中では、敵味方が複雑にからみ合っています。


図鑑↓↓↓↓↓には、クロオオアリ、クロヤマアリ、トゲアリが載っています。
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過去の記事でも、アリを取り上げています。アリと植物の関係や、哺乳類のアリクイの画像も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
オオアリクイ(2008/10/09)
可憐【かれん】なだけでは生きていけない、カタクリ(2008/03/24)
シロアリとアリとは、どう違う?(2007/06/11)
などです。

2010年4月12日

アカメガシワの芽は、なぜ赤い?

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 芽吹きの季節ですね。落葉樹が、いっせいに芽を伸ばし始めています。
 中にはまるで花のように、色づいた芽もあります。例えば、アカメガシワの芽は赤いです。だから「赤芽ガシワ」です。なぜ、芽が赤いのでしょうか?
 アカメガシワの普通の葉は、普通の緑です。じつは、新芽の葉も、同じように緑色をしています。それなら、なぜ、赤く見えるのでしょうか?
 新芽の葉をよく観察してみましょう。葉は、びっしりと細かい毛で覆われています。これは、星状毛【せいじょうもう】と呼ばれるものです。金平糖のように、放射状にちくちくと生える毛のことです。アカメガシワの星状毛は赤いです。
 赤い新芽の色は、葉の色ではなく星状毛の色なのですね。ためしに、星状毛をこすり落としてみましょう。下からは、緑の葉が現われます。
 葉が成長するにつれ、星状毛は脱落します。それでも、よく観察するとアカメガシワの普通の葉にも星状毛があるのがわかります。新芽の時よりずっとまばらにしか付いていません。このために、普通の葉は緑に見えます。
 赤い星状毛には、新芽を守る働きがあると考えられています。具体的に、どのように働いているのかはわかっていません。
 アカメガシワは、カシワと付いてもカシワの仲間(ブナ科)ではありません。トウダイグサ科に属します。カシワという名は、葉が大きいことから付けられました。
 「かしわ」とは、本来「食べ物を包む木の葉」全般を指しました。おそらく、大きな葉を持つ木は、みな「かしわ」と呼ばれました。それらのうちで、代表的なものが、現在のカシワです。種を区別するため他種には「○○カシワ」という種名が付きました。
 アカメガシワとは、近世になってから付いた名です。もっと昔は、別のいろいろな名で呼ばれました。例えば、万葉集に出てくる「ひさぎ」という木は、アカメガシワだといわれます(異説もあります)。漢字では、楸【ひさぎ】などと書かれます。
 秋、アカメガシワは、紅葉ならぬ黄葉します。春には赤いのに、面白いですね。


図鑑↓↓↓↓↓には、アカメガシワが載っています。
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過去の記事で、古代に「かしわ」と呼ばれたカシワや、別名「ほおがしわ」と呼ばれるホオノキを取り上げています。また、アカメガシワと同じく、古代に「ひさぎ」と呼ばれたキササゲも取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
梓【あずさ】の正体は、キササゲ?(2009/11/09)
柏餅【かしわもち】は、なぜカシワで作られる?(2008/05/05)
日本一の大輪の花、ホオノキ(朴の木)(2006/05/19)

2010年4月 9日

日本に、新種のトカゲあらわる?

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 トカゲは、誰でも知っている爬虫類ですね。日本に最も多いトカゲは、ニホントカゲでしょう。都市でも、石垣があればちょろちょろしているのが見られます。日本人にとって、最もトカゲらしいトカゲといえます。
 ニホントカゲ以外にも、日本には何種かのトカゲがいます。その中の一種は、ごく最近になって発見されました。オカダトカゲという種です。
 新種といえば、「人里はなれた山奥か、離島で発見されるもの」と思う方が多いでしょう。ところが、オカダトカゲは人家のすぐ近くで発見されました。分布地では、普通に目撃されるトカゲです。ただ、それが新種だとは気づかれなかったのです。
 オカダトカゲは、ニホントカゲとそっくりです。外見での違いは、鱗【うろこ】の数です。オカダトカゲのほうが、鱗の数が多いです。でも、こんな細かい特徴は、よほどしっかり観察しないとわかりませんね。
 このために、オカダトカゲは、長い間ニホントカゲと混同されていました。「北海道、本州、四国、九州に分布するのは、すべてニホントカゲだ」と思われていたのです。
 オカダトカゲは、最初、伊豆諸島で発見されました。神津島【こうづしま】、三宅島などですね。その後、伊豆半島のトカゲも、オカダトカゲだとわかりました。
 それまで、伊豆半島のものは、ニホントカゲだと思われていました。外見がそっくりですからね。伊豆半島のどこで、オカダトカゲとニホントカゲの分布が分かれるのかは、まだ不明です。少なくとも、南伊豆のものは、オカダトカゲのようです。
 島ではなく、半島なのに違う種が分布するとはどういうことでしょう? この謎も、まだ解けていません。「地質学の問題と関係しているのでは?」といわれます。
 はるかな昔、伊豆半島は、日本の南の島でした。伊豆諸島の島々と同じです。それが、北上して日本列島に衝突しました。地球のプレート活動のためです。
 このような地質学上の歴史とトカゲの分布とは、関係がありそうですね。スケールの大きな謎です。こういう謎解きはわくわくしますね。


図鑑↓↓↓↓↓には、ニホントカゲが載っています。
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過去の記事でも、ニホントカゲなど日本に分布するトカゲを取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
日本最大のトカゲとは?(2009/08/14)
イグアナ? いえ、キノボリトカゲです(2008/02/11)
大洋に生きるオガサワラトカゲ(2007/11/09)
トカゲのしっぽ切りは何のため?(2006/09/11)
などです。

2010年4月 5日

長距離飛行のチャンピオン? シギとチドリ

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 春と秋とは、渡り鳥の季節です。渡り鳥が移動する季節だからです。
 今の時期ですと夏鳥が暖かい地域からやってきます。冬鳥が、寒い地域に去ってゆきます。それら以外に、旅鳥【たびどり】と呼ばれる渡り鳥が、見られます。
 旅鳥とは、ある地域で、春と秋にしか見られない鳥です。その地域に、長く滞在はしません。渡りの途中に、立ち寄るだけなのですね。いる期間が短いため見るには、時期を逃さないように注意しなければなりません。
 日本の旅鳥には、シギとチドリの仲間が多いです。シギとチドリの仲間は、分類上、近縁です。生態も似ています。どちらも水鳥です。干潟・水田・沢などにいることが多いです。このため、バードウォッチャーには、シギ・チとまとめて呼ばれます。
 なぜ、日本のシギ・チには、旅鳥が多いのでしょうか? 理由の一つに、彼らの多くが、長距離を渡ることが挙げられます。
 例えば、シギの一種、キョウジョシギを見てみましょう。彼らが繁殖するのは、北極のツンドラ地帯です。繁殖期が終わると南半球のオーストラリアやニュージーランド、南アフリカへ移動します。地球を半周するほどの距離を飛ぶわけです。
 チドリの仲間も負けていません。例えば、ダイゼンというチドリの一種は、やはり北極のツンドラ地帯で繁殖します。非繁殖期には、オーストラリアや南アフリカ、マダガスカルなどへ渡ります。一部、日本国内で越冬するものもいます。
 こんなに長い距離を飛ぶのでは、途中で休みたくなるでしょう。日本は、彼らの渡りのルート上にあります。休息するのにちょうどいいのですね。
 干潟は、彼らの休息地として特に重要です。干潟には、大型の肉食獣が来ません。歩きにくいからです。そして、ゴカイやカニなど彼らの食べる生き物がたくさんいます。「安心して休息できる」「食べ物がある」という二つの条件を備えています。
 かつての日本は干潟の多い国でした。けれども、人間の開発のため、ずいぶん減ってしまいました。せめて残った干潟は、彼らの解放区にしておきたいですね。


図鑑↓↓↓↓↓には、キョウジョシギなどのシギ類と、ダイゼンなどのチドリ類が載っています。
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過去の記事でも、シギやチドリの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
キョウジョシギ(2009/05/12)
ソリハシセイタカシギ(2009/03/28)
西行【さいぎょう】の歌ったシギは、どの種?(2008/10/10)
フタオビチドリ(2008/06/03)
チドリはなぜ千鳥足で歩く?(2006/7/24)
などです。

2010年4月 1日

海中の透明で長いもの、な~んだ?

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 二十一世紀になっても、海では謎の生物が目撃されますね。シーサーペント(大海蛇)の伝説をほうふつとさせます。今回は、シーサーペントに間違えられそうな生き物を紹介しましょう。海にいて、長い体を持つものたちです。多くは、透明な体です。
 第一は、刺胞動物【しほうどうぶつ】のグループです。クラゲの仲間ですね。クラゲといえば普通は、笠のような形を思い浮かべるでしょう。そうではないクラゲもいます。
 特に、クダクラゲ目【もく】に属する種は、透明な紐【ひも】に見えます。アイオイクラゲ、ボウズニラなどの種は、長さが数m~数十mになることがあります。彼らの紐状の体からは、触手がたくさん垂れています。透明で細長いシャンデリアのようです。
 第二は、有櫛動物【ゆうしつどうぶつ】のグループです。クシクラゲと呼ばれる仲間です。クダクラゲと紛らわしいですね。でも、刺胞動物のクラゲとは違います。
 有櫛動物の中に、オビクラゲという種がいます。名のとおり、透明な帯【おび】状です。刺胞動物のボウズニラなどに比べると、幅が広く、薄べったいです。たくさんの触手もありません。こちらも、長さが1mを越えることがあります。
 第三は、脊索動物【せきさくどうぶつ】のグループです。ホヤやサルパの仲間です。
 脊索動物の中で長くなるのは、ヒカリボヤ目【もく】に属する種と、サルパ目【もく】に属する種です。時には、長さが数十mにもなります。
 ヒカリボヤは、透明な筒状の体です。真ん中に穴があります。「泳ぐ筒」という表現がぴったりです。この特徴を知れば、他のものと間違えないでしょう。
 サルパのほうは小さな樽【たる】状のものが、いくつもつながっているように見えます。一見、刺胞動物のクダクラゲ目に似ます。しかし、よく見れば、触手はありません。
 第四に、軟体動物のグループにも「長くて透明なもの」がいます。ソデイカなど、一部のイカの卵塊【らんかい】(卵のかたまり)です。透明な筒状なので、ヒカリボヤと紛らわしいです。が、こちらは自力で泳ぎません。流れに漂うだけです。
 こんなにいろいろな生き物がいるとはやはり、海は神秘の宝庫ですね。


図鑑↓↓↓↓↓には、未確認生物と紛らわしいヒカリボヤや、オオサルパが載っています。
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過去の記事でも、「透明で長い海の生き物」を取り上げています。また、謎の生物についても取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
チュパカブラ? ニホンオオカミ? 謎の生物の正体は(2009/03/30)

海中のイルミネーション? ヒカリボヤ(2007/12/10)
サルパとは、どんな生き物?(2007/05/31)
などです。

2010年3月29日

「ねつこぐさ」の正体は、オキナグサ?

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 寒くても、もう春ですね。あちこちで、春の便りが聞かれます。
 春の便りの一つが、オキナグサです。多くの地域でオキナグサは、今の季節に花を咲かせます。花の色は黒っぽいですが可憐な花です。
 オキナグサを漢字で書くと「翁草」です。お爺さんの草という意味ですね。
 なぜ、こんな名が付いたのでしょうか? この名は花ではなく果実に由来します。
 オキナグサの果実には、白く、長い毛がたくさん生えています。この様子を、お爺さんにたとえたわけです。なぜ、お爺さんなのでしょう? お婆さんでもいいはずですね。
 と思ったら、方言名の中にオキナグサを、お婆さんに譬えたものがありました。「うばがしら」、「しらがばんば」、「やまんば」などの方言名です。
 方言名の中には、男女に限らず、高齢者にたとえたものもあります。「しらがくさ」「としよりぐさ」などです。中には、男女両方を挙げた方言名もあります。「じーとんばーとん」「じじとばば」などです。ユーモラスで楽しい名が多いですね。
 私が調べた範囲でオキナグサには、二百以上もの方言名があります。それだけ、日本で親しまれてきた草なのでしょう。万葉集にも、オキナグサを詠んだ歌があるといわれます。万葉集の「ねつこぐさ」は、オキナグサだというのです。
 「ねつこぐさ」の正体は、いろいろ議論されてきました。「オキナグサではない」とする説もあります。万葉集の中で、正体未定の植物の一つです。
 現在では、「ねつこぐさ=オキナグサ」説が有力です。理由の一つが、方言名です。方言名の中に、「ねつこぐさ」に似たものがあるのです。
 オキナグサには、「ねこ」「おねこ」「ねこぐさ」「ねこばな」などの方言名があります。方言名には、古い時代の名が残ることが多いです(むろん、そうでないことも多いです)。前記の名は、古代の「ねつこぐさ」が変化して残ったものと考えられます。
 万葉集の「ねつこぐさ」の歌は恋歌です。オキナグサの愛らしさは、恋歌にふさわしいですね。私も「ねつこぐさ=オキナグサ」説に一票を投じたいです。


図鑑↓↓↓↓↓には、オキナグサが載っています。
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過去の記事でも、万葉集に登場する生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
卯月【うづき】に咲くから、ウノハナ?(2009/05/15)
可憐な少女が鬼母に? ジガバチ(2008/05/09)
可憐なだけでは生きていけない、カタクリ(2008/03/24)
などです。

2010年3月26日

水族館にいないイルカとは?

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 日本には、水族館がたくさんありますね。島国だからでしょう。どこの水族館でも人気なのがイルカです。皆さんも、きっと見たことがおありでしょう。
 イルカの種数は、三十から四十種ほどといわれます。それらのうち、水族館で見られるのはごく一部です。ほとんどが、ハンドウイルカ(バンドウイルカ)という種です。
 他に、カマイルカ、シロイルカなども飼われます。普通に飼われるイルカは、せいぜい五種くらいです。人気があるのに、なぜ、飼われる種が少ないのでしょうか?
 理由は、いくつかあります。最も大きな理由は、飼育が難しいことでしょう。
 生態がわからない生き物は、飼うのが難しいです。つまり、イルカの仲間は、生態がわからない種が多いのです。ハンドウイルカは、例外的な存在です。
 水族館にいないイルカが、必ずしも絶滅に瀕しているわけではありません。例えば、マイルカ、スジイルカなどは、数が多いイルカです。でも、水族館では見ませんね。
 数が多いなら、観察の機会が多いはずです。なぜ、生態がわからないのでしょうか?
 一つには、生息海域の問題です。外洋性のイルカは、観察される機会が少ないです。スジイルカは、これに当たります。マイルカも、外洋にいることが多いようです。沿岸に棲むイルカの種は、そう多くありません。
 スジイルカとマイルカは、外洋で一緒にいることがあります。どちらの種も、百頭を越える大きな群れを作ります。群れの仕組みは、まだ、わかっていません。
 スジイルカやマイルカは、飼育されたこともあります。けれども、長生きはできませんでした。水族館での生活は、自然の生活とは違いすぎるからでしょう。
 彼らにとっては、広い外洋で何百頭もの仲間と一緒にいるのが「自然」です。水族館で、そんな環境を再現するのは不可能ですね。
 普通は見られない生き物を間近で見てみたい。そういう気持ちは私にもあります。水族館や動物園は、そのような夢を叶えてくれます。だからといって、必要以上に生き物を苦しめることはしたくありませんね。


図鑑↓↓↓↓↓には、スジイルカなどが載っています。
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 過去の記事でも、イルカについて取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
新種のエイ、新種のイルカを発見(2008/8/26)
揚子江【ようすこう】に、イルカはいるか?(2008/06/24)
イルカがクジラを救助した!?(2008/03/15)
イルカは淡水で暮らせない?(2007/09/05)
などです。

2010年3月22日

絶滅種に、再発見の可能性はあるか?

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 ある種の生き物が、絶滅したか、そうでないかは、どのようにして判断されるのでしょうか? 一般的には、「五十年間、観察されなければ絶滅」とみなされます。
 けれども、五十年以上観察されなくても、再発見された「絶滅種」もあります。近年では、オオハシヨシキリの例が有名です。鳥の一種です。
 オオハシヨシキリは、ウグイス科に属します。最初に発見されたのは、一八六七年です。十九世紀ですね。それ以来、二十一世紀になるまで観察されませんでした。
 このため、当然のように「絶滅した」と考えられました。そもそも、この種の存在を疑う意見すらありました。「別種の鳥と間違えたのでは?」というわけです。
 ところが、二〇〇六年になって、再発見されました。約百四十年ぶりです。
 オオハシヨシキリの分布域はわかっていません。おそらく、南アジア地域です。日本には分布しません。狭い日本では、このような例は望めないのでしょうか?
 そんなことはありません。例えば、二〇〇九年に日本で「五十九年ぶりの再発見」というニュースがありました。鳥ではなく、貝類の一種です。
 再発見されたのは、サタミサキゴマガイという種です。陸に棲む巻貝です。カタツムリの一種といえます。ゴマガイ科に属します。
 サタミサキゴマガイは、成体になっても殻の長さが2.2mmほどしかありません。小さくても、種の重要さに変わりはありません。
 日本のように、開発が進んだ国では、大型の生き物が再発見される余地は少ないでしょう。でも、小さい生き物ならば、可能性は大いにあります。
 多少、大きくても鳥類ならば、再発見の余地がありそうです。彼らは、空を飛べるからです。飛べる動物は、行動範囲が広いですね。人目に付かないところへ、避難している可能性があります。日本本土にいなくても、付近の大陸や島にいるかも知れません。
 日本には「近年に絶滅した」といわれる鳥が何種かいます。オガサワラガビチョウ、カンムリツクシガモなどです。彼らの再発見といった奇跡はないものでしょうか。

オオハシヨシキリ再発見のニュースは、以下にあります。
幻の鳥、140年ぶりタイで確認 DNA検査で特定(asahi.com 2007/3/9)

日本で五十九年ぶりに再発見された貝のニュースは、以下にあります。
絶滅種「サタミサキゴマガイ」59年ぶりに発見/南大隅町(南日本新聞 2009/9/11)


図鑑↓↓↓↓↓には、日本に分布する珍しい生き物トウキョウサンショウウオ、オガサワラヤモリ、イリオモテヤマネコなど何種も載っています。
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 過去の記事でも、再発見された「絶滅種」について取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ヒヨケザルの新発見、メガネザルの再発見(2008/11/20)
絶滅種?のシカとカエルが、再発見される(2008/10/14)
新種・珍種がざっくざく、南硫黄島【みなみいおうとう】(2008/06/10)
ダイトウウグイス復活!(2008/05/29)
などです。

2010年3月19日

影が薄い? ジョウカイモドキ

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 昆虫の種名には、「モドキ」が付くものが多いですね。イナゴモドキ、ナナフシモドキなどという種名があります。「もどき」とは、「何かに似て非なるもの」を指します。
 一種だけでなく、いく種も含めた分類グループ全体に「モドキ」が付くこともあります。例えば、ジョウカイモドキが、そのようなグループです。
 ほとんどの人にとって、ジョウカイモドキとは、聞き慣れない名前でしょう。ジョウカイ「モドキ」というからには、本家の「ジョウカイ」という昆虫がいるはずですね。
 ジョウカイモドキの本家は、ジョウカイボンという昆虫です。甲虫目【こうちゅうもく】ジョウカイボン科に属する昆虫たちです。ジョウカイボンについては、以前、このコラムで取り上げています(ジョウカイボンとは、どんな昆虫?(2009/05/18))。
 ジョウカイモドキのほうは、甲虫目ジョウカイモドキ科に属する昆虫たちを指します。名に反して、ジョウカイボンとは遠縁です。ジョウカイボン科は、ホタル上科に属しますが、ジョウカイモドキ科は、カッコウムシ上科に属します(分類には、異説があります)。
 近縁でないのなら、ジョウカイモドキは、何をもってジョウカイボンの「もどき」とされたのでしょうか? おそらく、生態が似ることです。
 ジョウカイボンもジョウカイモドキも、植物の葉や花にいることが多いです。これは、獲物を待ち伏せしているのです。花などにやってきた昆虫を、捕らえて食べます。ジョウカイボン、ジョウカイモドキともども、幼虫も肉食性です。
 ところが、ジョウカイモドキの成虫は、完全な肉食性とは限りません。植物を食べることがあります。例えば、ツマキアオジョウカイモドキという種は、他の昆虫以外に、花粉を食べます。
 生態が似るのに、食性が少し違うため、ジョウカイ「モドキ」にされたのでしょう。
 ジョウカイモドキ科の昆虫は、生態がわかっていないものが多いです。すべての種が、ジョウカイボン科に似るわけではないでしょう。そもそも、ジョウカイボン科にも、いろいろな種がいます。全部を「もどき」呼ばわりするのは気の毒ですね。


図鑑↓↓↓↓↓には、ツマキアオジョウカイモドキが掲載されています。
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 過去の記事でも「~モドキ」と付く生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ウメモドキ? いえ、ツルウメモドキです(2009/12/25)
テリムクドリモドキ(2007/03/18)
サソリ? いえサソリモドキです(2006/09/29)
などです。

2010年3月15日

海の毛虫も蝶(チョウ)になる? ウミケムシ

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 海の生き物には、「ウミ○○」という種名のものが多いですね。陸上生物の中で、姿が似るものにたとえてこのような名が付けられます。
 似ていても、近縁とは限りません。むしろ、遠縁であるほうが普通です。
 ウミケムシ(海毛虫)も、そういう生き物の一種です。海釣りをやる方なら、ウミケムシに会ったことがあるかも知れませんね。キス釣りなどの外道としてかかります。
 ウミケムシは、ゴカイの仲間です。専門的にいえば、環形動物門【かんけいどうぶつもん】多毛綱【たもうこう】ウミケムシ目【もく】ウミケムシ科の一種です(分類には、異説があります)。ウミケムシ科に属する種をまとめて、ウミケムシと呼ぶこともあります。
 いっぽう、陸の毛虫はどうでしょう? こちらは、もちろん昆虫ですね。専門的には、節足動物門【せっそくどうぶつもん】昆虫綱【こんちゅうこう】に属します。ウミケムシとは、門【もん】のレベルで分類が違います。
 それにしても、実物を見た方なら「ウミケムシ」という種名に納得するでしょう。本当に、毛虫にそっくりです。毛に毒があり、刺すところまで似ています。
 毒があるのは、身を守るためです。毒のおかげで、ウミケムシは海底を、堂々と歩くことができます。彼らを襲うものは少ないです。
 ゴカイの仲間は、一般的に魚の好物です。釣り餌にされるくらいです。ですから、海底の砂や岩の中に、隠れて棲んでいます。ウミケムシは、隠れる必要がありません。
 ウミケムシの類を除けば、ほとんどのゴカイには、毒はありません。ヒトには無害です。なのに「外見が気持ち悪い」と、嫌われることが多いです。
 ところが、ゴカイの仲間の学名を知ると驚きです。ラテン語の学名では、美女ぞろいなのです。主に、ギリシャ神話に登場する美女たちです。
 例えば、オトヒメゴカイの学名は、トロイアの王女ヘーシオネーHesioneに由来します。オニイソメの学名エウニーケーEuniceは、ギリシャ神話の海の妖精から取られています。ゴカイの仲間も、よく見ると独特の美しさがあるからでしょう。


図鑑↓↓↓↓↓には、ウミケムシが掲載されています。
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 過去の記事でも、環形動物【かんけいどうぶつ】の仲間を取り上げています。また、美女の名から取った学名についても取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
チョウ(蝶)の学名は、美女だらけ?(2010/01/11)
海中のクリスマスツリー? イバラカンザシゴカイ(2005/12/09)
などです。

2010年3月12日

ヨーロッパ独りぼっち? レンギョウ

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 早春の花が見られる季節ですね。レンギョウは、日本の早春の花として有名なものの一つです。公園や庭によく植えられています。
 レンギョウ属の種は、東アジアに広く分布します。日本にも在来種があります。ヤマトレンギョウとショウドシマレンギョウです。どちらも日本固有種です。
 日本の公園などにあるのは、これらの日本固有種でしょうか? 違います。
 植えられるレンギョウは、多くが人工的に作られた栽培品種です。複数の野生種を、交配したものです。元になったのは、中国や朝鮮半島原産のものです。
 ややこしいことに、レンギョウ属の中にレンギョウという種名の種があります。種名レンギョウは、中国原産です。同じく中国原産の種としてシナレンギョウがあります。朝鮮半島を原産地とするのはチョウセンレンギョウです。
 種名レンギョウとシナレンギョウ、チョウセンレンギョウが、栽培品種の源になりました。日本で普通に見られるのは、この三種のどれか、もしくは、これらの交配種です。
 では、ヤマトレンギョウやショウドシマレンギョウは、どこにあるのでしょう?
 ショウドシマレンギョウは、名のとおり、瀬戸内海の小豆島に自生します。ヤマトレンギョウは、私の知る範囲では、岡山県の一部にしか自生しません。どちらの種も、ごく限られた地域にあるだけです。このため、絶滅が心配されています。
 レンギョウ属の分布には、謎があります。ほとんどの種が東アジアにあるのに、一種だけ、ヨーロッパに分布するのです。セイヨウレンギョウという種です。
 セイヨウレンギョウは、東ヨーロッパの一部(バルカン半島)にだけ分布します。近隣には、近縁種はありません。広大なユーラシア大陸の東端と西端に、飛び離れて分布するわけです。なぜ、こんな分布なのかはわかっていません。
 レンギョウ属の分布は、彼らが進化してきた道筋と関わりがあるでしょう。彼らが地球に生まれた頃には、大陸が、現在とは違う形だったといわれます。レンギョウ属を調べれば、何千万年も昔の地球の様子がわかるかも知れません。


図鑑↓↓↓↓↓には、シナレンギョウが掲載されています。
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 過去の記事でも、分布に謎がある生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
生き別れの親類が再会? ヤマボウシとハナミズキ(2008/05/19)
大山椒魚(オオサンショウウオ)は冬眠しない?(2007/02/05)
氷河期の生き残りキタサンショウウオ(2005/11/07)
などです。

2010年3月 8日

害魚が益魚に? うろこの秘密

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 二〇〇八年のことですが、興味深いニュースがありました。ある種の魚の鱗【うろこ】が、防弾チョッキの開発に役立つかも知れないというのです。
 防弾チョッキというと軍事技術ですね。「そんな恐ろしいものの話は、聞きたくない」方もいるでしょう。でも、待って下さい。このような技術は、平和利用できます。
 今回のニュースになったのは、ポリプテルス・セネガルスという魚です。アフリカに分布します。日本にはいません。けれども、熱帯魚としてペット屋で売られています。
 ポリプテルスの仲間は、特殊な鱗を持ちます。「ガノイン鱗」と呼ばれるものです。この鱗は、とても丈夫です。これのために、ポリプテルスの仲間は、怪我や病気をしにくいと考えられています。
実際、ポリプテルスの仲間は、長生きすることが知られます。
 この鱗を調べたところ、厚みがないのに『防御能力が非常に際だっている』ことがわかりました。この構造を真似れば、軽くて丈夫な「衝撃防止服」を作れそうです。
 「衝撃防止服」は、防弾チョッキとは限らないでしょう。例えば、建築現場など、危険な場所で作業する人の服にぴったりです。スポーツ選手のユニフォームにも、良さそうです。万が一、事故があっても、服のおかげで、命が助かるかも知れません。
 ガノイン鱗を持つ魚は、ポリプテルスだけではありません。ガーパイクの仲間も、ガノイン鱗を持ちます。ガーパイクの仲間は、北米から中米に分布します。
 同じガノイン鱗でも、ポリプテルスのものとガーパイクのものとでは構造が違います。しかし、丈夫なことは同じです。ガーパイクの鱗も、研究する価値はあるでしょう。
 ガーパイクの仲間は、多くが、「熱帯魚」ではありません。温帯に棲みます。この点が、ポリプテルスと違います。つまり、日本の普通の気候に適応しやすいわけです。
 これは、飼いやすさにつながります。飼いやすい生き物は、研究しやすいですね。
 今の日本で、ガーパイクの仲間は、外来魚として問題になっています。もしも駆除するならば、ただ殺すのではなくて、研究材料にしたらどうでしょうか? 手近な自然に学べることは、たくさんあると思います。


図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、ポリプテルスや、ガーパイクは載っていません。そのかわり、日本の魚が五十種以上が掲載されています。
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「ポリプテルスと防弾チョッキ」のニュースは、以下に載っています。
西アフリカ原産の魚のウロコ、未来の防弾チョッキのモデルに 米研究(AFPBBニュース 2008/07/28)
 過去の記事でも、ガーパイクなど、日本の外来魚を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
琵琶湖で発見された「エンツイ」とは、どんな魚?(2007/11/08)
ワニに見えてもワニじゃない、ガーパイク(2006/09/16)
などです。

2010年3月 5日

ボケの果実は、なぜ少ない?

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 生き物の中には、変わった名前のものがいますね。植物のボケ(木瓜)は、珍名さんのうちに入るでしょう。ボケというのが正式な日本語名(標準和名)です。
 ボケは、古くから園芸植物として栽培されてきました。原産地は中国です。日本には、平安時代に入ったと考えられています。その頃から、美しい花を愛でられました。
 ボケとそっくりな別種として、クサボケ(草木瓜)があります。こちらは、日本原産です。ボケと同じく、バラ科ボケ属に属します。やはり、園芸植物として栽培されます。
 ボケもクサボケも、低木です。草ではありません。どちらの種も草と見まごうほど、小さな木ですね。クサボケのほうが全体的に小さいです。
 ボケや、クサボケは、枝が見えなくなるほど、びっしりと花を付けます。なのに、果実は、それほど多くありません。どう考えても、無駄花が多いですね。なぜでしょう?
 これには、二つの原因があると考えられます。一つは、ボケとクサボケの花には、雄花と両性花が混じることです。雄花は、果実になりません。花粉を出すだけの花です。
 もう一つは、花粉の運び手の問題のようです。ボケやクサボケの花は、都合の良い花粉の運び手を、見つけられていないらしいのです。
 ボケやクサボケが咲くのは、昆虫が少ない早春です。チョウやミツバチは、ほとんどいません。昆虫に花粉を運んでもらうなら、寒さに強いハナアブの類でしょう。
 ところが、昆虫を花粉の運び手とすると都合が悪いことがあります。ボケやクサボケの花には、蜜が多いのです。昆虫は、すぐに満腹してしまいます。体が小さいですからね。これでは、多くの花から花へ、花粉を運んでもらいにくいです。
 では、ボケやクサボケの花粉を運ぶのは、昆虫以外の動物でしょうか? 日本で、考えられる花粉の運び手としては鳥がいます。メジロやヒヨドリは、よく花を訪れますね。
 しかし、ボケやクサボケは低木です。これでは、鳥は訪れにくいでしょう。地上には、鳥の敵が多いからです。敵に襲われやすいところには、来たくないはずです。
 自然の中でボケやクサボケは、どうやって殖えていたのでしょうか? 謎です。


図鑑↓↓↓↓↓には、植物のボケ(木瓜)が掲載されています。
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 過去の記事でも、植物の花粉の運び手について、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ネムノキは、本当に眠る?(2009/07/24)
咲いた、咲いた、チューリップ(2009/04/13)
ロウバイ(蝋梅)の花に来るのは、誰?(2009/02/02)
などです。

2010年2月26日

「たらの芽」は、タラノキの芽ではない?

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 日本の早春の味覚に、「たらの芽」がありますね。代表的な山菜です。スーパーにも並びます。売っているものは、栽培品が多いです。
 「たらの芽」は、タラノキの芽だといわれます。これは、間違いではありません。タラノキという種名の樹木は、確かにあります。日本の山に自生します。
 中には、タラノキの芽ではない「たらの芽」があります。例えば、ハリギリの芽です。
 ハリギリは、タラノキに近縁な樹木です。やはり、日本の山に自生します。
 ハリギリもタラノキも同じウコギ科に属します。ただし、属は違います。タラノキは、ウコギ科の中のタラノキ属です。ハリギリは、ウコギ科のハリギリ属です。
 ハリギリの芽も食べられます。ですから、ハリギリの芽を山菜として売るのは、悪くありません。ただ、ハリギリを「たらの芽」として売るのは、誤解を招きますね。
 タラノキの芽(本来の「たらの芽」)とハリギリの芽とを比べると、ハリギリのほうが、あくが強いといわれます。このため、ハリギリを食べない地方もあります。
 これは、好みの問題でしょう。「えぐみが強いほうが、山菜らしくていい」という方もいるはずです。ハリギリとタラノキには、それぞれの良さがあります。売るならそれを生かした売り方を考えて欲しいなと思います。
 タラノキとハリギリには、同じように棘があります。しかし、葉の形などは、似ていません。ハリギリの葉は、キリ(桐)に似ます。「針のあるキリ」ということで、ハリギリ(針桐)と名づけられました。
 キリとハリギリとは、遠縁です。キリは、キリ科に属します(異説もあります)。タラノキやらキリやら、他種と混同されてばかりでハリギリが気の毒ですね。
 有毒植物でなければ、たいていの植物の芽は食べられるそうです。私は、ブドウの芽の天ぷらを食べたことがあります。ブドウの果実と共通する香りがあって、美味しいものでした。もともと食用にする植物の芽なら安心して食べられますね。
 春は、若芽の季節です。味覚でも、春を感じたいですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、タラノキ,ハリギリが掲載されています。
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 過去の記事でも、山菜にする植物を取り上げています。また、ハリギリと紛らわしいキリ(桐)も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
桐一葉、落ちて天下の秋を知る?(2009/09/21)
桐【きり】の名前で、きりきり舞い?(2009/05/08)
とろろの材料になるのは、ヤマイモ? ヤマノイモ?(2008/11/07)
などです。

2010年2月22日

刺すイソギンチャクがいる?

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 今回は、ちょっと危険な生き物の話をしましょう。海で刺す生き物です。
 海で刺すものといえばクラゲが思い浮かびますね。クラゲは、刺胞動物【しほうどうぶつ】というグループに属します。同じグループに、イソギンチャクも属します。
 イソギンチャクが刺すなんて聞いたことがない人が多いでしょう。すべてのイソギンチャクが刺すわけではありません。海水浴で、よく会う種―ウメボシイソギンチャク、ミドリイソギンチャクなど―は、刺しません。安心して下さい。
 けれども中には、刺すイソギンチャクがいます。そういったイソギンチャクは、熱帯の海に多いです。また、ダイビングでなければ行けない程度の深さにいることが多いです。熱帯の海に行く方やダイビングをやる方は、注意が必要です。
 日本近海に、普通に分布する種としては、スナイソギンチャクがいます。この種は、以前、このブログで取り上げましたね(どっちがどっち? スナイソギンチャクと、スナギンチャク(2009/10/5))。スナイソギンチャクは、ヒトを刺します。
 以前に書いたとおり、スナイソギンチャクは、とても美しいです。でも、触らないようにしましょう。観賞用には、良い生き物です。
 ダイバーの方は、カザリイソギンチャクに注意しましょう。この種は、おおむね、水深20m以上のところに棲みます。ですから、海水浴で会うおそれは、まず、ありません。
 カザリイソギンチャクは、昼と夜とで、まったく違う姿になります。昼は、触手を縮めています。イソギンチャクに見えません。全体が、房状のもので覆われています。この房状のものが、ヒトを刺します。素手で触ってはいけません。
 夜のカザリイソギンチャクは、触手を伸ばします。触手だけでなく、体全体も、伸び上がるように大きくなります。イソギンチャクらしい姿です。房状のものは、目立たなくなります。しかし、刺すことに変わりはありません。触らず、見るだけにしましょう。
 夜のカザリイソギンチャクの姿は、神秘的です。英語名に、night anemone(夜のアネモネ)とあるのに納得します。ナイトダイビングをやる方には楽しみとなるでしょう。


図鑑↓↓↓↓↓には、カザリイソギンチャク、スナイソギンチャク、ミドリイソギンチャクなどが掲載されています。
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 過去の記事でも、イソギンチャクの仲間や、刺す海の生物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
管の中の花? ハナギンチャク(2009/04/27)
イソギンチャクは逆さのクラゲ?(2008/04/21)
海藻【かいそう】? いいえ、イラモはクラゲです(2007/07/16)
などです。

2010年2月19日

木花開耶姫【このはなさくやひめ】は、ウメの女神だった?

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 探梅【たんばい】という言葉を御存知でしょうか? 観梅【かんばい】と似て違う言葉です。冬のまだ寒い時期にウメの花を探しながら歩くことです。
 ウメの花盛りに見るのは探梅とは言えません。それは観梅です。
 探梅という言葉には春を待ち望む気持ちがよく表われていますね。ウメの花は、日本の早春を象徴するものです。それを探すのは、春を探すのと同義でしょう。江戸時代の俳句『梅一輪 一輪ほどのあたたかさ』が描く境地です。
 こんなに好まれているのにウメは、日本原産ではありません。中国原産です。歴史時代の早いうちに、日本に入ったと考えられています。
 奈良時代以前は木の花【このはな】といえば、ウメの花を指しました。当時の日本人、少なくとも知識階級の日本人は、サクラよりウメを好んだようです。
 その理由は当時のウメが、外国から来て間もない植物だったからです。外国の進んだ文化を表わす花でした。日本人の外来文化好きは、この頃からあったのですね(笑)
 似た例として、桃(モモ)があります。奈良時代以前の日本では、ウメの花とモモの花とが並び称されました。モモも中国原産の植物です。
 モモといえば、古事記の日本神話に登場するのが有名です。モモの果実を投げつけることによって、黄泉醜女【よもつしこめ】という魔物が追い払われました。モモを魔除けとするのは、中国の思想を受け継いだといわれます。
 ウメは、日本神話に登場しないのでしょうか? それらしき名が、古事記と日本書紀にあります。木花開耶姫【このはなさくやひめ】(漢字表記は他にもあり)です。
 一般的には、木花開耶姫は、サクラ(桜)の花の女神さまとされていますね。けれども、古事記や日本書紀ができた頃、「木の花」とは、ウメの花を指したはずです。
 木花開耶姫は、最初は、ウメの花の女神さまだったのではないでしょうか。平安時代以降、サクラのほうが好まれるようになってから、サクラの女神さまになったのではないかと思います。神さまも、時代に合わせて変わるのでしょう。


図鑑↓↓↓↓↓には、ウメが掲載されています。
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 過去の記事で、ウメと同じく、古事記などに登場する生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
カワセミと翡翠【ひすい】との関係は?(2009/08/05)
「かげろう」の正体は、イトトンボ?(2008/10/03)
食用ナマコはどんなナマコか?(2007/01/22)
花も実もある魔除けの木、モモ(2006/03/03)
などです。

2010年2月15日

冬にも、カゲロウ(蜉蝣)がいる?

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 冬は、生き物を見ることが少ないですね。特に、昆虫は死に絶えてしまったかのようです。セミもトンボもカブトムシも目にしませんね。
 ところが、いるところにはいるものです。例えば、水の中です。
 日本の淡水中には、たくさんの水生昆虫が棲みます。ゲンゴロウやタガメが有名ですね。他に、トンボの幼虫(ヤゴ)やカゲロウの幼虫もいます。
 幼虫に限っていえば、真冬でもトンボやカゲロウが見られます。水中は、陸上より温度が安定しているからです。トンボやカゲロウは、幼虫の姿で冬を越します。
 カゲロウといえばはかなさを象徴する虫ですね。「真冬の水中で生きている」というと、意外に感じるでしょう。カゲロウの成虫は、確かに数日の命です。けれども、幼虫は数ヶ月にわたって生きます。
 種によっては、早春の三月ごろ成虫になるカゲロウもいます。ナミヒラタカゲロウ、マエグロヒメフタオカゲロウなどです。タニヒラタカゲロウやキョウトヒメフタオカゲロウなどは二月のうちから羽化【うか】(成虫になること)が見られます。
 ややこしいことに、「○○カゲロウ」という種名の昆虫の中に、カゲロウの仲間でないものがいます。ウスバカゲロウ、クサカゲロウなどは、カゲロウ目【もく】の昆虫ではありません。普通にはカゲロウと言えば、カゲロウ目に属する昆虫を指します。
 ウスバカゲロウやクサカゲロウはどこに属するのでしょうか? 彼らは、脈翅目【みゃくしもく】に属します。脈翅目は、アミメカゲロウ目【もく】ともいいます。
 ウスバカゲロウとは、脈翅目のウスバカゲロウ科に属する種の総称です。クサカゲロウは、脈翅目のクサカゲロウ科に属する種の総称です。ただし、ウスバカゲロウとクサカゲロウの分類には異説もあります。異説でもカゲロウ目とは遠縁です。
 カゲロウ目のカゲロウは、すべて幼虫が水中に棲みます。お近くに水のきれいな渓流があれば、早春に羽化するカゲロウが見られるかも知れません。まだ寒い中では、とても弱々しく見えます。彼らにしてみれば、懸命に命の火を燃やしているのでしょう。


図鑑↓↓↓↓↓には、脈翅目【みゃくしもく】のウスバカゲロウとクサカゲロウが掲載されています。
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 過去の記事でも、カゲロウや、早春に出る昆虫を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
春のチョウ(蝶)? いえ、ガ(蛾)です(2009/03/09)
「かげろう」の正体は、イトトンボ?(2008/10/03)
はかないようでしぶとい? カゲロウ(2006/09/04)
などです。

2010年2月12日

ふきのとうは、食用花?

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 春が恋しい季節ですね。早いところでは、ふきのとうが出ているでしょうか。
 ふきのとうは、フキの花です。普通は、花が開く前つぼみの状態のものを食べます。花らしくない姿のため、食用花といわれてもぴんと来ませんね。
 フキの花には、花びらがありません。このため、開いた姿も地味です。花の姿からは想像しにくいですが、フキはキク科に属します。あの美しいキク(菊)の仲間です。
 フキは、ふきのとう以外の部分も食べますね。茎(葉柄)の部分を食べることは、有名です。葉も佃煮などにして食べられます。
 大きなフキの葉は、食べる以外にも利用できそうですね。実際、アイヌの人たちは、フキの葉をいろいろに利用したそうです。山の中などで、食器がない時はフキの葉でお椀【わん】を作りました。鍋や釜にもなったといいます。
 フキの葉を何枚かつづり合わせれば、レインコートになりました。急に雨にあった時、便利ですね。狩りの途中などで、野宿する時にはフキの葉で屋根を葺【ふ】いて小屋を作ったそうです。衣食住、すべてに使える草ですね。
 アイヌの人たちばかりでなく、昔の日本人も同じようにフキを利用していたのではないでしょうか。ただ、伝承があまり残っていないだけではないかと思います。昔、山里で暮らしていた人々にとっては便利に使えそうなものです。
 フキの利用法で面白いと思ったのは、「食べ物を発酵させるのに使う」ことです。これも、アイヌの人たちの利用法です。
 アイヌの人たちにとって、オオウバユリという植物の根は大切な食料でした。この根から、でんぷんを取った後のかすを、フキの葉何重にも包みます。すると、虫がつかず、発酵がうまく進んだといいます。
 フキの葉には、虫を避ける効果や発酵を進める効果があるのかも知れません。フキの近縁種には、ハーブとして使われるものがあります。昔の知恵を見直してみると、現在の私たちにも役立つことがありそうです。


図鑑↓↓↓↓↓には、フキが掲載されています。また、ウバユリ(オオウバユリは、ウバユリの変種)も載っています。
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 過去の記事でも、食用になる野草を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
田で平たくなるから、タビラコ(田平子)?(2009/01/16)
ハコベという植物は、ない?(2009/01/05)
ハハコグサは、母子草ではない?(2008/02/15)
三月三日は草餅【くさもち】の節句?(2007/03/02)
などです。

2010年2月 8日

天然記念物なのに、絶滅しそうなのは、なぜ?

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 天然記念物という言葉を聞いたことがおありでしょう。貴重な動物や植物、鉱物が指定されます。有名なものには、ツシマヤマネコ、ヤンバルクイナなどがいます。
 天然記念物に指定されると捕獲・採集などが禁止されます。保護されるわけですね。
 ここで、不思議に思った人はいませんか? 保護されているのなら、なぜ、ツシマヤマネコやヤンバルクイナは「絶滅しそうだ」と騒がれるのでしょうか?
 じつは、日本の「天然記念物」という制度には不備が多いのです。できた時代が、古いためです。もちろん、良いところもありますが。
 天然記念物には、国が指定するものと地方自治体が指定するものとがあります。ここでは、国が指定するものについて説明します。
 天然記念物は「文化財保護法」という法律に基づく制度です。法律の名に、注目して下さい。「文化財」です。「生き物」や「動植物」ではありません。
 「文化財」とは、人間が手を入れたものですね。そもそも、この法律は「人間が手を入れたものを保護する」のが目的です。自然の生き物を保護する目的にはそぐいません。
 この法律ができたのは、一九五〇年です。この法律の前身となる法律が、一九一九年にできています。じつに、大正九年のことです。この頃の古い考えを法律は引きずっています。現在の考えでは「天然」とは言いがたいものが、天然記念物に含まれます。
 例えば、「日本犬」が天然記念物に指定されています。普通にいる柴犬も天然記念物です。捕獲禁止のはずの天然記念物が、飼われているなんてびっくりですね。
 昔は、家畜であろうと野生動物であろうと「生き物」は、一くくりにされたのでしょう。家畜は家畜で、保護するべきだと思います。けれども、野生動物と家畜とを同じ基準で保護するのは無理がありますね。今のままの法律では不自由です。
 法律を変えるのは、大変なことです。国民の同意がなければ、変えてはいけないものでしょう。でも、良い方向へ変えるなら、国民の同意が得られるのではないでしょうか。


図鑑↓↓↓↓↓には、ツシマヤマネコ、ヤンバルクイナなどたくさんの天然記念物が掲載されています。
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 過去の記事で、天然記念物に指定された生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
カメの腹筋? セマルハコガメ(2009/09/28)
貝に卵を産む? 不思議な魚たち(2007/03/30)※国指定の天然記念物のミヤコタナゴを取り上げています。
ヤンバルクイナは絶滅寸前?(2006/10/2)
天然記念物というものはどういうものですか?(2006/03/28)
などです。

2010年2月 5日

昔は神さまだった? アビ

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 日本は、八百万【やおよろず】の神々がいる国ですね。昔の日本人は、ありとあらゆるものに神が宿ると考えたようです。動植物が神とされることも多くありました。
 瀬戸内海のある地方では、アビという鳥の仲間が神とみなされたことがありました。正確には、アビ科に属するシロエリオオハムという鳥です。
 アビ科の種はみな水鳥です。カモのように水に浮いて泳ぎます。けれども、アビとカモとは近縁ではありません。カモはカモ科に属します。
 日本で見られるアビ科の種は、アビ、シロエリオオハム、オオハムなどです。日本の多くの地方では冬鳥です。春から夏は、シベリアなどの北方にいます。
 シロエリオオハムが、日本で神とされたのは魚がいる場所を教えてくれたからです。彼らは、魚のいる海域に集まるのですね。魚食性だからです。漁師さんたちは、彼らの群れを目印に漁をしました。シロエリオオハムは、阿比神【あびがみ】と呼ばれたそうです。
 阿比神が教えてくれたのは、もっぱらイカナゴという魚でした。細長い魚です。成魚になると、全長が25cmくらいになります。幼魚のうちに、漁獲することも多いです。インナゴ、コウナゴ、カマスゴなどの方言名で知られています。
 イカナゴの漁は現在も続いています。しかし、アビ漁(シロエリオオハムの群れを目印にする漁)は、絶えてしまいました。日本に来るシロエリオオハムの数が減ったからです。もはや、魚に群れるほどのシロエリオオハムは瀬戸内海では見られません。
 彼らが減った原因は、主に環境破壊と考えられています。まず、彼らが食べるイカナゴが減りました。海底の砂を取りすぎたことが、イカナゴが減った原因だろうといわれます。イカナゴは、砂がない海には棲めません。砂にもぐって休眠するからです。
 アビ漁が行なわれた頃の瀬戸内海では、自然保護のお手本が見られました。神とまで呼ぶ鳥を、大切にしない人などいるはずがありません。豊かな海で、イカナゴを分け合うのは、鳥にとっても人にとっても、幸せなことだったろうと思います。
 自然環境の破壊は、文化まで破壊するのですね。悲しい実例です。


図鑑↓↓↓↓↓には、アビが掲載されています。
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 過去の記事でも、海に棲む鳥を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
都鳥【みやこどり】の正体は、ユリカモメ?(2009/01/23)
オオワシとオジロワシには、流氷が似合う(2008/02/08)
カモメは冬にしかいない?(2006/10/23)

2010年2月 1日

そっくりさんがいっぱい、スジエビ

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 スジエビという種名のエビがいます。日本の淡水域で、普通に見られます。透明の体に、筋【すじ】模様があるから、スジエビです。5cmくらいの、かわいいエビです。
 スジエビには、たくさんの別名があります。カワエビ、モエビ、コエビなどです。スジエビという名を知らなくても、これらの名で知っている方も、いるでしょう。
 別名が多いのは、人に親しまれている証拠です。スジエビは、食用や、釣り餌用に捕られます。小さいので、まとめて佃煮などにされることが、多いです。
 日本の淡水域には、スジエビと似た小型のエビが、他にもいます。ヌマエビ、ヌカエビ、ミゾレヌマエビ、ヤマトヌマエビなどです。これらの種は、ヌマエビ科に属します。けれども、スジエビは、ヌマエビ科ではありません。テナガエビ科です。
 ヌマエビ科には、スジエビのような筋模様の種は、いません。とはいえ、水中でぱっと見ただけでは、区別は難しいでしょう。
 スジエビには、他にも、そっくりさんがいます。スジエビと同じく、透明な体に、筋模様があるエビたちです。イソスジエビ、スジエビモドキなどの種です。
 「イソ」スジエビは、名のとおり、磯に棲みます。スジエビモドキも、海に棲む種です。生息場所が違うので、スジエビとは区別できます。イソスジエビのほうが、スジエビモドキより、筋模様の数が多いです。
 棲む場所が違っても、スジエビと、イソスジエビ、スジエビモドキは、互いに近縁です。三種とも、テナガエビ科スジエビ属に属します。
 スジエビ属は、ラテン語の学名をPalaemonといいます。これは、ギリシャ神話の海の神、パライモーンの名にちなみます。パライモーンは、元は人間でした。
 ギリシャ神話の海神といえば、ポセイドーンが有名ですね。パライモーンは、最初から神だったポセイドーンより、人に近しい存在でした。古代の水夫に人気だったようです。
 イソスジエビなどのスジエビ属は、沿岸の海で、人に親しまれています。海神の中でも、パライモーンの名が付けられたのは、そのためではないでしょうか。


図鑑↓↓↓↓↓には、スジエビ、イソスジエビが掲載されています。
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過去の記事でも、エビの仲間を取り上げています。また、ギリシャ神話の海の神の名を持つ生き物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
平たい体は何のため? ウチワエビ(2008/12/19)
おせち料理の海老【えび】はクルマエビ?(2007/01/11)
海中のサンタクロースはエビ?(2006/12/10)
などです。

2010年1月31日

ジュウガツザクラ

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ジュウガツザクラ 画像
和名:ジュウガツザクラ 
学名:Cerasus X subhirtella Autumnalis 'Makino'
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※画像をクリックすると大きな画像が見られます。

東京都 新宿区【2010.01.20】

図鑑↓↓↓↓↓には、ソメイヨシノ、オオシマザクラ、ヤマザクラが掲載されています。
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2010年1月29日

ビロウとビンロウとは、違う? 同じ?

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 寒い日が続きますね。今回は、寒さしのぎに、暖かいところの植物の話をしましょう。ヤシ科の植物です。ヤシ(椰子)といえば、反射的に、南の国が思い浮かびますね。
 ヤシ科の種には、圧倒的に、熱帯のものが多いです。温帯に分布するのは、ほんの少しです。日本の本土に分布するヤシは、シュロ(ワジュロ)と、ビロウくらいです。
 ビロウ(蒲葵)は、日本では、四国南部から九州、南西諸島にかけて分布します。これら以北の地でも、観賞用に植えられることがあります。
 紛らわしいことに、ビンロウジュ(檳榔樹)というヤシの一種もあります。ビンロウ(檳榔)とも呼ばれる種です。ビロウと、ビンロウとは、まったくの別種です。ビンロウジュのほうは、日本の本土には分布しません。ビロウより、寒さに弱いからです。
 なぜ、こんな紛らわしい名前が付いたのでしょうか? 起源は、奈良時代以前にさかのぼります。その頃、ビロウ―ビンロウジュではありません―は、「あぢまさ」と呼ばれていました。古事記や風土記に、「あぢまさ」の名が登場します。
 古代の日本人は、「あぢまさ」に漢字名を当てる時、間違えて「檳榔」を当ててしまいました。「檳榔」は、ビンロウジュのほうを指す名なのに、です。
 平安時代くらいになると、「あぢまさ」を、「びろう」とか「びんろう」などと呼ぶようになります。「檳榔」の読みに引きずられたからでしょう。
 やがて、本物のビンロウジュ(檳榔樹)が、日本で知られました。その時に、漢字名をそのまま読んだ「ビンロウ」という名を、日本語名にしてしまいました。かくして、同じヤシ科に、紛らわしい種名ができたわけです。
 平安時代以前の文書に、「檳榔」が登場したら、それは、まず間違いなく、ビロウを指します。ビンロウジュではありません。現在では、ビロウの漢字名は、「蒲葵」とされることが多いです。「蒲葵」は、正しくビロウを指す漢字名とされます。
 日本の本土では、ヤシ科の植物に、あまり馴染みがありません。そのために、ヤシ科の種が、混同される傾向があります。ヤシ科の種名には、要注意ですね。


図鑑↓↓↓↓↓には、ビロウ(ビンロウジュではありません)が掲載されています。
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過去の記事でも、種名が紛らわしい植物同士を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
桐油は、キリ(桐)からは採れない?(2009/07/10)
センダン(栴檀)とは、どんな植物?(2009/05/04)
五月五日は、あやめの節句?(2007/4/30) 
などです。

2010年1月25日

ハリセンボンに、毒はあるか?

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 ふぐ料理が美味しい季節ですね。日本人は、昔からフグを食べてきました。毒があるとわかっているのに、です。フグには、すべて、毒があるのでしょうか?
 この答えは、フグの定義によって、違ってきます。フグ目【もく】フグ科に属する種は、ほとんどが、何らかの形で、毒を持つようです。
 フグ目でも、フグ科以外に属する種には、毒がないものが多いです。例えば、ハリセンボン科や、マンボウ科―マンボウもフグ目です―の種には、毒はありません。
 ハリセンボン(針千本)という名は、よく知られますね。名に反して、ハリセンボンには、千本の針はありません。せいぜい、四百本くらいだそうです。
 ハリセンボンとは、フグ目ハリセンボン科に属する種の総称です。この仲間の外見は、普通のフグに似ます。ただし、それは、膨らんでいない状態の時です。膨らむと、「いがぐり」のように、棘だらけになります。
 この棘が、ハリセンボンが毒を持たない理由でしょう。棘で防御していれば、毒を持つ必要はありませんね。興味深いことに、マンボウも、幼魚のうちは棘を持ちます。マンボウの場合、成魚は非常に大きいので、棘で身を守る必要がないのでしょう。
 どうせなら、ハリセンボンは、棘に加えて毒もあれば、もっと強そうですよね。フグの仲間なのに、なぜ、そうならなかったのでしょう? それは、自然界には、「なるべく無駄なことをしない」という法則が働くからです。
 棘を作ったり、毒を持ったりするには、エネルギーがかかります。防御手段を持ちすぎると、敵にやられなくても、食べ物が足りなくて、死んでしまうかも知れません。このために、「棘と毒」のような、何重もの防御手段を持つ種は、少ないです。
 ところが、ハリセンボンには、棘が利かない敵がいます。そう、ヒトですね。
 沖縄などの地方では、ハリセンボンを食べます。棘だらけの皮をむけば、美味しく食べられます。旬【しゅん】は、フグと同じく、冬だそうです。
 ハリセンボンが、ヒトに対抗するには、進化の時間が足りなかったようですね。


図鑑↓↓↓↓↓には、ハリセンボン科の一種ヒトヅラハリセンボンが掲載されています。
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過去の記事でも、フグ目【もく】に属する種(マンボウ)を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
「翻車魚」と書くのは、どんな魚?(2009/07/13)

2010年1月22日

かわいい悪魔? イイズナ

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 今回は、とてもかわいい生き物を紹介しましょう。イイズナです。哺乳類の一種です。日本では、東北地方の一部と、北海道に分布します。
 イイズナのかわいさは、まず、体が小さいことにあります。全長が、20cmほどしかありません。ハツカネズミと、あまり変わらない大きさです。ただ、胴が長い体型のため、ハツカネズミよりは大きく見えます。ネズミは、尾が長いですからね。
 つぶらな瞳の顔も、かわいいです。最近、ペットとして人気の、フェレットに似ます。
 イイズナの体色は、夏と冬とで違います。夏は、背が茶色で、腹が白です。冬は、全身、白くなります。この体色も、かわいさを増しています。
 こんなにかわいいイイズナは、何を食べるのでしょう? じつは、彼らは肉食です。自分と同じくらいの大きさの、野ネズミなどを襲って食べます。すばしこいため、小鳥さえ、捕らえることができます。見た目に似合わない獰猛【どうもう】さです。
 イイズナは、日本だけでなく、ユーラシア大陸と、北米に、広く分布します。食肉目【しょくにくもく】イタチ科に属します。最小のイタチ、といえるでしょう。イタチ科どころか、肉食性の哺乳類の中で、最小だといわれます。つまり、世界最小の肉食獣です。
 イイズナと似たものに、オコジョがいます。オコジョも、イタチ科の肉食獣です。夏と冬で、体色が変わるのも、同じです。けれども、オコジョとイイズナとは、別種です。
 日本のイイズナは、数が少ないです。特に、本州のイイズナは、絶滅のおそれがあります。加えて、体が小さいため、目撃するのは難しいです。このためか、昔の日本では、謎めいた生き物とされたようです。妖怪のように見られたこともありました。
 外見と性質とのギャップが、イイズナを「妖怪」に見せたのかも知れません。もちろん、実在のイイズナは、小さいだけで、普通の肉食獣です。妖怪ではありません(笑)
 イイズナは、比較的、寒いところに棲みます。現在の日本のように、高温化の傾向があるところでは、棲みにくいでしょう。高温化の責任が、人間にあるとすれば、イイズナの未来も、人間にかかっています。日本のイイズナを、滅ぼしたくありませんね。


図鑑↓↓↓↓↓には、イイズナが掲載されています。
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 過去の記事でも、イイズナと同じく、イタチ科の哺乳類を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
冬に黄色くなる? テン(貂)の謎(2008/12/15)
白貂【しろてん】の正体はオコジョ?(2008/02/01)

2010年1月18日

プラナリアは、美術モデル?

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 プラナリアという生き物を、御存知ですか? 水中に棲む生き物です。小さくて、平たい体をしています。大きさは2cmくらいしかありません。
 「それなら、教科書で見たよ」という方が、多いのではないでしょうか? たいていの生物の教科書には、プラナリアが載ります。実験動物として、よく使われるからです。
 プラナリアには、驚異的な再生能力があります。一頭のプラナリアを半分に切っても、死にません。半分ずつが、それぞれ完全な一個体にまで再生します。
 実験に使われる理由は、再生能力の高さばかりではありません。他に、いくつもの理由があります。なかで注目すべきは、「脳」を持つことです。
 脊椎動物【せきついどうぶつ】は、みな、脳を持ちますね。ヒトや、ニワトリ、トカゲ、カエル、サメ、マグロなどです。けれども、動物全体を見ると、「脳」を持つものは、限られます。例えば、クラゲや、カイメン(海綿)は、脳を持ちません。
 動物が、進化のどの段階から「脳」を持ったのかは重要な問題です。これを調べるには、動物の中で、最初に「脳」を持ったものがどれか知る必要があります。
 プラナリアには、かろうじて「脳」と呼べそうなものがあります。プラナリアの仲間を調べれば、「脳」の起源について得ることがあるでしょう。
 プラナリアの仲間とは、扁形動物門【へんけいどうぶつもん】渦虫綱【うずむしこう】三岐腸目【さんきちょうもく】というグループのことです(分類には、異論があります)。
 じつは、プラナリアとは、一種の動物だけを指す言葉ではありません。前記のグループ全体を指します。一般的には、このグループ内のナミウズムシという種を指すことが多いです。実験動物にされるのも、教科書に載るのも、多くはナミウズムシです。
 プラナリアは、理科の教科書に載るだけとは限りません。ひょっとすると、美術の教科書で、会えるかも知れません。彼らは、ある絵画で立派にモデルを務めています。
 その絵画は、M.C.エッシャーという画家が描いたものです。『偏平虫類』とか『扁虫たち』などと訳される題です。とてもかわいいですよ。ぜひ、画集などで見てみて下さい。


図鑑↓↓↓↓↓には、プラナリア(ナミウズムシ)が掲載されています。
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 過去の記事でも、プラナリアと近縁な生き物(扁形動物【へんけいどうぶつ】)を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
梅雨時のエイリアン? コウガイビル(笄蛭)(2008/05/30)

2010年1月15日

ナンテンの赤い実は、鳥のため?

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 今の季節、ナンテン(南天)が赤い果実を付けていますね。日本では、よく庭に植えられる木です。それは、縁起が良い木とされるからです。
 ナンテンという名は、「難を転ずる」に通じます。このため、鬼門【きもん】や裏鬼門【うらきもん】に植えられます。鬼門や裏鬼門とは、縁起が悪いといわれた方角です。
 「縁起が悪い方角」などというのは迷信です。けれども、ナンテンの縁起が良いとされたのには、語呂合わせ以外に多少の根拠があります。
 ナンテンには、薬効成分があります。葉や果実を漢方薬に使うことがあります。薬になる植物を「縁起が良い」とするのは当然ですね。
 なぜ、ナンテンには、薬効成分があるのでしょうか? まさか、ヒトに利用されることを見越して、薬効成分が生まれたわけではないでしょう。
 一つの仮説として「鳥に、あまりたくさん食べられないようにするため」というものがあります。これには、説明が必要ですね。
 ナンテンの赤い果実は、鳥を惹きつけます。ナンテンは、果実を鳥に食べてもらうことによって、種子をばらまきます。でも、いっぺんにたくさん食べられると、都合が悪いことがあります。少しずつ、あちこちにばらまいてもらうことが、できません。
 ナンテンにしてみれば、あちこちに種子を落としてもらったほうが、生息地を広げることになります。そうするには、少しずつ食べてもらったほうがいいわけです。
 薬は食べ過ぎれば毒になります。例えば、ナンテンの果実をたくさん食べた鳥が、おなかを壊したら? 次からは、その鳥はナンテンの果実を食べようとしないでしょう。空腹に耐えかねた時だけ、少し食べるはずです。
 ナンテンの果実がなるのは、野鳥にとって食べ物が少ない季節です。たいていの野鳥は、少しずつ、ナンテンの果実を食べざるを得ないのではないでしょうか。
 これは、まだ仮説に過ぎません。しかし、ある程度の説得力がありますね。ナンテンは、鳥を利用するつもりが、ヒトに利用されることになったのでしょうか。


図鑑↓↓↓↓↓には、ナンテンが掲載されています。
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 過去の記事でも、赤い果実を付ける植物を取り上げています。これらの植物は、鳥に果実を食べてもらうように進化した、といわれます。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
生垣のスター、サンゴジュ(珊瑚樹)(2009/10/12)
八十年越しの純愛? アオキ(青木)(2008/02/04)
扉【とびら】に挿すトベラの木(2007/01/29) 
などです。

2010年1月11日

チョウ(蝶)の学名は、美女だらけ?

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 昆虫の中でもチョウは、多くの人に好まれますね。美しい種が多いからでしょう。チョウの学名はそれを反映しています。伝説の美女の名が付いたものが多いです。
 以前、「学名は、必ずラテン語で付けられる」とお話ししましたね(学名と標準和名とは、違う? 同じ?(2009/08/07) )。ラテン語は、古代ローマで使われた言語です。そのため、学名に登場する人物名は、ローマ神話のものが多いです。ローマ神話の基になった、ギリシャ神話の人物名もよく使われます。実例をいくつか挙げてみましょう。
 スジグロシロチョウというチョウがいます。日本全国で見られる平凡なチョウです。このチョウの学名は、Pieris meleteといいます。melete(メレテー)とは、ギリシャ神話の女神の名です。芸術の女神、ムーサたちの一員だったと伝わります。
 クロヒカゲというチョウもいます。この種の学名は、Lethe dianaです。diana(ディアナ)とは、ローマ神話の月の女神の名です。ディアナは、狩猟の女神でもあります。勇ましくて、美しい女神さまです。
 ジャノメチョウ、または、ナミジャノメという種名のチョウがいます。この種の学名は、Minois dryasです。dryas(ドリュアス)とは、ギリシャ神話に登場する「樹木の妖精」のことです。命名者はこの種に、「妖精」のイメージを感じたのでしょうか。
 イチモンジチョウは学名を、Limenitis camilla、または、Ladoga camillaといいます。camilla(カミラ)とは、ローマ神話に登場する女狩人の名です。メタブスという王の娘でした。王女さまですね。女神ディアナに仕え、ディアナと似た勇ましい女性でした。
 コミスジというチョウもいます。この種の学名は、Neptis sapphoです。sappho(サッポー)とは、古代ギリシャに実在した女性の名です。生前から、著名な詩人でした。ロマンティックな恋愛詩を残しています。
 中には、「こんな地味なチョウに、なぜこんな名が?」というものもあります。命名の理由は、必ずしも明らかではありません。実物のチョウと、学名とを見比べて、想像の翼を広げてみましょう。隠れた美しさを、発見できるかも知れません。


図鑑↓↓↓↓↓には、スジグロシロチョウ、クロヒカゲ、ジャノメチョウ(ナミジャノメ)、イチモンジチョウ、コミスジが掲載されています。
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 過去の記事でも、ラテン語の学名で、美女の名が付いた生き物を取り上げています。また、今回、学名を取り上げたチョウを、扱った記事もあります。学名について、説明した記事もあります。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
一つの種に、複数の学名は、あり?(2009/08/24)
学名の正しい読み方は?(2009/08/19)
学名で分類がわかるって、本当?(2009/08/17) 
モンシロチョウ(紋白蝶)は、日本にいなかった?(2008/04/04)
クラゲと付いてもクラゲでない? ツノクラゲ(2006/07/29) 
などです。

2010年1月 8日

冬にも、バッタやキリギリスがいる?

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 キリギリスやコオロギの声は、すっかり聞こえない季節になりました。みな、卵を残して、死に絶えてしまったようです。親の昆虫は、どこにもいないのでしょうか?
 確かに、日本のバッタ目【もく】の昆虫には、卵で冬を越すものが多いです。けれども、中には、成虫で冬を越す種もいます。
 とはいえ、冬にキリギリスやバッタを見ることなんて、まずありませんね。彼らは、どこで、どうしているのでしょう? 落ち葉の下などに、じっと隠れています。
 成虫で冬越しをする中で、有名なのは、クビキリギスとツチイナゴです。クビキリギスは、バッタ目のキリギリス科に属します。ツチイナゴは、バッタ目のイナゴ科に属します。
 同じバッタ目でも、クビキリギスとツチイナゴとは、さほど近縁ではありません。なのに、生活サイクルは似ています。夏に卵から孵化【ふか】し、秋に成虫になります。そして、成虫で冬を越します。春になってから、交尾や産卵を行ないます。
 クビキリギスやツチイナゴ以外にも、成虫で冬を越すものがいます。トゲヒシバッタ、ハラヒシバッタ、ハネナガヒシバッタ、ノミバッタなどです。
 前記のうち、トゲヒシバッタ、ハラヒシバッタ、ハネナガヒシバッタは、バッタ目のヒシバッタ科に属します。ノミバッタは、バッタ目のノミバッタ科に属します。
 ヒシバッタ科には、成虫で冬を越す種が多いです。が、すべてのヒシバッタ科が、そうするわけではありません。近縁でも、生活サイクルが同じとは、限らないのですね。
 越冬形態が決まっていない(らしい)種もいます。例えば、ハラヒシバッタは、幼虫で越冬する場合と、成虫で越冬する場合とがあるようです。どういう条件でそうなるのかは、わかっていません。この種の生態には、他にも、不明なことが多いです。
 分類がどうあれ、成虫で越冬するバッタやキリギリスには、共通する要素があります。成虫の体色が、茶色っぽいことです。ただし、体色には、個体差があります。クビキリギスのように、かなりの割合で、緑色の個体が出る種もあります。
 茶色の体色は、冬の風景に合わせているのでしょう。生きる工夫ですね。


図鑑↓↓↓↓↓には、成虫で越冬するビキリギス、ケラ、ツチイナゴ、トゲヒシバッタ、ハラヒシバッタ、ノミバッタが掲載されています。
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過去の記事でも、バッタやキリギリスの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
便所コオロギ? いえ、カマドウマです(2009/02/06)
キリギリスは草食か肉食か?(2006/06/30)
一文無しどころか万能昆虫のオケラ(2006/03/24) 
などです。

2010年1月 4日

ノグチゲラは、キツツキ科か?

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 今回は、日本の誇る珍しい鳥を紹介しましょう。ノグチゲラです。
 ノグチゲラは、世界のうち、日本の沖縄本島の北部にしか分布しません。日本の固有種です。沖縄県の県鳥になっています。キツツキの一種です。
 そもそも、分布域が狭いため個体数がとても少ないです。少し古いデータですが、一九九二年の調査では、百五十三羽(!)しか確認できなったそうです。
 なぜ、ノグチゲラは、こんなに狭い範囲にしか分布しないのでしょう? 空を飛べるのだから、他の地域へも飛んでいけばいいのに、と思いますよね。
 狭い範囲にしかいないのには、いくつかの理由があります。一つは、彼らが繁殖できる条件を満たすのが難しいことです。
 ノグチゲラの繁殖には、大木が必要です。彼らは、大木に巣穴を掘って、繁殖するからです。少なくとも、樹齢三十年以上の常緑樹が必要だといわれます。
 今では、そのような大木がある地域は少ないです。人間が、伐採してしまったからです。木材を利用したり、道路を作ったりするために、たくさんの木が伐られました。
 私は、木の伐採などの人間の開発を、すべて否定しようとは思いません。けれども、もう少し、自然の資源を大切にする視点が必要だろうと考えます。
 人間の開発が進む前から、ノグチゲラは、あまり広く分布していませんでした。これは、ノグチゲラの分類と関係があるのでは、といわれます。ノグチゲラは、キツツキの中でも、特殊な種なのです。他のキツツキから、隔離された種といえます。
 じつは、ノグチゲラの分類についてははっきり決まっていません。キツツキ目【もく】に属することは確かです。しかし、どの科に属するのかには議論があります。
 日本の他のキツツキは、みな、キツツキ目キツツキ科に属します。ノグチゲラも、暫定的に、キツツキ目キツツキ科に入れられることが多いです。
 おそらく、ノグチゲラは、早い時期に、他のキツツキから分かれて、進化したのでしょう。キツツキ類の進化を探るうえでも、貴重な種です。


図鑑↓↓↓↓↓には、ノグチゲラが掲載されています。
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 過去の記事でも、キツツキの仲間を取り上げています。また、南西諸島に分布する貴重な鳥類も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
街中のキツツキ? コゲラ(2009/01/12)
ヤンバルクイナは絶滅寸前?(2006/10/02)
鵺【ぬえ】の正体はトラツグミ(2006/08/04) ※たいへん希少なオオトラツグミも取り上げています。
などです。

2010年1月 1日

北国の魔法の植物? イケマ

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 あけましておめでとうございます。日本のお正月には、松などの縁起の良い植物が飾られます。今回は、縁起の良い植物の中でちょっと変わったものを紹介しましょう。
 イケマという植物があります。北海道から九州まで、日本の各地に分布する野草です。白く細かい花が夏に咲きます。つる草です。外見には、目立つところはありません。
 この草は、アイヌの人たちにとって、神聖な植物とされます。昔はイケマを使って、病気を追い出す儀式や悪い夢を祓【はら】う儀式を行なったそうです。
 今でも、イケマのお守りを作ることがあると聞きます。イケマには、ゴボウのような太い根があります。これを短く切り、削って、首飾りなどにするそうです。
 イケマとは変わった語感ですね。漢字では、生馬、活馬などと書かれます。これらの漢字は当て字です。イケマという名は、アイヌ語名をそのまま取っています。アイヌ語名が、正式な日本語の種名(標準和名)になっています。
 アイヌ語の「イケマ」を直訳すると「それの足」という意味です。「それ」とは、神さまを遠回しに呼ぶ言い方です。つまり、イケマは「神さまの足」です。この草が、尊ばれていたことがわかりますね。(イケマには、他のアイヌ語名もあります)
 なぜ、イケマは神聖な植物とされたのでしょう? この植物の根をかじると、独特の臭【にお】いがあるからです。この臭いを、魔物が嫌うと信じられました。昔の日本人も、臭うイワシの頭などを魔除けにしましたね。それと同じ発想です。
 イケマは、薬草として使われることもあります。これも、神聖な植物とされた理由でしょう。イケマの薬効については、はっきり解明されていません。
 伝説の中のことですが、イケマは一種の魔法にも使われました。霧が深い時、イケマの根を噛んで、ふっふっと吹けば、霧が晴れたと伝わります。『ハリー・ポッター』の世界みたいですね。アイヌの人たちの、豊かな物語世界を感じます。
 目立たない草に、価値を認めたのは、自然への観察眼が鋭いからでしょう。アイヌのような少数民族の知恵には、学ぶところがあると思います。


図鑑↓↓↓↓↓には、イケマが掲載されています。
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 過去の記事でも、縁起が良いとされる植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
サカキ(榊)は神さまの木?(2008/12/22)
センリョウとマンリョウはどう違う?(2007/01/08)
羽根突きの羽根の原点? ツクバネ(2006/01/04)

2009年12月28日

モンゴウイカ(紋甲イカ)というイカは、いない?

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 冬は食べ物が美味しい季節ですね。けれども、近年は食べ物の旬【しゅん】が、わかりにくくなりました。輸入物や栽培・養殖物が増えたためです。
 それ自体は、いけないとは言えません。おおぜいの人を養うには、避けられないことです。でも、せめて「自分たちが、どんな物を食べているか」は知りたいですよね。
 例えば、スーパーでイカを買うとします。ラベルを見てみましょう。「モンゴウイカ」とあるかも知れません。これは、どんなイカでしょうか?
 じつは、正式には「モンゴウイカ」という種名のイカはいません。「モンゴウイカ」には、複数の種が含まれます。中でも、カミナリイカ、トラフコウイカ、ヨーロッパコウイカの三種が多いようです。他の種も、混じっていないとは限りません。
 これら三種は、どれも、コウイカ目【もく】コウイカ科に属します。体内に、プラスチックのような甲【こう】を持つグループです。だから「甲イカ」です。
 モンゴウイカとは「紋様のあるコウイカ」の意味です。前記の三種には、みな縞【しま】模様があります。トラフ(虎斑)コウイカなど、そのものずばりの種名です。
 最初に、モンゴウイカと呼ばれたのは、カミナリイカでした。カミナリイカは、東京湾以西の海に分布します。かつては、日本近海で、たくさん漁獲されました。
 ところが、近年、需要をまかなうほど、捕れなくなってきました。このため、カミナリイカに似た他種が、輸入されるようになりました。それが、トラフコウイカやヨーロッパコウイカです。似た種をまとめて、モンゴウイカと呼ぶようになりました。
 トラフコウイカは、主に、東南アジアで漁獲されます。ですから、ラベルに「モンゴウイカ(マレーシア産)」などとあったら、トラフコウイカの可能性が高いです。
 ヨーロッパコウイカは、名のとおり、地中海を中心に分布します。日本に輸入されるのは、アフリカ西岸産のものが多いです。ラベルに「モンゴウイカ(モーリタニア産)」などとあれば、それはきっと、ヨーロッパコウイカでしょう。
 日本の食卓は、世界につながっています。これを忘れてはいけませんね。


図鑑↓↓↓↓↓には、コウイカ目【もく】コウイカ科のコウイカ、コブシメ、シシイカ、スジコウイカ、ヒメコウイカが掲載されています。
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 過去の記事でも、イカの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
海中を泳ぐ槍【やり】? ヤリイカ(2008/02/18)
世界最大のイカは、ダイオウイカではない?(2007/02/23)
コウイカとヤリイカはどう違う?(2006/11/10)
などです。

2009年12月25日

ウメモドキ? いえ、ツルウメモドキです

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 街はすっかりクリスマスですね。日本でもクリスマスのリース(輪飾り)を、手作りする方が増えました。そのための材料を、園芸店などで売っています。
 よく、リースの材料にされるのがツルウメモドキです。名のとおり、つるになる植物です。赤と黄色の美しい果実が付きます。このため、飾り物に使われます。
 ツルウメモドキという名は、発音しにくいですね。そのせいか、ツルモドキ、ウメモドキなどと呼ばれることがあります。けれども、これらの呼び名には問題があります。
 というのは、ツルウメモドキとは別に、ウメモドキという植物があるからです。この二種は、まったくの別種です。名前が似ていても、遠縁です。ツルウメモドキは、ニシキギ科に属します。ウメモドキは、モチノキ科に属します。
 ウメモドキにも、赤く美しい果実が付きます。これを鑑賞するために、栽培されます。ツルウメモドキとは違い、つる状にはなりません。普通の木です。
 ツルウメモドキの名は、ウメモドキに由来するという説があります。「ウメモドキに似て、つるになる」という意味だといいます。(異説もあります)
 そもそも、ウメモドキという名が、別種のウメ(梅)にちなんでいます。ウメモドキの葉が、ウメに似ることからこの名になったといわれます。
 種名が、ウメモドキに由来する植物がもう一種あります。クロウメモドキです。こちらは、果実がウメモドキに似ることから名付けられたようです。ただし、こちらの果実は黒いです。だから、クロウメモドキです。
 クロウメモドキは、クロウメモドキ科に属します。ウメモドキとも、ツルウメモドキとも、遠縁です。薬用になるため、栽培されることがあります。この木は、つるにはなりません。棘のある木になります。
 前記の三種は、もともと、日本の野山に生える植物です。三種とも近縁な種が、いくつも日本に分布します。野山で、正確に種を見分けるのは難しいでしょう。面白いことに、どの種も果実が美しいです。日本の秋・冬を彩ってくれます。


図鑑↓↓↓↓↓には、ツルウメモドキが掲載されています。
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 過去の記事でも、クリスマスの飾りに使われる植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
サンキライ? いえ、サルトリイバラです(2008/12/08)
ポインセチアはクリスマスの花?(2006/12/14)
クリスマスツリーはモミではない?(2005/11/28)
などです。

2009年12月21日

カジカ(鰍)の迷宮

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 鍋【なべ】の季節ですね。鍋料理は、日本が誇る文化の一つだと思います。地方ごとに、いろいろな食材の鍋料理がありますね。
 道南(北海道の南部)では、『かじか』という魚の鍋料理に人気があります。本州以南でいう「カジカ」と北海道でいう『かじか』とは、同じ種でしょうか?
 違います。正式な種名を「カジカ」という魚は、本州以南にしか分布しません。では、北海道の『かじか』は、正式な種名を何というのでしょう?
 じつは、北海道の『かじか』には、複数の種が混じります。ケムシカジカ、オクカジカ、トゲカジカ、シモフリカジカ、ニジカジカなどをまとめて『かじか』と呼んでいます。これらの種は、すべて海の魚です。正式種名カジカは、淡水の魚です。
 前記の種のうち、ケムシカジカやトゲカジカは美味しい魚として知られます。ケムシカジカ、オクカジカ、トゲカジカなどの種には、ナベコワシ(鍋壊し)という別名があります。「美味しさのあまり、鍋の底までつついて壊してしまう」からだそうです。
 「○○カジカ」という種名の魚は、たくさんいます。先に挙げたのはその一部です。これらの「○○カジカ」は、みな近縁なのでしょうか?
 そうとは限りません。多くの「○○カジカ」は、カサゴ目カジカ科に属します。けれども、例えばケムシカジカは、カサゴ目ケムシカジカ科に属します。細かい分類には関係なく、カサゴ目のうちで、正式種名カジカに似るものを「○○カジカ」としています。
 「○○カジカ」には、美味しい魚が多いです。このため、それぞれの地方で漁獲され、方言名が付けられました。これが、事態をややこしくしています。
 例えば、ケムシカジカには、トウベツカジカという方言名があります。トゲカジカには、ホンカジカ、マカジカ、オキカジカ、ヤリカジカなどの別名があります。こんなに「○○カジカ」だらけでは、普通の人には、何が何だかわかりませんね。
 研究者の間でも、「○○カジカ」の分類は、混乱しているようです。昔から食べられているのに、種名さえ定かでないわけです。自然界には、研究の余地がありますね。


図鑑↓↓↓↓↓には、正式種名カジカが掲載されています。
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 過去の記事で、正式種名カジカを取り上げています。また、カジカガエルというカエルの一種も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
カジカガエルは、河の鹿(シカ)?(2009/06/05)
秋に美味しい鰍【かじか】(2006/11/13)

2009年12月18日

リスも冬眠する?

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 冬、両生類や爬虫類は冬眠しますね。哺乳類の中にも冬眠するものがいます。
 例えば、リスの仲間です。シマリスを飼う方なら御存知でしょう。シマリスは冬眠しますね。すべてのリスが冬眠するのでしょうか? そうとは限りません。
 ここでは、日本に分布するリスについて説明しましょう。
 日本に自然分布するリスは、エゾリス、エゾシマリス、ニホンリスの三種です。このうち冬眠するのは、エゾシマリスだけです。日本の北海道だけに分布するリスです。
 エゾシマリスは、シベリアシマリスの亜種です。シベリアシマリスは、ユーラシア大陸の東部に分布します。ペットショップで売られるのは、同じシベリアシマリスの中の別の亜種です。チョウセンシマリスという亜種だといわれます。
 シベリアシマリスは、どの亜種であろうと冬眠するようです。冬眠とはいえ、両生類や爬虫類のように、完全に眠ってしまうわけではありません。巣の中に食べ物を貯めて、それで春まで過ごします。冬眠というより、巣ごもりというほうが近いです。
 エゾシマリスが巣ごもりするのは、北海道が寒いからでしょうか? 理由の一つとしてそれはあるでしょう。けれども寒くても、巣ごもりしないリスもいます。
 エゾリスは、同じ北海道に分布するのに巣ごもりしません。冬でも、外に出て活動します。ニホンリスも、巣ごもりしません。ニホンリスは、日本の本州以南に分布します。本州以南でも、寒いところはありますよね。それでも、巣ごもりしません。
 厳しい冬、エゾリスやニホンリスは、どうやって食べ物を得るのでしょうか?
 彼らは巣の中ではなく、外に食べ物を貯蔵します。特定の貯蔵庫があるわけではありません。あちこちに、ばらばらに食べ物を隠しておきます。秋までに貯めたものを、冬の間少しずつ食べます。
 同じ地域に棲んで分類上も同じリス科なのに、なぜ巣ごもりする種としない種がいるのでしょうか? 巣ごもりすることにも、しないことにもそれぞれ、利点と欠点があります。どちらの利点を重視するかにより、棲み分けているのではないでしょうか。


図鑑↓↓↓↓↓には、キタリス(エゾリス)、シマリス(エゾシマリス)、ニホンリスが掲載されています。
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 過去の記事でも、リスの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
妖怪が空を飛ぶ? ムササビ(2007/08/10)
モモンガとムササビはどう違う?(2006/12/15)

2009年12月11日

ゴジュウカラは、シジュウカラより年上?

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 冬は、野鳥の観察に良い季節です。山から里へ下りてくる鳥が多いからです。
 今の季節、人間の目に付きやすくなる鳥にゴジュウカラがいます。住宅地の公園などでも、見られることがあります。
 鳥に詳しくなくても、ゴジュウカラは見分けやすい鳥です。体色と行動に、特徴があるからです。ただし体色には、個体により変異があります。
 どの個体にも共通するのは、背が水色であることです。横から見ると、眼を横切る黒い線があります。腹部は、白い場合とオレンジの場合とがあります。
 ゴジュウカラの行動を観察すると「特技」が見られます。日本の鳥では、この種しかできないといわれる技です。これがあればその鳥は、ほぼゴジュウカラに確定です。
 その特技とは、「垂直の木の幹を、頭を下にして降りること」です。
 垂直の幹に止まるだけなら、他の鳥にもできるものがいます。例えば、キツツキの仲間は、みなできます。けれども、頭を下にした状態(逆立ちのような状態)で、垂直の幹に止まれる鳥は他にはいません。
 ゴジュウカラは、この状態でちょんちょんと、幹を回りながら降りてきます。この行動をぱっと見て、「ゴジュウカラだよ」と種名を言えたら格好いいですね(笑)
 なぜ、ゴジュウカラは、こんな行動をするのでしょうか? 主に、樹皮の間の虫を探すためだと考えられています。もちろん、食べるために探します。
 ゴジュウカラ(五十雀)という種名は面白いですね。よく、シジュウカラ(四十雀)と比べられます。ゴジュウカラとシジュウカラとは、近縁なのでしょうか?
 違います。ゴジュウカラは、ゴジュウカラ科に属します。シジュウカラは、シジュウカラ科に属します。ではなぜ、こんな似た種名が付いたのでしょう?
 これは、昔の言い伝えに由来します。昔の日本には、「シジュウカラが年を取ると、ゴジュウカラになる」という言い伝えがありました。こんな言い伝えができた理由は、わかりません。特に似たところはないのに不思議です。


図鑑↓↓↓↓↓には、ゴジュウカラが掲載されています。
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 過去の記事で、ゴジュウカラと比べられるシジュウカラを取り上げています。また、冬によく見られる鳥を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
気まぐれな渡り鳥? キレンジャクとヒレンジャク(2008/03/14)
ネクタイをした鳥? シジュウカラ(四十雀)(2007/02/26)
紋付袴【もんつきはかま】で御挨拶? ジョウビタキ(2007/01/01)
などです。

2009年12月 7日

ヒカゲノカズラは、日陰に生える?

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 生き物の名前には、時おり矛盾しているものがあります。ヒカゲノカズラもその一つです。植物の一種ですね。常緑のつる草です。
 ヒカゲノカズラという名からは、「日陰に生えるつる草」を連想するでしょう。けれども実際には、日陰より日なたを好みます。ヒカゲノカズラの「ヒカゲ」は、日陰ではなく「日影」だという説があります。日影とは日の光を指す言葉ですね。
 「カズラ」のほうも、実態とは少し違います。カズラとは、普通「他のものにからまるつる草」を指しますね。でも、ヒカゲノカズラは、他のものにからまって高い所によじ登ったりしません。つる状ですが、地面を這っているだけです。
 ヒカゲノカズラには、花が咲きません。原始的な植物だからです。植物に花が咲くようになる前の姿を残しています。ヒカゲノカズラの直系の祖先は、三億年以上も昔に現われたと考えられています。恐竜よりはるか昔です。
 ヒカゲノカズラの仲間は、植物の中の生きている化石です。貴重な植物です。
 その割に、ヒカゲノカズラは分布域が広いです。南極とオーストラリア大陸を除く、すべての大陸に分布します。地域ごとに、少しずつ違う亜種が分布します。
 日本では、ヒカゲノカズラといえば、古事記や万葉集に登場することで有名です。昔の日本では、神聖な植物とされました。神事の際などに、髪に飾ったりしたようです。
 昔のヨーロッパでも、この植物は神聖なものとされました。一部では、クリスマスの飾りに使われたといいます。悪い魔法を避けるのにも使われました。
 前記のとおり、ヒカゲノカズラには、花が咲きません。目立つところはない植物です。なのに、なぜ世界の各地で、神聖な植物とされたのでしょうか?
 一つには、この植物が常緑だからでしょう。特に、寒い地域では、冬にも枯れない植物は、神聖に思えるはずです。また、花が咲かないのにどんどん殖える点も、魔法の植物と見えたのでしょう。
 昔の人も、「生きている化石」の不思議さに、感じるところがあったのかも知れませんね。

図鑑↓↓↓↓↓には、ヒカゲノカズラが掲載されています。
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 過去の記事でも、花の咲かない植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ヤシ? いいえシダの木です。マルハチ(2007/11/02)
お正月の飾りになぜウラジロ?(2005/12/16)

2009年12月 4日

ハンミョウは、昆虫のトラ(虎)?

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 二〇一〇年の寅年にちなんで、「トラ」の名が付く昆虫を紹介しましょう。ハンミョウです。甲虫目【こうちゅうもく】ハンミョウ科に属する昆虫の総称です。
 「全然、トラの名と関係ないじゃないか」ですって? 日本語名では、そのとおりです。じつは、ハンミョウ科の昆虫は、英語名に「トラ」が付きます。彼らの英語名は、tiger beetleです。「トラの甲虫」といった意味ですね。
 ハンミョウ科の種には、美しい模様があるものが多いです。けれども、虎縞【とらじま】模様ではありません。なぜ、「トラの甲虫」なのでしょうか?
 それは、彼らの性質によります。彼らは、幼虫も、成虫も、肉食性です。他の昆虫を、襲って食べます。自分より大きなミミズなどを、襲うこともあります。彼らの顔には、鎌【かま】のような、大きい顎【あご】があります。こういう点は、トラを思わせますね。
 では、日本語名のハンミョウとは、何に由来する名でしょうか? ハンミョウを漢字で書くと、「斑猫」です。「ぶちネコ」ですね。「派手なまだら模様を、ぶちネコにたとえた」説があります。ただし、この説は、確定しているわけではありません。
 英語ではトラにたとえ、日本語ではネコにたとえるところが、面白いですね。肉食性のハンミョウは、どこの国でも、ネコ科の動物を思わせるのでしょうか。
 ハンミョウ科の種のうち、日本で、最もよく見られるのは、ナミハンミョウでしょう。単にハンミョウといえば、この種を指すことが多いです。
 ナミハンミョウは、美しい種です。緑、白、赤、青紫などのまだら模様で、金属的な光沢があります。普通に目にしやすい昆虫の中では、一、二を争う美しさです。春から秋にかけて、自然の多い遊歩道などで、出会うことがあります。
 ナミハンミョウと道で会うと、よく、ふわふわと飛び立ちます。でも、すぐに地面に降りてしまいます。ハンミョウの仲間は、飛ぶのは得意でないようです。
 そのかわり、彼らは、走るのが得意です。よく見ると、とても長い脚を持ちます。獲物を襲う時、この脚が役立ちます。ネコ科にたとえるなら、チーターかも知れませんね。


図鑑↓↓↓↓↓には、ハンミョウ科の種のうちナミハンミョウ(ハンミョウ)、ニワハンミョウ、トウキョウヒメハンミョウが掲載されています。
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 過去の記事で、ハンミョウ科の昆虫と紛らわしいツチハンミョウを取り上げています。また、肉食のハンミョウが、別の肉食昆虫に捕らえられた画像もあります。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
捕獲!(2007/05/31)※ナミハンミョウが、シオヤアブに捕まったところです。
変態【へんたい】しすぎる昆虫? ツチハンミョウ(2007/03/26)

2009年11月30日

ペルセベスとは、どんな生き物?

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 年末に向けて、御馳走を食べる機会が多くなりますね。近年は、日本にいながら世界各国の料理を食べられるようになりました。
 クリスマスの料理として、ペルセベ【Percebe】を食べた人はいませんか? スペイン料理に登場するものです。ペルセベスとかペルセベ貝などと呼ばれることもあります。海産物の一種です。貝というからには、貝の仲間なのでしょうか?
 違います。ペルセベは貝の仲間ではありません。エビやカニの仲間です。専門的にいえば、節足動物【せっそくどうぶつ】です。日本人に馴染みがある生き物のうちで、近縁なものを挙げるなら、フジツボの仲間といえます。
 フジツボは、以前このコラムで取り上げましたね(ムール貝やパーナ貝とは、どんな貝?(2008/12/12))。フジツボの外見は、まるで貝のようです。けれども、節足動物(エビやカニの仲間)です。節足動物の中には、このように貝に似たグループがいます。
 より正確に言えばペルセベは、フジツボよりもカメノテに近縁です。カメノテも、日本の海岸に、たくさんいます。フジツボと同じく、岩などにくっついて生きるものです。「亀の手」に姿が似るところから、こんな名が付きました。
 日本のカメノテと、スペインのペルセベとは、同種ではありません。が、かなり近縁なのは、確かです。どちらも、節足動物門【せっそくどうぶつもん】顎脚綱【がっきゃくこう】有柄目【ゆうへいもく】ミョウガガイ科に属します。
 フジツボのほうは、顎脚綱のうち、無柄目【むへいもく】に属する種を指します。これは、外見に基づく分類です。柄【え】のあるものとないものとで分けています。
 市場などで、ペルセベを見る機会があればわかるでしょう。ペルセベには、長い柄があります。フジツボには、ありませんね。殻の部分で直接、岩などに付きます。
 日本のカメノテにも、柄があります。ペルセベのものより短めです。
 ペルセベは、誤って、エボシガイと翻訳されることがあります。エボシガイとペルセベとは別種です。エボシガイのほうは、有柄目のエボシガイ科に属します。


図鑑↓↓↓↓↓には、ペルセベと近縁なカメノテが掲載されています。
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 過去の記事で、ペルセベの仲間であるフジツボや、エボシガイを取り上げています。また、ペルセベと似て異なるムール貝なども取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
フジツボは富士壷? 藤壷?(2008/09/29)
殻があっても貝じゃない、エボシガイ(2007/10/22)

2009年11月27日

トラフナマコは、虎縞【とらじま】のナマコ?

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 トラ(虎)は、勇ましい動物の代表ですね。けれども、勇ましいとは言いにくい生き物にも、トラの名が付いています。例えば、トラフナマコです。
 トラフナマコは、名のとおりナマコの一種です。他のナマコと同じく、海底でごろりとしています。食べ物は、海中の砂や泥です。これも、多くのナマコと同じです。
 トラフ(虎斑)ナマコという種名は、体の模様から付きました。確かに、体はまだら模様です。とはいえこの種の模様は、縞【しま】模様とはいえません。雲形【くもがた】模様といったほうがふさわしいです。ちょっと名前負けしています(笑)
 ナマコといえば、日本人は「食べられるかどうか?」が、気になりますね。私の知る限り、トラフナマコを食べたという話はありません。少なくとも、食用に漁獲されてはいません。普通に食用にされるのはマナマコという種です。
 名前に反してトラフナマコは、ちっとも強くなさそうですね。無防備に海底に横たわっているようです。どうやって、敵を防ぐのでしょうか?
 じつは、多くのナマコは体に毒を含みます。トラフナマコにも毒成分があります。道理で、食べられないわけです。食用のマナマコには、ほとんど毒がありません。
 毒があるにしては、どの種のナマコも地味です。有毒生物は、よく派手な色をしていますよね。あれは、「毒があるから食べるな」と、敵に知らせているわけです。
 ナマコのように、外見で有毒だとわからないのは損なはずです。かじられてから吐き出されるより、最初からかじられないほうがいいでしょう。
 ナマコ自身も、そう考えたのでしょうか?(笑) トラフナマコをはじめ、多くのナマコには、毒以外の武器もあります。キュビエ器官というものです。
 キュビエ器官の外見は、白い糸のかたまりのようです。普段は、体の中にあります。
 つつかれたりすると、ナマコは肛門から、キュビエ器官を出します。これは、べたべたとくっついて不快なものです。毒成分も、多く含まれます。これで、たいがいの敵は、退散するようです。トラフナマコは、案外強いのかも知れません。


図鑑↓↓↓↓↓には、トラフナマコが掲載されています。
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 過去の記事でも、ナマコの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
食用ナマコはどんなナマコか?(2007/01/22)
サンゴ礁の海を守るナマコ(2006/07/22)
などです。

2009年11月23日

別名がいっぱい、イタドリ

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 イタドリという草を御存知ですか? 日本に住んでいる人ならば、必ず目にしているはずです(北海道の一部を除きます)。道端や空き地によく生えます。
 日本では、平凡な植物の一種です。普通の人は「雑草」として、見逃しているでしょう。
 歴史的に、この草は日本人にとても親しまれてきました。食用にされ、薬用にされ、子供の遊び道具にされました。春の新芽が食用になり、根が薬用になります。
 現在でも、地方によっては食用にしています。大量に食べるには、あく抜きが必要です。少量ならば、生【なま】で食べても大丈夫です。
 この草には、別名が非常に多いです。親しまれたがゆえですね。地方ごとに、いろいろな名が付けられました。私が知るだけでも、百以上の別名があります。
 主な方言名を挙げてみましょう。イタドリという名を知らなくても、以下の名の中に、「それなら知ってる!」というものがあるかも知れません。
 イタズリ、イタンボ、サシドリ、スイスイ、スカンポ、スッポン、タケスイバ、タジッポ、ダンジ、タンポコ、ハータナ、ハータネ、ポンポンなどです。
 御存知の名はありましたか? いかにも子供がつけそうな名が多いですよね。
 ややこしいのは、他種の植物と同じ名が混じることです。特に、正式種名をスイバという植物と混同されます。スイバにも、スイスイ、スカンポという別名があります。スイバも道端に生える草です。イタドリと同じく食べられます。
 イタドリの漢字名は、「虎杖」です。これで、イタドリと読みます。妙にいかめしくなりますね。なぜ、「虎」かといえば、イタドリの若い茎に縞【しま】模様があるからです。
 『枕草子』に、「虎杖」が登場します。清少納言も『枕草子』の中で、「見た目がそれほどでもないのに、この漢字名は大げさだ」と言っています。
 スカンポといえば、『すかんぽの咲く頃』という童謡がありますね。「土手のすかんぽ、ジャワ更紗【さらさ】」という歌いだしです。この歌の「すかんぽ」がどの種を指すのかは、わかっていません。スイバ説とイタドリ説が拮抗しています。


図鑑↓↓↓↓↓には、イタドリが掲載されています。
ban_zukan.net.jpgイタドリと同じく、スカンポと呼ばれるスイバも載っています。
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 過去の記事でも、別名が多い植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ゴンズイの名の由来は?(2009/06/19)
センダン(栴檀)とは、どんな植物?(2009/05/04)
謎の植物、茱萸【しゅゆ】とは?(2008/09/01)
などです。

2009年11月20日

トラフシジミは、草食性のトラ(虎)?

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 来年、二〇一〇年は、寅【とら】年ですね。それにちなんで、トラ(虎)の名が付いた生き物を、紹介しましょう。
 トラフシジミというチョウ(蝶)がいます。シジミチョウ科の一種です。シジミチョウ科は、大部分が小さく愛らしいチョウです。トラの名は似合いません。
 トラフシジミは、翅【はね】の模様が虎斑【とらふ】であることから、の名が付きました。英語でも、tiger hairstreak(虎のシジミチョウ)と呼ばれるようです。
 ただし、この模様には個体差があります。虎斑がはっきりしない個体もいます。
 春に羽化したものは、はっきりした模様になります。夏に羽化したものは、虎斑がはっきりしません。全体的に褐色がちだからです。こうなる理由はわかっていません。
 トラフシジミは、姿だけでなく、習性もトラらしくありません。彼らは、成虫も幼虫も草食性です。成虫は、他のチョウと同じように花の蜜を吸います。
 この種は、幼虫の食べ物も、花に依存します。幼虫は、花そのものを食べます。
 トラフシジミの幼虫は、「花グルメ