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2017年2月10日

ダチョウは、昔、空を飛べた?

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 鳥と言えば、普通は、空を飛ぶものですね。けれども、中には、飛べない鳥もいます。有名なのは、ダチョウ、エミュー、レア、ヒクイドリなど、大型で飛べない鳥たちですね。これらの鳥たちは、まとめて走鳥類、あるいは、古顎類と呼ばれます。
 古顎類(走鳥類)の分布を調べると、あることに気づきます。現生のすべての古顎類は、南半球にだけ分布します。ダチョウはアフリカに、エミューはオーストラリアに、レアは南米に、ヒクイドリはニューギニアに、といった具合です。
 古顎類には、歴史的に、つい最近、絶滅した仲間もいます。例えば、マダガスカルには、エピオルニスという巨大な飛べない鳥がいました。ニュージーランドには、モアという、やはり飛べない鳥がいました。モア科には、大小、十種以上の種が含まれます。
 このように、古顎類の分布が南半球に限られることから、古顎類は、南半球で進化した鳥たちだと考えられてきました。かつて、南半球にあった巨大大陸ゴンドワナで、早くから飛ぶ力を失った鳥として発生し、進化したのだろうとされてきました。
 ところが、二〇一六年に、この推定を覆す研究結果が、発表されました。古顎類が発生したのは、南半球ではなく、北半球だというのです。しかも、彼らは、飛べました。新生代の初め頃にいた、リトルニスという鳥が、古顎類の原型に近いとわかってきました。
 リトルニスは、現代では、とっくに絶滅しています。とはいえ、多数の化石が見つかっており、空を飛べたことは、間違いありません。リトルニスは、現代の北米やヨーロッパに当たる地域にいました。それらの地域から、世界中に、分布を広げたようです。
 リトルニス(に近縁な古顎類の祖先)は、北半球から、南半球の大陸へ進出してゆきました。当時の古顎類の祖先は、空を飛べましたから、マダガスカルやニュージーランドのように、大陸から離れた島へも、行き着くことができました。
 その後、北半球の古顎類は、絶滅しました。原因は、わかっていません。南半球に渡った仲間たちは、栄えました。進化し、数を増やしてゆく過程で、とても大きくなる種も、現われました。古顎類には、大きくなり過ぎて、飛ぶことを放棄した種が多いです。

図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、古顎類(走鳥類)は載っていません。かわりに、日本に分布する鳥類が、二百種以上掲載されています。
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 過去の記事でも、飛べない鳥を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
絶滅からよみがえる、シマホンセイインコ(2016/12/23)
北半球のペンギン? ウミガラス(2015/11/27)
ペンギンが絶滅する? 南極の危機(2007/12/13)
ヤンバルクイナは絶滅寸前?(2006/10/2)
七面鳥(シチメンチョウ)はクリスマスの御馳走。なぜ?(2005/12/5)





2017年2月 6日

ヒマラヤの青いケシは、どこに生える?

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 「ヒマラヤの青いケシ」を御存知でしょうか? ケシ科メコノプシス属に属する植物たちです。このグループには、二〇一七年現在で、五十種以上もの種が属するとされます。
 メコノプシス属のどの種にも、正式な日本語名(標準和名)が、付いていません、日本に自生する種が、一種もないからです。呼び名のとおり、ヒマラヤ山脈近くに分布する種が多いです。インド、チベット、ネパール、ブータン、中国南西部などに分布します。
 日本では、一九九〇年に、大阪で開かれた、国際花と緑の博覧会をきっかけに、有名になりました。この博覧会で、「ヒマラヤの青いケシ」が、大きく取り上げられました。
 青いケシと呼ばれても、メコノプシス属のすべての種に、青い花が咲くわけではありません。赤、ピンク、黄色などの花が咲く種もあります。とはいえ、全体的には、青い花が咲く種が多いです。ヒマラヤなどの高山では、青い花が、いっそう美しく見えます。
 一九九〇年の国際花と緑の博覧会では、ブータンの国花として、メコノプシス属の一種が紹介されました。その種にも、日本語名がありません。ラテン語の学名で、Meconopsis horridula【メコノプシス・ホリドゥラ】という種です。
 ところが、ブータンの国花とされるのは、この一種だけではないようです。Meconopsis grandis【メコノプシス・グランディス】という種も、ブータンの国花と紹介されることがあります。どちらの種も、ヒマラヤの高山地帯で、見事な青い花を咲かせます。
 こうなっているのは、メコノプシス属の分類が、いまだに流動的だからでしょう。この属の多くの種は、ヒトが行くのが難しい、高山に自生します。このために、研究が難しいのですね。新種が発見されたり、別の種だとされたものが、同種だとわかったりします。
 二〇一六年には、ブータンで、三種が発見されています。ラテン語の学名で、Meconopsis elongata【メコノプシス・エロンガタ】、Meconopsis gakyidiana【メコノプシス・ガキディアナ】、Meconopsis merakensis【メコノプシス・メラケンシス】という三種です。
 これら三種は、ともに、標高四千メートルほどの山岳地帯で発見されました。青いケシの名にふさわしく、三種ともに、青から紫色の、美しい花を咲かせます。
図鑑↓↓↓↓↓には、
残念ながら、ヒマラヤの青いケシは載っていません。かわりに、日本に分布するケシ科の植物が、七種ほどが掲載されています。



 過去の記事でも、ケシ科の植物を取り上げています。また、高山に自生する植物を、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ヒナゲシの英語名は、ポピーpoppyか?(2016/5/2)
富士山と白山、植物が多いのは、どっち?(2015/6/12)
薬用にも、観賞用にも、エンゴサク(2015/4/24)
ムラサキケマンの「ケマン」とは?(2014/4/25)
ヤマブキ(山吹)? いえ、違います(2011/4/29)




2017年2月 3日

絶滅危機の理由は? ゴマシジミ

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 日本に分布するチョウ(蝶)の一種に、ゴマシジミがいます。シジミチョウ科ゴマシジミ属に属します。この種は、とても分布域が広く、日本国外にも分布します。朝鮮半島、中国から、中央アジアを経て、ヨーロッパ中央部に至るまでが、分布域です。
 こんなに分布が広いなら、ちょっとやそっとでは、絶滅しそうにないと感じますね? ところが、現在の日本では、ゴマシジミの数が、非常に減っています。すでに、絶滅した地域もあります。以前から、ゴマシジミの分布には、不思議な点がありました。
 それは、分布域が、不自然に不連続なことです。例えば、北海道から九州にまで分布するのに、四国には、いません。また、東北地方日本海側の秋田県・山形県では、近年まで見られましたが、二〇一七年現在では、絶滅したと考えられています。
 大都市圏ならともかく、四国や東北地方のように、比較的、自然が残る地域で見られないのは、謎でした。二〇一六年に、この謎を解く研究結果が、公表されました。
 謎を解く鍵は、ゴマシジミの幼虫の、特異な食性にありました。
 ゴマシジミの幼虫は、成育する地域により、食べ物が違います。多くの地域では、ワレモコウという植物を食べます。けれども、それは、三齢幼虫までです。その後は、アリ(蟻)の仲間、クシケアリ属の幼虫を食べます。植物食から動物食へ、大転換ですね。
 クシケアリ属のアリも、多くのアリと同じように、土の中に巣を作ります。たくさんの兵隊アリが、巣を守ります。そんな所へ、何の武器もなさそうな幼虫が、どうやって入るのでしょうか? 驚くことに、アリ自身が、ゴマシジミの幼虫を、巣に運び入れます。
 なぜ、クシケアリ属のアリたちは、そんなことをするのでしょうか? ゴマシジミの幼虫は、体から、甘い蜜を分泌します。これが、アリの大好物なのですね。アリたちは、ゴマシジミの幼虫を、敵だと認識できないようです。
 ゴマシジミの幼虫が育つには、ワレモコウと、クシケアリ属のアリと、両方が必要です。クシケアリ属のアリが減った地域では、ゴマシジミも、減ってしまいます。そういう地域が、日本各地にあるために、不自然な分布になったと考えられます。
図鑑↓↓↓↓↓には、
残念ながら、ゴマシジミは載っていません。かわりに、日本に分布するシジミチョウ科のチョウや、アリの仲間が、十種以上が掲載されています。



 過去の記事でも、チョウやアリの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
花に来ないチョウがいる?(2015/5/4)
都会派のチョウ? ヤマトシジミ(2014/2/24)
アリの巣に、居候【いそうろう】がいる?(2013/8/5)
アリとアブラムシとシジミチョウとの関係は?(2013/4/8)
肉食性のチョウ(蝶)がいる?(2010/8/9)




2017年1月30日

「みくり」は、植物の名前?

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 大ヒットしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(略称『逃げ恥』)を御存知ですか? あれは、同名の漫画が原作なのですよね。森山みくりという女性が、主人公です。
 「みくり」とは、かわいい響きの名前ですね。この名前は、ミクリという植物に由来します。日本の水辺に自生する草です。ミクリ科(または、ガマ科)ミクリ属の一種です。
 こんなかわいい名前の植物ならば、かわいい花が咲くのでしょうか? 残念ながら、ミクリの花は、きれいとは言いがたいです。見ようによっては、かわいいかも知れませんが、大きさも小さく、目立つ花ではありません。
 そうなったのには、理由があります。ミクリの花は、風媒花【ふうばいか】だからです。風によって、花粉が運ばれる花です。ですから、ミクリの花は、風が花粉を運びやすい形をしています。花が美しいかどうかなんて、風には、関係ありませんね。
 普通に美しい花を咲かせる植物は、多くが、虫媒花【ちゅうばいか】です。チョウやミツバチなどの昆虫によって、花粉を運んでもらいます。虫媒花は、昆虫の目に止まりやすいように、大きく、華やかな花を咲かせるようになりました。
 虫媒花のうちで、たまたま、ヒトの目にも美しく見えるものが、ヒトに好まれます。バラやチューリップなど、多くの園芸植物が、そうです。
 大きく、美しい花を咲かせるには、それだけ、エネルギーを使います。自然界の生活は厳しいですから、どんな植物も、できるだけエネルギーを節約しようとします。風媒花のように、花粉を運ぶのに美しさが関係なければ、美しさを切り捨てます。
 じつは、日本のミクリは、現在、絶滅危惧植物です。昔は、水辺に普通にある草でした。けれども、ヒトにより、水辺の環境が破壊されたために、数が減ってしまいました。
 ミクリに、もっと美しい花が咲けば、ヒトに惜しまれて、絶滅危惧種にはならなかったでしょうか? 美しさゆえに乱獲されて、やはり、絶滅危惧種になったかも知れません。
 地味でも、植物の価値に変わりはありません。日本の水辺を構成する、大切な植物です。ドラマのヒットをきっかけに、植物のミクリにも、目が向けられて欲しいです。
図鑑↓↓↓↓↓には、
が掲載されています。



 過去の記事でも、日本の水辺の植物を取り上げています。また、『逃げ恥』の主人公みくりの兄「ちがや」の名前のもとになった植物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。

図鑑↓↓↓↓↓には、

残念ながら、ウミノミの仲間は、載っていません。かわりに、日本近海などに棲む節足動物が、三十種以上掲載されています。



 過去の記事で、海中を漂って暮らす生き物を取り上げています。また、モスアイ構造についても、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
沢瀉は、オモダカではない?(2015/8/17)
いろいろと役立ちます、ガマ(蒲)(2012/8/24)
シカクイ? フトイ? クサイ? 藺【い】の仲間たち(2011/7/8)
ヒシ(菱)は、女神さまの好物?(2010/8/6)
茅の輪【ちのわ】くぐりの「茅」とは、どんな植物?(2007/6/29)




2017年1月27日

海にも、ノミ(蚤)がいる?

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 ノミ(蚤)は、吸血するために、ヒトに憎まれる昆虫ですね。彼らは、ヒト以外に、イヌやネコやネズミなどの哺乳類に付きます。ところが、海の中にも、ウミノミ(海蚤)と呼ばれる生き物がいます。昆虫のノミが、海にも棲むのでしょうか?
 そうではありません。ウミノミは、昆虫のノミとは、まったく違う生き物です。詳しく分類を書けば、節足動物門【せっそくどうぶつもん】軟甲綱【なんこうこう】端脚目【たんきゃくもく】クラゲノミ亜目【あもく】に属するものたちです。
 クラゲノミ亜目という分類名から、ウミノミの仲間は、クラゲノミ類とも呼ばれます。この名のとおり、海の中で、クラゲに付着して生活する種が多いです。クラゲ以外に、サルパ―脊索【せきさく】動物の仲間―など、海中を漂う生物に付く種も、多いです。
 クラゲやサルパに付着して、ウミノミは、昆虫のノミのように、体液を吸うのでしょうか? これについては、わかっていません。ウミノミの仲間は、研究が進んでいないため、生態がわかる種が、少ないのです。何を食べるかさえ、不明な種が多いです。
 クラゲやサルパに付着せず、自由に海中を漂って生活するウミノミもいます。そのような種は、クラゲやサルパに付着する種に比べて、体が透明なことが多いです。
 それには、理由があります。隠れるところのない海中で、敵から逃れるためには、敵から見えにくくなることが有利です。体を透明にすれば、周囲の海水に溶け込んで見えるため、敵に見つかりにくくなります。
 最近の研究で、ウミノミの一部には、より透明に見えるように、特別な構造を持つものがいることが、わかりました。フクロウミノミ科フクロウミノミ属の一種です。
 その種は、脚に、ナノ突起という微小な突起が、びっしりと生えています。この突起は、ヒトの肉眼で見える大きさではありません。ヒトの肉眼で見ると、この突起は、光の反射を弱める働きがあります。つまり、体表の反射を抑えて、より見えにくくしています。
 これは、昆虫のガ(蛾)が持つ「モスアイ構造」と、同じものです。モスアイ構造は、以前、このブログで取り上げましたね(ガ(蛾)は、どうやって暗闇で見る?(2016/6/10))。

図鑑↓↓↓↓↓には、
残念ながら、ウミノミの仲間は、載っていません。かわりに、日本近海などに棲む節足動物が、三十種以上掲載されています。



 過去の記事で、海中を漂って暮らす生き物を取り上げています。また、モスアイ構造についても、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
セミの翅【はね】の秘密(2016/7/22)
ガ(蛾)は、どうやって暗闇で見る?(2016/6/10)
海中の透明で長いもの、な~んだ?(2010/4/1)
海中のイルミネーション? ヒカリボヤ(2007/12/10)/font>
サルパとは、どんな生き物?(2007/5/31)




2017年1月23日

ヤエヤマアオキは、健康食品になるか?

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 ヤエヤマアオキ(八重山青木)という植物の名を、聞いたことがあるでしょうか? 日本の南西諸島や、小笠原諸島に自生する樹木です。南西諸島や小笠原諸島にお住まいの方以外には、馴染みの薄い植物名でしょう。アカネ科ヤエヤマアオキ属の一種です。
 では、ノニという名を聞いたことは? よく果実がジュースにされて、健康食品として売られています。タヒチ、ハワイなど、太平洋諸島の産地のものが多いです。
 じつは、ノニNoniとは、ヤエヤマアオキのハワイ語―英語とは違います―の名前なのです。外国産の健康食品だと思ったら、日本にも生えている植物でした。
 日本の沖縄や小笠原では、ヤエヤマアオキを食用や薬用にした記録は、ないようです。しかし、外国では、ヤエヤマアオキを、食用や薬用にしてきた地域が多いです。
 ヤエヤマアオキは、南アジアから東南アジア、南太平洋にかけて、広く分布しています。インドネシア、インド、タイ、カンボジア、ベトナム、フィリピン、ハワイ、グアム、フィジー、タヒチ、サモアなどの地域です。地域により、呼び名が違います。
 現在は、宣伝のために、ノニというハワイ語の呼び名が、各地に普及しています。とはいえ、現在でも、各地の言語での呼び名があります。ヤエヤマアオキの原産地は、ハワイやタヒチではなく、インドネシアのモルッカ諸島(マルク諸島)だとされています。
 インドやインドネシアでは、ヤエヤマアオキが、古くから薬用にされてきました。この二国では、ヤエヤマアオキの樹皮や根を、布を染める染料にもしました。タヒチ、フィジー、サモアなどの太平洋諸島では、ヤエヤマアオキの果実が、食用にされました。
 けれども、ヤエヤマアオキの薬効については、医学的な証拠はありません。宣伝では、あらゆることに効くように言われますが、それは、鵜呑みにできません。
 このブログで、何回も書いていますとおり、「これさえ食べて(飲んで)いれば、どんな病気にもかからない」万能の健康食品は、存在しません。場合によっては、健康食品やサプリメントのために、体調を崩すことさえ、あります。ことに、持病がある方は、健康食品やサプリを摂取する前に、医師に相談したほうがいいです。
図鑑↓↓↓↓↓には、
ヤエヤマアオキと同じアカネ科の植物が、六種ほどが掲載されています。



 過去の記事でも、健康食品やサプリメントに利用される植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ワサビノキは、スーパー健康食品か?(2016/10/31)
アサイーの正体とは?(2016/2/8)
キクイモは、菊の花咲くイモ?(2015/2/13)
ローズヒップは、バラの果実?(2015/2/6)
クコ(枸杞)は、不老長寿の薬になる?(2013/2/15)




2017年1月20日

地下に棲むゲンゴロウがいる?

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 昆虫に詳しくない方でも、ゲンゴロウ(源五郎)という昆虫の名は、おそらく、聞いたことがあるでしょう。有名な水生昆虫の仲間ですね。
 甲虫目【こうちゅうもく】の昆虫のうち、ゲンゴロウ科、コツブゲンゴロウ科、ムカシゲンゴロウ科などに属するものを、ゲンゴロウと総称します。ゲンゴロウ科のナミゲンゴロウという種を、単にゲンゴロウと呼ぶこともあります。
 ゲンゴロウの仲間は、池、渓流、水田などの淡水域に棲みます。昔の日本では、水田が多かったために、ナミゲンゴロウなど、とても平凡な昆虫でした。子供たちの良い遊び相手でした。現在は、絶滅危惧種とされるほど、減ってしまいました。
 世界的に見ても、ゲンゴロウの仲間は、平凡な水生昆虫です。けれども、中には、とても珍しい種もいます。例えば、地下水に棲むゲンゴロウがいます。
 日本に分布するものでは、ムカシゲンゴロウ科に属する数種と、ゲンゴロウ科ケシゲンゴロウ亜科メクラゲンゴロウ属の数種、ゲンゴロウ科ケシゲンゴロウ亜科メクラケシゲンゴロウ属の一種などが、知られています。
 ムカシゲンゴロウ科は、日本にしか、分布が確認されていません。科自体が、世界的に、珍しいです。一生を地下水の中で過ごすグループです。
 メクラゲンゴロウ属や、メクラケシゲンゴロウ属も、日本でしか、分布が確認されていません。地下水の中で暮らすために、眼が退化しています。かわりに、体毛が発達しています。体毛で水の流れを感じて、周囲の様子を知るようです。
 地下水で暮らすゲンゴロウ類は、ほとんど、生態が知られません。観察が難しいためです。彼らの体が小さい―たいていは、2mm以下―ことも、難しさに拍車をかけています。そもそも、地下水の中の昆虫なんて、どうやって発見されたのでしょうか?
 昔、水道が発達する前には、井戸が使われていました。井戸水は、地下水とつながっているため、井戸から発見されたのです。現在の日本では、ほとんど、井戸が使われません。このために、地下水のゲンゴロウ類を発見するのが、さらに難しくなっています。
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ゲンゴロウ(ナミゲンゴロウ)が掲載されています。



 過去の記事でも、ゲンゴロウなどの水生昆虫を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ガ(蛾)? いえ、トビケラです(2015/6/1)
温泉に入る昆虫がいる?(2012/6/25)
肉食の背泳選手? マツモムシ(2010/5/31)
泳ぎが苦手な水生昆虫? ガムシ(2009/9/7)
昆虫一のアクララング王者? ゲンゴロウ(2009/3/27)




2017年1月16日

ウンシュウミカンの起源が判明?

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 日本の冬の果物といえば、ミカン(蜜柑)ですね。普通にミカンと呼ばれるのは、生物学的には、ウンシュウミカン(温州蜜柑)という種です。ウンシュウとは、中国の温州という地名に由来します。ところが、ウンシュウミカンは、中国原産ではありません。
 それなら、なぜ、温州の名が付いたかといえば、温州が、柑橘【かんきつ】類の名産地だったからです。最初は、「名産地温州の蜜柑だよ」という、宣伝目的だったのでしょう。
 ウンシュウミカンは、中国から伝わったミカンをもとに、日本で生まれた種ではないかと考えられていました。二〇一六年に、それを裏付ける研究結果が、公表されました。
 その研究結果によれば、ウンシュウミカンの母親(種子を実らせた親)は、キシュウミカン(紀州蜜柑)です。父親(花粉を授粉させた親)は、クネンボ(九年母)です。
 キシュウミカンもクネンボも、ウンシュウミカンと同じ、ミカン科ミカン属の一種です。どちらも、食用になります。キシュウミカンは、ウンシュウミカンが一般的になる前、江戸時代のミカンの主力でした。江戸時代にミカンと言えば、キシュウミカンを指しました。
 クネンボは、キシュウミカンが普及するより、さらに前に、主に食用にされていた柑橘類です。果実の大きさでは、ウンシュウミカンより大きいくらいです。ただし、味は、キシュウミカンやウンシュウミカンのほうが、ずっと美味しいです。
 キシュウミカンは、中国から伝わりました。果実が小さく、房ごとに種子がありますが、美味しいミカンです。日本の紀州で大量に栽培されたため、この名が付きました。
 クネンボは、東南アジア原産だと考えられています。おそらく戦国時代に、日本に来ました。それまで日本にあった柑橘類に比べて、果実が大きいために、そのまま生食できる柑橘類として、普及しました。味も、当時としては、美味しいほうでした。
 ウンシュウミカンは、クネンボから果実の大きさを、キシュウミカンから美味しさを受け継ぎました。両親の「いいとこ取り」をしたわけです。このために、明治時代の半ば以降、ミカンの主力となりました。日本の主要な生食用柑橘類の座は、クネンボ→キシュウミカン→ウンシュウミカンと、移り変わってきました。
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残念ながら、ウンシュウミカンは、載っていません。かわりに、日本にある柑橘類(ミカン科ミカン属の植物)が、三種ほどが掲載されています。



 過去の記事でも、柑橘【かんきつ】類(ミカン科で、食用になる植物)を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ベルガモットは、ミカン科か? シソ科か?(2016/7/11)
ミカンとオレンジとは、違う? 同じ?(2014/2/14)
ミカン? いえ、カラタチです(2009/2/13)
お釈迦さまも食べた? レモン(2006/8/21)
代々の実が付くおめでたい果実、ダイダイ(2005/12/31)




2017年1月13日

食べられる深海魚? ハダカイワシ

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 深海生物といえば、ヒトの手の届かない所で、ひっそり生きている印象が強いですね。
 ところが、実際には、日本人は、深海生物とわりと親しんでいます。なぜなら、食用にされている深海生物がいるからです。アンコウ、タチウオ、キンメダイなどは、食用魚として、知られますね。これらは、みな深海魚です。
 魚類以外でも、ホタルイカ、サクラエビ、ズワイガニなどの深海生物が、食用にされています。深海生物の研究にも、これほど恵まれた国は、少ないだろうと思います。
 深海生物を、もっと利用しようという動きも、出ています。例えば、現在、食べられていない深海魚の中に、食用になるものがあるのでは、といわれます。
 未利用の深海魚のうち、ハダカイワシの仲間は、食用として有望視されています。ハダカイワシの仲間は、とても数が多いと考えられるからです。
 イワシと名が付いても、ハダカイワシは、イワシとは遠縁です。まるで違うグループです。ハダカイワシ目【もく】ハダカイワシ科に属する種を、ハダカイワシと総称します。
 ややこしいことに、ハダカイワシ科の中に、ハダカイワシという種名の種がいます。この種名ハダカイワシを含め、ハダカイワシ科には、二百種以上が含まれます。
 ハダカイワシ科の種は、以前から、食用にされることがありました。ただし、その利用は、ごく限られた地域にとどまりました。安定して漁獲されないからです。
 最近、一般に売られ始めたハダカイワシ科の種もあります。センハダカという一種が、そうです。駿河湾に分布するハダカイワシです。ハダカイワシ科ハダカイワシ属に属します。駿河湾のサクラエビ漁で、以前から、混獲【こんかく】されていました。
 混獲されても、市場には、出されません。漁師さんたちが、自分たちで食べるだけでした。それはもったいないと、一般に売られるようになりました。
 ハダカイワシ科には、脂質が多過ぎて、食用に適さない種もあります。幸いなことに、センハダカには、そういうことがないとわかりました。駿河湾の新しい名産品として、定着すればいいなと思います。
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残念ながら、ハダカイワシの仲間は、載っていません。かわりに、日本近海や淡水にすむ魚が、五十種以上が掲載されています。



 過去の記事でも、深海生物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ヌタウナギは、スーパー繊維の持ち主?(2016/4/8)
メヒカリ(目光)の正式名称は?(2016/3/4)
アカマンボウは、マンボウの仲間か?(2015/7/31)
三種が一種に? ダンゴウオ科の魚たち(2015/5/18)
巨大な深海魚とは?(2013/7/15)




2017年1月 9日

カラスムギとエンバクとは、違う? 同じ?

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 先週、このブログで、「カラス」と名が付く植物を取り上げましたね。今週も、その続きです。カラスムギ(烏麦)の仲間を、紹介しましょう。
 カラスムギは、日本全国に分布する草です。普通は、雑草扱いです。けれども、カラスムギは、食べられます。穀物の一種です。イネやムギと同じ、イネ科に属します。
 日本では、カラスムギを食べる文化は、発達しませんでした。ヨーロッパでは、何千年も前から、カラスムギを食べる文化がありました。野生だったカラスムギが、ヨーロッパで栽培されるようになり、やがて、エンバク(燕麦)という栽培種が生まれました。
 オートミールという食べ物を、聞いたことがありませんか? ヨーロッパ風の朝食に、よく登場します。あの「オート」とは、英語のoatで、エンバクを指します。
 エンバクは、カラスムギとは別種とされています。が、両者ともに、カラスムギと呼ばれることがあります。紛らわしいですね。
 エンバク以外にも、カラスムギの近縁種で、ヒトに栽培されたことから、生まれた種があります。アカエンバク、アビシニアエンバク、ハダカエンバクなどです。どれも、カラスムギと同じく、イネ科カラスムギ属の種です。起源は、それぞれ、違うようです。
 アカエンバクは、地中海沿岸か、西アジアが原産だと考えられています。現在も、地中海沿岸や、西アジアで、少量が栽培されます。製粉して、パンの原料にされます。
 アビシニアエンバクは、アフリカの北東部、エチオピアで栽培されます。ラテン語の学名をAvena barbataという野生種から、エチオピアで作られたようです。Avena barbataも、もちろん、カラスムギ属の種です。この種には、日本語名がありません。
 ハダカエンバクは、中国北西部か、モンゴルが原産地だと考えられています。現在でも、その地域で栽培されています。モンゴルでは、ハダカエンバクで麺【めん】が作られます。かつては、ヨーロッパでも、ハダカエンバクが、広く栽培されていました。
 カラスムギ属の栽培種を、現在、主食にしている地域は、世界的に見ても、おそらく、ありません。主食を補助する食品、くらいの扱いです。
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残念ながら、カラスムギも、エンバクも、載っていません。かわりに、同じイネ科の植物が、三十種以上が掲載されています。



 過去の記事でも、穀物になる植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
雑草が穀物になる? メヒシバ(2015/6/29)

ジュズダマは、子供の遊び相手?(2012/11/30)
アワ(粟)の祖先は、エノコログサ?(2012/9/21)
ただの雑草じゃない? スズメノヒエ(2011/12/2)
神話に彩られたヒエ(稗)の起源(2011/9/16)




2017年1月 6日

甲殻類【こうかくるい】最強生物とは?

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 エビ、カニ、ヤドカリの仲間を、まとめて甲殻類と呼びますね。日本人には、食用に馴染み深いグループです。イセエビ、ズワイガニ、タラバガニなどが、有名な種ですね。これらの種は、みな、体の外側が、固い殻に覆われています。だから、「甲殻」類です。
 現生の甲殻類の中で、体の大きさが最大になるのは、タカアシガニです。ところが、二〇一六年に、タカアシガニよりも「強い」甲殻類がいると、話題になりました。
 それは、ヤシガニです。陸上で暮らす甲殻類です。幼生の時と、産卵する時以外には、海に入りません。太平洋とインド洋の熱帯・亜熱帯の沿岸地域に分布します。
 ヤシガニが、タカアシガニより「強い」とは、どういうことでしょうか? ヤシガニは、はさみではさむ力が、尋常でなく強いのです。自分の体重の、約九十倍もの力ではさめるとわかりました。ですから、体の大きいヤシガニほど、とんでもなく強くなります。
 これまでに見つかった、最大のヤシガニは、体重が4kgほどもあります。この大きさのヤシガニは、計算上、337kg・f【キログラム・フォース】もの力を持つことになります。この力は、ライオンが顎で噛む力と、ほぼ同じです。恐ろしい強さですね。
 タカアシガニのはさみは、大きくても、ヤシガニほどの力はありません。このために、ヤシガニが、「甲殻類最強」の称号を得ました。
 ヤシガニは、「甲殻類最強」であって、「カニ類最強」ではありません。なぜかといえば、ヤシガニは、その種名に反して、カニ類ではないからです。ヤドカリの仲間です。
 成長したヤシガニは、貝の殻には入りません。体が大き過ぎるからです。けれども、海底で暮らす幼生のうちは、他のヤドカリと同じように、貝殻を背負います。上陸してからも、若く、体が小さいうちには、貝殻を背負うことがあります。
 ヤシガニのように、大きくなり過ぎて、殻に入れないヤドカリの仲間は、他にもいます。タラバガニがそうです。ヤシガニと、タラバガニとは、脚の数などが、共通します。
 外から見る範囲では、タラバガニも、ヤシガニも、脚の数が、はさみを含めて八本しかありません。ズワイガニなど、真のカニには、十本の脚があります。
図鑑↓↓↓↓↓には、
残念ながら、ヤシガニは載っていません。かわりに、日本近海や淡水に棲む甲殻類が、二十種以上が掲載されています。



 過去の記事でも、ヤドカリや、カニの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
シャコとアナジャコとは、違う? 同じ?(2013/4/15)
ヤドカリとイソギンチャクとは、仲良し?(2012/3/19)
タカアシガニは、世界最大のカニ?(2009/1/30)
カニでないカニがいる?(2006/12/24)
何匹いるかな?(ヤドカリの画像)(2005/11/15)




2017年1月 2日

カラスザンショウは、カラスの好物?

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 植物の中には、「カラス○○」という種名のものが、多くあります。カラスウリ(烏瓜)、カラスノゴマ(烏の胡麻)、カラスノエンドウ(烏野豌豆)などです。これらの種名には、「カラスの役くらいにしか立たない」という意味が含まれるものが、多いようです。
 例えば、カラスウリは、ウリ科の種ですが、その果実は、ヒトの食用にはなりません。カラスノゴマは、ゴマとはまるで遠縁の種です。ゴマがゴマ科なのに対して、カラスノゴマはアオイ科です。果実、または種子が、ゴマに似るだけで、食用にはなりません。
 カラスノエンドウは、ヤハズエンドウの別名です。食用のエンドウと同じマメ科です。この種は、現在では、食用にされていません。しかし、昔、西アジアで農耕が始まった頃には、食用に栽培されていたといいます。その後、利用が途絶えました。
 現在でも、ヤハズエンドウは、若い果実や、熟した種子(いわゆる豆の部分)を食べることができます。でも、少なくとも日本国内では、普通は、ただの雑草扱いですね。なぜ、食用にされるのが途絶えてしまったのかは、わかっていません。
 このように見ると、「カラス○○」という種名の植物は、どれも、ほとんどヒトの役に立たないように感じられますね。けれども、中には、ヒトの役に立つ種もあります。
 その一種が、カラスザンショウ(烏山椒)です。食用のサンショウ(山椒)に近縁な種です。サンショウと同じミカン科サンショウ属に属します(分類には、異説があります)。
 カラスザンショウは、サンショウとは違って、果実が香味料(スパイス)にはなりません。かわりに、果実や葉が、民間薬として利用されます。サンショウと同じく、枝が、すりこぎにされることもあります。ちなみに、サンショウの果実も、漢方薬にされます。
 カラスザンショウは、蜜源植物として利用されることもあります。ミツバチが、カラスザンショウの花から蜜を集めると、巣にたまる蜂蜜が、独特の風味を持つからです。
 これだけいろいろ利用できるのに、やや軽蔑的な「カラス」の名が付いたのは、なぜでしょうか? 一説では、カラスザンショウの果実を、カラスが好んで食べるからといいます。しかし、本当にそうなのかどうかは、確認されていません。
図鑑↓↓↓↓↓には、
カラスザンショウ、カラスウリ、カラスノゴマなどが掲載されています。



 過去の記事でも、種名に「カラス」が付く植物を取り上げています。また、サンショウの仲間も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
サンショウの画像(2015/6/11)
ヤハズエンドウは、食べられる?(2015/3/27)
古代の「はじかみ」の正体は?(2012/6/29)
ガを誘惑する? カラスウリ(烏瓜)(2009/8/31)
ハンゲとハンゲショウの関係(2006/7/1)




2016年12月30日

農業をするアリがいる?

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 昆虫に興味を持つ方なら、ハキリアリというアリ(蟻)を御存知ではないでしょうか。とてもユニークな生態を持つため、テレビなどでも、よく紹介されます。
 ハキリアリという名は、「葉切りアリ」の意味です。植物の葉を切り取って、巣へと運ぶことから、この名が付きました。彼らは、葉を食べるのでしょうか? いえ、違います。彼らは、巣に持ち込んだ葉を使って、菌類を栽培しています。
 菌類、つまり、キノコの仲間ですね。葉は、菌類の養分にするために、運びます。ハキリアリは、巣の中で、せっせと菌類を育て、それを食べ物にします。
 驚くべき生態ですね。人間が、シイタケやマッシュルームを育てて、食べ物にするのと同じです。このため、ハキリアリは、「農業をするアリ」と呼ばれることがあります。
 ハキリアリと呼ばれるのは、一種だけではありません。アリ科のうち、ハキリアリ属と、ヒメハキリアリ属との二属の種を、まとめて呼ぶ名です。少なく見積もっても、四十種以上が含まれます。北米の南部から、中米、南米に分布します。
 二〇一六年に、ハキリアリに匹敵するほど、驚くべき生態のアリが発見されました。その種には、日本語名がありません。ラテン語の学名で、Philidris nagasauという名が付いています。南太平洋の島国、フィジーにしかいない種です。
 じつは、Philidris nagasauは、一九二一年に発見されていました。その時には、生態がわかりませんでした。発見されてから九十年以上も経って、生態が明らかにされました。
 Philidris nagasauは、菌類ではなく、植物を栽培します。その植物とは、アカネ科スクアメラリア属の複数の種です。アリたちは、これらの植物の種子を採集し、木の割れ目に植えます。その後、定期的にそこを訪れて、排便します。植物の栄養にするためです。
 Philidris nagasauは、食べるために、植物を栽培するのではありません。スクアメラリア属の植物は、育つにつれ、木の内部に空洞を作ります。そこが、アリの巣になります。
 これですと、農業というより、林業に近いかも知れません。いったい、どうやって、「植物を栽培して、住居を作る」などという生態に行き着いたのでしょうか? 不思議です。
図鑑↓↓↓↓↓には、
日本に分布するアリが、三種ほどが掲載されています。



 過去の記事でも、アリの仲間を取り上げています。また、アリと協力する植物も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アリの巣に、居候【いそうろう】がいる?(2013/8/5)
アリとアブラムシとシジミチョウとの関係は?(2013/4/8)
刺すアリがいる?(2013/4/1)
恐るべき?社会寄生、トゲアリ(2010/7/12)
アリが、植物に登るのは、何のため?(2010/4/16)




2016年12月26日

キジカクシは、雉【きじ】を隠すか?

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 酉【とり】年にちなんで、鳥の名が付く植物を紹介しましょう。キジカクシです。鳥のキジ(雉)の名が、正式な日本語名(標準和名)に付いています。
 キジカクシは、日本の山に自生する草です。北海道から九州にまで分布します。キジカクシ科クサスギカズラ属に属する一種です。以前は、ユリ科クサスギカズラ属とされていました。分類の組み替えにしたがって、キジカクシ科になりました。
 キジカクシ科クサスギカズラ属の種には、面白い特徴があります。葉が退化して、小さく、鱗【うろこ】のような形になってしまっていることです。
 ところが、キジカクシの外見は、細い筋状の葉が、たくさん付いているように見えます。それらは、本当は、葉ではありません。茎が細かく枝分かれして、葉状になっています。全体としては、緑のふさふさとしたかたまりに見えます。
 キジカクシ(雉隠し)という種名が付いたのは、この姿が、「山に棲むキジを隠す」ように見えたからかも知れません。種名の由来について、詳しいことは、不明です。
 キジカクシという種より、科のほうが有名です。キジカクシ科には、ヒトに有用な種が、いくつも含まれるためです。中で、最も有名なのは、アスパラガスでしょう。
 食用野菜のアスパラガスは、キジカクシと、とても近縁です。同じキジカクシ科クサスギカズラ属に属します。じつは、アスパラガスという名は、クサスギカズラ属のラテン語の学名Asparagusを、英語読みにしたものです。
 野菜のアスパラガスには、日本語名があります。オランダキジカクシといいます。「オランダ」が付くのは、オランダ産だからではなくて、「ヨーロッパ産」の意味です。
 江戸時代の日本は、ヨーロッパ諸国のうち、オランダとだけ貿易していましたね。この名残で、ヨーロッパ産の種に、「オランダ」を付けることが多いです。
 キジカクシの若芽を見れば、アスパラガスと近縁なことが、はっきりわかります。アスパラガスとそっくりだからです。実際に、キジカクシの若芽も、食べられます。これと似たヨーロッパ産の種が、「オランダキジカクシ」になったのに、納得できます。
図鑑↓↓↓↓↓には、
アスパラガス(オランダキジカクシ)がが掲載されています。



 過去の記事でも、キジカクシ科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
早春を呼ぶ青い花、ムスカリ(2016/2/29)
名前が総入れ替わり? ユキザサ(2015/6/5)
花が咲くと縁起が良い? キチジョウソウ(2015/1/2)
花は鑑賞しない? オモト(2013/12/13)
ユリ科は、大分裂中?(2013/9/20)





2016年12月23日

絶滅からよみがえる、シマホンセイインコ

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 モーリシャスという島を、御存知でしょうか? アフリカ大陸の東側、マダガスカル島のさらに東、インド洋に浮かぶ南の島です。マスカリン諸島の一員の島とされます。
 ここには、たくさんの固有種の生き物がいます。孤立した島であるために、多くの固有種が進化したのですね。特に有名なのは、ドードーという鳥です。
 ドードーは、『不思議の国アリス』に登場することで、知られるようになりました。この鳥は、人間のために、十七世紀に絶滅しています。飛べないことが、命取りでした。
 非常に残念なことに、マスカリン諸島では、ドードー以外にも、たくさんの固有種が絶滅しました。例えば、マスカリン諸島固有のインコ科の鳥は、ただ一種を除いて、すべて絶滅しています。生き残ったのは、シマホンセイインコという種だけです。
 シマホンセイインコは、別名、モーリシャスホンセイインコといいます。インコ科インコ亜科ホンセイインコ属の一種です。日本でもよくペットにされる、ワカケホンセイインコと同じ属です。ワカケホンセイインコと同じように、鮮やかな緑色をしています。
 一九九一年、野生のシマホンセイインコは、十五羽しかいませんでした。十五羽! 誰でも、これでは、シマホンセイインコの絶滅は免れない、と思いますよね?
 ところが、二〇一〇年には、野生のシマホンセイインコの数は、五百羽に達していました。二十年足らずの間に、ものすごい増加率ですね。
 こうなったのは、シマホンセイインコを救おうとする、多くの人々の努力のおかげです。最初の頃は、とにかく個体数を増やすために、人工飼育と、その環境での繁殖が行なわれました。飼育環境から、何十羽ものインコたちが、野生に戻されました。
 ある程度、数が増えてくると、野生での繁殖を手助けする方向へと、舵が切られました。巣箱をかけたり、敵になる外来種を排除したりしています。
 シマホンセイインコは、保護策が成功した、まれな例です。彼らの陰には、絶滅した多くの種がいます。もとはと言えば、人間が、彼らの生息環境を破壊したためです。せめてもの罪滅ぼしに、シマホンセイインコは、栄えて欲しいですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、
日本に分布する鳥が、二百種以上が掲載されています。



 過去の記事でも、絶滅寸前からよみがえった生き物を取り上げています。また、インコの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
絶滅種を再発見、ヒュウガホシクサ(2016/11/21)
花に来ないチョウがいる?(2015/5/4)
奇跡の復活! クニマス(2010/12/18)
ダイトウウグイス復活!(2008/5/29)
ワカケホンセイインコの画像(2008/3/22)





2016年12月19日

鳳凰か朱雀【すざく】か? ホウオウボク

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 二〇一七年は、酉【とり】年ですね。それにちなんで、鳥の名が付いた植物を紹介しましょう。ホウオウボク(鳳凰木)です。鳳凰は、実在しない鳥ですが、新年にふさわしい、華やかな鳥を選んでみました。おめでたい席の飾りに、よく使われますね。
 ホウオウボクは、日本には自生しない樹木です。原産地は、マダガスカルです。現在は、世界じゅうの熱帯・亜熱帯地域に、植栽されています。真紅の美しい花が、観賞用に喜ばれるためです。日本では、南西諸島で、街路樹や公園樹にされています。
 ホウオウボクは、マメ科ジャケツイバラ亜科ホウオウボク属に属します。ホウオウボク属には、ホウオウボクなど、十種ほどの種が属します。ほとんどが、マダガスカルか、東アフリカが原産の種です。この属の種では、ホウオウボクが、圧倒的に有名です。
 マメ科の種といえば、エンドウの花のような、蝶形花を思い浮かべるかも知れませんね。でも、ホウオウボクの花は、蝶形花ではありません。フリル状の花びらが、五枚、放射状に付いています。その真ん中に、雄しべと雌しべとがあります。
 マメ科の中でも、ジャケツイバラ亜科の種は、蝶形花ではないものが多いです。
 ホウオウボクは、世界三大花木の一つに挙げられます。花を観賞するのに良い樹木ということですね。他の二種は、カエンボク(火焔木)とキリモドキです。どちらも、ホウオウボクと同じように、熱帯・亜熱帯の種です。この二種は、ホウオウボクとは遠縁です。
 ホウオウボクは、カエンボクと混同されることがあります。同じように熱帯に産する木で、同じように赤く、美しい花が咲くからです。ホウオウボクの別名に、カエンジュ(火焔樹)というのがあります。カエンボクと、非常に紛らわしいですね。
 ホウオウボクという日本語名は、なぜ、付いたのでしょうか? どうやら、中国語の名を、そのまま取り入れたようです。中国語でも、ホウオウボクは、「鳳凰木」と書きます。中国語文化圏では、台湾に、たくさんのホウオウボクが植えられています。
 鳳凰の伝承では、鳳凰は、五色の色を持つとされます。しかし、ホウオウボクは、何と言っても、赤が目立ちます。鳳凰の一種の朱雀【すざく】に似ている、と思います。

図鑑↓↓↓↓↓には、
日本に分布するマメ科植物が、二十種以上が掲載されています。



 過去の記事でも、世界三大花木を取り上げています。また、ホウオウボクと同じ、マメ科ジャケツイバラ亜科の種も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ノウゼンカズラの仲間たち(2016/7/18)
猿の花とは、どんな植物?(2016/2/1)
ホウオウボクの花の画像(2011/8/4)
ホウオウボクの樹木全体の画像(2009/6/16)




2016年12月16日

子が親を滅ぼした? アフリカツメガエル

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 先週のこのブログで、アフリカツメガエルの話をしましたね。アフリカツメガエルは、別々の近縁な二種が、自然に交配して生まれた種だとわかりました(アフリカツメガエルは、一種じゃない?(2016/12/))。この話の続きです。
 アフリカツメガエルを生んだ、祖先の二種とは、どの種でしょうか? じつは、この二種は、すでに絶滅しています。どちらも、アフリカツメガエルのゲノムを調べることにより、初めて知られた種です。このために、正式な種名も、付いていません。
 仮に、この祖先の二種は、LとSと名付けられました。片方の種が、染色体が長いのでlongのLとされ、もう片方が、shortのSとされました。
 LとSとが、いつ頃滅びたのかは、わかっていません。けれども、なぜ、滅びたのかについては、ツメガエル属の分布を調べることにより、ヒントが得られました。
 アフリカツメガエルなどが属するツメガエル属のカエルは、サハラ砂漠以南のアフリカに、広く分布しています。ツメガエル属の中には、アフリカツメガエル以外にも、別種同士の交配によって生まれたと考えられる種がいます。アフリカツメガエルのように、ゲノムを調べると、別種起源の遺伝子が見つかる種です。
 このように、別種同士が交配し、かつ「全ゲノム重複」という現象が起こって、雑種同士で繁殖可能になった個体を、「異質四倍体」といいます。生物の普通の個体は、「二倍体」です。ツメガエル属には、アフリカツメガエル以外にも、異質四倍体の種がいます。
 ツメガエル属の種は、普通の二倍体のものより、異質四倍体の種のほうが、分布域が広いです。二倍体の種は、西アフリカの一部地域に押し込められたような状態です。
 こうなったのは、異質四倍体の種のほうが、二倍体の種より、多様な環境に適応しやすいからだと考えられます。単純に考えても、二種ぶんの遺伝子を持てば、それだけ多様な遺伝子がたくさんあるわけですから、有利ですね。
 こうして、異質四倍体の種が分布を広げてゆくうちに、祖先の二倍体の種は、絶滅したと考えられます。遺伝的に考えれば、子が親を滅ぼしたといえるでしょう。
図鑑↓↓↓↓↓には、
日本に分布するカエルが、十七種ほどが掲載されています。



 過去の記事でも、アフリカツメガエルなど、実験に使われる動物を取り上げています。また、その他のカエルの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アフリカツメガエルは、一種じゃない?(2016/12/)
人を殺せるカエルがいる?(2013/6/3)
切っても切っても、生えてくる? イモリの謎(2013/9/2)
プラナリアは、美術モデル?(2010/1/18)
大黒鼠【だいこくねずみ】とは、どんなネズミ?(2008/1/11)




2016年12月 9日

アフリカツメガエルは、一種じゃない?

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 今回は、人間の科学実験に、よく使われている生物を紹介しましょう。アフリカツメガエルです。アフリカ原産のカエルの一種です。日本には、もともと分布しません。
 アフリカツメガエルは、無尾目【むびもく】ピパ科ツメガエル属に属します。無尾目というのが、カエルの仲間を指します。同じ無尾目ピパ科ツメガエル属には、ネッタイツメガエルなどの種も、属します(分類には、異説があります)。
 アフリカツメガエルも、ネッタイツメガエルも、同じように、実験動物として用いられます。彼らが実験動物にされるのは、いくつかの理由によります。
 一番大きな理由は、飼育しやすいことでしょう。実験をする以前に、大量に、安定して飼うことができなくては、実験など、やりようがありませんね。
 アフリカツメガエルは、五十年以上も前から、世界中で、実験動物にされてきました。そういう生物なら、基本的なことは、研究し尽くされていそうですね?
 ところが、そうとは限りません。二〇一六年になって、やっと、アフリカツメガエルの全ゲノムが解読されました。ゲノムとは、ある生物が持つすべての遺伝情報を指します。その生物の体型・成長過程・生態などを決めている遺伝子のセットです。
 じつは、アフリカツメガエルは、以前から、「雑種起源ではないか」といわれていました。別々の近縁な二種が、自然に交配して、生まれた種ではないかというのです。
 ゲノム解読により、それが証明されました。約千八百万年前に、二種が交配し、さらに、全ゲノム重複という現象が起こることによって、代々、繁殖してゆくことができるようになりました。アフリカツメガエルという種の誕生です。
 アフリカツメガエルのゲノムには、祖先になった二種のカエルのゲノムが、そっくり保存されています。一つの種なのに、二種ぶんのゲノムを持つわけです。
 このことが、アフリカツメガエルのゲノム解読を、難しくしていました。単純に考えても、量が多いのですからね。手間がかかります。でも、解読できました。この成果は、生物学の研究に、大きく貢献するだろうと考えられています。
図鑑↓↓↓↓↓には、
日本に分布するカエルが、十七種ほどが掲載されています。



 過去の記事でも、実験に使われる動物を取り上げています。また、カエルの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アカガエル属は、大分裂中?(2016/4/1)
新種発見、ネバタゴガエル(2015/7/24)
切っても切っても、生えてくる? イモリの謎(2013/9/2)
プラナリアは、美術モデル?(2010/1/18)
大黒鼠【だいこくねずみ】とは、どんなネズミ?(2008/1/11)




2016年12月 5日

歩く木がある?

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 植物は、動物と違って、活発に動くことはありませんね。じわじわと、成長にしたがって動くのが、見られるだけです。ところが、世の中には、「歩く木」といわれる植物が、存在します。ゆっくりではありますが、場所を移動するというのです。
 英語で、Walking Palmと呼ばれる、ヤシ科の一種があります。「歩くヤシ」という意味ですね。ラテン語の学名で、Socratea exorrhiza【ソクラテア・エクソリザ】といいます。
 この種には、日本語名が付いていません。日本に自生しない種だからです。中米と南米の熱帯地域に自生します。日本では、植物園でも、見るのが珍しいでしょう。
 このヤシは、根元が、細かく枝分かれしています。地面の上から根が生えていて、それらの根で、幹を支えます。根は、日の当たる方向へどんどん伸びてゆき、日の当たらない方向では、枯れてゆきます。結果として、しばらく経つと、木が移動するといわれます。
 しかし、この「歩くヤシ」説は、確認されていません。作り話のようです。エクアドルなどのツアーガイドが、お客を楽しませるために作ったとされています。
 じつは、日本に、「歩く木」といわれる植物があります。それは、ヤシ科の植物ではありません。クワ科イチジク属の一種です。ガジュマルという種です。
 ガジュマルは、日本では、主に南西諸島に自生します。九州以北でも、栽培されていることがあります。この木は、たくさんの気根【きこん】を生やすことで、知られます。
 気根とは、地面の上の幹や枝から生えて、地面に向けて垂れ下がる根です。気根が地面に達すると、そこから地面に潜って、普通の根を生やします。そうなると、空中にある気根は太く、丈夫になって、本来の幹と、区別がつかなくなります。
 このために、ガジュマルは、大木になると、いくつもの幹がある状態になります。それらの幹のうち、条件の悪い方にある幹は、枯れることがあります。条件の良い方へは、どんどん、新しい気根が生えます。すると、長い間には、木全体が移動します。
 このように、ガジュマルは「歩く」といわれますが、本当に移動するかどうかは、確認されていないようです。どなたか、研究してくれないでしょうか?
図鑑↓↓↓↓↓には、
日本に自生するヤシ科の植物とクワ科の植物が掲載されています。



 過去の記事でも、ヤシ科の植物や、クワ科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アサイーの正体とは?(2016/2/8)
お酒を出す木がある?(2015/3/13)
イソギンチャクに、殺し屋がいる?(2014/7/28)
タラヨウとタラジュとは、違う? 同じ?(2013/7/26)
七夕の短冊は、カジノキの葉だった?(2007/7/6)




2016年12月 2日

ミミズが人類を救う?

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 動物の中には、ヒトと違って、手も足もないものがいますね。ヘビやミミズなどが、そうです。彼らは、手足がないのに、どうやって移動するのでしょうか?
 同じように手足がなくても、ヘビと、ミミズとでは、移動の仕方が違います。今回は、ミミズの動き方を、紹介しましょう。ミミズの動くところを、見たことがありますか? 
 ミミズが前進するのを観察すると、ミミズは、体の太さを、順番に変えていることがわかります。最初は、体の前の方が太くなり、次に、真ん中くらいが太くなり、最後に、後ろの方が太くなります。そしてまた、前の方から太くなることを、繰り返します。
 このような運動の仕方を、蠕動【ぜんどう】運動と呼びます。蠕動運動は、ミミズの生活様式に、とても合っています。ミミズは、狭い土の中の穴で、暮らすからです。
 狭い穴では、体を大きく動かす運動は、できません。手足を伸ばすにも、窮屈ですね。いっそのこと、手足はないほうが、便利です。かえって手足は邪魔になります。
 ミミズの蠕動運動は、体の太さを少し変えるだけで、移動することができます。太くなった部分で、体を地面に押し付けておき、細い部分を伸ばして、先に進めます。これを繰り返すことで、全体が移動できます。狭い土中の穴には、ぴったりですね。
 この蠕動運動を真似したロボットが、作られています。ミミズのロボットですね。
 ミミズのロボットなんて、何の役に立つのでしょうか? いろいろな役に立つと、期待されています。例えば、水道管など、狭い管の中を検査するのに使えます。
 工場設備などの、長く、複雑な管を検査するのに、ミミズロボットがあれば、どんなに役に立つでしょう。検査のために、いちいち設備を解体したら、大変な手間がかかります。ミミズロボットがあれば、管の中を通すだけで、検査できます。
 ヒトの大腸など、内臓の検査にも、使えますね。ミミズのように柔らかいロボットができれば、ヒトの内臓も傷つけずに、検査ができます。他に、災害救助用ロボットなども考えられます。倒壊した家屋に入り込んで、ヒトを助けてくれるかも知れません。
 ミミズからも、人類が学ぶことは、たくさんありますね。
図鑑↓↓↓↓↓には、
シマミミズが掲載されています。



 過去の記事でも、ミミズなどの環形動物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
深海で、骨を食【は】むもの(2016/7/29)
干潟には、ゴカイやミミズの仲間が多い?(2013/11/18)
ハオリムシ(羽織虫)の分類は?(2012/12/10)
ミミズは、どこまで大きくなる?(2012/4/16)
ミミズは、土中の働き者(2009/10/9)





2016年11月28日

大震災が残した植物たち

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 東日本大震災を覚えていますか? あの大震災は、あまたの悲劇を呼びましたね。でも、ほんの少しですが、良いこともありました。
 例えば、宮城県では、準絶滅危惧種とされている植物が、復活しているのが発見されました。サジオモダカという種です。オモダカ科サジオモダカ属に属します。
 サジオモダカは、水辺に生える草です。昔は、水田の畔などに、たくさん生えていたといいます。平凡な水田の雑草でした。それが、準絶滅危惧種とされるほどに、減ってしまいました。湿地が減ったことと、除草剤がまかれたこととが、原因だと考えられます。
 ところが、大震災の津波が去ったあと、新たにサジオモダカが芽吹いたのが、発見されました。津波によって表土が削られ、奥に埋まっていたサジオモダカの種子が、芽吹いたようです。植物の種子は、耐久性が強いものが多いため、こういうことが起こります。
 サジオモダカは、塊茎【かいけい】が、漢方薬の材料になります。江戸時代には、この塊茎が、仙台藩の名産品の一つでした。現在の日本では、サジオモダカが少な過ぎて、漢方薬の需要を満たせません。中国などから、輸入されています。
 まずは、自然界で、サジオモダカを復活させることが先決でしょう。そうなった後には、サジオモダカを栽培して、名産品として、復活させられるかも知れません。
 もう一種、大震災の後に、数が増えたと思われる植物があります。ハマギクです。
 ハマギク(浜菊)は、種名のとおり、キク科ハマギク属に属します。観賞用に、栽培されることもあります。白く美しい花が咲くためです。野生では、海岸に生えます。
 宮城県の気仙沼市にある海岸地帯、巨釜半造【おおがまはんぞう】では、今年、二〇一六年の秋に、これまでになく多くのハマギクが、花を咲かせたそうです。
 もともと、そこには、たくさんのマツが生えていました。それらのマツは、津波のために、多くが、弱って枯れてしまいました。枯れたマツは、切り倒されました。
 このために、海岸の日当たりが良くなり、ハマギクが増えたと考えられます。大災害を逆手にとって、数を増やす植物は、たくましいですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、
ハマギクが載っています。また、サジオモダカに近縁なヘラオモダカやオモダカも掲載されています。



 過去の記事でも、サジオモダカや、海岸に生えるキク科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
沢瀉は、オモダカではない?(2015/8/17)
同名異種? ネコノシタとクマノギク(2014/9/19)
ソナレムグラの「ソナレ」とは?(2014/7/18)
菊展の隠れた主役? イソギク(2010/11/15)
九月九日は菊の節句(2006/9/9)




2016年11月25日

赤い鳥小鳥、なぜなぜ赤い?

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 赤いカナリアを飼ったことがありますか? 飼ったことがある方なら、赤カナリアの体色は、食べ物で維持されていることを、御存知でしょう。赤カナリアは、人工的に作られた品種です。野生種のカナリアは、まるで違う、地味な体色をしています。
 赤カナリアの本来の体色は、淡い赤です。けれども、ペット店で売られる赤カナリアは、鮮やかな赤ですね? あれは、赤い色素を持つ食べ物を与えることによって、鮮やかな色にしています。そういう食べ物を与え続けないと、淡い体色に戻ってしまいます。
 食べ物で、体色が左右される鳥は、野生種にも、います。例えば、フラミンゴの仲間が、そうです。フラミンゴの仲間は、おおむね、赤か、ピンクの体色ですね。
 野生のフラミンゴは、湖や干潟で餌を取ります。その餌の中に、赤い色素を持つ藻類などが含まれます。このために、本来は白いフラミンゴが、赤やピンクに染まります。
 最近、カナリアでもフラミンゴでもない鳥で、食べ物によって、体色が変わるものがいることが、発見されました。キツツキの一種です。北米に分布する鳥です。
 それは、キハシボソキツツキという種です。種名は、「黄ハシボソキツツキ」の意味です。種名のとおり、羽毛の一部が、鮮やかな黄色をしています。
 キハシボソキツツキの中には、黄色でなく、赤い体色の個体がいることが、以前から知られていました。そのような個体は、キハシボソキツツキと近縁な、別の種と交配して生まれたものだと考えられていました。別の種とは、アカハシボソキツツキです。
 ところが、アカハシボソキツツキの分布域は、同じ北米でも、キハシボソキツツキの分布域とは、遠く離れています。この二種が、自然に出会って交配するとは、考えにくいです。じつは、この二種が交配したのではなく、食べ物によるとわかりました。
 スイカズラ属の植物の果実を食べると、キハシボソキツツキの羽毛が、赤くなります。赤いキハシボソキツツキの色素と、スイカズラ属の果実の色素とは、同じものでした。
 スイカズラ属の植物は、北米では、外来種です。十九世紀に、観賞用に持ち込まれました。ですから、赤いキハシボソキツツキは、それ以降に現われたことになります。
図鑑↓↓↓↓↓には、
残念ながら、カナリアやフラミンゴやキハシボソキツツキは載っていません。かわりに、日本に分布する鳥類が、二百種ほどが掲載されています。



 過去の記事でも、キツツキの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アカゲラ? いえ、オオアカゲラです(2013/8/19)
鳥の足の形は、どんなふう?(2012/5/7)
ノグチゲラは、キツツキ科か?(2010/1/4)
街中のキツツキ? コゲラ(2009/1/12)
ブラジルで、14もの新種を発見(2008/5/3)




2016年11月21日

絶滅種を再発見、ヒュウガホシクサ

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 日本の宮崎県から、嬉しいニュースが届きました。絶滅したと思われていた植物が、再発見されたのです。それは、ヒュウガホシクサという種です。
 ヒュウガホシクサは、イネ目【もく】ホシクサ科ホシクサ属に属します。ホシクサという名は、「干し草」ではなくて、「星草」の意味です。ホシクサ属の種は、花が、白いコンペイトウのような形になるものが多いです。これが、星に見立てられたようです。
 ホシクサ属の種は、多くが、分布域が非常に狭いです。それぞれの地域ごとに、独自に進化したのでしょう。けれども、外見は、互いに似た種が多いです。
 ヒュウガホシクサも、もともと、宮崎県のごく限られた地域にしか、自生しませんでした。宮崎県川南町【かわみなみちょう】の川南湿原です。このような種は、絶滅しやすいです。限られた自生地の環境が変われば、絶滅につながるからです。
 一般的に、五十年間、生息が確認できなければ、その種は絶滅したと見なされます。ヒュウガホシクサも、約五十年間、自生が確認できませんでした。このために、絶滅したと考えられてきました。それが、川南湿原で、再発見されました。
 現在のヒュウガホシクサは、もちろん、保護されています。勝手に採取してはいけません。ホシクサ属の絶滅種では、ヒュウガホシクサ以外に、苦い経験があります。
 ヒュウガホシクサと並んで、ホシクサ属の絶滅種とされていた種に、タカノホシクサがあります。タカノホシクサは、群馬県の多々良沼にしか、自生しない種でした。ホシクサ属の中で、唯一、完全に水中で暮らす水草でした。
 その性質が珍しがられて、タカノホシクサは、無制限に採取されました。取られ過ぎて、絶滅してしまいました。こんなことは、繰り返したくありませんね。ヒュウガホシクサや、他のホシクサ属の種は、今なら、まだ、保護の手立てを取ることができます。
 ホシクサ属は、湿った環境に生える種が多いです。かつては、水田の雑草として、よく見られたといいます。昔の農民は、雑草として、ホシクサ属の草を憎んだかも知れません。しかし、今では、コンペイトウのような花が、どこか懐かしさを感じさせます。
図鑑↓↓↓↓↓には、
残念ながら、ヒュウガホシクサは載っていません。かわりに、日本に分布する植物が、八百種ほどが掲載されています。



 過去の記事でも、絶滅から蘇った種を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
奇跡の復活! クニマス(2010/12/18)
絶滅種に、再発見の可能性はあるか?(2010/3/22)
新種・珍種がざっくざく、南硫黄島【みなみいおうとう】(2008/6/10)
ダイトウウグイス復活!(2008/5/29)
再発見! オキナワトゲネズミ(2008/3/7)




2016年11月18日

百の未確認種を発見? 沖縄市

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 二〇一六年の十月に、沖縄市で、新種の昆虫が発見されたというニュースがありました。今回は、それについて解説しますね。沖縄市は、沖縄本島中部にある市です。
 沖縄市は、二〇一二年度から、市の北端にある嶽山原【たきやまばる】という森林地帯で、環境調査を行なってきました。その結果、そこから、国内で未確認だった昆虫が、なんと約百種も発見されました。そのうち一種が、世界初確認の新種でした。
 新種の日本語名(標準和名)は、クボミツヤアリバチと付けられました。ラテン語の学名は、Methocha uchinanensisです。ハチ目【もく】スズメバチ上科コツチバチ科ツヤアリバチ亜科に属します。近縁種には、日本内地に分布するツヤアリバチなどがいます。
 クボミツヤアリバチは、体長1cmほどの小さなハチです。写真で見る限り、体色は黒く、地味です。こんな目立たない新種を、よくぞ見つけたものだと思います。
 報道では、「アリバチの一種が発見された」とされていることが多いです。これは、厳密に言えば、正確ではありません。クボミツヤアリバチは、アリバチ科ではなくて、コツチバチ科に属するからです。コツチバチ科とは別に、アリバチ科という科があります。
 コツチバチ科なのに、クボミツヤ「アリバチ」という種名なのですね。紛らわしいです。
 コツチバチ科は、アリバチ科と同じく、スズメバチ上科に属します。分類には、異論もあります。コツチバチ科とアリバチ科と二科で、コツチバチ上科を成すという説があります。どちらにせよ、二つの科は、近縁な科同士であるといえます。
 コツチバチ科のハチには、幼虫が、コガネムシの幼虫に寄生する種が多いです。雌のハチが、コガネムシの幼虫に卵を産みつけ、孵化した幼虫が、コガネムシの幼虫を食べて育ちます。クボミツヤアリバチの幼虫については、まだ、生態がわかっていません。
 クボミツヤアリバチ以外に、嶽山原で確認されたのは、国外で発見された種が多いです。これまで、日本国内では、見つかっていなかった種です。さして広くもない嶽山原で、これだけの未確認種が発見されたのは、嶽山原の自然の豊かさを表わします。日本でここにしかいない種も、きっといるでしょう。この環境を守って欲しいですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、
残念ながら、クボミツヤアリバチは載っていません。かわりに、日本に分布するハチの仲間が、二十種ほどが掲載されています。

 過去の記事でも、ハチの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ミツバチの巣は、冷暖房付き?(2016/9/9)
悪役か善役か? 寄生バチ分類(2015/10/2)
食べられる昆虫とは?(2013/5/20)
幸せな共生の形、ドロバチとダニ(2010/12/20)
アシナガバチは紙の工芸家?(2006/9/22)




2016年11月14日

珍妙な新種発見、ヤツシロラン

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 今年、二〇一六年に、日本で、奇妙な植物の新種が発見されました。クロシマヤツシロランという種です。鹿児島県三島村【みしまむら】の黒島だけに自生します。
 クロシマヤツシロランは、ラン科オニノヤガラ属の一種です。ラン(蘭)といえば、カトレアなどの、華やかな観賞用の洋ランを思い浮かべる方が、多いかも知れませんね。ところが、クロシマヤツシロランは、そのようなランとは、全然違います。
 クロシマヤツシロランには、緑色の部分が、まったくありません。全体的に、茶色っぽいです。それは、葉緑体を持たないからです。光合成をしない植物なのですね。菌従属【きんじゅうぞく】栄養植物といって、菌類から、栄養を奪って生きています。
 これだけでも、植物としては、変わっていますね。加えて、クロシマヤツシロランは、花も咲かせません。より正確には、花のつぼみは付くのですが、開かないまま、終わってしまいます。こんな植物って、他にあるのでしょうか?
 あります。最近になって、似た植物の新種が、次々に発見されています。
 例えば、昨年、二〇一五年には、ヌカヅキヤツシロランという新種が、発見されました。クロシマヤツシロランと同じ、ラン科オニノヤガラ属です。分布地も、同じ鹿児島県三島村で、黒島の隣の竹島―日本海の竹島とは、別の島―です。
 二〇一三年には、同じ三島村の竹島で、タケシマヤツシロランが発見されました。この種も、ラン科オニノヤガラ属に属します。二〇一二年には、台湾で、ツボミヤツシロランという種が発見されました。やはり、ラン科オニノヤガラ属の種です。
 今、名を挙げた三種には、クロシマヤツシロランと、同じ特徴があります。葉緑体を持たず、光合成をせず、花のつぼみだけ付いて、咲かない、という特徴です。
 花が咲かないのに、どうやって繁殖するのでしょうか? 咲かせないなら、なぜ、つぼみだけは付けるのでしょうか? これらについては、研究途上です。
 次々に新種が発見されたのは、鹿児島県の離島では、まだ、生物の調査が行き届いていないからでしょう。今後も、どんな生物が発見されるか、楽しみですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、

残念ながら、ヤツシロランの仲間(オニノヤガラ属)は載っていません。かわりに、日本に分布するラン科植物が、十種ほどが掲載されています。


 過去の記事でも、葉緑体を持たない植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
寄生植物は、分類が難しい?(2013/7/12)
ラフレシアは、世界最大の花か?(2012/1/20)
緑のない植物がある?(2011/5/13)
ススキの下で、何を思う? ナンバンギセル(2010/9/10)
ベトナムで、新種の発見ラッシュ(2007/9/27)※この時も、ラン科オニノヤガラ属の新種が発見されています。




2016年11月11日

最多殺人生物とは?

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 二十一世紀の現在、世界で、最も多数のヒトを殺している生物とは、何でしょうか? サメ? スズメバチ? いえ、どちらでもありません。それは、カ(蚊)です。
 カがヒトの血を吸うことは、知られていますね。カの吸血行為によって、直接、ヒトが死ぬことはありません。しかし、カは、血を吸うことにより、多くの伝染病を媒介します。マラリア、黄熱病、日本脳炎、フィラリア、デング熱、ジカ熱などです。
 これらの伝染病により、世界で、おおぜいのヒトが死んでいます。その数は、年間七十万人以上にも達します。間接的に、これだけのヒトを、カが殺しているわけです。
 カは、どうやって、吸血するヒトを見つけるのでしょうか? いくつもの方法を使って、カは、ヒトを探します。その一つは、ヒトの汗を探知する方法です。
 ヒトの汗が蒸発すると、その中の物質が、空気中に放たれます。その物質の一つを、カは、嗅覚で探知します。したがって、汗をかくと、カに刺されやすくなります。
 このカの嗅覚を模倣したロボットが、最近、作られました。カの触角には、ヒトの汗の匂いを感知する嗅覚受容体があります。この受容体を、人工的に合成しました。それを、センサーに組み込んで、ヒトの汗の匂いに反応するロボットを作りました。
 「そんなロボット、何の役に立つの?」と思う方も、いらっしゃるでしょう。災害現場で、匂いを手がかりに、行方不明のヒトを探すロボットとして使えるのではないかと、期待されています。このロボットは、まだ実験段階で、実用化はされていません。
 先述のとおり、人類にとって、カは、恐ろしい生物です。でも、このように、カがヒトの役に立つこともあります。伝染病の害を減らすために、カを減らすことには、意味があるでしょう。とはいえ、完全にカを滅ぼすことには、問題があります。
 カは、雌だけが吸血します。雄のカは、花の蜜や果物の汁を吸って、生きています。花の蜜を吸う時に、カも、チョウやハチと同じように、花粉を媒介します。
 授粉を、もっぱらカに頼っている植物も、あるはずです。カが滅びたら、そのような植物も、滅びてしまいます。生態系を保つには、カも必要です。
図鑑↓↓↓↓↓には、
残念ながら、カ(蚊)の仲間は載っていません、かわりに、日本の昆虫が、四百種ほどが掲載されています。

 過去の記事でも、カ(蚊)の仲間を取り上げています。また、カと同じように、吸血する昆虫を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
世界史を変えた昆虫とは?(2014/9/15)
死んで生きる昆虫? ユスリカの仲間たち(2014/4/7)
シラミは、すべての哺乳類に付くか?(2014/3/24)
冬にも、カ(蚊)がいる?(2013/2/4)





2016年11月 7日

お肌に効く? アカテツ科の植物たち

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 アカテツ科という植物の分類グループがあります。普通の日本人は、あまり聞いたことのないグループでしょう。アカテツ科で、日本に自生する植物は、少ないからです。
 アカテツ科の植物は、熱帯と亜熱帯とに分布します。日本では、南西諸島と小笠原諸島とにしか、自生する種がありません。アカテツと、ムニンノキと、二種だけです。
 熱帯や亜熱帯では、アカテツ科の種が、果樹などとして利用されています。けれども、日本では、エキゾチックな果物として、わずかに輸入されるくらいでした。
 ところが、近年、思わぬ形で、アカテツ科の植物が、日本で利用されています。化粧品の中に、アカテツ科の植物油が使われているものがあります。
 その一種が、アルガンノキです。アルガン油(オイル)というものを、聞いたことがないでしょうか? ちょっと高級な化粧品に含まれます。アルガン油は、アルガンノキの種子から取れる油です。アルガンノキは、アカテツ科アルガンノキ属に属します。
 アルガンノキは、ほぼ、北部アフリカのモロッコ南西部にしか、自生しません。ですから、アルガン油の生産は、事実上、モロッコに限られています。モロッコでは、昔から、アルガン油が、食用、薬用、化粧用に利用されてきました。
 もう一種、シアーバターノキもあります。シアーバターノキの種子からは、シアバターと呼ばれる、植物性脂肪が取れます。シアバターも、高級な化粧品に使われています。
 シアーバターノキは、アカテツ科シアーバターノキ属に属します。やはり、アフリカに自生します。ただし、モロッコよりはずっと南の、ブルキナファソ、ナイジェリア、ガーナといった国々に産します。西アフリカから中央アフリカの国々です。
 シアーバターノキが自生する国々では、昔から、シアバターが利用されてきました。食用や薬用や燃料用になります。アルガン油と同じように、シアバターも、オレイン酸などを豊富に含み、肌に良いことが知られています。
 アルガン油もシアバターも、もとは、アフリカでしか知られないものでした。ヨーロッパに知られたことをきっかけに、今では、世界各国の女性の肌をうるおしています。

図鑑↓↓↓↓↓には、
残念ながら、アカテツ科の植物は載っていません、かわりに、日本の植物が、八百種ほどが掲載されています。

 過去の記事でも、化粧品に使われることがある植物を取り上げています。また、油を取って利用する植物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ベルガモットは、ミカン科か? シソ科か?(2016/7/11)
ローズヒップは、バラの果実?(2015/2/6)
古代文明に貢献? ゴマ(胡麻)(2013/6/14)
日本にも、タイムが生える?(2011/6/10)
日本のろうそくを灯すのは、ハゼノキ?(2009/10/7)




2016年10月31日

ワサビノキは、スーパー健康食品か?

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 日本では、時々、特定の健康食品のブームが起きますね。健康を目指すのは良いことですが、ブームに飛びつくのは、考えものです。ブームが正しいとは、限らないからです。
 今回は、ひょっとしたら、今後、ブームになるかも知れない健康食品の植物を紹介しましょう。ワサビノキです。種名が似ていても、ワサビとは、別種です。
 ワサビノキは、ワサビノキ科ワサビノキ属に属する一種です。世界中の熱帯と亜熱帯地域とで、広く栽培されています。古くから栽培されているために、原産地がどこなのかは、わからなくなってしまいました。インド原産の可能性が高いといわれます。
 広く栽培されているのは、ワサビノキが、食用になるためです。葉、未成熟の種子の鞘【さや】、花、種子、根など、さまざまな部位が食用になります。どの部位も、豊富な栄養を含みます。ビタミンC、ビタミンB、マグネシウム、マンガン、食物繊維などです。
 その栄養豊富さが、熱帯や亜熱帯以外の地域でも、注目されるようになってきました。古くから食用にされていますから、食べられることは、間違いありません。今後、健康食品やサプリメントとして、日本でも、ワサビノキが、大いに利用されるかも知れません。
 ただし、現時点では、ワサビノキの効用には、ほぼ、まったく科学的根拠がありません。世界各地で、伝統的に言い伝えられている効用はあるものの、それらは、言い伝えに過ぎません。科学的に確かめられた効用は、一つもありません。
 以前にも、このブログで書きましたとおり、「これさえ食べていれば、健康になれる」という食品は、存在しません。ヒトは、多様な食品を、バランス良く食べることが、必要な生物です。特定のものばかり食べるのは、健康を害することにつながります。
 もう一つ、問題があるのは、健康食品やサプリメントの呼び名が、統一されていないことです。正式な日本語名(標準和名)ワサビノキを使っているとは、限りません。
 ワサビノキは、モリンガ、西洋わさびの木などとも呼ばれます。モリンガとは、ワサビノキのラテン語の学名Moringa oleiferaに由来します。本来は、ワサビノキ属全体を指す言葉です。同じ属の他種と紛らわしいので、本当は、使って欲しくない呼び名ですね。

 過去の記事でも、健康食品やサプリメントに使われる植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アサイーの正体とは?(2016/2/8)
キクイモは、菊の花咲くイモ?(2015/2/13)
ローズヒップは、バラの果実?(2015/2/6)
クコ(枸杞)は、不老長寿の薬になる?(2013/2/15)
「ウコン」に御注意(2011/6/17)




2016年10月28日

サメの繁殖方法いろいろ、その2

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 先週、このブログで、サメの繁殖方法について、紹介しましたね。今回は、その続きです。前回は、サメの繁殖方法に、卵生と卵胎生があると書きましたね。
 サメには、他の繁殖方法もあります。胎生です。まるで哺乳類のように、体内の「子宮」で、子供を育てるサメがいます。「魚なのに、子宮があって、胎児を育てるの?」と、驚く方が多いでしょう。胎生は、哺乳類だけが発明したやり方ではありません。
 サメの「子宮」は、卵管が大きくふくれて、発達したものです。例えば、ホホジロザメなどは、そういう「子宮」を持ちます。ホホジロザメは、胎生のサメの一種です。
 二〇一六年になって、ホホジロザメの繁殖方法で、驚くべきことがわかりました。ホホジロザメの母親は、子宮内に、「乳」を分泌します。子供は、その「乳」を飲んで育ちます。
 サメの仲間で、「子宮ミルク」を分泌することが確認されたのは、ホホジロザメが初めてです。これまでは、サメと同じ軟骨魚類のエイの一部―オニイトマキエイ(マンタ)など―で、子宮ミルクが知られていただけでした。
 胎生のサメには、哺乳類に似た胎盤を持つ種もいます。例えば、シュモクザメの仲間などが、そうです。メジロザメ目【もく】シュモクザメ科シュモクザメ属の種ですね。
 シュモクザメ属の種が妊娠すると、最初のうち、子供は、母体の子宮内で、卵の卵黄を栄養にして育ちます。卵黄がなくなると、卵黄を包んでいた卵黄嚢【らんおうのう】が、胎盤に変わります。母体から、胎盤を通じて、子供は栄養をもらいます。哺乳類のように、「へその緒」で、子供とお母さんとがつながっています。
 ここまで、サメの繁殖方法を、卵生と卵胎生と胎生とに分けて、説明してきました。けれども、じつは、卵生と卵胎生と胎生とは、はっきり分けられるものではありません。
 とりわけ、卵胎生と胎生との区別は、難しいです。サメの場合、繁殖方法が変化に富んでいて、卵胎生とも胎生ともいえる形式のものが、無数に存在します。
 卵胎生か胎生か、明確にすることに、あまり意味はありません。言葉の定義より、豊かなサメの繁殖方法に触れて、それを明らかにするほうが、実りが多いでしょう。
図鑑↓↓↓↓↓には、日本近海に分布するオグロメジロザメ、ネムリブカ、カスザメが掲載されています。
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 過去の記事でも、サメの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
サメの繁殖方法いろいろ(2016/10/21)
水着、飛行機、ラケット、サメの科学力(2016/6/3)
サメには、歯医者が要らない?(2014/9/1)
ネムリブカは、眠るサメ?(2008/8/11)
ホオジロザメ(ホホジロザメ)は本当にヒトを食うか?(2005/11/25)





2016年10月24日

フユノハナワラビは、冬に花咲く?

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 生き物の名前には、いかにもふさわしいものもあれば、逆に、混乱を招きそうなものもあります。今回は、混乱を招きそうなものを紹介しましょう。
 フユノハナワラビという植物があります。種名からすれば、「冬に花が咲くワラビの仲間かな?」と思いますよね。でも、植物に詳しい方なら、すぐにおかしいと思うでしょう。ワラビは、シダ植物だからです。シダ植物には、花が咲きません。
 フユノハナワラビには、花が咲くのでしょうか? 咲きません。シダ植物の一種だからです。シダ植物門【しょくぶつもん】マツバラン綱【こう】ハナヤスリ目【もく】ハナヤスリ科ハナワラビ属に属します。分類には、異説もあります。
 花が咲かないのなら、なぜ、「ハナワラビ」などという種名が付いたのでしょうか? フユノハナワラビには、花のように見える器官が付くからです。それは、胞子葉【ほうしよう】と呼ばれるものです。胞子を付ける葉です。
 シダ植物は、花が咲かず、種子もできません。種子ではなくて、胞子で殖えます。胞子は、胞子葉という特別な葉に付くシダと、普通の葉(に見える胞子葉)に付くシダとがあります。フユノハナワラビを含むハナワラビ属のシダは、専用の胞子葉に付きます。
 この胞子葉が、花のように見えるとされました。しかし、実物を見ると、花のように美しいわけではありません。茎に、つぶつぶしたものが付くだけです。このつぶつぶが、胞子の入っている胞子嚢【ほうしのう】です。
 フユノハナワラビの胞子葉は、秋に伸びてきます。胞子をまき散らすと、胞子葉は、すぐに枯れてしまいます。種名に反して、冬に胞子葉があることは、少ないです。なのに、なぜ、フユノハナワラビという種名になったのかは、不明です。
 先述のとおり、フユノハナワラビは、分類に、いくつもの説があります。ハナワラビ属自体の分類が、研究途上で、流動的です。研究が進むうちに、ハナワラビ属は、マツバランという植物と、近縁だとわかってきました。マツバランは、ヒカゲノカズラ植物門だと思われてきましたが、最近では、ハナワラビ属と同じ、シダ植物門とされます。
図鑑↓↓↓↓↓には、フユノハナワラビが掲載されています。
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 過去の記事でも、シダ植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
山師の味方のシダがある?(2015/2/20)
シダにも、花が咲く?(2015/1/30)
マツバランは、陸上植物の祖先か?(2013/3/1)
ヤシ? いいえシダの木です。マルハチ(2007/11/2)
お正月の飾りになぜウラジロ?(2005/12/16)





2016年10月21日

サメの繁殖方法いろいろ

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 今回は、サメの繁殖方法について、紹介しましょう。
 サメの繁殖方法は、バリエーションに富んでいます。大きく分けると、普通の魚のように卵を産むものと、子供を産むものとがいます。子供を産むものの中でも、詳しく見てみると、体内での子供の養育方法に、違いがあります。
 卵を産むサメについては、他の魚と同じです。親は、海底の海藻などに、卵を産みつけます。あとは、面倒を見ません。ネコザメ目【もく】ネコザメ科のネコザメや、メジロザメ目【もく】トラザメ科のトラザメなどが、このような卵生のサメです。
 卵を卵のまま産まず、体の中で孵化【ふか】させて、それから産むサメがいます。体内で、卵の栄養をもとに、子が育ちます。卵胎生と呼ばれる繁殖方法ですね。
 母親の体内で、「自分以外の卵の栄養」を使って、子が育つ方法もあります。この場合、母親は、子にならない栄養専門の卵を、体内に持ちます。自分の卵の栄養を使って、ある程度まで育った子は、そのような栄養専門の卵を食べて、さらに育ちます。
 ネズミザメ目【もく】ネズミザメ科のネズミザメや、ネズミザメ目オナガザメ科のマオナガなどが、このような卵食【らんしょく】による繁殖を行ないます。
 ネズミザメ目オオワニザメ科のシロワニという種は、卵食型の繁殖をします。その中でも、特殊なやり方です。卵ばかりでなく、同じ母親の体内で育つ子供同士で、共食いをします(!) 最終的には、二匹しか、生き残りません。
 シロワニの繁殖方法は、ヒトには、恐ろしく思えますね。しかし、この方法には、利点があります。他の子を食べて育つおかげで、産まれるまでに、大きく育つことができるのです。シロワニの子は、生まれた時に、すでに、全長が1m以上もあります。
 これだけ大きくなっていれば、子ザメといえども、敵に襲われる危険性は、少ないでしょう。卵食や共食いは、凶暴さを示すものではなく、生き残りのためです。
 こんな繁殖方法のシロワニは、さぞかし、凶暴なサメだと思うでしょう。意外なことに、シロワニは、おとなしいサメです。ヒトが襲われることは、まず、ありません。
図鑑↓↓↓↓↓には、日本近海に分布するオグロメジロザメ、ネムリブカ、カスザメが掲載されています。
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 過去の記事でも、サメの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
水着、飛行機、ラケット、サメの科学力(2016/6/3)
サメには、歯医者が要らない?(2014/9/1)
サメやエイには、鰾【うきぶくろ】がない?(2014/5/12)
魚類というグループは、ない?(2014/3/31)
ノコギリザメと、ノコギリエイとは、違う? 同じ?(2012/7/16)




2016年10月17日

ミズニラは、ニラの仲間か?

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 今回は、水場に生える植物を紹介しましょう。ミズニラ(水韮)です。湖沼や、水田などに生える草の一種です。種名のとおり、外見は、ニラ(韮)にそっくりです。
 似ていても、ミズニラは、ニラの近縁種ではありません。むしろ、たいへん遠縁です。
 ミズニラの分類を詳しく書くと、ヒカゲノカズラ植物門【しょくぶつもん】ミズニラ綱【こう】ミズニラ目【もく】ミズニラ科ミズニラ属の一種です。対して、ニラは、被子植物門【ひししょくぶつもん】単子葉植物綱【たんしようしょくぶつこう】キジカクシ目【もく】ヒガンバナ科ネギ属の一種です(分類には、異説があります)。
 ミズニラと、ニラとは、門という大きなレベルで、違うのですね。一番わかりやすい違いは、ミズニラには、花が咲かないことでしょう。ニラには、花が咲きます。
 ミズニラが属するヒカゲノカズラ植物門の植物は、地球ができてから、最初に陸上に進出した植物だといわれます。その頃の植物には、まだ、花は咲きませんでした。ミズニラは、花を発明する前の植物の姿を、受け継いでいます。
 現代のミズニラは、水辺の目立たない植物です。さほど大きくありませんし、美しい花が咲くわけでもありません。けれども、はるか昔には、ミズニラの近縁種に、巨木になる植物がありました。恐竜が現われるより、ずっと前のことです。
 古生物に詳しい方なら、リンボク(鱗木)や、フウインボク(封印木)という名を、聞いたことがあるでしょう。リンボクとフウインボクとは、どちらも、石炭紀という時代、三億年ほども昔の植物です。どちらも、何十mにも達する巨木になりました。
 石炭紀という時代の名前は、リンボクやフウインボクにちなんで名づけられています。この時代、リンボクやフウインボクが、非常に栄えました。大量のリンボクやフウインボクが、死んで地中に埋もれたあと、石炭に変わりました。このために、石炭紀の地層からは、石炭が大量に見つかります。だから、石炭紀です。
 リンボクやフウインボクの栄光は、はるかな過去です。今や、その手がかりになるのは、小さなミズニラの仲間くらいです。目立たなくても、貴重な植物です。
図鑑↓↓↓↓↓には、ミズニラが掲載されています。
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 過去の記事でも、ヒカゲノカズラ植物門の植物を取り上げています。また、ヒカゲノカズラ植物門と関係が深いシダ植物門の植物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
山師の味方のシダがある?(2015/2/20)
シダにも、花が咲く?(2015/1/30)
マツバランは、陸上植物の祖先か?(2013/3/1)
ヒカゲノカズラは、日陰に生える?(2009/12/7)
ヤシ? いいえシダの木です。マルハチ(2007/11/2)




2016年10月14日

ウグイス科が、大分裂?

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 二十一世紀の現代は、科学の進歩が、とても速いです。ちょっと前まで科学的真実とされていたことが、間違っていたとされることが、珍しくありません。今回は、そのような例を紹介しましょう。鳥類の、ウグイス科の分類についてです。
 従来、ウグイス科には、とてもたくさんの種が含まれました。ウグイスはもちろんのこと、ヤブサメ、メボソムシクイ、セッカ、マキノセンニュウ、オオヨシキリなどの種がいました。この仲間は、通称、ムシクイ類と呼ばれることがあります。
 同じ科に分類されたのには、それなりの理由があります。ムシクイ類の名のとおり、昆虫を主に食べる小鳥であることなどが、分類の根拠とされました。
 しかし、研究が進んだため、これらの種を、すべて同じ科に含めるのは、ふさわしくないとされました。二〇一六年現在では、旧ウグイス科から、大量の種が分離されました。
 旧ウグイス科を分割して、ムシクイ科、セッカ科、センニュウ科、ヨシキリ科といった科が、新たに作られました。これらのうち、ヨシキリ科については、以前、このブログで取り上げましたね(ヨシキリは、ヨシキリ科か?(2012/8/20))。
 旧ウグイス科の中で、おおむね、「○○ムシクイ」という種名の種は、ムシクイ科に分類されました。メボソムシクイ、センダイムシクイなどの種です。
 セッカ科に分類されたのは、日本に分布する種では、セッカ一種だけです。セッカ科の鳥たちは、アフリカに分布する種が多いです。セッカのように、東アジアに分布する種は、少ないです。他の東アジアの種には、タイワンセッカなどがいます。
 ややこしいことに、オオセッカという種は、セッカ科ではなく、センニュウ科に属します。他にも、「○○セッカ」という種名で、センニュウ科に属する種は、多いです。
 けれども、日本に分布する種では、「○○センニュウ」という種名のものが、だいたい、センニュウ科に属します。マキノセンニュウ、エゾセンニュウなどの種です。
 ムシクイ科、セッカ科、センニュウ科、ヨシキリ科といった科は、新しくなったウグイス科と一緒に、ウグイス上科というグループにまとめられています。
図鑑↓↓↓↓↓には、セッカ、オオセッカ、センダイムシクイ、メボソムシクイなどの、旧ウグイス科の鳥が掲載されています。
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 過去の記事でも、旧ウグイス科の鳥を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
聴覚テストになる? ヤブサメの鳴き声(2015/4/27)
ヨシキリは、ヨシキリ科か?(2012/8/20)
経読み鳥【きょうよみどり】とは、どんな鳥?(2011/5/9)
絶滅種に、再発見の可能性はあるか?(2010/3/22)
ダイトウウグイス復活!(2008/5/29)




2016年10月10日

紅葉と同時に、咲く花がある?

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 秋は、紅葉や黄葉の季節ですね。もちろん、秋に咲く花もあります。でも、秋に咲く花は、たいがい、葉が緑色のうちに咲きますね。サザンカのように、そもそも常緑樹で、いっせいに紅葉や黄葉にはならない種も、多いです。
 ところが、中には、紅葉や黄葉とほぼ同時期に、花が咲く植物もあります。例えば、マルバノキが、そうです。日本の中部地方以南から、四国・中国地方に分布する木です。
 マルバノキは、葉が円いことから、この種名が付きました。円くてかわいらしい葉が、秋には、美しく紅葉します。その美しさが好まれて、観賞用に栽培もされます。
 葉が紅葉して落ちる頃、マルバノキは、花を咲かせます。花も、赤いです。けれども、あまり目立ちません。ひょろひょろした、細い花弁が付いているだけだからです。
 植物に詳しい方なら、マルバノキの花を見て、「別の植物に似ている?」と思われるかも知れませんね。マルバノキの花は、マンサクの花に似ています。それも、道理です。マルバノキは、マンサク科マルバノキ属の一種です。マンサクと近縁な種です。
 マンサク科の種は、マンサクをはじめ、トサミズキ、ヒュウガミズキなど、早春に花を咲かせるものが多いです。秋に花を咲かせるマルバノキは、異例です。
 なぜ、マルバノキばかりがそうなったのかは、わかっていません。マルバノキの花が、赤いことに、鍵があるかも知れません。赤い花と紅葉とをほぼ同時期にすることで、より目立つ効果を狙ったとも考えられます。
 マルバノキは、一般的には、知名度がありません。しかし、茶道をやる方なら、御存知ではないでしょうか。マルバノキは、「利休七選花」の一つだからです。「利休七選花」とは、茶道の祖である千利休が好んだ、七種の花といわれます。
 利休が好んだのは、おそらく、マルバノキの花ではなくて、紅葉でしょう。茶道の花としても、マルバノキの花は、あまりに地味過ぎるからです。
 マルバノキは、日本固有種です。世界中で、日本にしか、自生しません。国内でも、分布範囲が狭く、野生の個体数が少ないです。野生の生息地も、守りたいですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、マルバノキが掲載されています。
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 過去の記事でも、紅葉や黄葉が美しい植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ナナカマドは、魔除けの木?(2015/12/7)
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2016年10月 7日

クリオネに、新種発見

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 二〇一六年の九月に、新種発見のニュースがありました。日本の北海道の近海、オホーツク海で、クリオネの新種が発見されました。
 クリオネは、最近、有名になった、海の無脊椎動物ですね。クリオネの分類を詳しく書けば、軟体動物門【なんたいどうぶつもん】腹足綱【ふくそくこう】裸殻翼足目【らかくよくそくもく】ハダカカメガイ科ハダカカメガイ属です。
 クリオネClioneとは、ハダカカメガイ属を指すラテン語の学名です。一種だけではなく、複数の種を含みます。腹足綱【ふくそくこう】というのが、巻貝の仲間を指します。
 つまり、クリオネ(ハダカカメガイ属)は、巻貝なのですね。巻貝なのに、貝殻をなくしてしまって、翼足【よくそく】という器官で泳ぐようになりました。
 これまで、オホーツク海に棲むハダカカメガイ属(クリオネ)は、ラテン語の学名Clione limacine【クリオネ・リマキナ】ただ一種だと思われていました。ところが、そうではないとわかりました。オホーツク海には、二種のクリオネが棲みます。二種とも、新種です。
 一種は、ラテン語の学名で、Clione okhotensis【クリオネ・オホーテンシス】と名付けられました。標準和名(正式な日本語名)は、ダルマハダカカメガイです。
 もう一種は、これまで、Clione limacine【クリオネ・リマキナ】だと思われていたのが、分離されました。Clione limacine【クリオネ・リマキナ】は、北大西洋にだけ棲むとわかったからです。オホーツク海など、北太平洋に棲むのは、別の種とされました。それが、Clione elegantissima【クリオネ・エレガンティッシーマ】です。
 これまでは、Clione limacine【クリオネ・リマキナ】に対して、「ハダカカメガイ」という標準和名が付いていました。しかし、それは、オホーツク海のクリオネに付けられた名でしたので、和名と、ラテン語の学名とを入れ替えることになりました。
 現在は、「ハダカカメガイ」のラテン語の学名は、Clione elegantissima【クリオネ・エレガンティッシーマ】です。北大西洋のClione limacine【クリオネ・リマキナ】には、新たに、「ダイオウハダカカメガイ」という標準和名が付けられました。
図鑑↓↓↓↓↓には、クリオネ(ハダカカメガイ属の一種)が掲載されています。
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 過去の記事でも、クリオネ(ハダカカメガイ属)を取り上げています。また、ハダカカメガイと同じように、殻を持たない貝の仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ゾウクラゲは、クラゲじゃない?(2013/1/7)
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ウミウシは何の仲間?(2008/12/29)
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ハダカカメガイ(クリオネ)は流氷の天使か?(2006/1/9)





2016年10月 3日

オナモミとメナモミとは、違う? 同じ?

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 植物の中には、通称、「ひっつき虫」と呼ばれるものがあります。果実に棘や毛などがあって、動物の体に付着しやすくなっているものです。ヒトの衣服にも、付着します。だから、通称「ひっつき虫」です。そう呼ばれるのは、一種だけではありません。
 「ひっつき虫」には、たくさんの種が含まれます。今回は、その中から、有名な二種を紹介しましょう。オナモミと、メナモミです。
 オナモミのほうは、キク科オナモミ属に属する一種です。オナモミの果実は、ラグビーボールのような長円形で、棘だらけです。この棘が引っかかるために、動物の毛や、ヒトの衣服にくっつきます。子供の頃は、この果実を、友達と投げ合って遊びました(笑)
 メナモミのほうは、キク科メナモミ属に属する一種です。メナモミの果実の周辺には、腺毛という毛が、たくさん生えています。メナモミの腺毛は、その先から、粘液を分泌します。これが粘り着くことによって、ヒトやその他の動物にくっつきます。
 オナモミと、メナモミとは、種名が似ていますね。「ひっつき虫」であることも、同じです。けれども、まったくの別種同士です。付着する仕組みも、前述のとおり、違います。キク科であることは同じなので、近縁な種同士であるとはいえます。
 種名が似るのは、偶然ではないといわれます。同じ「ひっつき虫」であるために、昔の人は、この二種を、近い仲間と見ていました。
 オナモミのほうが、メナモミよりも力強い感じなので、男性にたとえて「雄【お】なもみ」とされ、もう片方が「雌【め】なもみ」になったようです。では、「なもみ」とは、何を指すのでしょうか? これには、諸説があって、はっきりしません。
 オナモミと、メナモミとは、どちらも、子供の遊び道具にされました。このために、日本全国に、多様な方言名があります。オナモミは、「うまののみ」、「どろぼう」などと呼ばれます。メナモミは、「がんこじ」、「ばか」などと呼ばれます。
 ややこしいことに、地方によっては、オナモミを「めなもみ」と呼びます。反対に、メナモミを「おなもみ」と呼ぶ地方もあります。種名には、確認が必要ですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、メナモミが掲載されています。
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 過去の記事でも、「ひっつき虫」とされる植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
も御覧下さい。
雑草にも、花が咲きます、ヤエムグラ(2015/5/8)
イノコズチは、ひっつき虫?(2012/10/19)
盗人みたいにこっそり付く? ヌスビトハギ(2011/10/7)





2016年9月30日

ショッキングピンクのトンボがいる?

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 赤とんぼは、日本の秋の風物詩ですね。赤とんぼと呼ばれるトンボには、いくつもの種が含まれます。種によって、赤みの色合いが違います。雄と雌とでも、体色が違います。一般的に、赤くなるのは、成熟した雄のトンボだけです。
 日本で最も平凡な赤とんぼは、ナツアカネとアキアカネです。南西諸島や小笠原諸島を除く、ほぼ全国にいます。この二種の成熟した雄は、赤とんぼらしい赤とんぼです。
 近年、日本の各地で、「異様な色の赤とんぼを見た」という報告があります。赤というより、ショッキングピンクだというのですね。日本のトンボで、そんな色のものがいるのでしょうか? います。ベニトンボという種です。トンボ科ベニトンボ属に属します。
 いわゆる普通の赤とんぼ、ナツアカネやアキアカネは、トンボ科アカネ属に属します。ベニトンボは、普通の赤とんぼとは、属のレベルで、分類が違います。
 ベニトンボは、もとは、台湾や中国大陸の南部や東南アジアに分布するトンボです。二十世紀の半ばに、日本でも発見されました。その頃は、鹿児島県の南部だけに分布する、ごく珍しい種でした。それが、二十世紀の後半から、じわじわと分布を広げました。
 一九八〇年代以降には、南西諸島や、鹿児島県以北の九州でも、見られるようになりました。二〇一六年現在では、高知県や徳島県などの四国、和歌山県や三重県などの本州でも、記録されるようになっています。近いうちに、本州でも定着するでしょう。
 本来は熱帯の昆虫なのに、なぜ、ベニトンボは、温帯の日本内地にも、定着しつつあるのでしょうか? 地球温暖化のためです。温暖化の原因はともかく、温暖化が進んでいること自体は、もはや、疑いようがありません。
 最初に、ベニトンボが日本に来たきっかけは、わかっていません。おそらく、気流に乗って、台湾あたりから、飛んできたのでしょう。そうやって何匹もやってきても、少し前までの日本であれば、寒過ぎて、ベニトンボは生き延びられなかったはずです。
 温暖化のために、寒さが苦手なベニトンボも、日本内地で暮らせるようになりました。温暖化が進めば、ベニトンボの分布域も、北上するだろうと考えられています。
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、ベニトンボは載っていません。かわりに、普通に見られる赤とんぼ、ナツアカネやアキアカネが掲載されています。
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 過去の記事でも、トンボの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
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トンボの翅【はね】の秘密(2016/5/27)
トンボの産卵方法は?(2015/7/17)
七年生きるトンボがいる?(2012/11/12)
とんぼの眼鏡は水色めがね? シオカラトンボ(2007/5/4)
避暑に行く赤トンボ(2005/9/1)




2016年9月26日

ルイボスティーは、チャの一種か?

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 近年は、紅茶や緑茶以外の「お茶」が、普通に売られるようになりましたね。ウーロン茶やプーアル茶をはじめ、マテ茶やルイボスティーなどがあります。
 これらの「お茶」には、植物学的に「チャ」に含まれるものと、そうでないものとがあります。紅茶や緑茶は、「チャ」という植物の一種から作られます。ウーロン茶やプーアル茶も、そうです。けれども、マテ茶やルイボスティーは、「チャ」からは作られません。
 チャは、ツバキ科ツバキ属に属する樹木の一種です。原産地は、どこなのか、はっきりしません。アジアの温暖地のどこかだと推定されています。もともと、日本にはありませんでした。平安時代くらいに、中国から入ったと考えられています。
 チャに含まれない「お茶」とは、どんな植物から作られるのでしょうか? ルイボスティーを、例に挙げてみましょう。ルイボスティーは、ルイボスという植物から作られます。
 ルイボスという名は、アフリカーンス語(南アフリカ共和国の公用語の一つ)のrooibosに由来します。日本に自生しないため、日本語名は、ありません。
 ルイボスは、マメ科アスパラトゥス属に属する一種です。花を見ると、エンドウ(豌豆)などに似た、マメ科らしい姿をしています。チャとは、遠縁です。
 ルイボスは、南アフリカにしか、自生しない植物です。南アフリカでも、ごく限られた地域にしか、ありません。西ケープ州のセデルバーグ山脈です。
 そこは、とても極端な気候です。冬には、気温が氷点下まで下がります。なのに、夏は、48℃まで気温が上がります。降水量が少なく、乾燥した砂だらけの土地です。
 こんな場所で育つ植物は、ほとんどありません。ルイボスばかりが、茂ります。ルイボスは、他の場所では、育ちません。このような極端な場所に適応してしまったためです。他の場所での栽培の試みは、ことごとく失敗しています。
 ルイボスティーは、世界的に、消費が伸びています。にもかかわらず、生息地が限られるために、生産量にも、限りがあります。地球温暖化が進めば、ルイボスを増やすどころか、絶滅しかねないと、心配されています。
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、ルイボスは載っていません。かわりに、普通のお茶にされるチャなど掲載されています。
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 過去の記事でも、「お茶」に利用される植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
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ベルガモットは、ミカン科か? シソ科か?(2016/7/11)
ローズヒップは、バラの果実?(2015/2/6)
食べられるソバ、食べられないソバ(2014/1/24)
日本にも、タイムが生える?(2011/6/10)
花祭りの甘茶は、お茶の木からできる?(2007/4/5)




2016年9月23日

渡りルートが解明された? ノビタキ

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 日本には、たくさんの種の渡り鳥がやってきます。ツバメやマガンなどが、有名な渡り鳥ですね。有名であっても、渡りのルートが解明されている種は、少ないです。
 近年では、鳥に直接、追跡装置を着けて、追跡調査が行なわれています。けれども、これには、欠点があります。マガンのように大型の鳥ならいいのですが、ツバメのように小型の鳥では、追跡装置が大き過ぎて、着けられません。
 ところが、科学技術の進歩は、目覚ましいのですね。ここ数年のうちにも、追跡装置の小型化が進みました。小型の鳥にも、装置を着けられるようになってきました。
 今年、二〇一六年になって、そのような装置による成果が出ました。ノビタキという小鳥で、渡りのルートが解明されました。ノビタキは、スズメよりも小さいほどの鳥です。日本には、夏鳥としてやってきます。北海道と、本州の北部で繁殖します。
 今回、調査されたのは、北海道で繁殖するノビタキです。追跡した結果、驚くべきことがわかりました。北海道で繁殖したノビタキは、本州や四国や九州を、まったく経由しません。直接、大陸へ渡ってしまい、そこから南を目指します。
 これまで、北海道や本州北部で繁殖したノビタキは、そのまま本州を南下してから、海を渡って、大陸へ向かうと考えられていました。思いがけぬ結果が出たわけです。
 なぜ、ノビタキは、このようなルートで渡るのでしょうか? 理由の一つとして、考えられるのは、ノビタキが、草原に棲む鳥であるためです。日本には、ノビタキが好む広い草原がある場所は、限られています。大陸のほうが、広い草原が多いです。
 ノビタキは、自分が棲みやすい草原をたどるルートで、渡りをしているのかも知れません。この理由は、まだ、確定したものではありません。
 数が少ないながら、本州北部で繁殖するノビタキもいます。それらのノビタキは、今回は、調査されていません。このために、本州で繁殖したノビタキも、北海道で繁殖したノビタキと同じように、すぐ大陸に渡るルートを通るのかどうか、不明です。
 本州で目撃されるノビタキたちが、どこを飛ぶのか、新たな謎が生まれました。
図鑑↓↓↓↓↓には、ノビタキが掲載されています。
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 過去の記事でも、日本の渡り鳥を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
白鷺だけど、白くない? アマサギ(2014/4/21)
夏鳥と冬鳥と、どちらが多い?(2013/9/30)
最長距離を渡る鳥は?(2012/7/9)
白いガンや黒いガンがいる?(2012/1/30)
長距離飛行のチャンピオン? シギとチドリ(2010/4/5)




2016年9月19日

ラッキョウとヤマラッキョウとは、違う? 同じ?

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 ラッキョウは、誰もが知っている野菜の一種ですね。ラッキョウの甘酢漬けは、カレーライスのベストパートナーですよね。近年では、塩漬けや醤油漬けといった食べ方も、人気が出てきました。食用にするのは、鱗茎【りんけい】という部分です。
 ラッキョウには、ニラやネギと同質の匂いがあります。それも道理で、ラッキョウは、ニラやネギと近縁です。同じヒガンバナ科ネギ属に属します。ネギ属の分類については、以前、このブログで取り上げました(ネギは、ネギ科か?(2015/9/7))。
 ラッキョウの中には、「島らっきょう」と呼ばれるものがあります。これは、沖縄県独自のラッキョウの一品種です。生物学的には、本土のラッキョウと同種です。けれども、普通のラッキョウとは違う、独特の風味があります。それが、品種の特徴です。
 「島らっきょう」だけではなく、ラッキョウには、たくさんの栽培品種があります。古くから栽培されているためです。とはいえ、ラッキョウの原産地は、日本ではありません。中国です。日本では、九世紀ごろから、文献に見られるようになります。
 中国から入った当初、ラッキョウは、現代のような野菜ではなくて、薬用植物だったようです。現代のように野菜になったのは、江戸時代らしいです。野菜としては、意外に新しいのですね。ラッキョウの食用の品種は、江戸時代以降に作られたのでしょう。
 日本の植物の中には、ヤマラッキョウと呼ばれるものがあります。これは、ラッキョウの一品種なのでしょうか? そうではありません。ヤマラッキョウは、ラッキョウとは別の種です。日本の野山に自生する植物です。普通、栽培はされません。
 ヤマラッキョウは、ラッキョウと別種とはいえ、近縁種です。同じヒガンバナ科ネギ属に属します。日本の他、朝鮮半島や中国大陸や台湾など、東アジアに広く分布します。
 ヤマラッキョウの花は、秋に咲きます。ピンクと紫の中間のような色で、愛らしいです。この花が、ラッキョウに似るために、ヤマラッキョウと名付けられました。
 一般的には、ヤマラッキョウは、食べられないといわれます。しかし、食用にするという声も聞こえます。どちらが正しいのかは、確認されていません。
図鑑↓↓↓↓↓には、ヤマラッキョウが掲載されています。
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 過去の記事でも、ネギ属の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
も御覧下さい。
ネギは、ネギ科か?(2015/9/7)
ヤマトタケルも食べた? ノビル(野蒜)(2012/3/23)
平城京の野菜? ニラ(韮)(2010/4/30)





2016年9月16日

ネコもライオンも、ペットにできる?

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 ネコ(猫)は、人間にとても好かれる生き物ですね。ネコのかわいさは、今さら言うまでもありません。ネコをペットにしている人は、世界中に、おおぜいいます。
 ネコは、哺乳類のうち、食肉目【しょくにくもく】ネコ科に属します。同じ食肉目ネコ科には、ライオンも属します。同じネコ科なら、ライオンもペットになるでしょうか?
 これは、大概の方が否定するでしょう。いくら同じネコ科でも、ライオンは、危険すぎますよね。少なくとも、日本の普通の民家で、ライオンが飼えるとは思えません。
 けれども、これと似たことを、普通の人がやってしまう場合があります。特に、爬虫類などの、ペットとして馴染みが薄い生き物を飼う場合には、注意が必要です。
 例えば、ボールニシキヘビというヘビの一種がいます。このヘビは、とても性質がおとなしいです。毒もありません。もてあますほど大きくもなりません。爬虫類の中で、ペットとして飼うなら、お勧めできる種です。ニシキヘビ科ニシキヘビ属の一種です。
 同じニシキヘビ科ニシキヘビ属に、アミメニシキヘビという種がいます。この種は、世界のヘビの中でも、最大級に大きくなる種です。毒はありませんが、その大きさゆえに、危険です。実際に、ヒトが襲われて、食べられた例が、いくつも報告されています。
 ボールニシキヘビと、アミメニシキヘビとは、とても近縁な種同士です。同じ科で、同じ属ですからね。なのに、その生態も性質も、まるで違います。ボールニシキヘビが飼えたからといって、アミメニシキヘビを飼うのは、無謀すぎます。
 ボールニシキヘビとアミメニシキヘビとの関係は、ネコとライオンとの関係に似ています。普通の人は、ネコをペットにしても、ライオンをペットにしようとは思わないでしょう。しかし、馴染みの薄い動物を飼う場合には、そのような判断がききにくいです。
 いわゆる、エキゾチック・ペットと呼ばれる、変わったペットを飼うことを、否定するつもりはありません。ただし、そういったペットを飼う場合には、イヌやネコを飼う場合以上に、正しい知識と、覚悟が求められます。「○○と近縁種だから、○○と同じ飼い方でいいんだよね」などと、安易な考えを持たないよう、強くお願いいたします。
図鑑↓↓↓↓↓には、日本に分布する動植物が、千八百種ほども掲載されています。
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 過去の記事でも、飼育されることがある生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
も御覧下さい。
ハリネズミは、ネズミじゃない?(2014/8/18)
トカゲモドキの美人コンテスト?(2013/11/11)
カブトムシとクワガタムシ、どちらが長生き?(2013/10/7)
害魚が益魚に? うろこの秘密(2010/3/8)
リスも冬眠する?(2009/12/18)






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2016年9月12日

ダリアの原種は、存在しない?

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 ダリアは、日本でも、よく栽培される園芸植物ですね。花には、八重どころか、何十枚もある花弁が重なり合っています。とても華やかな姿ですね。
 最初から、ダリアは、あのような派手な花だったのではありません。二百年以上も品種改良されてきて、人間に喜ばれる姿になりました。野生だった頃のダリアは、普通の一重咲きでした。他種と比べて、際立って目立つ花ではなかったといいます。
 ダリアの原産地は、メキシコです。ヨーロッパ人がアメリカ大陸に来る前から、現地の人々が、ダリアを栽培していました。その頃は、主に食用や薬用だったようです。
 本格的に、観賞用にダリアが栽培されるようになったのは、ヨーロッパに入ってからです。十八世紀の終わりごろに、初めて、ダリアがヨーロッパに導入されました。それから、十年も経たないうちに、ヨーロッパ各地にダリアが広がりました。
 ダリアは、よほど、ヨーロッパの人々の好みに合ったのでしょうか。すぐに、多くの園芸品種が作られるようになりました。品種の数は、どんどん増え続けました。現在では、二万を越える(!)品種があるといわれます。花の色も、形も、さまざまです。
 ダリアのラテン語の学名は、Dahlia pinnataとされることが多いです。キク科ダリア属の一種です。けれども、普通に栽培されるダリアが、すべて、Dahlia pinnataかといえば、怪しいです。なぜなら、品種改良の際に、ダリア属の複数の種が交配されたからです。
 このために、現在、栽培されるダリアは、「ダリア属の品種群」としか、言いようのない状態です。Dahlia pinnataは、ダリアの原種の一種ということです。
 原種のDahlia pinnataは、絶滅してしまったと考えられています。他の原種、例えば、ラテン語の学名Dahlia coccineaなどは、まだ生き残っています。Dahlia coccineaも、メキシコ原産のダリア属の一種です。日本語では、ヒグルマダリアという名があります。
 ヒグルマダリアは、オレンジ色の花が、一重咲きで咲きます。ダリアというより、キバナコスモスに似た花です。野生のDahlia pinnataが滅びてしまった今となっては、野生だった頃のダリアの姿をしのぶ、貴重な原種です。
図鑑↓↓↓↓↓には、ダリアが掲載されています。
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 過去の記事でも、メキシコ原産の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
マリーゴールドの正体は?(2014/10/3)
マツヨイグサとツキミソウとは、違う? 同じ?(2013/5/31)
植物の世界は、「虎の尾」だらけ?(2009/11/16)
サツマイモの故郷は、どこ?(2008/9/22)
ポインセチアはクリスマスの花?(2006/12/14)






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2016年9月 9日

ミツバチの巣は、冷暖房付き?

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 真夏が過ぎても、残暑が続きますね。ヒトは、冷房が使えますが、他の生き物は、そうは行きません。ところが、中には、ヒト以外で、「冷房」を使える生き物がいます。
 ミツバチの例を挙げてみましょう。日本でよく見られるミツバチは、セイヨウミツバチと、ニホンミツバチとの二種です。どちらも、生態は似ています。集団で巣を作って棲みますね。花にやってきて、花粉や蜜を集めることも、同じです。
 あんなに集まって棲むのでは、夏は、さぞかし、巣の中が暑くなるだろうと思いますよね。けれども、ミツバチの巣内の温度は、一年を通して、ほぼ一定です。おおむね、32℃から35℃に保たれています。それは、幼虫たちが育ちやすい温度です。
 ミツバチの巣には、むろん、エアコンは付いていません。なのに、どうやって、温度を一定にしているのでしょうか? じつは、「ハチ力【りょく】エアコン」によります。
 たくさんのミツバチが集まって、活動している巣内は、自然に、外気温より温度が高くなります。冬はそれでいいとして、夏は、どうしているのでしょうか?
 外気温が30℃を越えるような日には、巣内の温度が、上がり過ぎてしまいます。それを防ぐために、集団で翅【はね】を動かして、暑い空気を追い払います。
 さらに温度を下げたい時には、ミツバチたちは、水を集めに行きます。運んできた水は、巣内に広げられます。そこへ翅を動かして、水を気化させます。気化する時に、水が熱を奪ってゆくので、巣内の温度が下がります。
 興味深いことに、セイヨウミツバチとニホンミツバチとでは、暑い空気の追い払い方が違います。セイヨウミツバチは、巣の出入り口から出た所で、出入り口に頭を向けて、はばたきます。これは、巣内の暑い空気を、外へ排出するやり方です。
 ニホンミツバチは、セイヨウミツバチとは逆に、出入り口の外側で、出入り口にお尻を向けて、はばたきます。これにより、涼しい風を、巣内に送り込むやり方です。
 この差は、ニホンミツバチが、天敵のスズメバチに備えているからだといわれます。スズメバチが来たら、すぐに気づけるように、外を向くのだろうということです。

図鑑↓↓↓↓↓には、セイヨウミツバチ,ニホンミツバチが掲載されています。
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 過去の記事でも、ミツバチの仲間を取り上げています。ミツバチ以外のハチも、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
悪役か善役か? 寄生バチ分類(2015/10/2)
幸せな共生の形、ドロバチとダニ(2010/12/20)
米国で、ミツバチ失踪の原因を解明か?(2007/10/2)
地域によって暮らしが違う蜜蜂(ミツバチ)(2006/5/12)
スズメバチは喧嘩に強い、でも寒さに弱い(2005/10/24)






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2016年9月 5日

トルコギキョウは、トルコに生える?

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 そろそろ、秋の気配が見える頃になってきましたね。秋の七草が、もう咲き始めています。秋の七草に入っていても、夏のうちから、咲き始める種もあります。例えば、キキョウがそうです。残暑に涼しさを呼ぶ花として、夏に売られることも多いですね。
 最近では、日本在来種のキキョウに代わって、外来種のトルコギキョウも、観賞用に好まれます。青紫のトルコギキョウの花は、やや、キキョウに似ています。屋外で、自然に任せれば、夏から秋にかけて、開花します。日本にあるのは、すべて、栽培品です。
 トルコギキョウという種名にもかかわらず、トルコ原産ではありません。原産地は、北米のグレートプレーンズと呼ばれる地域です。現地では、英語で、Texas Bluebell、prairie gentianなどと呼ばれます。では、なぜ、「トルコ」の名が付いたのでしょうか?
 これには、諸説があって、はっきりしません。一説によれば、つぼみの様子が、昔のトルコ人が頭にかぶっていたターバンに似ているから、といいます。
 キキョウに印象が似るとはいえ、トルコギキョウは、キキョウとは遠縁です。日本在来種のキキョウは、キキョウ科キキョウ属の一種です。対して、トルコギキョウは、リンドウ科トルコギキョウ属に属します。キキョウより、リンドウに近縁なのですね。
 トルコギキョウには、別名がいくつかあります。リシアンサスや、ユーストマと呼ばれることがあります。これらの別名は、ラテン語の学名に由来します。
 以前、トルコギキョウ属のラテン語の学名は、Lisianthusでした。これを英語ふうに読めば、リシアンサスとなります。トルコギキョウという日本語名は、キキョウと紛らわしいためか、園芸の世界では、リシアンサスの名がよく使われます。
 ところが、トルコギキョウ属のラテン語の学名は、Eustomaに変わりました。研究が進むと、こういうこともあります。Eustomaを英語ふうに読めば、ユーストマです。
 現在、日本では、トルコギキョウの栽培が、とても盛んです。日本発の園芸品種が、たくさん、世界に発信されています。在来種のキキョウとは、また違った魅力があります。キキョウも、トルコギキョウも、それぞれの魅力を生かして、共存すればいいですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、トルコギキョウは載っていません。かわりに、日本に分布するリンドウ科の種が、四種ほど掲載されています。
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 過去の記事でも、リンドウ科の植物を取り上げています。また、トルコギキョウと少し似ているキキョウも、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
竜の胆【きも】が薬になる? リンドウ(2011/12/8)
古代の「朝顔」は、キキョウ(桔梗)?(2008/8/8)

2016年9月 2日

キヌゲネズミ科の日本在来種たち

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 齧歯目【げっしもく】―ネズミ目【もく】ともいいます―は、哺乳類の中で、ネズミ、リス、ムササビなどを含む、大きな分類グループです。
 以前、このブログで、齧歯目【げっしもく】の分類が揺れていることを、取り上げました(野ネズミは、ネズミ科じゃない?(2011/10/3))。この時に、齧歯目ネズミ科ではなく、齧歯目キヌゲネズミ科に含まれる種がいる、という話をしましたね。
 今回は、それらのキヌゲネズミ科の種を紹介しましょう。キヌゲネズミ科ビロードネズミ属に含まれるとされる種です。ビロードネズミ属の種は、日本には、二種しか、分布しません。ヤチネズミと、スミスネズミです。どちらも、日本固有種です。
 ヤチネズミは、日本の本州にだけ分布します。日本固有種ですから、世界的には、珍しい種です。とはいえ、絶滅危惧種というわけではありません。個体数は多いとされています。畑の石組などにも、棲むことがあります。比較的、平凡な種です。
 ヤチネズミは、複数の種に分けられるという説があります。分布する地域により、違いがあるというのですね。しかし、これは、確定した説ではありません。「違いが小さ過ぎて、種を分けるほどではない」という意見も、強いです。
 スミスネズミは、ヤチネズミとよく似た種です。野外で見ただけでは、区別は難しいでしょう。こちらの種は、本州・四国・九州に分布します。
 スミスネズミは、ヤチネズミより、ずっと数が少ないと考えられています。ヤチネズミより、自然度が高い場所を好むようです。このために、都市化が進むにつれ、数が減ってしまいました。目撃されるのは、珍しいことです。
 日本固有種なのに、「スミス」という名は、外国人の名のようですね。明治時代に、日本の六甲山で、ゴードン・スミスさんという英国人が、スミスネズミを採集しました。彼の採集した標本をもとに、スミスネズミという種名が付けられました。
 スミスネズミ発祥の地といえる六甲山では、近年、スミスネズミの生息が確認できませんでした。二〇一六年に、久しぶりに確認され、少し話題になりました。

図鑑↓↓↓↓↓には、ヤチネズミ、スミスネズミも掲載されています。
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 過去の記事でも、齧歯目【げっしもく】(=ネズミ目【もく】)の哺乳類を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
どこから来たの? オキナワハツカネズミ(2014/6/30)
哺乳類の世界は、ネズミだらけ?(2012/11/19)
野ネズミは、ネズミ科じゃない?(2011/10/3)
フィリピンで、ネズミの新種を発見(2009/2/26)
日本最大のネズミは、ケナガネズミ(2008/11/10)


2016年8月29日

アベリアの正式な種名は?

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 まだまだ、暑い日が続きますね。あまり暑いと、植物もぐったりするようです。日本では、真夏に花を咲かせる植物は、意外に少ないです。真夏に咲くのは、栽培植物が多いです。ヒマワリ、アサガオ、サルスベリ、キョウチクトウなどですね。
 アベリアも、真夏に花を咲かせる栽培植物です。ただし、アベリアの場合は、真夏にだけ、花が咲くのではありません。地域によりますが、五月頃から十月頃まで、絶えず花を咲かせます。花期が長いために、観賞用の植物として、喜ばれます。
 公園などの植え込みで、初夏から秋まで、ずっと花を咲かせている低木を見たことがありませんか? 白い、小さならっぱ型の花が咲きます。それが、アベリアです。
 アベリアとは、通称です。正式な日本語名(標準和名)は、ハナゾノツクバネウツギ、または、ハナツクバネウツギといいます。スイカズラ科ツクバネウツギ属の一種です。
 日本語の種名は、長くて言いにくいですね。このため、アベリアという通称が広がりました。アベリアとは、ラテン語の学名に由来します。ツクバネウツギ属のラテン語の学名が、Abeliaなのです。もとは、ツクバネウツギ属全体を指す名です。
 ツクバネウツギ属には、日本の野山に生える種もあります。例えば、ツクバネウツギなどが、そうです。ツクバネウツギにも、ハナゾノツクバネウツギと似た、白いらっぱ型の花が付きます。ツクバネウツギのほうは、初夏にだけ、花が咲きます。
 ハナゾノツクバネウツギには、野生のものがありません。野生種同士を交配して作られた、園芸種だからです。ハナゾノツクバネウツギの親になった種には、日本語名がありません。両親のどちらとも、日本に自生する種ではないからです。
 ラテン語の学名で、Abelia chinensisという種と、Abelia unifloraという種とを交配して、ハナゾノツクバネウツギが生まれたといわれます。どこで、誰が交配させたのか、あるいは、自然に交配して生まれたのかは、わかっていません。
 ハナゾノツクバネウツギは、果実を結ぶものの、種子ができません。このために、野生化するおそれはありません。人間が、挿し木で増やしています。
図鑑↓↓↓↓↓には、ハナゾノツクバネウツギ(アベリア)が掲載されています。
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 過去の記事でも、スイカズラ科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
コデマリとオオデマリとは、どう違う?(2014/5/2)
「○○ウツギ」は、ウツギの仲間か?(2013/10/11)
フォッサ・マグナ要素の植物とは?(2012/11/2)
ヒョウタンボクに、ヒョウタンは実らない?(2012/10/26)


ハコネウツギは、箱根には生えない?(2009/6/12)

2016年8月26日

ニホンマムシと、アメリカのマムシとは、同じ属か?

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 ニホンマムシは、日本でよく知られたヘビですね。何と言っても、毒ヘビとして有名です。このようなヘビなら、わからないことがないほど、研究が進んでいるでしょうか? 
 ところが、わからないことは、まだ、たくさんあります。最近になってから、わかったことも多いです。例えば、ニホンマムシの分類は、十年ほど前に、変わりました。
 ニホンマムシは、クサリヘビ科マムシ属に属する一種です。十年以上前にも、ニホンマムシは、クサリヘビ科マムシ属とされていました。ただし、「マムシ属」の内容が変わっています。ラテン語の学名を見ると、十年以上前と、現在とで、違います。
 二〇一六年現在のマムシ属は、ラテン語の学名を、Gloydiusといいます。十年以上前には、Agkistrodonというのが、ラテン語の学名でした。二〇一六年現在では、Agkistrodonは、「アメリカマムシ属」を指すラテン語の学名になっています。
 昔の「マムシ属」―Agkistrodon―には、アジアに分布する種も、北米や中米に分布する種も、含まれました。何十種も含む、大きな属でした。
 けれども、のちに、アジアに分布する旧マムシ属と、北米・中米に分布する旧マムシ属とでは、属を分けるほどの違いがあると、わかりました。このために、旧マムシ属―Agkistrodon―は、アジアの種と、アメリカ大陸の種とで、分割されました。
 ニホンマムシを含むアジアの種は、新マムシ属―Gloydius―になりました。ヌママムシなどのアメリカ大陸の種は、旧マムシ属―Agkistrodon―に残されました。かわりに、日本語の属名は、新たに、「アメリカマムシ属」とされました。
 現在のアメリカマムシ属には、アメリカ大陸の種しか、含まれません。ほんの数種です。新マムシ属には、十種ほどが含まれます。すべて、アジアの種です。そのうち、日本に分布するのは、ニホンマムシと、ツシママムシだけです。
 旧マムシ属―Agkistrodon―からは、他にも、いくつかの属が分離されました。ヒャッポダ属、セイロンマムシ属などです。どれも、アジアにだけ分布する種を含みます。分離が繰り返されたために、現在のアメリカマムシ属は、小さな属になりました。

図鑑↓↓↓↓↓には、ニホンマムシが掲載されています。
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 過去の記事でも、日本に分布するヘビを取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ヘビを食べるヘビがいる?(2015/7/6)
アオダイショウの祖先とは?(2014/6/23)
ウミヘビがいるなら、カワヘビもいる?(2013/8/12)
ヘビは、耳が聞こえないとは、本当か?(2013/6/17)
ヘビは、暗闇でも眼が見える?(2013/3/18)

2016年8月22日

グアバの日本語名は、バンジロウか?

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 最近では、日本でも、熱帯産の果物が、普通に食べられるようになりましたね。そのような果物の一種に、グアバがあります。もともと、熱帯アメリカ産の植物です。日本には、自生しません。けれども、現在は、日本の各地でも、栽培されています。
 グアバとは、英語名のguavaを、そのまま読んだ名です。バンジロウという日本語名も、付いています。何だか、人の名前みたいですね。バンジロウは、漢字で「蕃石榴」と書きます。「蕃」は、「外国の」という意味です。「石榴」は、ザクロを指します。
 グアバの果実は、ちょっとザクロに似ています。このために、「外国のザクロ」を意味する「蕃石榴」の名が付いたようです。漢字名をそのまま読んで、バンザクロや、バンセキリュウと呼ばれることもあります。バンジロウとは、それらがなまった名でしょう。
 グアバことバンジロウは、フトモモ科バンジロウ属に属する一種です。が、スーパーなどで売られる「グアバ」には、バンジロウ以外の種が含まれることがあります。
 それは、キバンジロウ(黄蕃石榴)という種です。バンジロウと同じく、フトモモ科バンジロウ属に属する一種です。原産地が熱帯アメリカなのも、バンジロウと同じです。果実の味も、バンジロウと似るため、商業的には、あまり区別されません。
 フトモモ科バンジロウ属には、他にも、果実が食用になる種が、いくつも含まれます。コスタリカバンジロウ、ブラジルバンジロウなどです。今のところ、バンジロウとキバンジロウ以外のバンジロウ属は、日本には、ほとんど入っていません。
 バンジロウ属の種は、すべて、南北アメリカ大陸の、温暖な地域が原産地です。バンジロウは、インカ帝国の時代から、中米や南米に、広く栽培されていました。このため、正確な原産地は、わかっていません。現在は、世界中の熱帯で栽培されています。
 バンジロウ属の中でも、バンジロウは、果実が美味しく、丈夫で育てやすいとして、評価が高いです。栽培品種も、世界の各地で、たくさん作られています。
 ところが、これが裏目に出ることもあります。丈夫すぎて、本来の自生地でない所でも、野生化してしまいました。在来種の脅威になっている地域もあります。
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、バンジロウは載っていません。かわりに、バナナ、パパイア、マンゴーなどの熱帯産の果物掲載されています。
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 過去の記事でも、熱帯産の果物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アサイーの正体とは?(2016/2/8)
トケイソウの果実が、パッションフルーツ?(2013/8/16)
仏典【ぶってん】にも登場、マンゴー(2013/8/9)
バナナは、最古の栽培植物?(2013/1/18)
チンパンジーの贈り物はパパイア?(2007/9/13)

2016年8月19日

日本の地質を解明する? マイマイカブリ

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 だいぶ以前のことですが、このブログで、マイマイカブリという昆虫を取り上げました(日本の陰の昆虫王者? マイマイカブリ(2006/8/5))。日本固有種であることなどを、紹介しましたね。この時に、書ききれなかったことを、紹介しましょう。
 マイマイカブリは、オサムシ科マイマイカブリ属に属する昆虫の一種です。以前に書いたとおり、地域ごとに、特徴のある亜種に分かれています。
 例えば、北海道には、エゾマイマイカブリという亜種が分布します。エゾマイマイカブリには、頭部と前胸部に、金属光沢があります。一般的に緑色といわれますが、金属光沢のため、見ようによっては赤銅色などにも見えます。
 新潟県の佐渡島には、サドマイマイカブリという亜種がいます。サドマイマイカブリにも、頭部と前胸部に金属光沢があります。でも、緑色ではなく、青っぽいです。この亜種は、前胸部が太くて、がっちりした印象なのが、特徴です。
 なぜ、マイマイカブリは、このように地域変異が激しいのでしょうか? 彼らが飛べないことが、大きな原因だと考えられています。飛べない昆虫は、移動能力が低いです。このために、それぞれの地域に隔離されやすく、地域変異が進んだと考えられます。
 最近の研究で、「マイマイカブリの亜種の分かれ方が、日本列島の成り立ちと関係があるのでは?」という説が、出てきました。日本列島の地質学的な境界と、亜種の分かれ目とが、一致している例があるというのです。
 日本列島が、現在の形になるまでには、長い変遷がありました。大陸とつながったり離れたりしましたし、列島そのものも、ついたり離れたりを繰り返しました。それにともない、動物たちも、隔離されたり、また一緒になったり、ということがあったでしょう。
 飛べないマイマイカブリたちは、そのような地質学的な変遷の影響を受けやすいです。過去に隔離された地域ごとに、独自の進化をするのは、自然なことです。
 現在のところ、マイマイカブリの亜種の分かれ目と、地質学的境界とが、必ず一致するわけではありません。まだまだ、検討が必要な仮説です。
図鑑↓↓↓↓↓には、マイマイカブリが掲載されています。
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 過去の記事でも、マイマイカブリに近縁なオサムシ科などの甲虫を取り上げています。マイマイカブリの食べ物となるカタツムリについても、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
小さいことは良いことだ? キスイムシたち(2012/5/28)
化学兵器で防御、ゴミムシ(2009/10/23)
ミールワームとは、どんな虫?(2008/3/28)
カタツムリの殻は右巻き? 左巻き?(2007/6/18)
日本の陰の昆虫王者? マイマイカブリ(2006/8/5)


2016年8月15日

バジルとメボウキとは、同じ? 違う?

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 バジルというハーブ(香草)は、近年、日本でも、お馴染みになりましたね。バジルソースのパスタや、サラダなどに使われます。葉に、良い香りがありますよね。
 現在の日本では、バジルは、たくさん栽培されています。けれども、日本原産の植物ではありません。熱帯アジアのどこかが原産地だとされます。とても古くから利用されているために、正確な原産地が、わからなくなってしまいました。
 現在は、世界中で、バジルが栽培されています。温暖な地域では、野生化していることもあります。バジルは寒さに弱いため、寒冷地では、野生化できません。日本では、冬を越せないために、ほとんど野生化していないようです。
 バジルとは、英語名のbasilを、そのまま読んだ名前です。正式な日本語名(標準和名)は、メボウキといいます。日本原産の種ではないのに、なぜ、日本語名があるのでしょうか? じつは、バジルことメボウキが日本に入ったのは、意外に古いのです。
 メボウキが日本に来たのは、江戸時代だといわれます。当時は、種子が、薬として輸入されました。メボウキの種子は、水に浸すと、ゼリー状に大きく膨らみます。この性質を利用して、目にごみが入った時、ごみをぬぐい去るのに用いられました。
 このために、メボウキ(目箒)という種名が付きました。目の汚れをぬぐい去る箒【ほうき】というわけです。でも、この日本語名は、あまり使われていませんね。
 メボウキは、シソ科メボウキ属に属する一種です。メボウキ属には、六十種ほどが属します。どの種も、日本には自生しません。圧倒的に、熱帯産の種が多いです。メボウキと同じように、ハーブや薬にするために、栽培される種もあります。
 メボウキ属には、日本語名が付いている種が少ないです。日本に産しないためですね。
 メボウキ以外のメボウキ属の種は、レモンバジルlemon basilのように、英語名をそのまま呼ばれることが多いです。バジルという名が、メボウキばかりでなく、メボウキ属をまとめて指すこともあります。他種のバジルと区別して、メボウキを呼びたい場合には、英語で、スイートバジルsweet basilと呼ばれます。
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、メボウキは載っていません、かわりに、日本で見られるシソ科の植物が、二十種以上掲載されています。
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 過去の記事でも、シソ科で、ハーブとして用いられる植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ベルガモットは、ミカン科か? シソ科か?(2016/7/11)
縄文時代から栽培されていた? シソ(2014/7/4)
西洋と東洋の薬? ウツボグサ(2014/6/20)
ハッカ(薄荷)は、分類学者泣かせ?(2013/9/6)
日本にも、タイムが生える?(2011/6/10)


2016年8月12日

クジラの骨は、進化の跳【と】び石?

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 これまで、このブログで、ホネクイハナムシや、ゲイコツナメクジウオといった生物を、紹介してきましたね(深海で、骨を食【は】むもの(2016/7/29)ゲイコツナメクジウオの謎(2016/8/5))。
 深海のクジラの死骸に棲む生物は、他にも、たくさんいます。それらの中には、深海の熱水が噴き出る場所に棲む生物と、近縁なものが含まれます。
 例えば、ホネクイハナムシは、ハオリムシと近縁だとわかってきました。同じ環形動物門【かんけいどうぶつもん】多毛綱【たもうこう】ケヤリムシ目【もく】シボグリヌム科に属します。ハオリムシは、深海の熱水噴出口の周囲に、群生する生物です。
 似た例が、いくつも見つかっています。このことから、熱水噴出口の周囲に棲む生物は、進化にあたって、クジラの死骸を利用したのではないかという説が、生まれました。
 深海底の熱水噴出口の周囲は、普通の浅海と比べれば、地獄のようです。光が届かず、真っ暗で、高圧の中に、100℃を越える高温の熱水が噴き出ています。熱水には、さまざまな栄養分が含まれますが、直接、熱水に触れれば、茹だって死んでしまいます。
 このような過酷な状況に、すぐに適応できる生物は、ほとんどいないでしょう。ある程度、段階を踏んで、熱水噴出口の周囲で暮らせるようになったと考えられます。
 その「段階を踏む」のに、クジラの死骸が、ちょうど良かったのではないかというのですね。例えば、クジラの死骸は、腐敗が進むと、硫化水素を出します。その硫化水素を利用する生物がいて、その生物(が作る栄養分)を食べる生物もいます。
 硫化水素は、深海底の熱水に、大量に含まれます。このために、熱水噴出口の周囲にも、硫化水素を利用する生物と、彼ら(が作る栄養分)を食べる生物がいます。クジラの死骸と、熱水噴出口の周囲とで、似た環境があるわけです。
 クジラの死骸は、熱水噴出口周囲の生物が進化するのに、跳び石のような役割を果たしたのかも知れません。一足跳びに進化するのは無理でも、跳び石があるならば、少しずつ、過酷な環境にも、適応してゆくことができるでしょう。
 クジラの巨体は、死んでからも、多くの生物を養います。偉大な存在ですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、キアンコウ、ズワイガニなど、日本周辺の深海に棲む生き物が掲載されています。
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 過去の記事でも、深海の生物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ゲイコツナメクジウオの謎(2016/8/5)
深海で、骨を食【は】むもの(2016/7/29)
ヌタウナギは、スーパー繊維の持ち主?(2016/4/8)
世界最大のクラゲとは?(2015/10/16)
アカマンボウは、マンボウの仲間か?(2015/7/31)



2016年8月 8日

ミョウガとハナミョウガとは、違う? 同じ?

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 ミョウガ(茗荷)は、夏に美味しい野菜の一つですね。そうめんや冷奴の薬味として、欠かせません。暑い夏でも、ミョウガのさっぱりした風味で、食欲がわきますね。
 食べられるミョウガは、栽培されたものです。けれども、日本の山野に、自生しているミョウガもあります。ミョウガは、日本原産の野菜なのでしょうか?
 どうやら、それは違います。日本に自生しているミョウガは、人間が栽培していたものが、二次的に野生化したとされています。もとは、ユーラシア大陸から持ちこまれたと考えられています。どこから持ちこまれたのか、正確なことは、わかっていません。
 ミョウガは、日本の山野でも、問題なく育っています。このことから、近隣の東アジアのどこかが原産地なのでしょう。ただし、日本のミョウガには、ほとんど種子ができません。地下茎がどんどん伸びて、そこから別個体ができるのが、普通の繁殖法です。
 ミョウガは、ショウガ科ショウガ属に属する一種です。野菜のショウガと、同じグループに属します。ミョウガとショウガとは、名前が似るばかりでなくて、実際に近縁です。
 ショウガ科には、ミョウガやショウガのように、ヒトの役に立つ種が多いです。例えば、沖縄でよく利用される、ゲットウ(月桃)も、ショウガ科に属します。
 ゲットウは、沖縄では、葉でムーチー(沖縄風の餅)を包んで蒸すために、大量に使われます。葉には、独特の良い香りがあり、食べ物を包んで蒸すと、美味しくなります。
 ゲットウは、ショウガ科ハナミョウガ属に属する一種です。同じショウガ科でも、ショウガやミョウガの属するショウガ属とは、違う属です。
 ハナミョウガ属には、ハナミョウガという種も属します。ミョウガと名前が似ますが、別種です。ミョウガと違い、野菜にはなりません。果実が薬用にされることがあります。葉の形がミョウガに似て、花がミョウガより美しいために、この種名になりました。
 紛らわしいことに、スーパーなどでは、ミョウガが、「花ミョウガ」と呼ばれることがあります。これは、ミョウガの食べる部分が、花に当たることから、付いた呼び名です。野菜の「花ミョウガ」は、正式な日本語名(標準和名)ハナミョウガではありません。
図鑑↓↓↓↓↓には、標準和名ハナミョウガ掲載されています。
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 過去の記事でも、ショウガ科の植物を取り上げています。また、紛らわしい別名がある植物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ウンゼンツツジは、雲仙には生えない?(2016/4/4)
アカシアと、ニセアカシアとの関係は?(2016/2/15)
古代の「はじかみ」の正体は?(2012/6/29)
ススキの下で、何を思う? ナンバンギセル(2010/9/10)

(※ナンバンギセルは、ミョウガなどのショウガ科の植物に寄生します)

2016年8月 5日

ゲイコツナメクジウオの謎

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 先週のこのブログで、ホネクイハナムシという生物を、紹介しましたね(深海で、骨を食【は】むもの(2016/07/29))。ホネクイハナムシは、深海に落ちてきた、クジラの死骸の骨に棲む生物です。今回は、同じように、深海のクジラの骨に棲む生物を紹介しましょう。
 それは、ゲイコツ(鯨骨)ナメクジウオという種です。ホネクイハナムシと似た環境に棲みますが、ホネクイハナムシとは、とても縁の遠い生物です。脊索動物門【せきさくどうぶつもん】頭索動物亜門【とうさくどうぶつあもん】頭索綱【とうさくこう】ナメクジウオ目【もく】ナメクジウオ科オナガナメクジウオ属に属します。
 ナメクジウオという名前に、聞き覚えのある方もいるでしょう。ナメクジウオとは、前述の頭索綱に属する生物の総称です。頭索綱は、ナメクジウオ綱【こう】ともいいます。このグループは、私たちヒトを含む脊椎動物の先祖に当たると考えられています。
 普通のナメクジウオは、水深100mより浅い海に棲みます。水のきれいな所でないと、棲めません。海水のきれいさを示す、指標生物にされているほどです。
 ところが、ゲイコツナメクジウオは、そういったナメクジウオの常識を、くつがえしました。水深200mより深い海の、クジラの死骸が腐って、どろどろになった所に棲むのです。ナメクジウオの生息域としては、最深記録を達成しました。
 ゲイコツナメクジウオは、二〇〇四年に、新種として記載されたばかりです。きれいな海水に棲むはずのナメクジウオなのに、どうやって、クジラの死骸が腐った場所で暮らしていられるのでしょうか? 詳しいことは、まだ、わかっていません。
 ゲイコツナメクジウオは、ナメクジウオ科の中で、最も原始的な種であることが、わかっています。起源は、まだ恐竜がいた一億年くらい前に、さかのぼります。
 そうすると、謎があります。約一億年前には、まだ、クジラはいません。ゲイコツナメクジウオ(の直系の祖先)は、どこで、どうやって暮らしていたのでしょうか?
 先述のとおり、ナメクジウオは、脊椎動物の先祖に当たります。その中でも、特に原始的なゲイコツナメクジウオの謎は、脊椎動物の進化の謎につながるでしょう。
図鑑↓↓↓↓↓には、ナメクジウオ掲載されています。
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 過去の記事でも、ナメクジウオの仲間を取り上げています。また、ゲイコツナメクジウオと同じように、深海のクジラの死骸に棲む生物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
深海で、骨を食【は】むもの(2016/07/29)
脊索【せきさく】動物と、脊椎【せきつい】動物とは、違う? 同じ?(2012/10/15)
ヒトの祖先は、ナメクジウオ?(2008/6/20)
ホヤは脊索【せきさく】動物? 原索【げんさく】動物?



2016年8月 1日

ワスレグサ属は、分類の迷子?

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 先週、このブログで、ゼンテイカについて、取り上げましたね(ゼンテイカ? ニッコウキスゲ? 正しい種名とは(2016/7/25))。ゼンテイカは、分類が難しい植物だと書きました。地域ごとに変異がある上に、別名が多いからです。
 じつは、ゼンテイカが属するワスレグサ属自体が、分類に移り変わりがあります。そもそも、ワスレグサ属という属名自体が、確定していません。キスゲ属やカンゾウ属などと呼ばれることもあります。ヘメロカリス属という呼び方もあります。
 ヘメロカリスとは、この属のラテン語の学名Hemerocallisに由来します。日本語で、ヘメロカリスと呼ばれる場合には、野生のワスレグサ属ではなくて、栽培品種を指すことが多いです。ワスレグサ属には、観賞用に作られた栽培品種が、多くあります。
 カンゾウ属という名は、萱草(カンゾウ)という、この属の植物の総称に由来します。これには、甘草(カンゾウ)という、同名異字の別種があるため、紛らわしいです。
 ワスレグサ属は、属する科が、次々に変遷しています。このため、図鑑やウェブサイトによって、何科に属するのか、違うことが書かれています。混乱しますね。
 昔、ワスレグサ属は、ユリ科に属するとされました。その後、ユリ科から分離されて、ワスレグサ科という科が作られ、そこに属するとされました。ところが、最近では、ワスレグサ科の植物は、まるごと、ススキノキ科に入るとされることが多いです。
 ユリ科→ワスレグサ科→ススキノキ科という変遷は、そのまま、図鑑やウェブサイトに反映されています。書かれた時期によって、違う科名が付けられてしまっています。
 ススキノキ科という科名は、日本人には、馴染みが薄いです。もともと、ススキノキ科に属する植物は、日本には分布しなかったからです。オーストラリアに分布する、ススキノキ属の植物だけが、属する科でした。小さな科だったのですね。
 それが、ワスレグサ科の植物が入れられることにより、変わりました。種の数も、バリエーションも、分布域も、ぐっと広がりました。旧ワスレグサ科の植物は、ススキノキ科の中では、キスゲ亜科として、まとめられています。

図鑑↓↓↓↓↓には、ニッコウキスゲ(ゼンテイカ)やノカンゾウなど掲載されています。
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 過去の記事でも、ワスレグサ属の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ゼンテイカ? ニッコウキスゲ? 正しい種名とは(2016/7/25)
忘れ草【わすれぐさ】とは、どんな植物?(2010/8/25)



2016年7月29日

深海で、骨を食【は】むもの

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 深海には、浅い海では考えもつかないような生物が、多く棲んでいます。今回は、そのような生物の一種を紹介しましょう。ホネクイハナムシです。
 ホネクイハナムシは、深海の中でも、とりわけ、変わった所に棲みます。死んで、深海に落ちてきたクジラの骨に棲むのです。そこでしか、見つかりません。
 深海は、食べ物の乏しい場所です。そこに、浅い海から落ちてくる死骸は、貴重な食べ物になります。クジラのような大きな死骸となれば、たいへんな御馳走です。たくさんの深海生物が集まってきて、クジラの死骸を食べます。
 クジラの死骸が深海に落ちてきても、ホネクイハナムシは、すぐには現われません。他の生物に肉が食べられて、骨が露出した頃に現われます。「ホネクイ」という名のとおり、彼らは、新鮮なクジラの骨を食べます。クジラの骨の脂肪から、栄養を取るようです。
 ホネクイハナムシは、クジラの骨に穴を開けて棲みます。穴から、花のようなものをひらひらさせているため、ホネクイハナムシと名付けられました。ひらひらしているものは、鰓【えら】です。本体は、骨の中にあって、植物の根のようになっています。
 この根のような部分に、ホネクイハナムシは、細菌を共生させています。この細菌が、クジラの骨の栄養を利用し、ホネクイハナムシは、細菌から栄養を得ます。このために、ホネクイハナムシは、普通の口や肛門や消化器官を持ちません。必要ないからです。
 ホネクイハナムシは、細菌を通じて、間接的に、クジラの骨を食べているわけです。こんな変わった生態のホネクイハナムシは、何の仲間なのでしょうか?
 じつは、釣り餌にされるゴカイなどの仲間です。詳しく書けば、環形動物門【かんけいどうぶつもん】多毛綱【たもうこう】ケヤリムシ目【もく】シボグリヌム科に属します。
 ケヤリムシ目というグループ名に、ぴんと来た方もいるでしょう。ケヤリムシは、浅い海で見られるゴカイの仲間です。海底の岩などに、穴を開けて棲みます。穴から鰓を出して、ひらひらさせます。岩がクジラの骨に変われば、ホネクイハナムシと同じですね。
 ホネクイハナムシは、二〇〇六年に発見されたばかりで、まだ、わからないことが多いです。
図鑑↓↓↓↓↓には、イバラカンザシゴカイ、ウミケムシなどが掲載されています。
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 過去の記事でも、ホネクイハナムシと同じ環形動物【かんけいどうぶつ】を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
海の謎生物、ボネリムシ(2014/10/20)
干潟には、ゴカイやミミズの仲間が多い?(2013/11/18)
ハオリムシ(羽織虫)の分類は?(2012/12/10)
泳ぐゴカイがいる?(2011/2/14)
海の毛虫も蝶(チョウ)になる? ウミケムシ(2010/3/15)

2016年7月22日

セミの翅【はね】の秘密

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 今年の夏、セミ(蝉)の声を聞きましたか? 子供の頃、セミ取りをした経験のある方も、多いでしょう。「声を頼りにセミを探しても、なかなか見つからない」という経験をしたことがないでしょうか? 気がつくと、目の前の木に止まっていたりします。
 木に止まったセミの姿は、明らかに見えにくいです。セミの写真を取ろうとしたことがある方は、よくおわかりでしょう。セミの体色は、さほど、木に似ているとは思えませんのに、木の皮に溶け込んだように見えます。
 その秘密は、セミの翅【はね】にあります。ミンミンゼミやヒグラシなどの、透明な翅のセミでも、翅が光を反射しません。おかげで、セミの輪郭が、背景に溶け込んでしまいます。同じように透明なガラスと比べると、セミの翅の無反射性が、顕著です。
 セミの翅が、ガラスのように、光を反射してきらりと光れば、もっとセミが見つけやすいでしょう。セミの翅は、敵に見つかりにくいようにできています。
 どういう仕組みで、そうなっているのでしょうか? 電子顕微鏡で、セミの翅を見てみると、微細な構造が見えてきます。セミの翅は、とても小さな突起で、びっしりと覆われています。この構造は、ガ(蛾)の眼の構造と似ています。
 ガの眼の構造については、以前、このブログで取り上げましたね(ガ(蛾)は、どうやって暗闇で見る?(2016/6/10))。ガの眼のように、微小な突起が並んだ構造を、モスアイ構造と呼びます。モスアイ構造は、ガ以外にも、さまざまな昆虫が持っています。
 ガの場合は、暗闇の中で飛ぶために、モスアイ構造が役立っています。セミの場合は、それを翅に利用して、無反射性を得ています。無反射性以外にも、モスアイ構造には、いくつもの利点があります。例えば、水をはじく効果があります。
 雨が降った時、翅が濡れて飛べなくなったら、セミにとっては、死活問題ですね。モスアイ構造のおかげで、セミの翅は、水をはじき、雨の中でも、飛ぶことができます。
 アブラゼミなど、不透明な翅のセミでも、モスアイ構造が確認されています。モスアイ構造には、前記の水をはじく効果など、利点が多いためでしょう。
図鑑↓↓↓↓↓には、日本に分布するセミが、八種ほど掲載されています。
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 過去の記事でも、セミの仲間を取り上げています。また、モスアイ構造についても、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ガ(蛾)は、どうやって暗闇で見る?(2016/6/10)
セミは、カメムシの仲間か?(2011/8/29)
孵化【ふか】と羽化【うか】とは、どう違う?(2008/8/29)
空蝉【うつせみ】とは、どんなセミ?(2008/6/30)
セミ(蝉)の幼虫は何年生きる?(2006/7/3)

2016年7月18日

ノウゼンカズラの仲間たち

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 ノウゼンカズラは、日本の夏を彩る花です。夏に、橙色の、らっぱ状の花が咲くつる植物を、見たことがありませんか? それが、ノウゼンカズラです。中国原産の植物です。現在は、暑い日本の夏にも負けない園芸植物として、日本に根付いています。
 ノウゼンカズラは、ノウゼンカズラ科ノウゼンカズラ属に属します。ノウゼンカズラ属には、ノウゼンカズラと、アメリカノウゼンカズラと、二種しか属しません。
 アメリカノウゼンカズラも、ノウゼンカズラに似ています。種名のとおり、原産地は、北米の東部です。ノウゼンカズラと同じように、花を観賞するため、栽培されます。
 ノウゼンカズラ属は、小さな属です。けれども、ノウゼンカズラ科は、六百種以上が含まれる、そこそこ大きな科です。この科の植物には、熱帯に分布するものが多いです。
 有名な種を、二つほど挙げてみましょう。キリモドキ(ジャカランダ)や、カエンボクが、ノウゼンカズラ科に属します。キリモドキとカエンボクとは、世界三大花木のうちの二種です。残り一種のホウオウボクは、ノウゼンカズラ科ではなく、マメ科です。
 三大花木に挙げられるだけあって、キリモドキにもカエンボクにも、美しい花が咲きます。キリモドキには、キリ(桐)の花に少し似た、薄紫の花が付きます。カエンボクは、「火焔木」の名が示すように、赤い花を咲かせます。
 キリモドキは、南米が原産地です。カエンボクは、西アフリカが原産地です。どちらの種も、花が美しいために、世界じゅうの熱帯域で栽培されています。
 ただし、カエンボクは、原産地以外の熱帯域では、外来種として警戒されています。生命力が強すぎて、在来種を駆逐してしまうのではないかと、懸念されています。
 日本のノウゼンカズラも、夏には、大いに繁茂していますね。野生化して、在来種をおびやかすことは、ないのでしょうか? 今のところ、ノウゼンカズラが増え過ぎて困っているという話は、聞きません。それには、理由があります。
 ノウゼンカズラは、日本では、あまり果実を結びません。花粉を媒介するのに適した動物が、日本には、いないようです。本来の授粉者は、鳥だと推測されています。
図鑑↓↓↓↓↓には、ノウゼンカズラ掲載されています。
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 過去の記事でも、ノウゼンカズラ科の植物を取り上げています。また、一時的に、ノウゼンカズラ科と思われた植物や、熱帯産の園芸植物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アメリカノウゼンカズラの画像(2015/8/20)
ブーゲンビリアは、イカダカズラか?(2015/8/10)
トケイソウの果実が、パッションフルーツ?(2013/8/16)
梓【あずさ】の正体は、キササゲ?(2009/11/9)
桐【きり】の名前で、きりきり舞い?(2009/5/8)

2016年7月15日

南西諸島のカナヘビたち

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 南西諸島は、多くの珍しい生物がいることで、知られますね。けれども、一般に知られるのは、イリオモテヤマネコのような哺乳類か、ヤンバルクイナのような鳥類がほとんどです。もっと小さくて、目立たない生き物にも、注目すべき種がいます。
 今回は、南西諸島の爬虫類を紹介しましょう。トカゲの仲間で、カナヘビ科に属するものたちです。カナヘビという名でも、ヘビではなくて、トカゲです。
 カナヘビ科のトカゲたちは、体型がスマートで、尾が非常に長いです。長い尾だけを見ると、ヘビのように見えるために、カナヘビという名が付いたのでしょう。
 日本に分布するカナヘビ科のうち、最大の種が、南西諸島にいます。サキシマカナヘビという種です。南西諸島でも、ずっと南の八重山諸島(石垣島、西表島、黒島、小浜島)でしか、確認されていません。世界中で、ここにしかいない、日本固有種です。
 サキシマカナヘビは、全長が30cmにも達することがあります。ただし、全長の四分の三くらいは、尾の長さです。全身が緑色をした、美しいトカゲです。
 八重山諸島より北の沖縄諸島、奄美諸島、トカラ列島には、アオカナヘビという種が分布します。サキシマカナヘビより、小さいです。それでも、全長28cmくらいになります。全長の四分の三くらいを尾が占めるのは、サキシマカナヘビと同じです。
 アオカナヘビも、美しい緑色の体色をしています。日本固有種なのも、サキシマカナヘビと同じです。野生なら、分布域が違うために、サキシマカナヘビと区別できます。
 八重山諸島と沖縄諸島の間には、宮古列島があります。ここには、また独自の、ミヤコカナヘビという種が分布します。体型や体色は、アオカナヘビと似ています。体の大きさが、アオカナヘビより、さらに小さいです。全長22cmくらいになります。
 ミヤコカナヘビは、以前、アオカナヘビと同じ種だと思われていました。しかし、似ていても、違う種だとわかりました。一九九六年に、新種として記載されました。
 ミヤコカナヘビも、日本固有種です。興味深いことに、距離的に台湾に近いサキシマカナヘビよりも、ミヤコカナヘビのほうが、台湾や中国のカナヘビに近縁だそうです。
図鑑↓↓↓↓↓には、ニホンカナヘビ掲載されています。
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 過去の記事でも、カナヘビの仲間を取り上げています。また、カナヘビ科以外のトカゲも、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
日本の海トカゲ? ミヤコトカゲ(2014/10/13)
宮古島の生き物の謎(2013/7/1)
北極圏にも、トカゲがいる?(2012/12/7)
日本最大のトカゲとは?(2009/8/14)
ヘビと付くのに蛇じゃない、カナヘビ(2008/4/18)

2016年7月11日

ベルガモットは、ミカン科か? シソ科か?

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 このブログでは、紛らわしい名を持つ生物を、いくつも取り上げてきましたね。今回も、そのような植物を紹介しましょう。ベルガモットと呼ばれる植物です。
 ハーブがお好きな方なら、ベルガモットという名を聞いたことがあるでしょう。ベルガモットと呼ばれて、ハーブとして用いられる植物には、複数の種があります。
 最初に、「ベルガモット」と名付けられたのは、ミカン科ミカン属の種です。他のベルガモットと区別するために、ベルガモットオレンジと呼ばれます。ミカン属の多くの種と同じように、オレンジに似た果実を付けます。果実は、酸味が強く、生食はできません。
 ベルガモットオレンジは、果実から、香りの良い精油が取れます。この精油を、紅茶の香り付けなどに用います。ベルガモットオレンジの主産地は、イタリアです。
 もう一つの「ベルガモット」は、正式な日本語名(標準和名)を、タイマツバナ(松明花)という種です。こちらは、シソ科ヤグルマハッカ属に属します。ベルガモットオレンジと違い、樹木ではなく、草です。夏に、鮮紅色の花が、まさに松明のように咲きます。
 タイマツバナの原産地は、北米です。もともと、アメリカ先住民が、ハーブとして用いていました。このために、Oswego tea(オスウィーゴ族の茶)という英語名もあります。
 タイマツバナの花や葉には、ベルガモットオレンジに似た香りがあります。このことから、ベルガモットと呼ばれるようになりました。現在は、日本を含む世界各地で、栽培されています。ハーブとして用いられたり、美しい花を観賞用にしたりします。
 ややこしいことに、タイマツバナには、複数の呼び名があります。ベルガモット以外に、モナルダ、ビーバーム、それに先述のオスウィーゴ・ティーなどと呼ばれます。
 モナルダMonardaという呼び名は、ラテン語の学名に由来します。タイマツバナが属する、ヤグルマハッカ属のラテン語名が、Monardaなのです。
 モナルダという名は、タイマツバナを含めた、ヤグルマハッカ属の総称としても、用いられます。ヤグルマハッカ属には、二十種ほどの種があります。その多くが、ハーブになります。タイマツバナ以外では、ヤグルマハッカという種が有名です。
図鑑↓↓↓↓↓には、日本に分布するミカン科の植物と、シソ科の植物とが掲載されています。
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 過去の記事でも、ミカン科の植物や、シソ科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ミヤマシキミと、シキミとは、違う? 同じ?(2016/4/18)
どれが正しい? ヤマハッカ属の学名(2015/9/14)
縄文時代から栽培されていた? シソ(2014/7/4)
ミカンとオレンジとは、違う? 同じ?(2014/2/14)
ハッカ(薄荷)は、分類学者泣かせ?(2013/9/6)

2016年7月 8日

ヒトの役に立つ? シロアリ

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 シロアリは、害虫として、あまりにも有名ですね。けれども、すべてのシロアリが、ヒトに害をなすわけではありません。ヒトの役に立っているシロアリもいます。
 例えば、アフリカのサバンナに棲むシロアリを、挙げてみましょう。ヒトが少ないサバンナには、膨大な数のシロアリが棲んでいます。彼らは、日本で害虫とされるヤマトシロアリやイエシロアリと違って、人家に巣を作るのではありません。
 サバンナには、ところどころに、奇妙な形の塚があります。これが、シロアリたちの棲むアリ塚です。アリ塚は、土や、シロアリたちの排泄物で、作られています。
 アフリカのサバンナは、厳しい気候の場所です。日中は容赦なく日が照りつけ、気温は、40℃を軽く越えます。いっぽうで、夜間は、冷え込みます。なのに、アリ塚の中の温度は、常に30℃前後です。シロアリたちにとって、快適な温度に保たれています。
 人間が持つエアコンがあるわけではないのに、なぜ、アリ塚は、このように一定の温度を保てるのでしょうか? アリ塚の仕組みに、秘密がありました。
 アリ塚の中には、無数のトンネルが張り巡らされています。トンネルは、地上部分だけでなく、地下にも及びます。地下部分の土は、湿っています。
 アリ塚の外から、暖気が入ってくると、地下水分が蒸発します。水が蒸発するには、エネルギーを使うため、そのぶん、空気が冷やされます。
 それでもなお、暑い空気があると、煙突効果という現象によって、アリ塚の上部から排出されます。アリ塚の下部からは、代わりに、冷たい空気が引き込まれます。
 他にも、アリ塚の土壁が、保水性と通気性とに優れた構造になっているなど、いくつもの巧みな仕組みがあります。このために、酷暑のサバンナでも、アリ塚の中は、常に快適に保たれています。一種の、天然のエアコンと言えます。
 じつは、アフリカのジンバブエという国に、このアリ塚の仕組みを応用した建物が建っています。アリ塚を真似たことで、冷房のコストが、劇的に下がりました。その建物は、省エネビルとして、称賛されています。シロアリが、人間の役に立った例です。
図鑑↓↓↓↓↓には、ヤマトシロアリ掲載されています。
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 過去の記事でも、シロアリを取り上げています。また、シロアリに近縁といわれるオオゴキブリも、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
クローン女王の攻撃? ヤマトシロアリ(2009/6/15)
育児には父親も参加、オオゴキブリ(2007/6/15)
シロアリとアリとは、どう違う?(2007/6/11)

2016年7月 4日

カラーとアルムとオランダカイウ

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 先週のこのブログで、オランダカイウについて、取り上げましたね(カラーの本名は、オランダカイウ?(2016/6/27))。オランダカイウは、通称カラーと呼ばれる植物だ、という話をしました。じつは、オランダカイウ属の呼び名には、複雑な事情があります。
 オランダカイウのカラーCallaという通称は、英語ではなく、ラテン語に由来します。けれども、英語でも、オランダカイウ属の植物を、CallaやCalla lilyと呼ぶことがあります。
 紛らわしいことに、本来のCallaであるヒメカイウも、英語でCallaと呼ばれることがあります。ですから、英語の文章で、Callaが出てきた場合には、オランダカイウ属なのか、ヒメカイウ属なのか、確認する必要があります。
 オランダカイウ属は、英語では、arum lilyと呼ばれることも多いです。キバナカイウはgolden arum、モモイロカイウはpink arumなどと呼ばれます。いっぽう、ヒメカイウも、英語では、bog arumなどと呼ばれることが多いです。
 このarumとは、何のことでしょうか? この言葉も、元はラテン語です。サトイモ科の植物の中に、アルムArumと呼ばれるものがあるのですね。サトイモ科の中に、オランダカイウ属でもヒメカイウ属でもない、アルム属というグループがあります。
 アルム属の花も、オランダカイウ属やヒメカイウ属の花と、よく似ています。アルム属の中にも、園芸用に栽培される種があります。このために、オランダカイウ属やヒメカイウ属と、アルム属とが、混同されたふしがあります。
 オランダカイウ属やヒメカイウ属は、アルム属ではないのに、英語でarumと呼ばれてしまうのですね。これまた紛らわしいことに、英語のarumは、本当のアルムArum属を指すこともあります。英語のarumには、やはり、確認が必要ですね。
 アルム属は、日本に自生しないため、日本語名がありません。英語では、lords-and-ladiesという呼び名もあります。「紳士がたと御婦人がた」という意味ですね。
 サトイモ科の種には、互いに似た花を付ける種が多いです。そのため、オランダカイウ属とヒメカイウ属とアルム属のように、混同されがちなのでしょう。
図鑑↓↓↓↓↓には、サトイモ科の植物が、六種ほど掲載されています。
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 過去の記事でも、サトイモ科の植物を取り上げています。また、紛らわしい名前の種を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
カラーの本名は、オランダカイウ?(2016/6/27)
ヤグルマギクは、アザミの仲間か?(2016/5/16)
ミヤマシキミと、シキミとは、違う? 同じ?(2016/4/18)
サトイモとタロイモとは、同じ? 違う?(2013/2/2)
植物も性転換する? マムシグサ(2007/6/1)
などです。

2016年7月 1日

盗人ウミウシがいる?

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 ウミウシは、貝殻を持たない巻貝の仲間です。海の中では、平凡に見られる生き物です。けれども、彼らは、分類さえ、定まっていないものが、珍しくありません。
 ウミウシは、研究途上の生き物なのですね。言い換えれば、今後の研究のやりがいがあります(笑) ウミウシには、近年になって、急速に、生態などが明らかにされた種が、少なくありません。中には、驚くべき生態の種もいます。
 以前、このブログで、カイメンの毒を体にためるウミウシや、クラゲの刺胞【しほう】を流用するウミウシを、取り上げましたね(他人の武器は、自分の武器? ウミウシ(2014/8/11))。今回も、これらに似た例を、紹介しましょう。
 ウミウシの中の、嚢舌目【のうぜつもく】というグループは、海藻を食べる種が、多く属します。それらの種のうち、いくつかは、海藻から取り込んだ葉緑体を、消化してしまわないで、流用することが知られています。
 つまり、彼らは、海藻から葉緑体を盗みとって、それを使って、光合成をします(!) ウミウシは動物なのに、まるで、植物のようなことをするのですね。彼らは、光合成で栄養を作れるために、何カ月も、餌を食べずに生きることができます。
 有名なのは、嚢舌目の中のゴクラクミドリガイ属の種と、オオアリモウミウシ属の種です。ゴクラクミドリガイ属の種では、クロミドリガイや、ラテン語の学名をElysia chlorotica【エリシア・クロロティカ】という種などが、葉緑体で光合成をします。
 クロミドリガイは、日本の相模湾以南の海で見られます。Elysia chloroticaのほうは、北米の東海岸沿いに分布します。日本近海にいないため、日本語の種名が付いていません。
 オオアリモウミウシ属では、テングモウミウシという種が、盗んだ葉緑体で光合成をすると知られます。テングモウミウシは、日本の南西諸島や東南アジアなど、暖かい海に分布します。背中に、ふさふさした突起があり、そこに、葉緑体を集めるようです。
 このような「盗葉緑体」の仕組みについては、わかっていないことが多いです。ウミウシの仲間には、他の生物から何かを盗む、特別な仕組みがあるのかも知れません。
図鑑↓↓↓↓↓には、日本近海に分布するウミウシが、四種ほど掲載されています。
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 過去の記事でも、ウミウシの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
新種のミノウミウシ、発見される(2015/8/14)
他人の武器は、自分の武器? ウミウシ(2014/8/11)
ゾウクラゲは、クラゲじゃない?(2013/1/7)
ウミウシは、海のナメクジか?(2011/1/14)
ウミウシは何の仲間?(2008/12/29)
などです。



2016年6月27日

カラーの本名は、オランダカイウ?

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 今回は、日本でよく栽培されている園芸植物を紹介しましょう。オランダカイウです。切り花として、花屋さんでも、普通に売られています。
 とはいえ、「オランダカイウなんて花、聞いたことがない」という方が、大部分でしょう。では、カラーという花は? 白い大きな花弁が、黄色い棒状のものを、くるりと取り巻いた形の花です。これなら、御存知の方が多いでしょう。
 オランダカイウというのは、正式な日本語名(標準和名)です。が、ほとんど使われません。普通は、カラーと呼ばれます。英語で色という意味のカラーcolorではありません。ラテン語の学名Callaに由来する呼び名です。
 ところが、現在のオランダカイウのラテン語の学名は、Callaではありません。Zantedeschia aethiopica【ザンテデスキア・アエティオピカ】といいます。サトイモ科オランダカイウ属の一種です。Zantedeschiaが、「オランダカイウ属」を指します。
 ラテン語の学名がCallaという種は、別にあります。Calla palustrisという種です。こちらの日本語名は、ヒメカイウといいます。ヒメカイウは、あまり、園芸的に栽培されることはありません。北半球に広く分布する草です。北日本にも分布します。
 ヒメカイウの花は、オランダカイウより、ずっと小さいです。けれども、形は似ています。同じサトイモ科だからです。ヒメカイウは、サトイモ科ヒメカイウ属に属します。
 一時期、オランダカイウ属の種が、ヒメカイウ属だと思われたことがありました。それを引きずって、今でも、オランダカイウ属の種が、まとめてカラーCallaと呼ばれます。
 オランダカイウという種名でも、原産地は、オランダではありません。南アフリカが、原産地です。日本へは、江戸時代末期に、オランダ船が持ち込みました。このために、種名に「オランダ」が付きます。では、「カイウ」のほうは、どういう意味でしょうか?
 「カイウ」は、漢字で「海芋」と書きます。「海外から来た、サトイモの仲間」という意味です。オランダカイウ属には、オランダカイウ以外にも、キバナカイウ、モモイロカイウなどの種があります。キバナカイウやモモイロカイウも、園芸的に栽培されています。
図鑑↓↓↓↓↓には、サトイモ科の植物が、六種ほど掲載されています。
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 過去の記事でも、サトイモ科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
サトイモとタロイモとは、同じ? 違う?(2013/2/2)
2008年は国際イモ年、それ本当?(2008/7/30)
昔は主食だった? サトイモ(2008/6/27)
植物も性転換する? マムシグサ(2007/6/1)
ハンゲとハンゲショウの関係(2006/7/1)
などです。


2016年6月24日

キリギリスの脚の秘密

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 昆虫を見ていて、不思議に感じたことはありませんか? 例えば、バッタやキリギリスなどの昆虫は、細い草の茎や、葉の上を、いつでもすいすいと歩くことができます。なぜ、彼らは、あのような不安定な場所を、滑らずに歩けるのでしょうか?
 キリギリス属の昆虫について、脚先を調べた研究があります。それによれば、キリギリス属の昆虫(の、少なくとも一部)が、いつでも安定して歩ける秘密が、明らかにされました。彼らの脚先には、どうやら、摩擦【まさつ】を制御する能力があるようです。
 キリギリス属の脚先には、石畳が並んだような、微細な構造があります。この構造が、常に安定した摩擦力を発揮します。その摩擦力によって、草の茎も葉も、もちろん地面や、石の上も、しっかりとらえて、歩くことができます。
 石畳のような脚先の構造は、部分ごとに、摩擦力が高い部分と、低い部分とができます。摩擦力の高さは、安定しているのではなく、高い部分と低い部分とが、しょっちゅう入れ替わります。結果、全体としては、一定の摩擦力を保つ仕組みのようです。
 外で暮らす昆虫たちは、雨に遭うことも多いですね。雨に濡れた地面が滑りやすくなるのは、皆さんも経験しているでしょう。キリギリス属の昆虫たちは、濡れた場所を歩く時、どうやって、滑らないようにしているのでしょうか?
 濡れた場所を歩く際にも、先述の、石畳のような微細構造が、役立ちます。「石畳」の間にある溝【みぞ】が、排水溝【はいすいこう】になるのです。これによって、滑る原因になる水を、脚先から排出してしまいます。これと似た仕組みを、人間も使っています。
 それは、自動車のタイヤです。タイヤにも、溝【みぞ】がありますね。あの溝は、濡れた道を走る時に、やはり、排水溝になります。タイヤと地面との間にある水を、溝でもって排出するわけです。これで、滑りにくくなります。
 キリギリス属の昆虫は、人類がタイヤを発明するより、何千万年も前から、この仕組みを発明していました。雨が降っているからといって、歩けなくなるのでは、困るからでしょう。偉大な先達です。決して「虫けら」などと、ばかにできませんね。
図鑑↓↓↓↓↓には、キンシバイ掲載されています。
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 過去の記事でも、キリギリスの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
キリギリスは、一種じゃない?(2015/6/19)
雌(メス)が鳴く種もいる? 鳴く虫たち(2012/8/6)
冬にも、バッタやキリギリスがいる?(2010/1/8)
日本の誇る虫文化【むしぶんか】(2009/9/14)
キリギリスは草食か肉食か?(2006/6/30)
などです。


2016年6月17日

目玉焼き? いえ、クラゲです

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 今回は、とても面白い姿をした生き物を、紹介しましょう。それは、クラゲの一種です。日本語の種名(標準和名)を、サムクラゲといいます。英語では、fried egg jellyfishと呼ばれます。直訳すれば、「目玉焼きクラゲ」です。ユニークな名前ですね。
 この英語名は、実物の姿を見れば、誰もが納得します。かさの部分が、目玉焼きにそっくりなのです。円いかさの中央が盛り上がっていて、黄色いです。その周囲は白っぽく、半透明です。卵の黄身と白身とが、そのまま海を泳いでいるようです。
 この「目玉焼き」は、かなり大きいです。かさの部分は、直径が60cmほどにもなります。ニワトリではなくて、ダチョウか何かの「目玉焼き」かも知れません(笑)
 この種は、最近まで、ミズクラゲ科に属するとされてきました。日本の海で普通に見られる、ミズクラゲと近縁だと思われたのですね。より正確に言えば、刺胞動物門【しほうどうぶつもん】鉢虫綱【はちむしこう】旗口クラゲ目【もく】ミズクラゲ科です。
 けれども、現在では、別の科に属するとされるようになりました。サムクラゲ科という科です。目【もく】以上の分類は、これまでと同じです。
 サムクラゲ科には、今のところ、サムクラゲただ一種が属します。この種のために作られた科です。それだけ、独自性が高い種だと、認められたのですね。
 サムクラゲは、冷たい海にしか棲みません。日本近海では、北海道の太平洋岸で見られます。冬には、それより南の海でも、見られることがあります。
 じつは、英語でfried egg jellyfishと呼ばれるクラゲは、もう一種います。そちらには、日本語の種名が付いていません。ラテン語の学名で、Cotylorhiza tuberculata【コティロリーザ・ツベルクラータ】といいます。地中海など、暖かい海に棲むクラゲです。
 Cotylorhiza tuberculataは、個体差が激しいです。目玉焼きにそっくりな個体もいますが、まるで似ていない個体もいます。日本語名がないからといって、標準和名を「メダマヤキクラゲ」にするのは、ちょっと語弊があるかも知れません。
 どうせなら、サムクラゲの標準和名を「メダマヤキクラゲ」にして欲しかったですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、「目玉焼きクラゲ」は、載っていません。かわりに、日本に分布するクラゲが、十六種ほど掲載されています。
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 過去の記事でも、クラゲの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
世界最大のクラゲとは?(2015/10/16)
クラゲダコとタコクラゲ、実在するのは、どっち?(2015/6/8)
世界最長生物とは?(2014/9/29)
一つの種に、二つの種名がある?(2013/5/13)
光合成するクラゲがいる?(2013/3/11)
などです。


2016年6月13日

美しいよそ者は、ゼニアオイ?

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 人間は、どこでも、美しい花を好みます。このために、国境を越えて、たくさんの植物が、観賞用に栽培されています。今回は、そのような植物の一つを、紹介しましょう。
 ゼニアオイ(銭葵)と呼ばれる植物があります。日本には、江戸時代に、中国経由で来たと考えられています。原産地は、ヨーロッパです。アオイ科ゼニアオイ属に属します。
 「ゼニ」アオイという名前は、何に由来するのでしょうか? これには、いくつかの説があります。有力な説の一つは、この植物の果実が、古銭の形に似るからといいます。
 ゼニアオイは、花を観賞するために、日本に入れられました。現在は、日本の各地で、野生化しています。雑草になっても、美しい花を咲かせます。
 じつは、ゼニアオイは、独立した種ではありません。ウスベニアオイという種の一変種とされます。現在は、ウスベニアオイも、日本で栽培されています。
 ウスベニアオイの原産地も、ヨーロッパです。日本には、変種のゼニアオイのほうが、先に入ったようです。このために、ゼニアオイのほうが、先に普及しました。
 ウスベニアオイのほうが母種なのに、属名が「ゼニアオイ」属なのは、ゼニアオイのほうが、馴染みのある植物だったからでしょう。現在は、ウスベニアオイのほうも、日本の各地で野生化しています。ゼニアオイとはよく似ていて、区別しにくいです。
 ウスベニアオイは、ハーブとしても利用されます。ハーブとしては、コモン・マロウcommon mallowという英語名で呼ばれることが多いです。花をハーブティーにすると、色が美しいために、喜ばれます。葉も食用になります。
 ウスベニアオイの果実には、英語で、チーズcheeseという俗称があります。円い果実が、車輪状のチーズに似るからだといいます。英国の俗信では、これは、妖精のチーズだといわれます。妖精の食べ物だというのですね。妖精伝承のある英国らしいです。
 先述のとおり、日本では、ゼニアオイの果実が、古銭に見立てられました。ゼニアオイの果実は、ウスベニアオイの果実と、そっくりです。そっくりな物が、違う物に見立てられるのは、文化の違いですね。面白いです。
図鑑↓↓↓↓↓には、日本に分布するアオイ科の植物が、五種ほど掲載されています。
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 過去の記事でも、アオイ科の植物を取り上げています。また、ハーブとして利用される植物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
クロッカスとサフランとは、同じ? 違う?(2016/3/7)
ハマゴウ? ハマボウ? ハマボウフウ? 紛らわしい植物たち(2015/8/31)
パセリは、古代ローマの香草?(2015/8/24)
ローズヒップは、バラの果実?(2015/2/6)
アオイ科でないアオイ(葵)がある?(2013/6/21)
などです。


2016年6月10日

ガ(蛾)は、どうやって暗闇で見る?

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 ガ(蛾)は、夜に活動する昆虫として、知られますね。暗い中で、どうやって障害物にぶつからずに、飛ぶのでしょうか? ガの眼を調べてみたところ、その表面が、特殊な構造をしていることがわかりました。電子顕微鏡で観察すると、見えてきます。
 ガの眼の表面は、びっしりと、微小な突起で覆われています。この突起に、秘密があります。この突起のおかげで、光の屈折率が高くなります。わかりやすく言えば、眼に到達したすべての光が、反射されずに、眼の中に入ってゆきます。
 少ない光でも、広範囲から集めることができれば、それなりに、物を見ることができるでしょう。夜に飛ぶガにとって、とても適した仕組みですね。
 しかも、このガの眼の構造は、可視光(ヒトの眼に見える光)だけを集めるのではありません。紫外線から、近赤外線までを、集められるとわかっています。ガたちは、ヒトの眼に見えない光まで見て、利用している可能性があります。
 このようなガの眼の構造は、光の屈折率を高める以外の効果もある、とわかってきました。例えば、水をはじく効果があります。雨の中を飛ぶのに、便利でしょうね。
 また、意外なことに、微小な突起のある表面は、なめらかな表面より、すべりやすいことがわかりました。もし、他の昆虫が、ガの眼に取りつこうとしたとしても、つるつるとすべって、取りつくことができません。ほこり避けにも、なりそうです。
 このように、ガの眼の構造には、素晴らしい特性が、いくつもあります。このために、それは、モスアイ構造―moth eye、ガの眼という意味―と呼ばれて、人間の役に立つのではないかと、研究されています。中には、実用化されたものもあります。
 それは、光の屈折率が高いことを、利用するものです。モスアイ型無反射フィルムと呼ばれます。モスアイ構造を持った、薄いフィルムです。
 このフィルムを、物の表面に貼れば、光をほとんど反射しなくなります。液晶ディスプレイなどに、利用できますね。光の反射がなくなって、見やすくなります。
 ガは、嫌われることが多い昆虫ですが、その造形は、素晴らしいものです。

図鑑↓↓↓↓↓には、日本に分布するガ(蛾)が、二十種ほど掲載されています。
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 過去の記事でも、ガ(蛾)の仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
野蚕【やさん】とは、野生のカイコか?(2015/12/25)
黄金の糸をつむぐ虫、クリキュラ(2015/12/18)
洞窟に棲むガ(蛾)がいる?(2015/11/6)
富士山の謎のガ(蛾)たち(2015/10/30)
絶滅寸前の害虫? ニカメイガなど(2015/8/21)
などです。


2016年6月 6日

愛の花? アガパンサス

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 梅雨も半ばを過ぎると、アガパンサスの花が咲き始めます。青紫の、涼しげな色合いの花です。すっくと高く伸びた茎の先に、何輪もの花が、まとまって付きます。
 アガパンサスという横文字の名前からは、日本原産でないことが、うかがえますね。南アフリカ原産の植物です。ムラサキクンシラン(紫君子蘭)属に属する種を、まとめてアガパンサスと呼びます。Agapanthusというラテン語の学名の英語読みです。
 ムラサキクンシラン属には、十種ほどの種が属します。すべて、南アフリカ原産です。どの種も、外見が似ています。おおむね、同じような青紫の花を咲かせます。その花を観賞するために、世界中で栽培されています。園芸品種も、いくつも作られています。
 ムラサキクンシラン属の中で、日本で最も平凡に見られるのは、ムラサキクンシランという種でしょう。背が高い草なので、よく、花壇にそろって植えられています。ムラサキクンシラン属のうち、日本語の種名が付いているのは、この種だけです。
 ムラサキクンシランという名からは、クンシラン(君子蘭)と近縁ではないかと思われますね。これについては、少し、ややこしい話があります。
 ムラサキクンシラン属は、近年、分類がころころと変わりました。昔は、ユリ科に属するとされていました。その後、ユリ科から分離されて、独自のムラサキクンシラン科とされました。この科に含まれる属は、ムラサキクンシラン属だけでした。
 けれども、また分類が変わって、ムラサキクンシラン属は、ヒガンバナ科ムラサキクンシラン亜科に入ることとなりました。科を分けるほどの独自性はないということです。
 いっぽう、クンシラン属は、昔から、ヒガンバナ科とされていました。今も、それは変わりません。同じ科に含まれるもの同士は、近縁であるといえます。近年になって、ムラサキクンシラン属は、クンシラン属と近縁であることが、判明したわけです。
 ムラサキクンシランという日本語名は、ほとんど使われません。普通は、属を一括して、アガパンサスと呼ばれます。Agapanthusというラテン語の学名は、直訳すれば、「愛の花」という意味です。なぜ、この属の植物が「愛の花」なのかは、不明です。
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、アガパンサス(ムラサキクンシラン属)は載っていません。かわりに、日本に分布するヒガンバナ科の植物が、四種ほど掲載されています。
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 過去の記事で、アガパンサスの画像を取り上げています。また、ヒガンバナ科に属する植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アマリリスは、アマリリス属ではない?(2016/4/11)
アガパンサスの画像(2015/7/2)
ユリ科は、大分裂中?(2013/9/20)
アガパンサスの画像(2011/8/31)
アガパンサスの画像(2009/7/9)
などです。


2016年6月 3日

水着、飛行機、ラケット、サメの科学力

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 サメは、海の捕食者として有名ですね。サメの体には、捕食者であるための特徴が、いくつもあります。今回は、そのような特徴の一つを、紹介しましょう。
 サメの特徴の一つとして、「サメ肌」があります。サメの皮膚は、ざらざらしています。サメの皮膚を、顕微鏡で見ると、小さな棘のようなものが生えています。それが、サメの鱗【うろこ】です。この鱗のために、ざらざらした感触の皮膚になっています。
 「サメ肌」は、海を泳ぐのに、重要な役割を果たします。意外なことに、すべすべした皮膚より、ざらざらした皮膚のほうが、水の抵抗が少なくて済むのです。
 つまり、少ない力で、より速く泳ぐことができます。捕食者であるサメには、重要なことですね。速く泳がなければ、獲物を捕まえることができません。
 最近、この「サメ肌」を応用して、人間用の水着が作られました。少し話題になったので、御存知の方もいるでしょう。競泳用の水着です。0.1秒を争う競泳の世界では、少しでも水の抵抗が減らせるなら、有利ですね。
 「サメ肌」は、他にも、いろいろなところに応用されています。
 例えば、「サメ肌」の構造を真似て作られたフィルムが開発されました。このフィルムは、船に貼られます。すると、水の抵抗が減るので、船は、より速くなります。ヨットレースのヨットや、オリンピック競技のボートなど、タイムを競う船に使われます。
 「サメ肌」で、水の抵抗が減らせるなら、空気の抵抗も減らせるのではないでしょうか? そう考えた人々によって、飛行機に「サメ肌」を応用する研究がされています。
 飛行機の場合、速さを追求するために、「サメ肌」が研究されるのではありません。主な目的は、燃料を節約するためです。空気の抵抗が少しでも減れば、使う燃料が減ります。飛行機は、燃料のコストが非常に高いため、燃料の節約に、大きな意味があります。
 空気の抵抗を減らすのでは、テニスのラケットにも、「サメ肌」を応用したものがあります。これで、高速で安定したスイングができるようになったそうです。
 何億年もかけて進化してきたサメには、ヒトが学ぶところが、たくさんありますね。
図鑑↓↓↓↓↓には、日本近海に分布するサメが、三種ほど掲載されています。
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 過去の記事でも、サメの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
サメには、歯医者が要らない?(2014/9/1)
サメやエイには、鰾【うきぶくろ】がない?(2014/5/12)
サカタザメは、サメ? それとも、エイ?(2012/12/17)
ノコギリザメと、ノコギリエイとは、違う? 同じ?(2012/7/16)
カスザメは、海中の天使?(2008/12/1)
などです。



2016年5月30日

デイゴは、極楽の花?

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 デイゴは、沖縄県の花として知られますね。春から初夏にかけて、鮮やかな赤い花を咲かせる樹木です。マメ科デイゴ属に属する一種です。
 すっかり沖縄に馴染んでいる植物ですが、沖縄が原産地ではありません。日本の内地が原産地でもありません。インドやマレー半島が原産地です。もともと、熱帯の植物です。
 原産地のインドでも、美しい花が咲く植物として、デイゴは、喜ばれるようです。インドの神話に、デイゴが登場します。それによれば、デイゴは、インドラという神さまが、天上の自分の庭園で栽培しているといいます。インドの天国の花ですね。
 天上にあったデイゴの花を、クリシュナという神さまが盗み出して、地上へ持ってきます。それから、地上にデイゴが咲くようになった、という由来ばなしになっています。
 インドは、仏教の故郷ですね。このために、インド神話は、仏教にも取り入れられました。仏教の説話の中でも、デイゴは、極楽に咲く花とされています。
 デイゴは、古代インドで使われたサンスクリット語で、マンダーラ、パーリジャータなどと呼ばれました。仏教が、インドから中国へ伝わった時に、サンスクリット語のデイゴの名前が漢訳されて、曼陀羅華【まんだらげ】(マンダーラの音訳)、波利質多羅【はりしったら】(パーリジャータの音訳)などと呼ばれるようになりました。
 曼陀羅華という名を聞いて、首をひねった方もいらっしゃるでしょう。現在の日本で曼陀羅華といえば、デイゴとは別の植物を指すからです。それは、正式な日本語名(標準和名)を、チョウセンアサガオという植物です。ナス科チョウセンアサガオ属の種です。
 チョウセンアサガオも、もともと、日本にあった植物ではありません。インドあたりが原産地です。インドから中国へ、チョウセンアサガオが伝わった時に、仏教の経典に登場する「曼陀羅華」が、チョウセンアサガオであると、誤解されたようです。
 本来の「曼陀羅華」であるデイゴは、仏教の経典に、よく登場します。仏陀が法を説く時、それを祝って天上から降り注ぐ花の一つが、曼陀羅華=デイゴだとされます。昔のインドの人には、デイゴの美しさが、天上の花にふさわしく見えたのでしょう。
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、デイゴは載っていません。かわりに、日本に分布するマメ科の植物が、二十種以上掲載されています。
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 過去の記事でも、仏教に関係する植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
仏教と植物、意外な関係(2014/12/19)
ムラサキケマンの「ケマン」とは?(2014/4/25)
仏典にも登場、マンゴー(2013/8/9)
ザクロが人肉の味というのは、本当?(2007/9/28)
花祭りの甘茶は、お茶の木からできる?(2007/4/5)
などです。


2016年5月27日

トンボの翅【はね】の秘密

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 トンボは、空中を巧みに飛ぶ昆虫ですね。昆虫の世界では、強力な捕食者でもあります。他の昆虫を捕まえて食べるのに、すばやく飛べる能力を使っています。
 トンボは、なぜ、あんなふうに、すいすいと飛べるのでしょうか? トンボの翅【はね】を調べてみたところ、不思議なことがわかりました。トンボの翅の断面図を作ってみると、滑らかではなく、でこぼこしているのです。
 飛行機の翼が、滑らかな、美しい形をしていることは、皆さん、御存知でしょう。大きな質量の物を、安定して飛ばすには、あのような翼が最適だからです。
 ところが、トンボのように、小さくて軽い物が飛ぶには、でこぼこした翅のほうが適することが、わかってきました。でこぼことは言っても、ヒトの肉眼で見て、それとわかるほどのものではありません。精密に測って、やっとわかる程度です。
 トンボくらい、小さくて軽いものは、空中を飛ぶのに、空気の粘性が問題になってきます。飛ぼうとすると、空気が、トンボの体に粘りついてきます。空中を飛んで進むには、空気を上手く引きはがさなければなりません。
 でこぼこのある翅は、粘りつく空気を、上手く流すことができます。これにより、トンボは、スムーズに飛ぶことができます。
 面白いことに、でこぼこのある翅は、例えばジェット機のような高速で飛ぶには、適しません。トンボくらいの低速で飛ぶのに、適しています。トンボは、身の丈に合った翅を持つわけですね。このようなトンボの翅を、人間の技術に応用できるかも知れません。
 それは、風力発電機に使えるのではないかと、検討されています。風力発電は、事実上、無限にある風力を使う発電ですね。その欠点は、一定以上の風が吹かないと、発電できないことです。微風でも発電できるなら、とても有利になります。
 低速で飛べるトンボの翅を応用すれば、微風でも回転して発電できる風力発電機が、できるかも知れません。しかも、強すぎる風が吹いた場合には、回転数が上がらず、危険性はありません。トンボに学んで、そんな風力発電機が、できるといいですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、日本に分布するトンボが、三十種ほど掲載されています。
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 過去の記事でも、トンボの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
トンボの産卵方法は?(2015/7/17)
七年生きるトンボがいる?(2012/11/12)
エミール・ガレの愛したトンボとは?(2011/9/12)
田んぼに飛ぶのは、早苗【さなえ】とんぼ?(2009/5/25)
「かげろう」の正体は、イトトンボ?(2008/10/3)
などです。



2016年5月23日

アイリスの正体は?

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 そろそろ、ハナショウブ(花菖蒲)の咲く季節になりました。ハナショウブは、日本を代表する園芸植物の一種ですね。日本情緒あふれる植物で、私も好きです。
 最近は、外国で品種改良されたハナショウブも、増えてきました。ハナショウブと同じアヤメ科アヤメ属には、同じように、観賞用に栽培される園芸植物が多いです。
 日本では、アヤメ科アヤメ属のうち、外国産で、園芸用に品種改良されたものを、一般的に「アイリス」と呼びます。外国の人から見れば、ハナショウブも、「アイリス」の一種です。「アイリスiris」とは、アヤメ属の植物を指す英語名だからです。
 では、日本で、「アイリス」と呼ばれる植物は、正式には、何という種なのでしょうか? じつは、これが、一筋縄には行かない問題です。複数の種が混じっていることが、確実だからです。しかも、それらの種自体が、雑種だったりします。
 花屋さんで、切り花として売られる「アイリス」の多くは、ダッチ・アイリスという園芸植物です。オランダアヤメという日本語名もありますが、ほとんど使われません。
 ダッチ・アイリスには、野生種は、ありません。観賞用に、複数のアヤメ属の種を交配して、作られた品種群だからです。最初に、オランダで作り出されたため、ダッチ・アイリスの名がつきました。交配の元になった原種は、ヨーロッパ産の種です。
 日本の花壇で栽培される、少し背の高い「アイリス」は、ジャーマン・アイリスであることが、多いです。ドイツアヤメという日本語名があります。こちらにも、野生種は、ありません。ダッチ・アイリスと同様に、人工的に作られた品種群だからです。
 ジャーマン・アイリスは、ダッチ・アイリス以上に、複雑に、さまざまな種が交配された品種群です。最初にジャーマン・アイリスと呼ばれるものが生まれたのが、ドイツでした。その時点で、ヨーロッパ東部原産の種同士を、交配して作られたようです。
 ジャーマン・アイリスは、品種改良が盛んな園芸植物です。毎年、何百もの新品種が発表されます。このために、花として、あらゆる色の品種があるといわれます。近年は、日本でも、園芸植物の最先端を行くジャーマン・アイリスが、見られるようになりました。
図鑑↓↓↓↓↓には、日本に分布するアヤメ科アヤメ属の種が、四種ほど掲載されています。
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 過去の記事でも、アヤメ科アヤメ属の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
マーガレットは、一種じゃない?(2015/7/20)
シャガは、「日本のアイリス」か?(2011/4/22)
アヤメ? いえ、カキツバタです(2010/5/14)
じつは外来種です、キショウブ(2009/4/24)
五月五日は、あやめの節句?(2007/4/30)
などです。



2016年5月20日

陸上にいるのに、鰓呼吸? フナムシ

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 岩の多い海岸へ行くと、フナムシが見られますね。平べったい体をして、すばやく走る節足【せっそく】動物です。昆虫ではありません。
 昆虫は三対(六本)の脚を持ちますが、フナムシは、七対(十四本)の脚を持ちます。ダンゴムシや、深海生物のダイオウグソクムシの仲間です。詳しく言えば、節足動物門【せっそくどうぶつもん】軟甲綱【なんこうこう】等脚目【とうきゃくもく】に属します。
 等脚目のうち、フナムシ科に属するものを、フナムシと総称します。普通に日本の海岸で見られるのは、それらのうちの、フナムシという種名の種です。
 種名フナムシは、海の近くに棲みますが、普段は、陸で暮らしています。にもかかわらず、彼らは、鰓【えら】で呼吸します。空気中で、どうやって鰓呼吸するのでしょうか?
 彼らの脚に、秘密があります。フナムシは、脚に水路を持つのです。
 フナムシの鰓は、体の後部の下側にあります。鰓に近い一番後ろの脚と、後ろから二番目の脚に、特別な構造があります。電子顕微鏡で見てみると、微小な毛状のものや、ペダル状のものが、きれいに配列していることが、わかりました。
 この微小な構造が、「微小水路」となって、地面にある水を、鰓へと吸い上げます。これで、フナムシは、鰓呼吸ができます。水を吸い上げるのに、特別な動力は、使いません。毛状の構造や、ペダル状の構造の仕組みだけで、吸い上げています。
 このフナムシの脚の構造を、水などの液体を輸送する仕組みに、応用できるかも知れません。もちろん、フナムシのように、体が小さいために、できる部分はあるでしょう。大容量の水などを、毛管が吸い上げる仕組みだけで運ぶのは、無理があります。
 それでも、少しの力で、効率よく輸送できるとしたら、素晴らしい技術の進歩です。きっと、さまざまな場面で、応用できるでしょう。
 海岸で群れているフナムシは、「ゴキブリのようで、気持ち悪い」と、嫌われることも多いです。けれども、決して、研究する価値のない生物ではないのですね。どんな生物にも、自然によって磨かれた仕組みが、潜んでいます。

図鑑↓↓↓↓↓には、フナムシが掲載されています。
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 過去の記事でも、フナムシの仲間(等脚目【とうきゃくもく】の生物)を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
フナムシは、川にもいる?(2013/12/23)
深海には、巨大な甲殻類がいる?(2013/7/22)
地球を制覇? ワラジムシの仲間たち(2011/11/25)
ワラジムシとダンゴムシとは、どう違う?(2008/11/3)
虫が島を壊す? ナナツバコツブムシ(2007/6/28)
などです。



2016年5月16日

ヤグルマギクは、アザミの仲間か?

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 ヤグルマギク(矢車菊)は、春から初夏にかけて、目にしみるような、青い花を咲かせますね。英語で、cornflower blue(ヤグルマギクの青)と呼ばれる色です。その花を観賞するために、世界各地で、栽培されます。ヨーロッパでは、麦畑の雑草でもあります。
 日本でも、ヤグルマギクは、初夏の花壇を彩る花になっていますね。現在は、日本の各地で、野生化もしています。原産地は、ヨーロッパのバルカン半島あたりといわれます。
 ヤグルマギクは、種名のとおり、キクの仲間です。キク科ヤグルマギク属に属する一種です。ヤグルマギク属には、三百以上もの種が含まれます。
 こんなに種があっても、ヤグルマギク属のうち、もともと日本に自生する種は、一種もありません。観賞用に、栽培される種は、いくつもあります。ヤグルマギク以外では、オウゴンヤグルマギク、アザミヤグルマなどの種が、栽培されます。
 今、アザミヤグルマという種を挙げました。ヤグルマギク属の種には、他にも、「○○アザミ」という種名が付くものが、いくつかあります。アザミ(薊)の花と、少し似た感じの花が付くからでしょう。ヤグルマギク属は、アザミの仲間なのでしょうか?
 この答えは、どちらとも言えます。アザミの仲間とは、キク科アザミ属の植物を指すからです。同じキク科ですから、近縁であることは、間違いありません。とはいえ、属が違います。このために、普段は、「近縁でも、別の仲間」とされることが多いです。
 ヤグルマギク属の「○○アザミ」には、クロアザミ、イベリアアザミ、ヤグルマアザミなどの種があります。非常に紛らわしいですが、アザミヤグルマと、ヤグルマアザミとは、別種同士です。もっと、区別しやすい種名にして欲しかったですね。
 「○○アザミ」という種名でも、キク科アザミ属ではなく、キク科ヤグルマギク属の種があることを、知っておくといいです。ちょっと知ったかぶりができます(笑)
 ヤグルマギクという種名も、少し前まで、一般的ではありませんでした。ヤグルマソウと呼ばれることが、多かったのです。しかし、正式な種名(標準和名)をヤグルマソウ(矢車草)という植物は、別にあります。ヤグルマギクとは、遠縁な種です。
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、ヤグルマギクは載っていません。かわりに、日本に分布するキク科の植物が、七十種以上掲載されています。
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 過去の記事でも、キク科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
コウモリ? いえ、植物です(2015/10/26)
マーガレットは、一種じゃない?(2015/7/20)
キクイモは、菊の花咲くイモ?(2015/2/13)
アゼトウナは、田の畔に生えない?(2015/1/16)
伝説の薬草? ヤブタバコ(2014/11/21)
などです。


2016年5月13日

山火事を察知する? ナガヒラタタマムシ

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 オーストラリアは、山火事が多い所です。日本より、ずっと乾燥した気候だからでしょう。たいがいの生物にとって、山火事は、恐ろしいものです。けれども、オーストラリアのように山火事が多い所では、それを利用する生物もいます。
 今回は、そのような生物を紹介しましょう。それは、ナガヒラタタマムシ属の昆虫たちです。甲虫目【こうちゅうもく】タマムシ科に属します。あの、きらきら光って美しい、ヤマトタマムシの仲間です。でも、外見があんなに美しい種ばかりではありません。
 普通の生物は、山火事が迫ってきたら、急いで逃げます。ところが、ナガヒラタタマムシ属の種には、逆に、山火事を遠くから察知して、近づいてゆくものがいます。
 なぜ、そんな危険なことをするのでしょうか? じつは、ナガヒラタタマムシ属の幼虫には、火事で燃え残った樹木の中で、育つものがいるのです。驚きですね。
 山火事で燃え落ちてしまった森林には、敵がいません。食べ物を奪い合う競争相手も、いません。ナガヒラタタマムシは、悠々と育つことができるわけです。
 ナガヒラタタマムシ属の雌の成虫は、10km以上も離れた所から、山火事を察知するといわれます。そうして、産卵しに行くのですね。彼女たちは、どうやって、そんなに遠くから、山火事を察知することができるのでしょうか?
 最近の研究によれば、ナガヒラタタマムシは、一種の熱センサーを持つことがわかりました。頭部の眼の後ろの部分に、そのセンサーがあります。
 そのセンサーは、球状の細胞が集まって、できています。球状細胞の中には、水があります。細胞内には、細い水路が張り巡らされており、その水路構造の底に、感覚毛が生えています。この感覚毛でもって、水の動きを敏感に感じ取ります。
 小さな細胞の、さらに微細な水路に閉じ込められた水は、少しの熱が加われば、膨張します。それを、感覚毛で感じ取るのですね。立派な熱センサーです。
 ナガヒラタタマムシ属では、ツメアカナガヒラタタマムシという種が、日本に分布します。この種も、調べれば、面白いことが、わかるかも知れませんね。

図鑑↓↓↓↓↓には、タマムシ科のタマムシ(ヤマトタマムシ)、ウバタマムシ、ムツボシタマムシが掲載されています。
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 過去の記事でも、タマムシの仲間を取り上げています。また、タマムシ以外の甲虫も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
タマムシやコガネムシは、なぜ、美しい?(2015/2/16)
親が親なら、子も子、カメノコハムシ(2014/6/9)
害虫は、食べて退治? ヤシオオオサゾウムシ(2013/7/29)
真似るものが生き残る? ベイツ擬態の虫たち(2012/10/29)
玉虫色【たまむしいろ】とはどんな色?(2006/9/1)
などです。



2016年5月 9日

コショウ(胡椒)? いえ、フウトウカズラです

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 生物の分類については、以前、このブログで、取り上げましたね(生物分類の、目【もく】や科とは、なに?(2009/8/12))。分類学上、科や属が同じならば、近縁な種同士と見なされます。特に、属が同じもの同士は、とても近縁です。
 同じ属に属する種同士は、たいがい、互いに姿が似ていたり、性質が似ていたりします。見た目で、明らかに、「近縁種同士だろうな」と感じるものが多いです。
 とはいえ、同じ属でも、重大な違いのある種同士もあります。今回は、そのような例を紹介しましょう。フウトウカズラ(風藤葛)と、コショウ(胡椒)です。
 コショウは、スパイスの一種として、お馴染みですね。日本には自生しない植物です。原産地は、インドです。現在では、世界の熱帯地域で、広く栽培されています。
 熱帯でなければ育たないため、日本では、商業的なコショウの栽培は、されていません。植物園にあるくらいです。コショウ科コショウ属に属する一種です。
 コショウ科コショウ属には、七百種以上もの種が属します。それらの大部分は、熱帯に分布します。コショウ以外のコショウ属の種にも、コショウのように、風味づけに使われるものがあります。ヒハツ、ヒハツモドキ、キンマなどの種が、そうです。
 例えば、ヒハツは、かつて、ヨーロッパで、コショウと同じように用いられました。ヒハツモドキは、日本の沖縄県で、香辛料に用いられています。
 ならば、コショウ属の種は、すべて、コショウのように使えるのでしょうか? そんなことはありません。フウトウカズラは、スパイスにされないコショウ属の一種です。
 フウトウカズラは、温帯に分布する、珍しいコショウ属でもあります。日本の関東地方以西に分布します。植物の外見は、コショウに似ています。このために、コショウと混同されることがあります。しかし、香辛料にならない、という重大な違いがあります。
 フウトウカズラのフウトウ(風藤)とは、どういう意味でしょうか? どうやら、これは、中国での名「海風藤」が略されたもののようです。フウトウカズラは、つる状になるため、つる植物の一般的な名「かずら」を付けて、日本語名としたのでしょう。

図鑑↓↓↓↓↓には、フウトウカズラ掲載されています。
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 過去の記事でも、似ている植物同士を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
マーガレットは、一種じゃない?(2015/7/20)
マツバギクとマツバボタンとは、違う? 同じ?(2015/7/13)
ワスレナグサ? いえ、ルリソウです(2015/4/17)
運命の分かれ道、ヒルムシロ属の植物たち(2014/12/26)
雑草か食草か? コナギとミズアオイ(2010/6/4)
などです。



2016年5月 6日

交流は限定的? 小笠原諸島の鳥たち

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 小笠原諸島は、独自の生物が多いことで、知られますね。このほど、また、小笠原の生物の独自性を示す研究結果が、公表されました。鳥類についてです。
 小笠原諸島には、ヒヨドリ(鵯)が分布します。本土のヒヨドリと同じ種ですが、亜種が違います。小笠原諸島には、二亜種のヒヨドリがいます。オガサワラヒヨドリと、ハシブトヒヨドリです。前者は小笠原諸島の北部に、後者は南部に分布しています。
 これまで、小笠原諸島に、なぜ、二亜種のヒヨドリがいるのかが、不明でした。それが、このたびの調査で、明らかになりました。これら二亜種のヒヨドリは、それぞれ、起源する地が違うと判明しました。そのために、違いが出たのですね。
 オガサワラヒヨドリのほうは、沖縄県の八重山諸島に起源があるとわかりました。八重山諸島に分布するヒヨドリは、イシガキヒヨドリという亜種です。オガサワラヒヨドリは、ヒヨドリの亜種の中では、イシガキヒヨドリと近縁なのでしょう。
 ハシブトヒヨドリのほうは、本州や伊豆諸島に起源があるとわかりました。こちらは、基亜種―種を記載する元になった亜種―のヒヨドリと近縁、ということです。
 八重山諸島から来たヒヨドリと、本州や伊豆諸島から来たヒヨドリとは、近くにいたのに、交雑しませんでした。その理由は、わかっていません。
 それぞれ独自に繁殖を続けた結果、八重山起源のものはオガサワラヒヨドリに、本州や伊豆諸島起源のものは、ハシブトヒヨドリに進化しました。
 似たことが、小笠原諸島のメジロ(目白)でも起こった、という研究結果が出ています。
 小笠原諸島の南部、硫黄島などの火山列島には、イオウトウメジロというメジロの亜種が分布します。同じ火山列島の中でも、硫黄島と、南硫黄島とのイオウトウメジロの間には、交流がないと判明しました。二つの島は、約60kmしか、離れていませんのに。
 メジロやヒヨドリに限らず、多くの鳥類は、空を飛べるために、移動能力が高いです。それでも、近隣の同種の個体と、長い間、交流を絶つことも、あるのですね。なぜ、そういうことが起こるのか、謎は、まだ解かれていません。

図鑑↓↓↓↓↓には、ヒヨドリ、メジロ<掲載されています。
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 過去の記事でも、ヒヨドリやメジロを取り上げています。また、小笠原諸島の生物についても、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
再来なるか? ニシノシマホウキガニ(2015/7/10)
小笠原諸島のトカゲたち(2011/9/26)
ヒヨドリ(鵯)は、漂鳥【ひょうちょう】か?(2010/10/22)
メグロはメジロと仲良し?(2007/11/12)
梅にウグイス? いえメジロです(2007/3/12)
などです。


2016年5月 2日

ヒナゲシの英語名は、ポピーpoppyか?

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 ヒナゲシ(雛罌粟)は、春から初夏にかけて、愛らしい花を咲かせますね。ヨーロッパ原産の植物ですが、日本でも、観賞用に栽培されます。今では、日本の花壇や花屋さんでも、すっかりお馴染みですね。園芸の世界では、ポピーと呼ばれることが多いです。
 ポピーという呼び名は、ヒナゲシの英語名corn poppyに由来します。Corn poppyのcornとは、ムギ(麦)の意味です。ヨーロッパの野生のヒナゲシは、麦畑の雑草なのですね。このことから、「麦畑のケシ」を意味する英語名が付きました。
 ポピーpoppyという英語名は、ケシ科ケシ属に属する種の総称です。ですから、単にポピーと呼んだのでは、ヒナゲシを指すとは限りません。ケシ属の中で、一般的に、観賞用に栽培される種としては、ヒナゲシ以外に、シベリアヒナゲシやオニゲシがあります。
 シベリアヒナゲシは、日本でも、英語名のアイスランド・ポピーIceland poppyで呼ばれることが多いです。ところが、この種は、極北の島国アイスランドには、分布しません。正式な日本語名(標準和名)のとおり、シベリアに分布します。
 花屋さんで、切り花で売られる「ポピー」は、多くが、シベリアヒナゲシです。この種は、ケシ属の中では、例外的に花もちが良いからです。数日間、咲いています。
 オニゲシ(鬼罌粟)は、園芸の世界では、英語名のオリエンタル・ポピーoriental poppyで呼ばれることが多いです。「オニ(鬼)」という語感が、嫌われるようです。しかし、大ぶりでしっかりした花を見ると、「鬼」という呼び名もふさわしいと思えます。
 紛らわしいことに、ケシ科ケシ属ではないのに、ポピーpoppyという英語名が付く植物もあります。標準和名をハナビシソウ(花菱草)という種が、そうです。
 ハナビシソウは、英語名のカリフォルニア・ポピーCalifornia poppyで呼ばれることがあります。でも、ハナビシソウは、ケシ科ハナビシソウ属に属します。ハナビシソウも、日本原産種ではありませんが―米国原産です―、日本で、観賞用に栽培されます。
 ヒナゲシ、シベリアヒナゲシ、オニゲシ、ハナビシソウ、どの種にも、たくさんの園芸品種があります。日本の春から初夏を、彩ってくれる花たちです。

図鑑↓↓↓↓↓には、ヒナゲシ掲載されています。
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 過去の記事でも、ケシ科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
薬用にも、観賞用にも、エンゴサク(2015/4/24)
ムラサキケマンの「ケマン」とは?(2014/4/25)
ヤマブキ(山吹)? いえ、違います(2011/4/29)
などです。


2016年4月25日

ニワウメは、梅? ニワザクラは、桜?

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 以前、このブログで、バラ科サクラ属の分類について、取り上げましたね(サクラの分類は、どうなっている?(2016/3/14))。今回も、それに関連した話をしましょう。
 バラ科サクラ属(新サクラ属)に含まれる種には、観賞用に栽培されるものが多いです。中に、ニワウメ(庭梅)という種があります。ウメの名が付くのに、新サクラ属とは、どういうことでしょうか? ウメは、多く、アンズ属やスモモ属とされますのに。
 ニワウメは、ウメとは、まったく別の種です。ウメとは、同じバラ科ですので、近縁であることは、間違いありません。かつては、ウメもニワウメも、同じバラ科サクラ属(旧サクラ属)に入れられていました。現在は、バラ科の中の別属に分類されています。
 ニワウメの分類については、まだ流動的です。バラ科サクラ属(新サクラ属)とされることが多いですが、バラ科ニワウメ属とする意見もあります。
 どちらにせよ、ニワウメが、ウメと同じ属にされることは、なさそうです。なのに、ニワ「ウメ」という種名が付いたのは、花や果実が、ウメに似るからです。
 ニワウメの原産地は、中国です。日本には、観賞用に導入されました。導入された時期は、はっきりしません。同じように中国から入れられたウメよりも、遅れて入りました。でなければ、ニワウメが、ウメにちなんだ名になることは、なかったでしょう。
 ニワウメに似た植物で、やはり、観賞用に栽培される種として、ニワザクラ(庭桜)があります。以前は、ニワザクラは、ニワウメの変種だと考えられていました。現在では、ニワウメとは別種だとされています。中国原産なのは、ニワザクラも同じです。
 ニワウメの花が一重咲きなのに対して、ニワザクラの花は、八重咲きです。ニワウメには、さくらんぼのような果実が付きますが、ニワザクラには、普通、果実が付きません。
 ニワザクラも、ニワウメと同じく、バラ科サクラ属(新サクラ属)に分類されることが多いです。新サクラ属で、種名にも「サクラ」が付くものの、普通は、サクラの一種とは、見なされません。ニワウメに近い種という扱いです。
 分類がどうあろうと、ニワウメもニワザクラも、日本の春を彩ってくれる植物です。
図鑑↓↓↓↓↓には、エドヒガン、オオシマザクラ、ヤマザクラなど掲載されています。
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 過去の記事でも、バラ科サクラ属の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
山桜があるなら、里桜もある?(2016/3/28)
小さいことは、いいことだ? マメザクラ(2016/3/21)
サクラの分類は、どうなっている?(2016/3/14)
彼岸桜は、一種ではない?(2014/3/21)
これでもサクラです、ウワミズザクラ(2012/4/13)
などです。



2016年4月22日

アカガエル属は、大分裂中? その2

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 先週のこのブログで、アカガエル科アカガエル属の分類について、取り上げましたね(アカガエル属は、大分裂中?(2016/4/1))。日本の(元)アカガエル属は、まだまだ、他にも、分類が変わっている最中です。今回は、先週の続きとしましょう。
 ホルストガエルは、世界中で、日本の南西諸島にしか、分布しません。とても珍しいカエルです。この種も、元は、アカガエル科アカガエル属とされていました。現在は、アカガエル科バビナ属とされています。
 同じバビナ属には、オットンガエルも属します。ホルストガエルと同じく、アカガエル属から、分離されました。オットンガエルも、日本の南西諸島にしか、分布しない種です。
 ハナサキガエルという種については、もう少し、事情が複雑です。
 ハナサキガエルも、長い間、アカガエル属に入れられてきました。それが、アカガエル属から分離されるより前に、「ハナサキガエルと呼ばれるカエルは、一種ではない。複数の種が含まれる」と、判明しました。このために、新たに、三種が生まれました。
 かつての「ハナサキガエル」のうち、沖縄本島に分布するものは、そのまま、ハナサキガエルとされました。奄美大島と徳之島に分布するものは、アマミハナサキガエルとされました。石垣島と西表島にいる「ハナサキガエル」は、二種に分けられました。
 石垣島と西表島の「ハナサキガエル」は、オオハナサキガエルと、コガタハナサキガエルとの、二種になりました。種名のとおり、この二種は、体の大きさが違います。
 計四種となった「ハナサキガエル・グループ」は、まとめて、アカガエル属から分離されました。現在は、四種とも、ニオイガエル属となっています。
 「イシカワガエル」についても、似た事情があります。「イシカワガエル」も、アカガエル属から分離されるより前に、複数の種が含まれると判明しました。
 現在は、沖縄本島と徳之島の「イシカワガエル」が、オキナワイシカワガエルという種にされています。奄美大島の「イシカワガエル」は、アマミイシカワガエルになりました。これら二種は、ハナサキガエルと同じ、ニオイガエル属に入れられました。
図鑑↓↓↓↓↓には、オットンガエルやホルストガエルなど、元・アカガエル科アカガエル属に属するとされた種が掲載されています。
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 過去の記事でも、カエルの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アカガエル属は、大分裂中?(2016/4/1)
新種発見、ネバタゴガエル(2015/7/24)
伊豆諸島の外来生物とは?(2014/11/17)
人を殺せるカエルがいる?(2013/6/3)
子育てをするカエル、アイフィンガーガエル(2012/6/11)
などです。


2016年4月18日

ミヤマシキミと、シキミとは、違う? 同じ?

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 このブログでは、紛らわしい種名の種同士を、何回も紹介してきました。今回も、そのような種を、二つ、紹介しましょう。ミヤマシキミ(深山樒)と、シキミ(樒)です。
 シキミという植物は、多くの方が、聞いたことがあると思います。仏さまに捧げるのに、使われる植物ですね。シキミという正式な日本語名(標準和名)以外に、ハナノキ、ハナシバ、コウシバ、コウバナなどという呼び名があります。
 シキミは、春に、白い花を咲かせます。秋には、八角形の、独特の形をした果実を付けます。けれども、仏さまに捧げるには、花や果実より、常緑の葉を使います。マツブサ科シキミ属に属する一種です。以前は、シキミ科シキミ属とされていました。
 シキミとはまったく別に、ミヤマシキミという植物があります。種名が似ていても、ミヤマシキミとシキミとは、別種です。互いに近縁でもありません。ミヤマシキミは、ミカン科ミヤマシキミ属に属します。日本で、この属に属する種は、ミヤマシキミだけです。
 ミヤマシキミも、春に白い花を咲かせます。秋には、赤く美しい果実が実ります。ミヤマシキミは、雌雄異株【しゆういしゅ】なので、果実が付くのは、雌の株だけです。
 ミヤマシキミと、シキミとは、近縁でもないのに、なぜ、似た種名が付いたのでしょうか? これについては、わかっていません。そもそも、「しきみ」という言葉の語源に、複数の説があります。どの説が正しいのか、決着がついていません。
 昔の日本人は、ミヤマシキミもシキミも、特に区別せずに、「しきみ」と呼んでいたようです。その名残が、ミヤマシキミのラテン語の学名にあります。
 ミヤマシキミ属のラテン語の学名は、Skimmiaといいます。これは、日本語名の「しきみ」を、ラテン語化したものです。ラテン語では、標準和名シキミのほうではなくて、ミヤマシキミのほうが、「しきみ」Skimmiaだとされてしまいました。
 ミヤマシキミには、多くの変種があります。それらの変種には、ツルシキミのように、「○○シキミ」という変種名が付いています。「○○シキミ」という名でも、標準和名シキミとは、関係ありません。紛らわしいですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、ミヤマシキミや、シキミなどが掲載されています。
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 過去の記事でも、シキミについて、取り上げています。また、紛らわしい種名の植物についても、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アカシアと、ニセアカシアとの関係は?(2016/2/15)
ハマゴウ? ハマボウ? ハマボウフウ? 紛らわしい植物たち(2015/8/31)
マツバギクとマツバボタンとは、違う? 同じ?(2015/7/13)
ミツバウツギは、ウツギと遠縁(2015/5/29)
シキミ(樒)は、なぜ、仏事に使う?(2010/9/17)
などです。



2016年4月15日

カイメン(海綿)の体の秘密

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 カイメンは、海の岩場へ行くと、見られる生物です。磯の岩に、橙【だいだい】色や黒色で、海藻とも思えない、不定形のかたまりが付いているのを、見たことがありませんか?
 それは、たいてい、カイメンの仲間です。専門的には、海綿動物門【かいめんどうぶつもん】というグループに属します。多細胞動物の中で、最も原始的だといわれます。
 カイメンの仲間には、胃や腸などの消化器官がありません。鰓【えら】のような呼吸器官も、ありません。心臓などの循環器官はおろか、血液もありません。
 これで、どうやって生きているのでしょうか? カイメンの体の中には、隅々にまで、水が行き渡る水路が作られています。この水路が、消化器官・呼吸器官・循環器官などを、すべて兼ねます。血液の代わりに、水が体内を巡っています。
 カイメンの体内の水路をたどってゆくと、必ず、襟細胞室【えりさいぼうしつ】という、小さな部屋に行き当たります。ここには、襟細胞【えりさいぼう】と呼ばれる細胞が集まっています。襟細胞は、鞭毛【べんもう】という細長い器官を持ちます。
 この鞭毛を動かして、カイメンは、常に水をかいています。このために、水路全体に、水の流れができます。カイメンの表面の入水孔から入った水は、襟細胞室を経て、出水孔から出てゆきます。この間に、水から、酸素や栄養を、直接、取り込みます。
 カイメンの仲間は、体の形が不定なものが、多いです。その時々の環境に応じて、自在に体を成長させます。どんな形になろうと、全体に、水路が張り巡らされます。
 何らかの障害があって、水路の一部が壊れてしまったとしましょう。それでも、カイメンは、全体に水を行き渡らせることができます。別の迂回路【うかいろ】を作るなどして、水のネットワークを維持することができるのです。
 このカイメンのネットワークが、近年、人間に注目されています。人間の生活に、応用できそうだからです。例えば、配水管網の維持に、応用できそうですよね。
 どこかで配水管が詰まっても、すぐに水を供給できる配水管網があれば、どれだけ役に立つでしょう。もしかしたら、カイメンが、教えてくれるかも知れません。
図鑑↓↓↓↓↓には、日本近海に棲むカイメンが、四種ほど掲載されています。
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 過去の記事でも、カイメンを取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
貝? いえ、カイメンです(2014/12/22)
ドウケツエビは、いい夫婦?(2014/12/8)
深海に立つシャンデリア? いえ、生き物です(2013/10/14)
どんな形にもなれる? カイメン(海綿)(2012/12/24)
カイメン(海綿)は、多細胞動物の祖先?(2009/11/13)
などです。


2016年4月11日

アマリリスは、アマリリス属ではない?

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 園芸植物の中に、アマリリスと呼ばれるグループがありますね。植物自体を知らなくても、アマリリスという名は、聞いたことのある方が多いのではないでしょうか。
 現在、観賞用に栽培されるアマリリスには、何百という園芸品種があります。複数の原種が、何回も交配されて、たくさんの園芸品種が作られました。このために、園芸植物の「アマリリス」は、一種ではなく、品種群をまとめて呼ぶ名となっています。
 ややこしいことに、アマリリス以外に、ホンアマリリスと呼ばれる園芸植物の一種があります。なぜ、こんな紛らわしい名が付いているのかといえば、昔、アマリリスとホンアマリリスとが、同じグループに属すると考えられたためです。
 もともと、ヒガンバナ科アマリリス属に属するとされた種が、アマリリスと総称されていました。現在のアマリリスも、ホンアマリリスも、この属だとされていました。
 ところが、のちに、研究が進んで、アマリリス属から、現在のアマリリス品種群が分離されました。現在のアマリリス品種群は、ヒガンバナ科ヒッペアストルム属に属します。
 ヒッペアストルム属の野生種は、すべて、中米、南米、カリブ海諸国に分布します。これらの原種が交配されて、現在のアマリリス園芸品種群が生まれました。
 アマリリスという園芸上の呼び名は、もとのラテン語の学名Amaryllisに由来します。アマリリス属のAmaryllisです。現在の正しい属名は、ヒッペアストルム属―ラテン語の学名Hippeastrum―ですが、園芸の世界では、今なお、アマリリスと呼ばれます。
 いっぽう、ホンアマリリスは、ヒガンバナ科アマリリス属に残されました。分離されたヒッペアストルム属のアマリリスと区別するために、ホン(本)アマリリスという種名が付けられました。属名も、ホンアマリリス属に変えられました。
 ホンアマリリス属には、ホンアマリリスと、もう一種しか、属しません。ホンアマリリス属の種も、観賞用に栽培されることがあります。
 現在、日本語で「アマリリス属」というと、ヒッペアストルム属を指す場合と、ホンアマリリス属を指す場合とがあります。どちらを指すのか、確認が必要です。
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、アマリリスは載っていません。かわりに、日本の植物が、八百種以上掲載されています。
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 過去の記事でも、紛らわしい名を持つ植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アカシアと、ニセアカシアとの関係は?(2016/2/15)
どれが正しい? ヤマハッカ属の学名(2015/9/14)
ハマゴウ? ハマボウ? ハマボウフウ? 紛らわしい植物たち(2015/8/31)
マツバギクとマツバボタンとは、違う? 同じ?(2015/7/13)
ミツバウツギは、ウツギと遠縁(2015/5/29)
などです。


2016年4月 8日

ヌタウナギは、スーパー繊維の持ち主?

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 ヌタウナギという生物の名を、聞いたことがおありでしょうか? 名前のとおり、外見は、ウナギに似て、細長いです。多くのヌタウナギの仲間は、深海に棲みます。
 外見が似ていても、ヌタウナギは、ウナギとは、まったく違う生物です。厳密に言えば、魚類ですらありません。魚類より、もっと原始的な脊椎動物です。ヌタウナギに近縁なのは、ヤツメウナギです。ヤツメウナギとヌタウナギと合わせて、円口類と呼ばれます。
 先述のとおり、円口類は、魚類とは違うグループです。現存する脊椎動物の中では、最も原始的とされます。が、便宜的に、魚類に入れられることが多いです。
 ヌタウナギには、魚類のウナギとは違う、いくつもの特徴があります。外見で、すぐに気づくのは、眼がないことです。暗い深海で暮らすため、彼らは、事実上、視覚を捨てたと考えられています。かわりに、嗅覚や触覚を発達させました。
 ヌタウナギの顔を見ると、顔の先端に、「口」が開いているように見えます。ところが、これは、口ではありません。鼻孔です。鼻孔が大きいので、口に見えてしまうのですね。嗅覚を発達させたために、こうなりました。本当の口は、顔の下側にあります。
 ヌタウナギの「ヌタ」とは、どういう意味でしょうか? これは、彼らが、ヌタヌタした粘液を分泌することに由来します。この粘液は、ヌタウナギが獲物を捕えたり、敵の攻撃を防いだりするのに使われます。分泌された粘液は、水を吸って量が増えます。
 水中で増えたヌタヌタは、強力な武器になるようです。ヌタヌタが鰓にからんで、窒息してしまう生き物もいます。水中から、ヌタヌタを引き上げてみると、透明なゼリー状の塊になっています。とても丈夫で、引っ張っても、ちぎれません。
 近年、このヌタヌタが、注目されています。人間の役に立つかもしれないからです。
 ヌタヌタを調べると、非常に細い繊維状になっています。この繊維は、なんと、同じ太さのナイロン繊維や、ケブラー繊維よりも、丈夫だとわかりました。人工的に、この繊維を再現できれば、ナイロンやケブラーにとって代わるかも知れません。
 いつか、ヌタウナギから学んだ繊維が、私たちの体を飾る日が来るでしょうか。
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、ヌタウナギは載っていません。かわりに、日本の魚類が、五十種以上掲載されています。
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 過去の記事でも、円口類【えんこうるい】を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ヤツメウナギは、魚類か?(2012/2/6)
などです。


2016年4月 4日

ウンゼンツツジは、雲仙には生えない?

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 ツツジの仲間(ツツジ科ツツジ属)は、日本の春を彩る花ですね。日本の各地で、地方自治体の花に選ばれています。日本人に、この仲間が愛されている証拠でしょう。
 ところが、ツツジ属の種の呼び名では、困ったことが起きています。正式な日本語名(標準和名)と、地方での呼び名とが、食い違っている種があるのです。
 最も混乱を引き起こしているのは、標準和名を、ウンゼンツツジという種でしょう。この種は、長崎県の雲仙岳から種名が付きました。なのに、雲仙岳には、ウンゼンツツジは、自生しません。ならば、なぜ、ウンゼンツツジという種名になったのでしょうか?
 ウンゼンツツジという呼び名は、江戸時代から、用いられていました。江戸時代に、ウンゼンツツジという名が付いた理由は、わかっていません。古くからの呼び名を尊重する形で、現代の標準和名も、ウンゼンツツジとされました。
 雲仙岳に行かれたことのある方は、不思議に思うかも知れませんね。雲仙岳には、「ウンゼンツツジ」と呼ばれるツツジが、たくさん生えているからです。
 じつは、雲仙岳の「ウンゼンツツジ」は、標準和名をミヤマキリシマという、別種のツツジです。九州の霧島山に自生するため、この名が付きました。ミヤマキリシマは、霧島山以外に、雲仙岳、阿蘇山など、九州各地の高山に分布しています。
 長崎県の県花になっている「雲仙ツツジ」は、ミヤマキリシマを指します。
 標準和名ウンゼンツツジには、紛らわしい別名があります。和歌山県での呼び名です。
 和歌山県では、標準和名ウンゼンツツジを、「コメツツジ」と呼びます。けれども、標準和名をコメツツジとする種が、別にあるのです。標準和名コメツツジも、標準和名ウンゼンツツジも、花や葉が小さいため、米粒にたとえられたようです。
 整理してみましょう。長崎県の雲仙ツツジ=標準和名ミヤマキリシマです。和歌山県の「コメツツジ」=標準和名ウンゼンツツジです。
 地方での呼び名を、うまく標準和名に取り込めればよいのですが、なかなか、そうは行きません。ある地方を優先させれば、他の地方を退けることになるからです。
図鑑↓↓↓↓↓には、ヤマツツジ、ミツバツツジ、シロヤシオなどが掲載されています。
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 過去の記事でも、ツツジ科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
仏教と植物、意外な関係(2014/12/19)
満天の星、ドウダンツツジ(2014/5/9)
ツツジとシャクナゲとは、どう違う?(2013/4/5)
これでも本名です、シャシャンボ(2012/7/20)
ブルーベリーは、一種じゃない?(2012/5/25)
などです。


2016年4月 1日

アカガエル属は、大分裂中?

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 近年、生物の分類が、大幅に見直されることが、増えています。このブログでも、そういう話題が多いですね。それは、生物学が進歩している証拠です。
 今回も、分類の話を取り上げましょう。両生類の中の、アカガエル科アカガエル属の分類についてです。従来、この属には、トノサマガエルや、ツチガエル、ヌマガエル、ニホンアカガエルなどの、よく知られた種が属するとされてきました。
 しかし、以前から、「アカガエル属の分類は、大ざっぱ過ぎる。アカガエル科のうち、所属がよくわからないものは、とりあえずアカガエル属にされている」といわれてきました。最近では、アカガエル属を細分化することが、多くなっています。
 例えば、トノサマガエルです。二〇一六年現在では、アカガエル属から分離されて、トノサマガエル属とされています。トノサマガエル属には、ダルマガエルも属します。
 ツチガエルも、アカガエル属から分離されて、ツチガエル属となりました。この属には、他に、サドガエルも属します。サドガエルは、二〇一〇年代になってから発見された新種です。佐渡島にだけ分布します。外見は、ツチガエルにそっくりです。
 ヌマガエルに至っては、アカガエル属どころか、アカガエル科からも、分離されました。ヌマガエル科という科が、新設されたのです。ヌマガエルは、ヌマガエル科ヌマガエル属とされました。同じヌマガエル科ヌマガエル属には、サキシマヌマガエルも属します。
 ヌマガエル科に移されたのは、ナミエガエルも同じです。ナミエガエルも、以前は、アカガエル科アカガエル属に入れられていました。現在は、科も属も移されて、ヌマガエル科クールガエル属となっています。
 元のまま、アカガエル科アカガエル属に残されている種も、あります。ニホンアカガエル、タゴガエルなどが、そうです。けれども、この分類も、怪しいといわれています。アカガエル属は、もともと、ヨーロッパの種を基準に作られた属だからです。
 日本から遠く離れたヨーロッパの種と、日本の種とが、同じ属でいいものでしょうか? 今しばらくは、アカガエル属の分類から、目が離せません。

図鑑↓↓↓↓↓には、トノサマガエルやニホンアカガエルなど、元・アカガエル科アカガエル属に属するとされた種が掲載されています。
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 過去の記事でも、カエルの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
新種発見、ネバタゴガエル(2015/7/24)
伊豆諸島の外来生物とは?(2014/11/17)
人を殺せるカエルがいる?(2013/6/3)
子育てをするカエル、アイフィンガーガエル(2012/6/11)
固有生物の宝庫、対馬【つしま】(2012/4/23)
などです。



2016年3月28日

山桜があるなら、里桜もある?

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 現在の日本で、「お花見」といえば、ソメイヨシノ(染井吉野)の花を見るのが、普通ですね。けれども、歴史的には、そうなったのは、ごく最近です。江戸時代以前の日本人が、「桜の花見をする」場合は、多く、ヤマザクラ(山桜)の花を見ていました。
 ソメイヨシノは、江戸時代の末期に、人工的に作られたサクラの品種です。それに対して、ヤマザクラは、もともと日本に自生する野生のサクラです。
 ですから、平安時代の紀友則【きのとものり】の和歌「ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ」や、平安末期から鎌倉初期の人、西行法師の「願はくば花の下にて春死なんそのきさらぎの望月のころ」で歌われた「花」は、ヤマザクラです。
 ヤマザクラの花の咲き方は、ソメイヨシノほど、一斉にそろっていません。同種内でも、個体差があります。また、多くの場合、花と同時に、葉も伸び始めます。
 ソメイヨシノと、ヤマザクラとでは、同じサクラでも、風情が違うわけですね。こういったことを踏まえないと、古人の和歌の読み方も、間違えるだろうと思います。
 ヤマザクラという種名でも、山にしか、ないわけではありません。古来、花の美しさが好まれて、栽培されることもありました。人里にあっても、種名は、ヤマザクラです。
 ヤマザクラに対して、サトザクラ(里桜)という種は、あるのでしょうか?
 この答えは、ややこしいです。サトザクラという種名の「種」は、ありません。ところが、サトザクラと呼ばれる「品種群」は、存在します。
 サトザクラという言葉には、いくつかの定義があります。最も広い定義では、「すべてのサクラの園芸品種」を指して、サトザクラと呼びます。山にある野生のサクラに対して、人里にあるサクラ、くらいの意味です。園芸品種だけあって、華やかなものが多いです。
 サトザクラと呼ばれるものには、二百以上の品種があるといわれます。それらの園芸品種は、さまざまな野生のサクラを交配させて、作られました。
 中には、ヤマザクラを親にして作られた品種もあります。ヤマザクラが親でも、園芸品種であれば、サトザクラと呼んで、おかしくありません。ややこしいですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、エドヒガン、オオシマザクラ、ヤマザクラなど掲載されています。
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 過去の記事でも、サクラの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
小さいことは、いいことだ? マメザクラ(2016/3/21)
サクラの分類は、どうなっている?(2016/03/14)
彼岸桜は、一種ではない?(2014/3/21)
これでもサクラです、ウワミズザクラ(2012/4/13)
などです。


2016年3月25日

トカゲ科の分類も、変わった?

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 先週、このブログで、トカゲ科トカゲ属の分類が変わった話をしましたね(トカゲ属の分類が、変わった?(2016/3/18))。今回は、それと関連した話をしましょう。トカゲ属が含まれる、トカゲ科の分類についてです。トカゲ科の分類も、最近、大きく変わりました。
 かつて、トカゲ科には、千六百を越える種が含まれていました。ずいぶん大きな科ですね。以前から、「トカゲ科に含まれる種が多過ぎる。雑多な種が入れられ過ぎている」という意見がありました。正しい系統関係を反映した分類ではない、ということです。
 二〇一四年になって、トカゲ科を、九つの科に分ける案が出されました。九つの科の中に、小さくなった新トカゲ科も含まれます。新トカゲ科では、種の数が、二七〇あまりになりました。現在のところ、この案は、おおむね正しいと認められています。
 旧トカゲ科は、新トカゲ科以外に、ヘリグロヒメトカゲ科、イワトカゲ科、マブヤ科などに分割されました。まだ、日本語の科名が付いていない科もあります。
 例えば、日本の南西諸島や対馬に分布する、スベトカゲの仲間(スベトカゲ属)は、新分類では、トカゲ科ではなくなりました。スベトカゲ属が属する科には、まだ、日本語名が付いていません。ラテン語の学名で、Sphenomorphidaeという科に属します。
 また、日本の小笠原諸島に分布するオガサワラトカゲ属や、宮古島に分布するミヤコトカゲ属も、旧トカゲ科から、別の新しい科に移されました。
 オガサワラトカゲ属とミヤコトカゲ属とは、同じ科に属します。この科にも、日本語名がありません。ラテン語の学名で、Eugongylidaeという科です。
 いずれ、Sphenomorphidaeには、「スベトカゲ科」といった、日本語の科名が付くでしょう。Eugongylidaeにも、「オガサワラトカゲ科」か、「ミヤコトカゲ科」といった科名が付くと思います。日本に分布する種が属するのに、日本語名がないのは、不便ですからね。
 しかし、二〇一六年現在でも、スベトカゲ属や、オガサワラトカゲ属、ミヤコトカゲ属を、図鑑やウェブサイトで調べると、「トカゲ科」としている例が多いです。新分類の普及が、間に合っていません。「トカゲ科」の分類には、慎重な扱いが必要です。
図鑑↓↓↓↓↓には、ニホントカゲ、イシガキトカゲなどが掲載されています。
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 過去の記事でも、トカゲの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
トカゲ属の分類が、変わった?(2016/3/18)
大陸からの使者? スベトカゲの仲間たち(2015/4/20)
日本の海トカゲ? ミヤコトカゲ(2014/10/13)
プレートと一致? 日本のトカゲの分布(2013/12/30)
日本に、新種のトカゲあらわる?(2010/4/9)
などです。


2016年3月21日

小さいことは、いいことだ? マメザクラ

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 いよいよ、サクラの花咲く季節になってきましたね。今回は、サクラの中でも、有名なソメイヨシノ(染井吉野)ではなく、別の種を紹介しましょう。マメザクラです。
 マメザクラ(豆桜)は、ソメイヨシノと同じく、バラ科サクラ属に属します。正真正銘の、サクラの仲間です。けれども、ソメイヨシノやカワヅザクラ(河津桜)などのように、華やかなお花見には、あまり使われません。理由は、花も樹も、小さいからです。
 ところが、マメザクラを原種とする園芸品種のサクラが、たくさんあります。例えば、コヒガン(小彼岸)や、フユザクラ(冬桜)は、マメザクラと、サクラ属の別の種とが交配されてできた園芸品種だといわれます。
 園芸品種がたくさんあるのは、たくさん栽培されている証拠ですね。実際、原種のマメザクラ自身も、よく栽培されます。マメザクラの変種であるキンキマメザクラ(近畿豆桜)や、ブコウマメザクラ(武甲豆桜)なども、よく栽培されます。
 これは、どうしたわけでしょうか? マメザクラの持つ「小さい」という性質が、逆に喜ばれるためです。日本の狭い庭では、あまり大きい木は、植えられませんね。木全体が小さく、それでいて、木いっぱいに花を付けるマメザクラは、ちょうどいいのです。
 マメザクラ由来の園芸品種が多いのも、「美しい花の咲く桜を植えたい。でも、大きな木では困る」という日本人の要求に、マメザクラが応えてくれるからでしょう。マメザクラと交配させると、その子は、親の性質を受け継いで、小さくなります。
 マメザクラは、近縁な他種と交配しやすいことも、あるようです。人間が作った園芸品種ではなく、マメザクラと他の種とが、自然に交雑して、できたサクラもあります。
 イシヅチザクラ(石鎚桜)などは、その例です。イシヅチザクラは、マメザクラの一変種のキンキマメザクラと、タカネザクラとが、自然交配して生まれたとされます。
 マメザクラには、フジザクラ(富士桜)や、ハコネザクラ(箱根桜)という別名があります。富士山や、箱根山の周辺に、多く生えるためです。その理由については、以前、このブログで、説明しています(フォッサ・マグナ要素の植物とは?(2012/11/2))。

図鑑↓↓↓↓↓には、マメザクラが掲載されています。
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 過去の記事でも、マメザクラを取り上げています。また、サクラ属の植物についても、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
サクラの分類は、どうなっている?(2016/03/14)
彼岸桜は、一種ではない?(2014/3/21)
フォッサ・マグナ要素の植物とは?(2012/11/2)
これでもサクラです、ウワミズザクラ(2012/4/13)
などです。


2016年3月18日

トカゲ属の学名が、変わった?

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 以前、このブログで、日本のトカゲ属に、新種が加わった話をしましたね(プレートと一致? 日本のトカゲの分布(2013/12/30))。この時、取り上げたのは、トカゲ科トカゲ属に属する種でした。この属の分類について、最近、大きな変動がありました。
 トカゲ科トカゲ属の種は、長年、北半球に、広く分布していると考えられてきました。その分布域は、北アフリカ、西アジア、東アジア、北米、中米、バミューダ諸島です。
 ところが、この属は、一つではなく、複数の属に分けられるべきだという意見が出されました。地域ごとに、違う属に分かれるというのです。研究が進んだ結果、かつての「トカゲ属」は、四つの属に分割されることになりました。
 四つの属のうち、三つには、日本語名が付いていません。日本に分布しない属だからです。残りの一つは、日本で、旧属名を引き継いで、トカゲ属とされました。日本に分布するニホントカゲ、オカダトカゲ、ヒガシニホントカゲは、この新トカゲ属に属します。
 爬虫類に詳しい方なら、かつての「トカゲ属」のラテン語の学名が、Eumecesだったと覚えておられるかも知れませんね。例えば、ニホントカゲの学名にも、Eumecesと付いていました。それが、属の分割により、違う学名になりました。
 今、新トカゲ属の学名は、Plestiodonです。この変更にともない、例えば、ニホントカゲのラテン語の学名は、Plestiodon japonicusとなりました。新トカゲ属は、旧トカゲ属のうち、東アジアと、北米と、バミューダ諸島に分布するものが、分類されました。
 かつての「トカゲ属」の学名Eumecesは、残っています。けれども、それは、もはや、日本語の(新)トカゲ属を指すものではなくなりました。
 現在のEumeces属には、日本語名がありません。旧トカゲ属のうち、北アフリカと西アジアに分布する種が、Eumeces属に入れられました。
 書籍やウェブサイトによっては、ニホントカゲなどのラテン語の学名に、旧属名のEumecesで始まるものが、残っています。このために、日本のトカゲ属の学名は、混乱気味です。このような混乱は、研究が進んでいる証拠だと思って、乗り切るしかありません。

図鑑↓↓↓↓↓には、ニホントカゲ、イシガキトカゲなどが掲載されています。
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 過去の記事でも、日本に分布するトカゲ科について、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
大陸からの使者? スベトカゲの仲間たち(2015/4/20)
日本の海トカゲ? ミヤコトカゲ(2014/10/13)
プレートと一致? 日本のトカゲの分布(2013/12/30)
日本に、新種のトカゲあらわる?(2010/4/9)
日本最大のトカゲとは?(2009/8/14)
などです。


2016年3月14日

サクラの分類は、どうなっている?

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 そろそろ、桜の便りが近づいてきましたね。サクラと呼ばれる植物は、分類学上は、どのような位置を占めるのでしょうか? こんな基本的なことが、定まっていません。
 一般的には、バラ科サクラ属のうち、サクラ亜属に属する種が、サクラと呼ばれます。ところが、そのバラ科サクラ属の分類が、確定していないのです。
 バラ科サクラ属には、野生種だけでも、二百以上もの種が属します。加えて、この属には、栽培品種が極めて多いです。ヒトの役に立つ植物が多いためです。例えば、モモ、スモモ、ウメ、アンズ、アーモンドは、すべて、サクラ属に属するとされます。
 このように書くと、「あれ? モモやスモモは、スモモ属じゃなかったっけ?」と思う方が、いらっしゃるでしょう。それは、間違いではありません。サクラ属は、別名をスモモ属ともいいます。つまり、サクラ属とスモモ属とは、同じ属を指します。
 このように、属の名前さえも、サクラ属とスモモ属とで、揺れています。そのうえ、サクラ属(スモモ属)は、一つの属ではなく、複数の属に分けるべきだという意見があります。その意見によれば、この属は、六つくらいの属に再編されます。
 現在のところ、サクラ属(スモモ属)には、六つほどの亜属が属します。これらの亜属を、それぞれ、別個の属として、独立させようというわけです。
 サクラ属(スモモ属)のうち、サクラ亜属は、観賞用のサクラ―ソメイヨシノ、ヤマザクラ、カンヒザクラなど―が、みな属するグループです。「サクラ属(スモモ属)再編説」によれば、このグループだけが、独立した(新)サクラ属とされます。
 残りの「元サクラ属(元スモモ属)」の種は、例えば、ウメやスモモは、(新)スモモ属とされます。モモやアーモンドは、モモ属です。ただし、(新)サクラ属以外の分類は、現状の亜属でまとめるのは、不適当だという意見があります。
 現時点では、何百もの野生種と栽培品種とを含む、大所帯のサクラ属(スモモ属)をそのままにする説と、(新)サクラ属や(新)スモモ属などに分離する説とが、並立しています。「サクラ属」が、元のサクラ属を指すのか、新サクラ属を指すのか、ややこしいです。

図鑑↓↓↓↓↓には、エドヒガン、オオシマザクラ、ヤマザクラなど掲載されています。
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 過去の記事でも、サクラ属(スモモ属)の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
彼岸桜は、一種ではない?(2014/3/21)
昔のモモは、ヤマモモだった?(2012/6/15)
これでもサクラです、ウワミズザクラ(2012/4/13)
木花開耶姫【このはなさくやひめ】は、ウメの女神だった?(2010/2/19)
花も実もある魔除けの木、モモ(2006/3/3)
などです。


2016年3月11日

有明海特産? アゲマキガイ

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 日本は、地方ごとに、海の幸や山の幸が豊かな国ですね。今回は、ある地方で名産とされている生き物を紹介しましょう。アゲマキガイです。二枚貝の一種です。
 アゲマキガイは、有明海の名産とされます。干潟の泥の中に棲む貝です。貝殻の形が細長くて、マテガイに似ています。マテガイとは、科は違うものの、比較的、近縁です。
 もともと、アゲマキガイは、有明海沿岸や、瀬戸内海沿岸の一部だけで食される「地方の味」でした。現在では、日本の各地に出荷されています。
 ただし、アゲマキガイという名は、有明海沿岸以外では、馴染みがありません。このために、姿の似たマテガイとして、売られてしまうこともあります。
 瀬戸内海に分布していたアゲマキガイは、海岸の干拓などのために、絶滅してしまいました。有明海でも、かつてほどは、棲息していないようです。現在、日本の各地で売られるアゲマキガイは、多くが、中国や朝鮮半島からの輸入ものです。
 アゲマキガイは、日本の有明海にいるものと同じ種が、中国や朝鮮半島の沿岸にも、棲息します。アゲマキガイに近縁な仲間の貝は、ほとんどが、中国や朝鮮半島に分布します。このため、アゲマキガイは、大陸にいた種が、日本で生き残ったものだと考えられます。
 アゲマキガイの分類については、最近、異動がありました。少し前まで、アゲマキガイは、ナタマメガイ科に属するとされていました。ナタマメガイ科に属する種で、日本に分布するのは、アゲマキガイだけでした。他の種は、中国や朝鮮半島にいるとされました。
 ところが、最近になって、ナタマメガイ科を、他の科に、まるごと入れてしまったほうがいい、ということになりました。その科とは、ユキノアシタガイ科です。
 ユキノアシタガイ科には、ユキノアシタガイ、ミゾガイ、タカノハガイなどの種が属します。ここに挙げた三種は、日本に分布します。どの種も、マテガイに似て、細長い貝殻を持ちます。タカノハガイは、殻に、タカの羽根に似た、まだら模様があります。
 ユキノアシタガイ科は、マテガイ科とともに、マテガイ上科というグループにまとめられています。アゲマキガイは、ユキノアシタガイなどと一緒に、ここに入るわけです。

図鑑↓↓↓↓↓には、アゲマキガイに似たマテガイが掲載されています。
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 過去の記事でも、食用になる二枚貝を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
サルボウとは、猿の頬の意味か?(2016/1/29
食用貝の代替品たち(2015/1/19)
ホッキガイという種は、存在しない?(2015/1/12)
命名の傑作、ツキヒガイ(月日貝)(2011/9/19)
ムール貝やパーナ貝とは、どんな貝?(2008/12/12)
などです。


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2016年3月 7日

クロッカスとサフランとは、同じ? 違う?

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 クロッカスは、花壇で春を感じさせる花ですね。水栽培にも使われます。日本には自生しない植物ですが、観賞用植物として、園芸で親しまれています。
 クロッカスという名は、ラテン語の学名Crocusに由来します。ラテン語の学名が、英語にも取り入れられて、そのまま英語名にもなっています。では、日本語名は、何というのでしょうか? これには、ややこしい問題が横たわっています。
 もともと、ラテン語の学名Crocusは、アヤメ科クロッカス属の種すべてを指す言葉です。この属には、何十もの種が含まれます。それらの種には、ほとんど、日本語名がありません。クロッカス属で、日本に自生する種はないためです。
 例外的に、日本語名がある種の一つが、サフランです。ハーブやスパイスとして使われる、あのサフランの原料になる花です。もっとも、サフランという日本語名(標準和名)は、英語名のsaffronを、そのまま取り入れた言葉です。
 つまり、サフランは、アヤメ科クロッカス属の一種です。サフランは、秋に花が咲きますが、春に花咲くクロッカスたちと、同じ属に属します。サフラン以外にも、クロッカス属には、秋咲きの種があります。クロッカス属は、サフラン属とも呼ばれます。
 ところが、園芸の分野では、サフランとクロッカスとは、別ものとして扱われます。一般的に、園芸でクロッカスと呼ぶのは、クロッカス属のうち、春に花が咲く種です。
 日本で普通に栽培される「クロッカス」は、クロッカス属のうちの春咲きの原種や、それらの原種を交配して作った園芸品種です。原種からして、日本語名がないものがほとんどですから、園芸品種ともなると、品種名―多くは、英語名―しかありません。
 私たちが普通に見る「クロッカス」は、ほぼ、「クロッカス属の複数の春咲きの種が混ざり合ったもの」としか、言いようがない植物です。
 ハーブやスパイスになるために、サフランだけは、クロッカス属のうちで、特別扱いです。サフランの花も、クロッカス属の他種に似て、美しいものです。クロッカス属のうち、秋咲きで、観賞用に栽培される種もありますが、日本では、普及していません。

図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、クロッカスは載っていません。かわりに、日本に分布するアヤメ科の植物が掲載されています。
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 過去の記事でも、アヤメ科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
歌に詠まれた「ぬばたま」とは?(2012/8/17)
シャガは、「日本のアイリス」か?(2011/4/22)
アヤメ? いえ、カキツバタです(2010/5/14)
じつは外来種です、キショウブ(2009/4/24)
五月五日は、あやめの節句?(2007/4/30)
などです。


2016年3月 4日

メヒカリ(目光)の正式名称は?

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 日本は、魚食文化が盛んな国です。地方ごとに、名物といわれる魚がいます。今回は、そのような魚の仲間を紹介しましょう。メヒカリです。
 二〇一六年現在、メヒカリと言えば、福島県いわき市の名物が知られます。この魚は、正式な日本語名(標準和名)を、マルアオメエソといいます。ヒメ目【もく】アオメエソ科アオメエソ属の一種です。名のとおり、大きな眼が、青っぽく光って見えます。
 マルアオメエソには、そっくりな別種がいます。アオメエソです。同じアオメエソ科アオメエソ属に属します。あまりにも似ているために、外見では、区別が付けがたいです。市場では、アオメエソも、マルアオメエソと区別せずに、メヒカリと呼ばれます。
 マルアオメエソと、アオメエソとは、主に、分布域で区別されます。おおむね、千葉県以北の海にいるものは、マルアオメエソです。アオメエソは、神奈川県以南の海に分布します。ですから、いわき市の名物になっているのは、マルアオメエソのほうです。
 名物にされているのに、マルアオメエソの生態は、よくわかっていません。眼が大きいのは、水深200mより深い、深海によく行くからだと考えられています。深海のかすかな光をとらえるために、眼が発達したのですね。アオメエソも、同じだと考えられます。
 メヒカリと呼ばれるのは、マルアオメエソやアオメエソばかりではありません。アオメエソ科とは、まったく類縁の遠い魚も、メヒカリと呼ばれることがあります。
 例えば、標準和名をニギスという魚が、そうです。ニギスは、ニギス目【もく】ニギス科ニギス属に属する一種です。目【もく】のレベルで分類が違うので、マルアオメエソやアオメエソとは、遠縁です。ですが、同じように、眼が大きく、光って見えます。
 ニギスも、食用にされる魚です。日本海から、太平洋岸では神奈川県以南の海に、広く分布します。この種は、別名が多く、そのために、他種の魚と、混同されがちです。メヒカリ以外に、ギス、メギス、キツネエソ、オキイワシなどの別名があります。
 前記のとおり、日本は魚食文化が盛んなゆえに、地方ごとの魚の別名が多いです。同じ名で呼ばれても、ある魚と別の魚とが、同じ種とは、限りません。注意が必要です。

図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、マルアオメエソ、アオメエソ、ニギスは載っていません。かわりに、日本に分布する魚が、五十種以上掲載されています。
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 過去の記事でも、食用になる魚を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
サワラは、春の魚か?(2015/3/30)
コハダの正式名称は?(2015/2/2)
ハタハタ、タラ、アンコウの共通点は?(2015/1/26)
あれもイワシ? これもイワシ?(2014/6/2)
大鯰(オオナマズ)は、実在するか?(2011/10/24)
などです。



2016年2月29日

早春を呼ぶ青い花、ムスカリ

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 ムスカリという植物を、御存知でしょうか? 早春に、青い小さな花を、房状に咲かせます。背の低い、小さな草なのに、寒風の中、いっぱいに花を付けます。その様子は、けなげに見えます。花壇にたくさん植えると、とても見事です。
 一般的に、ムスカリと呼ばれるのは、一種だけではありません。キジカクシ科ムスカリ属に含まれる種の総称です。この属には、少なく見積もっても、四十種以上が属します。
 ただし、ややこしいことに、ムスカリ属のある一種を指して、「ムスカリ」と呼ぶこともあります。ラテン語の学名を、Muscari neglectumという種です。
 四十種以上もあるムスカリ属のうち、日本語名を持つのは、ほんの数種です。Muscari neglectumも、正式な日本語名(標準和名)が付いているとは言いがたいです。慣習的に、この種を「ムスカリ」と呼ぶことが多いというだけです。
 日本語名があるムスカリ属としては、ブドウムスカリ、ルリムスカリなどの種があります。これらの種を含め、ムスカリ属の種は、互いに似ているものが多いです。たいがいの種が、青い小さな鐘状の花を、ブドウの房のように付けます。
 外見が似ることが、ムスカリ属の分類を、困難にしています。例えば、日本語名をフサムスカリという種は、かつて、ムスカリ属に分類されていました。ムスカリ属の他種と、よく似ているためです。ところが、現在では、別の属に分類されるようになりました。
 また、ムスカリMuscariという属名の元になった種も、種名が変わっています。
 もと、ラテン語の学名を、Muscari moschatumという種がありました。この種の花には、とても良い香りがあります。このことから、ギリシア語で麝香【じゃこう】を意味する言葉を取って、ムスカリMuscariという属名になりました。
 しかし、現在では、Muscari moschatumという種は、ありません。同じムスカリ属のMuscari racemosumという種と、同じものだとされたためです。
 Muscari racemosumも、Muscari neglectumや、ブドウムスカリ、ルリムスカリと同じように、観賞用に栽培されます。分類が進むより先に、栽培のほうが進んでしまいました。このために、売られているムスカリ属の正確な種を知るのは、難しいです。

図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、ムスカリは載っていません。かわりに、日本に分布する植物が、八百種以上掲載されています。
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 過去の記事でも、分類が混乱している植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
フリージアの正式名称は?(2016/02/22)
属はどこですか? ミズキの仲間たち(2015/10/19)
ネギは、ネギ科か?(2015/9/7)
ふわふわの花は、ネコヤナギ?(2015/4/10)
マリーゴールドの正体は?(2014/10/3)
などです。


2016年2月26日

誰に近縁? 珍渦虫【ちんうずむし】

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 今回は、数ある生物の中でも、とびきりの珍生物を紹介しましょう。珍渦虫【ちんうずむし】と呼ばれる生物です。海に棲む生物です。今のところ、バルト海と太平洋東部とから見つかっています。世界中で、六種しか確認されていません。
 珍渦虫には、眼や耳や鼻といった感覚器官がありません。四肢のような運動器官も、ありません。とても平べったい体をしています。顔や手足のような目立つ特徴はありませんが、体には、前後左右の区別があります。扁形【へんけい】動物のヒラムシに似ています。
 外見が似るために、珍渦虫は、しばらく、扁形動物門に入れられていました。珍渦虫という名は、その時に付けられたものです。扁形動物門の渦虫【うずむし】―いわゆる、プラナリア―の仲間で、珍しいものだから、珍渦虫というわけです。
 ところが、調べてみると、珍渦虫は、扁形動物とは、まったく違うことがわかりました。扁形動物ならあるはずの、原始的な中枢神経系がありません。先述のとおり、感覚器官や運動器官に加えて、生殖器官も、消化器官も、ありません。ないない尽くしの生物です。
 このように、体の構造があまりにも特異なため、珍渦虫の分類は、白紙に戻されました。さまざまな説が生まれては、否定されました。体の構造が簡単過ぎるのは、一度、高度に発達したのが、何らかの原因で、二次的に退化したのだという説もありました。
 DNAの研究が進むと、珍渦虫は、独自のグループ、珍渦虫動物門にすべきだという説が出てきました。さらに、有力な説が、生まれました。無腸【むちょう】動物と呼ばれる動物と、近縁だというのです。無腸動物も、分類上の位置が、不明確な生物でした。
 じつは、無腸動物も、一時期は、扁形動物門に入れられていました。外見上、扁形動物に似ているためです。二十一世紀になってから、扁形動物とは違い過ぎることが指摘され、独自の無腸動物門というグループが、提唱されました。
 今年、二〇一六年に、新しい研究結果が発表されました。それによれば、やはり、珍渦虫は、無腸動物と近縁なようです。珍渦虫と、無腸動物とを合わせて、珍無腸動物門というグループを作ることが、提唱されています。
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、珍渦虫【ちんうずむし】は載っていません。かわりに、日本に分布する無脊椎動物が、二〇〇種近く掲載されています。
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 過去の記事でも、近年、分類学上の位置が変わった生物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
魚類というグループは、ない?(2014/3/31)
寄生植物は、分類が難しい?(2013/7/12)
鳥の祖先は、恐竜か?(2012/12/3)
脊索【せきさく】動物と、脊椎【せきつい】動物とは、違う? 同じ?(2012/10/15)
ホヤは脊索【せきさく】動物? 原索【げんさく】動物?(2007/8/28)

などです。


2016年2月22日

フリージアの正式名称は?

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 フリージアは、日本の春を彩る植物の一つですね。外来植物ですが、日本の温暖地の花壇や、花屋の店先を、賑やかにしてくれます。温室で栽培されることも、多いです。
 フリージアの原産地は、南アフリカのケープ地方です。大部分の種が、そうです。そこは、アフリカといっても、熱帯ではありません。温帯です。ケープ地方には、ここでしか見られない、珍しい温帯植物が多いです。フリージアの原種も、多くが、そうでした。
 じつは、現在の「フリージア」は、一種の植物とは言いがたいです。何種かの原種を交配して作られた、園芸品種が多いためです。フリージアという名は、事実上、アヤメ科フリージア属に属するものの総称となっています。
 園芸品種のフリージアたちの、大元になった原種は、ラテン語の学名を、Freesia refractaという種だといわれます。この種には、アサギスイセンという日本語名があります。
 けれども、この日本語名は、ほとんど使われません。スイセン(水仙)の仲間と、誤解されやすいからでしょう。スイセンは、ヒガンバナ科の植物ですから、遠縁です。
 アヤメ科フリージア属には、Freesia refracta(アサギスイセン)以外に、十種以上の種が属します。主な種として、Freesia corymbosa,Freesia laxa(日本語名ヒメヒオウギ)、Freesia leichtlinii(日本語名アヤメスイセン)などがあります。
 Freesia corymbosaやFreesia leichtliniiは、園芸品種の「フリージア」の原種となりました。交配に使われたわけです。園芸品種が作られたのは、主にオランダとイギリスにおいてです。どちらの国も、南アフリカを支配したことがあり、園芸が盛んだからです。
 そもそも、原種においても、フリージア属の分類は、安定していません。研究者によって、ある種が、あったりなかったりします。こんな状態で、交配が繰り返されたのでは、園芸品種の正体など、わかるはずがありませんね。
 さらに加えて、フリージア属は、日本語名も混乱しています。他種と似た名をつけられてしまった例が、多いのです。日本語名は、使わないほうが、無難ですね。
 人間の側の混乱をよそに、フリージアは、毎年、香り高い花を咲かせてくれます。

図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、フリージアは載っていません。かわりに、日本に分布するアヤメ科の植物が掲載されています。
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 過去の記事でも、アヤメ科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
歌に詠まれた「ぬばたま」とは?(2012/8/17)
シャガは、「日本のアイリス」か?(2011/4/22)
アヤメ? いえ、カキツバタです(2010/5/14)
じつは外来種です、キショウブ(2009/4/24)
五月五日は、あやめの節句?(2007/4/30)
などです。

2016年2月19日

語源は何ですか? マシコ(猿子)

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 生き物の中には、時おり、不思議な種名を持つものがいます。鳥類では、「○○マシコ」と呼ばれる鳥たちが、それに当たるでしょう。
 「○○マシコ」という鳥たちは、分類学的には、スズメ目【もく】アトリ科に属します。日本に分布する種としては、ギンザンマシコ、ベニマシコ、オオマシコなどがいます。どの種も、おおむね、スズメくらいの大きさの小鳥です。
 「マシコ」を漢字で書けば、「猿子」です。猿子鳥【ましこどり】という呼び方もあります。猿子【ましこ】とは、サルを意味する言葉です。なぜ、小鳥に、サルの名が付いたのでしょうか? 鍵は、これらの鳥たちの体色にあります。
 体色が赤っぽい小鳥に、「マシコ」の名が付いていることが多いです。ギンザンマシコの雄成鳥、ベニマシコの雄成鳥、オオマシコの雄成鳥など、みな、そうです。その赤さを、ニホンザルの顔が赤いのにたとえたといわれます。
 日本に分布する「○○マシコ」には、北方系という共通点もあります。
 例えば、ギンザンマシコは、日本国内では、主に北海道で見られます。本州以南では、まれに、冬鳥として見られるだけです。ベニマシコも、国内で繁殖するのは、北海道と青森県だけです。それ以南の地域では、冬鳥として見られます。
 オオマシコは、日本で繁殖が観察された例は、ないようです。冬鳥として、主に本州中部以北で見られます。夏期に繁殖するのは、北の国、シベリアです。
 「○○マシコ」たちが属するアトリ科は、最近、分類が大きく組み替えられました。
 以前は、アトリ科の中に、マシコ属という大きな属がありました。「○○マシコ」たちは、多くの種が、ここに入れられていました。ところが、研究が進んで、この分類は適切でないとわかりました。マシコ属から、別属に移された種がいます。
 そんな中でも、ギンザンマシコは、もともと、アトリ科のギンザンマシコ属に属しました。ベニマシコは、ベニマシコ属に属しました。オオマシコは、元のマシコ属に残りました。旧マシコ属に比べると、新マシコ属は、属する種の数が減りました。

図鑑↓↓↓↓↓には、ベニマシコが掲載されています。
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 過去の記事でも、アトリ科に属する鳥を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
鳥の日本固有種が、増える?(2016/1/8)
冬鳥のさえずりを聞くには?(2012/3/26)
スズメ? いえ、カワラヒワです(2008/11/21)
オウゴンヒワの画像(2008/5/12)
などです。


2016年2月15日

アカシアと、ニセアカシアとの関係は?

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 アカシアという植物の名を、一度くらいは、聞いたことがある方が多いでしょう。日本では、流行歌の歌詞に入れられたり、街路樹として植えられたり、蜂蜜の原料(蜜源植物)にされたりして、有名になりました。
 ところが、「アカシア」という言葉で指す植物は、一種ではありません。違うグループ同士のものが含まれます。そのうえ、「アカシア」の中には、他の別名で呼ばれるものもあります。このために、「アカシア」が、正確にはどの植物を指すのか、混乱しています。
 おそらく、一九七〇年代くらいまでは、日本で「アカシア」と呼ばれるのは、正式な日本語名(標準和名)を、ハリエンジュという種が多かったと思います。札幌の街路樹として知られる「アカシア」や、蜜源植物の「アカシア」は、すべて、ハリエンジュです。
 ハリエンジュは、初夏に、白い花を、房状に垂らして咲かせます。マメ科ハリエンジュ属の一種です。本来のアカシアと紛らわしいために、ニセアカシアという和名も付いています。では、本来のアカシアとは、どんな植物でしょうか?
 本来のアカシアとは、マメ科アカシア属に属する種の総称です。アカシア属は、とても種の数が多く、少なくとも、五百以上もの種があります。これだけ種があれば、種ごとに、特徴が違います。一口に、「アカシア属とは、こうだ」と言いきることは、できません。
 とはいえ、日本で「アカシア」と呼ばれる種は、おおむね、決まっています。ギンヨウアカシア、フサアカシア、ソウシジュ、サンカクバアカシアなどの数種です。どれも、春に、黄色くて、ふわふわした、小さな手鞠【てまり】のような花を付けます。
 ギンヨウアカシア、フサアカシア、サンカクバアカシアは、早春の切り花として、よく使われます。三種とも、日本には自生せず、栽培されます。オーストラリア原産です。
 ソウシジュは、日本の温暖地で、街路樹や公園樹にされています。やはり、日本原産ではありません。フィリピンが原産地とされます。台湾やマレーシアでも、見られます。
 本来のアカシア属の種は、ミモザと呼ばれることもあります。でも、その名は、別の植物にも、使われます。紛らわしいので、ミモザの名は、使わないほうがいいでしょう。

図鑑↓↓↓↓↓には、ニセアカシアことハリエンジュが掲載されています。
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 過去の記事でも、種名が紛らわしい植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
どれが正しい? ヤマハッカ属の学名(2015/9/14)
ハマゴウ? ハマボウ? ハマボウフウ? 紛らわしい植物たち(2015/8/31)
マツバギクとマツバボタンとは、違う? 同じ?(2015/7/13)
ミツバウツギは、ウツギと遠縁(2015/5/29)
「山ごぼう」に御注意を(2014/10/31)
などです。


2016年2月12日

サル、それとも妖怪? エンコウガニ

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 今回は、カニの仲間を紹介しましょう。エンコウガニ(猿猴蟹)という種です。
 エンコウガニは、日本の函館あたりの海から、東シナ海、南シナ海、インド洋沿岸にまで、広く分布します。おおむね、水深50m以上の海に棲みます。このため、浜辺で見ることは、ありません。食用にもされないため、一般には、馴染みのないカニです。
 エンコウガニという種名は、なぜ、付いたのでしょうか? これには、二つの説があります。どちらも、体型と体色の特徴をとらえています。一つは、文字どおり、サルに由来するというものです。もう一つは、妖怪「えんこう」に由来するというものです。
 エンコウガニは、雄と雌とで、姿が違います。雄のほうは、はさみ脚が、とても長くなります。この脚が長いことを、サルの腕が長いことに見立て、体色が赤いことを、ニホンザルの顔が赤いことに見立てて、エンコウガニ(猿猴蟹)とされたといいます。
 もう一つの説では、河童の仲間の妖怪「えんこう」が、腕が長いのを、このカニのはさみ脚が長いことと結びつけたされます。妖怪「えんこう」は、水辺に棲んで、毛むくじゃらで、サルに似るそうです。だから、「えんこう(猿猴)」という名が付きました。
 エンコウガニは、十脚目【じゅっきゃくもく】短尾下目【たんびかもく】エンコウガニ上科エンコウガニ科エンコウガニ属の一種です。同じエンコウガニ科エンコウガニ属には、ケブカエンコウガニ、インドエンコウガニなどの種も、属します。
 エンコウガニとよく似た種名のカニとして、オオエンコウガニがいます。
 ところが、オオエンコウガニは、エンコウガニとは、近縁ではありません。十脚目短尾下目までは、同じ分類ですが、そのあとは、ワタリガニ上科オオエンコウガニ科オオエンコウガニ属となります。上科のレベルで分類が違うのは、近縁とは言いがたいです。
 オオエンコウガニは、食用になります。食用に売られる時には、オオエンコウガニという名ではなく、「丸ずわいがに」と呼ばれます。「ずわいがに」と名が付いても、本物のズワイガニとは、まるで違う種です。近縁ですら、ありません。
 よくある「丸ずわいがにの缶詰」は、じつは、オオエンコウガニの缶詰です。

図鑑↓↓↓↓↓には、日本近海に分布するカニが、十種以上掲載されています。
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 過去の記事でも、カニの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
再来なるか? ニシノシマホウキガニ(2015/7/10)
寄生虫に寄生する生き物がいる?(2013/7/8)
平家の怨霊が、ヘイケガニになった?(2012/6/4)
イソガニとイワガニ、どっちがどっち?(2009/8/21)
夫婦なのに名が違う?ズワイガニとコウバコガニ(2005/11/11)
などです。


2016年2月 8日

アサイーの正体とは?

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 アサイーという植物の名を、聞いたことがおありでしょうか? 日本では、一部のコーヒーチェーン店でメニューに入れられたことから、知られるようになりました。最近では、健康食品としても、人気があるようですね。
 アサイーとは、正確には、果実の呼び名です。植物の日本語の種名は、ワカバキャベツヤシです。ヤシ科キャベツヤシ属に属する一種です。日本には、自生しない植物です。ブラジル、ベネズエラ、ガイアナ、スリナムなど、南米の熱帯地方に分布します。
 アサイーというのは、ポルトガル語の名前です。主産地であるブラジルの公用語が、ポルトガル語なので、その名が定着しました。じつは、これが、ちょっと困った事態を引き起こしています。日本語名が混乱しているのです。
 キャベツヤシ属の中で、日本に自生する種は、一種もありません。このために、この属の種には、日本語名がないものが多いです。日本語名があるのは、ワカバキャベツヤシと、キャベツヤシくらいでしょう。しかし、これらの名は、まだ、普及していません。
 多くの場合、キャベツヤシ属の種を一まとめにして、アサイーと呼びます。アサイヤシと呼ばれることもあります。属の名前自体が、アサイヤシ属とされることもあります。属名からして、日本語名が定まっていない状態です。
 混乱を避けるために、属の名前は、エウテルペ属とされることもあります。エウテルペEuterpeとは、キャベツヤシ属のラテン語の学名です。ラテン語の学名は、国際的に共通ですからね。ワカバキャベツヤシを指すラテン語の学名は、Euterpe oleraceaです。
 キャベツヤシ属には、他に、キャベツヤシ(ラテン語の学名Euterpe edulis)、Euterpe catingaなどの種が属します。前述のとおり、ほとんどの種には、日本語名がありません。どの種も、中米や南米にしか、自生しないからです。
 ワカバキャベツヤシのように、多くの種は、果実が食用にされます。他に、ワカバキャベツヤシやキャベツヤシなどは、花のつぼみの芯も食べます。その部分をキャベツにたとえて、キャベツヤシという日本語名が付いたようです。
図鑑↓↓↓↓↓には、日本に分布するヤシ科の植物掲載されています。
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 過去の記事でも、ヤシ科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
お酒を出す木がある?(2015/3/13)
タラヨウとタラジュとは、違う? 同じ?(2013/7/26)
混同されてばかり? シュロ(2012/6/8)
ヤシ(椰子)の葉の秘密とは?(2011/1/17)
ビロウとビンロウとは、違う? 同じ?(2010/1/29)
などです。



2016年2月 5日

哺乳類に似ている?エビたち

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 日本人は、海産物が好きですね。中でも、エビは、よく食べられているものの一つです。クルマエビやイセエビなどは、御馳走【ごちそう】扱いですね。
 クルマエビの仲間(クルマエビ科)は、クルマエビ以外の種も、多く、食用にされます。その中には、面白い種名のものがいます。クマエビ(熊海老)、トラエビ(虎海老)、ウシエビ(牛海老)、サルエビ(猿海老)などです。どれも、哺乳類の名前ですね。
 これらの種は、みな、十脚目【じゅっきゃくもく】クルマエビ科に属します。互いに近縁な種同士です。これらの種には、哺乳類を思わせる特徴があるのでしょうか?
 クマエビの語源には、諸説があります。クルマエビ科の中で、大きくてたくましいことから、「クマ」の名が付いたといわれることがあります。トラエビは、虎縞【とらじま】に似たまだら模様があることから、種名が付きました。サルエビは、全体に赤みが強くて、「サルの顔のよう」だから、サルエビだそうです。
 ウシエビについては、調べてみても、語源がわかりませんでした。この種は、ウシエビという正式な日本語名(標準和名)よりも、別名のほうが、よく知られています。ブラックタイガーという名です。スーパーの店先では、この名で、お目にかかりますね。
 ブラックタイガーという別名は、生きている時に、黒い縞模様があることから、付きました。英語名でも、black tiger prawnといいます。全体的に、黒っぽいエビです。
 ウシエビ(ブラックタイガー)に限らず、クルマエビ科の種は、英語名を「** tiger prawn」とされるものが多いです。例えば、クマエビは、green tiger prawnなどと呼ばれます。
 ところが、肝心のトラエビの英語名は、「** tiger prawn」ではありません。私が聞いた範囲では、「Tora velvet shrimp」という英語名があります。日本近海にしか分布しないエビなので、日本語名の「トラ」を取ったようです。
 サルエビには、southern rough shrimpという英語名があります。Shrimpとは、prawnよりも、小型のエビを指します。トラエビやサルエビは、クマエビやウシエビより、小さいエビです。そのために、このような英語名が付いたのでしょう。
図鑑↓↓↓↓↓には、クルマエビ、クマエビなどのクルマエビ科のエビ掲載されています。
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 過去の記事でも、エビの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ドウケツエビは、いい夫婦?(2014/12/8)
シャコとアナジャコとは、違う? 同じ?(2013/4/15)
得意技で守ります、ハゼとテッポウエビ(2013/3/25)
アマエビ? いえ、ホッコクアカエビです(2012/2/27)
そっくりさんがいっぱい、スジエビ(2010/2/1)
などです。


2016年2月 1日

猿の花とは、どんな植物?

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 英語で、monkey flowerと呼ばれる植物があります。直訳すれば、「サルの花」ですね。こんな名前で呼ばれるのは、どんな植物なのでしょうか?
 Monkey flowerと呼ばれるのは、一種だけではありません。たくさんの種が含まれます。大きく分けると、二つのグループに分かれます。ハエドクソウ科ミゾホオズキ属と、マメ科ジャケツイバラ亜科フィロカルプス属の一種です。
 ミゾホオズキ属のほうは、百種以上も含まれる、大きなグループです。そのうちの二種だけが、日本に自生します。ミゾホオズキと、オオバミゾホオズキです。
 ミゾホオズキとオオバミゾホオズキ以外に、何種かが、外来種として、日本で見られます。ニシキミゾホオズキ、ニオイミゾホオズキなどの種が、そうです。
 百種以上ものミゾホオズキ属の植物は、みなまとめて、monkey flowerと呼ばれます。個々の種は、例えば、ニシキミゾホオズキなら、yellow monkey flowerなどと呼ばれて、区別されます。でも、正確に種を指すなら、ラテン語の学名を使うのが一番です。ニシキミゾホオズキであれば、ラテン語の学名は、Mimulus luteusとなります。
 ニシキミゾホオズキのように、花が美しい種は、観賞用に栽培されます。日本でも、観賞用に持ち込まれたものが、野生化しました。
 ミゾホオズキ属の植物が、monkey flowerと呼ばれる理由は、花にある模様が、サルの顔に似るからだといいます。しかし、よほど克明に観察しないと、そうは見えません。
 もう一つのmonkey flower、フィロカルプス属の一種には、日本語名がありません。日本に分布しないためです。原産地は、中米です。ミゾホオズキ属のmonkey flowerと区別するために、monkey flower treeと呼ばれます。ミゾホオズキ属の大部分が草なのに対して、こちらは樹木だからです。ラテン語の学名は、Phyllocarpus septentrionalisです。
 フィロカルプス属のmonkey flower treeには、なぜ、「サル」の名が付いたのでしょうか? これについては、わかっていません。ひょうきんな名に反して、花が美しいため、熱帯の国々では、観賞用に栽培されています。
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、monkey flowerもmonkey flower treeも載っていません。かわりに、日本に分布する植物が、八百種ほどが掲載されています。
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 過去の記事でも、サルに関連した名前の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
モンキー・オーキッドの正体は?(2016/1/25)
サル(猿)のパズル? チリマツ(2016/1/18)
猿の壺は、楽園の果実?(2016/1/11)(2009/4/21)
猿の顔に見える? サルメンエビネ(2016/1/4)
サルスベリの木の肌は、なぜ、すべすべ?(2009/7/31)
などです。



2016年1月29日

サルボウとは、猿の頬の意味か?

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 皆さんは、赤貝【あかがい】を食べたことがありますか? 缶詰で食べたことがある方も、いるでしょう。二枚貝で、名のとおり、赤い身を持つものです。
 ところが、缶詰の赤貝は、正式な日本語名(標準和名)が「アカガイ」ではないものが多いです。アカガイでないなら、何という種なのでしょうか? 多くは、サルボウという種です。アカガイに近縁な二枚貝です。
 サルボウの外見は、アカガイに似ています。白っぽい二枚の殻があり、その殻には、はっきりした溝【みぞ】が刻まれています。殻には、藻が付いているため、市場では、モガイと呼ばれることが多いです。中身は、アカガイと同じく、赤いです。
 サルボウは、フネガイ目【もく】フネガイ科アカガイ属に属します。アカガイとは、属まで同じです。外見が似ていて、食用になることも同じなのは、納得できますね。
 とはいえ、種が違うのですから、違いもあります。食用の面では、アカガイは、寿司や刺身など、生で食べられることが多いです。それに対して、サルボウは、ほとんどが、煮付けにして食べられます。生で食べると、泥臭いのだそうです。
 アカガイは、高級寿司だねとして、知られますね。それに比べると、「赤貝の缶詰」は、ずいぶん安いです。それも道理で、缶詰の赤貝の正体は、サルボウだからです。
 現代日本では、サルボウとアカガイとで、価値に大きく差が付いています。けれども、歴史的には、アカガイよりも、サルボウのほうが、重要な食用貝だった時代が長いようです。縄文時代の貝塚から、サルボウの殻が、たくさん見つかっています。縄文人は、サルボウの殻を使って、貝輪と呼ばれるアクセサリーを作ったりもしました。
 サルボウという種名は、どこから来たのでしょうか? 有力な説では、「猿頬」だといいます。サルボウが生きている時には、藻が生えた貝殻から、赤い身が覗いています。この様子を、毛の生えたニホンザルの赤い頬にたとえた、というのです。
 この説は、確定したものではありません。サルボウの語源には、別の説もあります。縄文人も愛したサルボウの語源は、何なのか、気になりますね。
図鑑↓↓↓↓↓には、サルボウと近縁なアカガイが掲載されています。
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 過去の記事でも、二枚貝を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
食用貝の代替品たち(2015/1/19)
ホッキガイという種は、存在しない?(2015/1/12)
世界最長の二枚貝とは?(2014/12/1)
シンカイヒバリガイの進化の謎(2014/3/17)
フナクイムシ(船食虫)は、船を食べる?(2013/9/23)
などです。


2016年1月25日

モンキー・オーキッドの正体は?

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 ラン科の植物の中に、英語名を、monkey orchidと呼ばれる種があります。「サル(猿)のラン」という意味ですね。こんなユニークな名が付いたのは、どんなランなのでしょうか? それは、一種だけではなく、四種を含みます。順番に紹介しましょう。
 最初の一種は、サルメンエビネです。この種については、以前、このブログで取り上げましたね(猿の顔に見える? サルメンエビネ(2016/1/4))。「猿面」という日本語名のニュアンスが、そのまま英語に訳されて、monkey orchidとなったようです。
 残りの三種には、日本語名がありません。三種とも、日本に自生しない種だからです。けれども、花を観賞するために、栽培されることはあります。日本の園芸家の間では、これらの種は、ラテン語の学名で呼ばれています。
 三種のうち、二種は、ラン科ドラキュラ属に属します。ラテン語の学名を、Dracula gigasという種と、Dracula simiaという種です。ドラキュラ属のランは、中米から南米にかけて分布します。三枚の蕚片【がくへん】が目立つ、特異な形の花を咲かせます。
 ドラキュラ属という属名からは、吸血鬼のドラキュラ伯爵が思い浮かべられますね。この属のいくつかの種は、その特異な形の蕚片が、鮮血のように色づきます。このことから、ドラキュラ伯爵にちなんで、名づけられました。
 ドラキュラ属の花は、単純に美しいというより、個性が際立ちます。中でも、Dracula gigasとDracula simiaとは、その花をよく見ると、サルの顔のように見える模様があります。このために、monkey orchidと呼ばれます。
 最後の一種は、ラテン語の学名を、Orchis simiaといいます。ラン科オルキス属に属します。ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア、中央アジアに分布します。
 Orchis simiaには、淡紅色の、愛らしい花が咲きます。この花の、どこがサルに見えるのでしょうか? 唇弁【しんべん】という花弁の一種です。
 この種の唇弁は、細長く伸びて、四つに分かれています。その形が、サルの体に見えるのだそうです。よほどよく観察しなければ、monkey orchidなんて、思いつきませんね。

図鑑↓↓↓↓↓には、日本に分布するラン科の植物が掲載されています。
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 過去の記事でも、ラン科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
猿の顔に見える? サルメンエビネ(2016/1/4)
ラン(蘭)のラベル読みに挑戦!(2015/3/6)
品種名? 個体名? ラン(蘭)の名前(2015/2/27)
へそ曲がりが役に立つ? サイハイラン(2015/1/9)
モッコクとセッコクとの関係は?(2014/11/28)
などです。


2016年1月22日

猿猴【えんこう】異聞

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 日本で、サルを漢字で書くならば、「猿」ですね。日本では、サルの別称として、猿猴【えんこう】というのもあります。日本に分布するサルは、ニホンザルだけですから、単に猿【さる】や猿猴【えんこう】と言えば、ニホンザルを指すのが普通です。
 ところが、本来、「猿」という漢字は、ニホンザルを指すものではありませんでした。漢字の故郷である中国には、ニホンザルがいないからです。当然、猿猴も、ニホンザルを指したのではありません。とはいえ、まったく違うかと言えば、そうとも言えません。
 猿猴とは、もともとは、サル類全般を指す言葉でした。中国には、日本と違って、多くのサルの種が分布します。それらをまとめて呼ぶ名が、必要だったのでしょう。
 中国語で猿という字と、猴という字とでは、同じ「サル」でも、違う種を指します。古い時代には、こういった区分が、特に厳密でした。サルの種ごとに、違う漢字でもって表わしたようです。このために、「サル」を示す漢字が、たくさんありました。
 数多い「サル」の漢字のうち、「猿」は、テナガザルを指します。テナガザルは、類人猿の仲間ですね。霊長目【れいちょうもく】テナガザル科に属するものたちです。尾がなく、腕が長いサルです。その長い腕を利用して、木の枝から枝へ、渡ってゆきます。
 現代の中国では、テナガザル類は、最南部に、ごくわずかにいるだけです。しかし、古代には、黄河の北側にまで、広く分布していました。王侯が、テナガザルをペットにすることもありました。テナガザルを指す漢字が、作られる余地があったわけです。
 いっぽう、「猴」は、霊長目オナガザル科マカク属のサルを指しました。マカク属には、アカゲザル、ベニガオザルなどが含まれます。アカゲザルもベニガオザルも、中国に分布するサルです。日本だけに分布するニホンザルも、マカク属に含まれます。
 つまり、ニホンザルは、「猿」ではなくて、「猴」なのですね。それが、漢字が日本に導入された時に、ニホンザルを指す漢字として、「猿」が当てられてしまいました。
 サルを表わす漢字が、複数入ってきても、ニホンザル一種しかいない所では、区別する必要がありません。猿も猴も、ニホンザルを指すものとされてしまったわけです。
図鑑↓↓↓↓↓には、ニホンザルが掲載されています。
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 過去の記事でも、サルの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
 
レムリア大陸は、サルの大陸?(2016/01/15)
女装するトカゲと、男装するサル(2009/3/12)
ヒヨケザルの新発見、メガネザルの再発見(2008/11/20)
チンパンジーの贈り物はパパイア?(2007/9/13)
ニホンザルは世界北限のサル(2005/11/14)
などです。



2016年1月18日

サル(猿)のパズル? チリマツ

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 申年【さるどし】にちなんで、今回も、サルの名が付く植物を紹介しましょう。チリマツです。この種は、英語名を、monkey puzzle(サルのパズル)といいます。
 チリマツとは、正式な日本語名(標準和名)です。この木が、南米のチリに多く分布することから、付けられました。日本には、自生しません。
 では、monkey puzzleという愉快な英語名は、何に由来するのでしょう? 枝が密生するために、サルが悩んで登れないだろうということから、付きました。ところが、チリマツの林には、サルは棲んでいません。ヨーロッパ人の誤解から付いた名前です。
 チリマツは、ナンヨウスギ科ナンヨウスギ属に属します。この仲間は、アフリカを除く南半球に、広く分布します。ずっと昔、恐竜がいた時代には、北半球にも広く分布していました。化石から、それがわかっています。起源が古い植物なのですね。
 日本でも、白亜紀の地層から、ナンヨウスギ属の化石が出ています。日本を含む北半球では、ナンヨウスギ属は、絶滅してしまいました。その原因は、わかっていません。
 南半球では、ナンヨウスギ属は、有力な樹木のグループです。しかし、ヒトが活躍する時代になって、いくつもの種が、絶滅の危機に陥りました。チリマツも、絶滅が心配されたことがあります。良い材木になるためです。たくさん伐られてしまいました。
 現在では、チリマツは、保護されています。どんな生物でも、生態系を無視した、乱獲や乱伐はいけませんね。適度な利用なら、生物の生存もヒトの生活も、持続可能です。
 チリには、ヨーロッパ人がアメリカ大陸に来る前から住んでいた先住民がいます。その中のペウェンチェ族という人々は、古くから、チリマツを利用していました。
 ペウェンチェ族は、チリマツの種子を主食にします。チリマツの種子は、栄養があり、美味しいそうです。大切な主食のなる木ですから、ペウェンチェ族は、生きているチリマツを伐ることは、決してしません。枯れ木を薪に利用することは、します。
 持続可能なやり方をしてきたからこそ、先住民は、長い年月を、生きてこられたはずです。このようなやり方を、私たちは、もっと学ぶべきだと思います。
図鑑↓↓↓↓↓には、チリマツと近縁なナンヨウスギが掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、サルにちなんだ名前の植物を取り上げています。また、ナンヨウスギ科の植物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
猿の壺は、楽園の果実?(2016/1/11)
猿の顔に見える? サルメンエビネ(2016/1/4)
縄文杉に「姉妹」ができる? カウリコーパルノキ(2009/4/21)
などです。


2016年1月15日

レムリア大陸は、サルの大陸?

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 アフリカ大陸の東側に、マダガスカルという島国があります。この国には、他では見られない、珍しい生物が多いです。その一つが、サルの仲間、キツネザルです。
 キツネザルの顔は、ニホンザルなどと違って、平板ではありません。口が尖って、イヌか、キツネのようです。このことから、キツネザルという名が付きました。
 キツネザルの仲間は、原猿類【げんえんるい】と呼ばれます。原始的なサルの仲間だからです。他の哺乳類から分かれて、サルの仲間―霊長目【れいちょうもく】―が進化してきた、最初の頃の姿を、今に残していると考えられています。
 現代のキツネザルは、マダガスカルにしか分布しません。しかし、キツネザルの化石は、インドから見つかっています。マダガスカルから、インド洋を遠く隔てた地域に、なぜ、キツネザルの化石が出るのでしょうか? 不思議ですね。
 十九世紀のヨーロッパで、ある学者が、この問題を解決する仮説を立てました。「レムリア大陸」仮説です。「大昔、インド洋に、マダガスカルと、インドとを結ぶ形の大陸があった」というのです。これなら、その大陸を通じて、マダガスカルとインドとを含む広い地域に、原猿類が分布を広げていたと考えることができます。
 レムリアLemuria大陸という名は、キツネザルのラテン語の学名レムールLemurから取られました。現在では、ワオキツネザルのラテン語の学名に、Lemurと付いています。
 レムリア大陸仮説は、今では、科学的に、完全に否定されています。そんな大陸を持ち出さなくても、問題を解決できるとわかったからです。
 現在は、大陸移動説というものが、実証されていますね。地球上の大陸は、長い時間の間には、くっついたり離れたりして、形を変えます。マダガスカルとインドとが、つながっていた時期もありました。その時期に、キツネザルが現われたのでしょう。
 レムリア大陸とは、大陸移動説がない時代に、かつてくっついていたマダガスカルとインドとを、誤認した呼び名と言えます。インドでは、キツネザルは滅びてしまいました。マダガスカルは、地球上に残された、キツネザルたちの最後の棲みかです。
図鑑↓↓↓↓↓には、ニホンザルが掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、サルの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
女装するトカゲと、男装するサル(2009/3/12)
ヒヨケザルの新発見、メガネザルの再発見(2008/11/20)
霊長類【れいちょうるい】が絶滅の危機に?(2007/11/1)
チンパンジーの贈り物はパパイア?(2007/9/13)
ニホンザルは世界北限のサル(2005/11/14)
などです。


2016年1月11日

猿の壺は、楽園の果実?

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 今回も、申年【さるどし】にちなんで、サルの名が付いた植物を紹介しましょう。英語で、monkey potと呼ばれる植物があります。この英語名を直訳して、サルノツボという日本語名で呼ばれることもあります。日本には自生しない植物です。
 この植物は、正式な日本語名(標準和名)が、定まっていません。現時点では、パラダイスナットノキという名が、標準和名とされることが多いです。他にも、サプカヤナット、サブカヨノキなどの日本語名があります。名前が多過ぎて、ややこしいですね。
 パラダイスナットノキという名は、英語名のparadise nut treeを直訳したものです。サプカヤナットの元になった、sapucaia nut treeという英語名も、あります。英語名も、monkey potばかりではなく、いくつもあるのですね。
 なぜ、パラダイスナットノキや、サルノツボといった、面白い名前が付いたのでしょうか? それは、この植物の、果実と種子とに理由があります。
 この植物の果実は、丸い形をしていて、蓋のようになった部分があります。完全に熟すと、この「蓋」が取れて、中から種子が落ちます。この種子は、ナッツとして、食べられます。パラダイスナッツと呼ばれます。栄養があって、美味しいそうです。
 どうやら、「南の楽園で取れる、美味しいナッツ」というイメージから、paradise nutという名が付いたようです。南米のブラジルなどの熱帯域で、取れるナッツです。
 種子が落ちた後の果実は、空洞で、ちょうど壺のように見えます。この果実の中の種子を食べようとして、サルが手を突っ込んだところ、手が抜けなくなって大騒ぎしたことから、monkey potと名付けられた、といわれます。
 この説は、とても面白いですね。でも、真実、そうだったかどうかは、怪しいです。もっと素朴に、壺型の果実が、木に付いているのを見て、「サルが使いそうな壺だ」と思ったことに由来するのではないでしょうか。
 パラダイスナットノキは、サガリバナ科パラダイスナットノキ属に属します。この属の複数の種が、パラダイスナットノキと呼ばれることがあります。
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、パラダイスナットノキは、載っていません。かわりに、日本植物が、八百種ほど掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、サルにちなんだ植物を取り上げています。また、ナッツとして食用になる植物や、熱帯の果実も取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
猿の顔に見える? サルメンエビネ(2016/01/04)
トケイソウの果実が、パッションフルーツ?(2013/8/16)
仏典【ぶってん】にも登場、マンゴー(2013/8/9)
バナナは、最古の栽培植物?(2013/1/18)
ギリシア神話にも登場、クルミ(胡桃)(2012/11/9)
などです。



2016年1月 8日

鳥の日本固有種が、増える?

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 先週のこのブログで、日本の鳥類には、十二の固有種がいるという話をしましたね。その際、固有種の数が、もっと増えるかも知れないという話もしました。今回は、それについて、説明しましょう。あと十種ほど、日本固有種の鳥が、増えそうです。
 日本の野鳥は、バードウォッチングなどで、普通の人にも、親しまれていますね。おかげで、他の生物に比べれば、研究が進んでいます。日本国内で、未知の種は、ほとんどいないと考えられてきました。それが、なぜ、いきなり十種も増えるのでしょうか?
 それは、近年、遺伝子の解析が進んだためです。鳥類の遺伝子を、直接、調べてみると、一見、同種に見える鳥たちの中に、違う種が潜むことが、わかってきました。
 実例を挙げてみましょう。例えば、カケスです。カラス科の一種ですね。
 カケスは、日本の森林で、普通に見られる鳥です。これまで、カケスは、日本の北海道から九州まで、同じ種が分布すると考えられてきました。日本のカケスと同じ種が、ユーラシア大陸にも、広く分布するとされてきました。
 ところが、各地の「カケス」の遺伝子を分析したところ、同種とは言えないほどの差が見つかりました。日本の本州以南の「カケス」と、北海道の「カケス」とは、違う種といえます。北海道の「カケス」と同じ種が、ユーラシア大陸の東部に分布します。ユーラシア大陸の中部以西には、また違う種の「カケス」が分布します。
 これまで、北海道の「カケス」は、カケスの中のミヤマカケスという亜種だとされてきました。今後は、この「ミヤマカケス」が、新種名になるのではないでしょうか。そして、本州以南の「カケス」が、日本固有種となります。
 他にも、キビタキ、ヒヨドリ、カワラヒワ、ヤマガラ、フクロウ、リュウキュウコノハズクなどの種で、隠れた別種が、見つかっています。このように、既知の種の中に隠れた未知の種を、隠蔽種【いんぺいしゅ】といいます。先述の「カケス」のように、これらの鳥の隠蔽種の中に、新たに日本固有種となるものたちがいます。
 鳥類以外でも、詳しく調べれば、たくさんの隠蔽種が見つかりそうですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、「カケス」などの日本の鳥が、二百種以上掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、日本固有種の生物について取り上げています。また、隠蔽種についても、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
日本固有の十二種の鳥たち(2016/01/01)
ミナミヤモリの隠蔽種【いんぺいしゅ】たち(2015/10/23)
二〇一四年は、サンショウウオの当たり年? その2(2015/9/11)
日本固有種がいっぱい? ヤモリの仲間たち(2015/5/25)
山のヒバリ? イワヒバリの仲間たち(2014/10/6)
宮古島の生き物の謎(2013/7/1)
固有生物の宝庫、対馬【つしま】(2012/4/23)
などです。


2016年1月 4日

猿の顔に見える? サルメンエビネ

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 二〇一六年は、申年【さるどし】ですね。それにちなんで、サルの名が付く植物を紹介しましょう。サルメンエビネ(猿面海老根)です。ラン科エビネ属に属する一種です。
 サルメンエビネという種名は、花弁の一部が、サルの顔のように見えることから、付けられました。赤みを帯びて、しわの寄った花弁があるのですね。これをサルの顔に見立てるとは、名づけた人は、茶目っ気があったのでしょう(笑)
 サルメンエビネに限らず、ラン科植物の花には、ヒトの顔に似て見えるものがあります。花の形が、多くの花のような放射状ではなく、左右対称形のために、そう見えやすいのですね。眼や鼻のように見える斑点が、花弁に付く場合もあります。
 ラン科の植物は、花の色や形に、変異が多いです。同じ種でも、かなり違って見えることが、よくあります。この変異が面白がられて、観賞用に栽培される種が多いです。
 サルメンエビネも、観賞用に栽培しようとする方がいるようです。とりたてて美しい花ではなくとも、「猿面」を面白いと感じるからでしょう。
 けれども、それは、お勧めしません。栽培が難しい種だからです。特に、夏の暑さに弱いです。夏を越せずに、枯らしてしまうと聞きます。それは、もったいないですね。
 サルメンエビネの属するエビネ属には、もっと一般的に、栽培されている種があります。例えば、エビネがそうです。他に、キエビネ、オオキリシマエビネなどの種が、よく栽培されます。オオキリシマエビネは、園芸の世界では、ニオイエビネと呼ばれます。
 園芸の世界で、普通に栽培されている「エビネ」の種を、正確に決めようとすると、困難にぶつかります。その理由は、二つあります。一つは、前述のとおり、同じ種内でも、変異が多いためです。もう一つは、違う種の間で、簡単に交配してしまうためです。
 エビネ、キエビネ、オオキリシマエビネの三種の間では、自然の状態でも、交配してできた個体が、見つかっています。それに加えて、人工的に、種間交配されて生まれた個体も、多いです。中には、サルメンエビネを親として生まれた栽培品もあります。
 園芸の世界の「エビネ」は、種がはっきりしないと考えておいたほうが、よさそうです。

図鑑↓↓↓↓↓には、サルメンエビネと同じエビネ属のエビネが掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、動物の名前の付いた植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
スイレンは、生きている化石か?(2014/6/27)※スイレン科の一種、ヒツジグサを紹介しています
犬がいるなら、猫もいる? 植物の名前(2013/8/30)
妖精の差す傘? ヤブレガサ(2014/6/6)※ヤブレガサの別名に、動物名が付く名前があります
ヘビイチゴとオヘビイチゴとは、違う? 同じ?(2013/4/26)
植物の世界は、「虎の尾」だらけ?(2009/11/16)
などです。



2016年1月 1日

日本固有の十二種の鳥たち


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 日本には、何種の鳥がいると思いますか? 一時的に滞在する旅鳥なども含めれば、五百種は下りません。この種の多さに、驚く方もいらっしゃるでしょうね。
 これらの日本の鳥たちのうち、日本でしか見られない鳥(日本固有種の鳥)は、何種いるでしょうか? 現時点では、十二種いるといわれています。「もっと多いのでは?」という説もありますが、とりあえず、ここでは、十二種を紹介しますね。
 それら十二種とは、アオゲラ、アカコッコ、アカヒゲ、アマミヤマシギ、カヤクグリ、キジ、セグロセキレイ、ノグチゲラ、メグロ、ヤマドリ、ヤンバルクイナ、ルリカケスです。この中で、一番有名なのは、キジでしょうね。日本の国鳥ですからね。
 これらの種名を見て、鳥の知識がある方なら、すぐ、気づくことがあるでしょう。島【しま】に棲む鳥が多いです。十二種のうち、七種が、島にだけ分布します。
 島に棲む固有種の鳥たちと、その分布域とを紹介しましょう。アカコッコ(伊豆諸島とトカラ列島)、アカヒゲ(奄美大島、種子島、徳之島など)、アマミヤマシギ(奄美諸島と沖縄諸島)、ノグチゲラ(沖縄本島のみ)、メグロ(母島など、小笠原諸島の一部)、ヤンバルクイナ(沖縄本島のみ)、ルリカケス(奄美大島、加計呂麻島、請島)です。
 なぜ、日本固有種には、島に棲むものが多いのでしょうか? 島は、隔離された環境だからです。鳥類に限らず、生き物は、隔離されて長い時間が経つと、新種に進化することが多いです。島の環境に、最も適応した種になるのですね。
 また、かつては広い範囲に分布していた種が、ほとんど絶滅してしまって、わずかに、島にだけ残る場合もあります。島には、強い敵や、食べ物などを奪い合う競争相手が、いないことが多いからです。そういう意味では、島は、恵まれた環境です。
 ところが、それが裏目に出ることもあります。何かの理由で、敵や競争相手になる生き物が、島に渡ってくると、島の在来種たちは、対抗する術を知りません。
 上記の島の固有種たち、七種の鳥たちは、すべて、絶滅が心配されています。人間が、島の環境を変えてしまったからです。人間の良識が、問われています。
図鑑↓↓↓↓↓には、メグロ、ノグチゲラ、アカコッコ、ルリカケスなどたくさん掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、日本固有種を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
決戦! モグラ界の勢力争い その2(2015/11/20)
日本固有種がいっぱい? ヤモリの仲間たち(2015/5/25)
山のヒバリ? イワヒバリの仲間たち(2014/10/6)
宮古島の生き物の謎(2013/7/1)
固有生物の宝庫、対馬【つしま】(2012/4/23)
などです。


2015年12月25日

野蚕【やさん】とは、野生のカイコか?

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 先週のこのブログで、クリキュラというガ(蛾)について、書きましたね。カイコガのように、繭【まゆ】から絹(シルク)が取れるガの仲間です。クリキュラ以外にも、野生のガの中で、絹糸が取れるものは、いないのでしょうか? もちろん、います。
 有名なのは、ヤママユガという一種です。ヤママユガ科ヤママユガ属に属します。クリキュラと違って、日本に分布する種です。幼虫は、クヌギ、コナラ、カシワなどのブナ科植物の葉を食べます。ヤママユガの繭は、美しい緑色をしています。
 緑色の繭からは、つやのある緑色の絹糸が取れます。衣料品に詳しい方なら、天蚕【てんさん】という言葉を、聞いたことがあるのではないでしょうか? 天蚕とは、ヤママユガの別名です。ヤママユガの絹糸素材を指して、天蚕と呼ぶこともあります。
 衣料品の世界では、天蚕は、高級素材として知られます。カイコガの絹より、もっと高いです。カイコガの絹に比べて、生産量が少ないからです。
 カイコガは、長い間、人間に飼われ続けたために、人間が飼いやすい性質になりました。例えば、狭い範囲に密集して、たくさん飼うことができます。狭い所でたくさん飼えれば、それだけたくさんの絹を、効率よく生産できますね。
 ヤママユガなど、多くの野生のガ(蛾)は、カイコガとは違います。カイコほど、狭い場所で、密集して飼うことができません。どうしても、生産の効率が悪くなります。
 現在、普通に入手できる天蚕の絹は、野山にいるヤママユガから、取っているわけではありません。カイコより効率が悪くても、飼育されたものから、取っています。
 ヤママユガとクリキュラとは、同じヤママユガ科に属します。ヤママユガ科には、このように、絹糸が取れる種が多いです。ただし、カイコガは、ヤママユガ科ではなく、カイコガ科カイコガ属に属します。カイコガ科には、他に、クワコなどの種が属します。
 ヤママユガ科では、エリサン(エリ蚕)、タサールサン(タサール蚕)などの種も、絹糸を取るために、飼育されています。ヤママユガ、クリキュラ、エリサン、タサールサンなど、カイコガ以外の絹糸を取るガ(蛾)を、野蚕【やさん】と総称します。
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、クリキュラは載っていません。かわりに、日本に分布するガ(蛾)が、二十種ほど掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、ガ(蛾)の仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
黄金の糸をつむぐ虫、クリキュラ(2015/12/18)
洞窟に棲むガ(蛾)がいる?(2015/11/6)
富士山の謎のガ(蛾)たち(2015/10/30)
騙すつもりはないけれど、テントウダマシ(2011/10/10)
テントウムシのおしゃれには意味がある(2007/2/9)
などです。


2015年12月21日

クリスマスに花咲くサボテンたち

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 今の季節、日本の野外では、咲く花が少ないですね。けれども、花屋さんへ行くと、色とりどりの花が、店先を彩っています。今回は、それらの植物のうちから、ちょっとユニークなものを紹介しましょう。シャコバサボテンです。
 シャコバサボテンは、名のとおり、サボテンの仲間です。サボテン科シュルンベルゲラ属の種の多くが、この名で呼ばれます。これには、ややこしい事情があります。
 シュルンベルゲラ属のうち、シャコバサボテンという日本語名が付けられたのは、ラテン語の学名をSchlumbergera truncata【シュルンベルゲラ・トルンカタ】という種です。厳密に言えば、「シャコバサボテン」という種名は、この種だけのものです。
 ところが、この本来の「シャコバサボテン」からは、たくさんの園芸品種が生まれました。中には、シュルンベルゲラ属の他種と交配されて、作られた品種もあります。これらの品種も、まとめて、シャコバサボテンと呼ばれるようになりました。
 現在は、狭義のシャコバサボテン(Schlumbergera truncata)と、広義のシャコバサボテン(Schlumbergera truncataから生まれた園芸品種群)とが、混在する状態です。
 狭義のシャコバサボテンは、ブラジル原産の野生種です。サボテンなのに、砂漠ではなく、森林に生えます。もう一つ、変わった点は、直接、地面に生えないことです。森林の樹木に着生します。樹木には、くっつくだけで、寄生するわけではありません。
 シュルンベルゲラ属のサボテンは、多くが、似た生活をします。このため、姿も似ています。野生種でも、園芸品種かと思うほど、美しい花を咲かせることも、同じです。その美しさのために、シュルンベルゲラ属のサボテンは、よく栽培されます。
 広義のシャコバサボテンは、北半球の国々では、クリスマスの頃に、花を咲かせます。ゆえに、英語ではChristmas cactus(クリスマスのサボテン)と呼ばれることがあります。
 狭義のシャコバサボテンも、北半球では、クリスマスの頃に、花が咲きます。その英語名は、false Christmas cactus(にせクリスマスサボテン)です。狭義のシャコバサボテンこそ、本家本元なのに、「にせ」と言われてしまうのは、気の毒ですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、シャコバサボテンは載っていません。かわりに、日本の植物が、八百種ほど掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、サボテンの仲間を取り上げています。また、クリスマスに関わる植物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
クリスマスツリーは、氷河期の生き残り?(2015/12/14)
サボテンと多肉植物とは、違う? 同じ?(2014/7/25)
サボテンは、いつから日本にあった?(2013/12/6)
クリスマスローズはクリスマスに咲かない?(2007/12/3)
ポインセチアはクリスマスの花?(2006/12/14)
などです。


2015年12月18日

黄金の糸をつむぐ虫、クリキュラ

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 絹(シルク)が、カイコガからできることは、よく知られていますね。カイコガの幼虫が吐く糸が、絹の材料です。カイコガ以外のガ(蛾)からも、絹ができることがあるのは、御存知でしょうか? 今回は、そのようなガ(蛾)の仲間を、紹介しましょう。
 クリキュラと呼ばれるガ(蛾)のグループがあります。ヤママユガ科クリキュラ属に属する種の総称です。クリキュラ属には、少なく見積もっても、十二種ほどが属します。
 クリキュラとは、聞き慣れない名前ですね。日本語ではありません。ラテン語の学名Criculaを、英語ふうに読んだものです。この属には、日本語名が付いていません。日本には、分布しないからです。インドやインドネシアなどの、熱帯アジアに分布します。
 クリキュラの幼虫も、カイコガの幼虫と同じく、糸を吐いて繭【まゆ】を作ります。その繭は、カイコガの繭とは違って、白くありません。なんと、金色に輝きます。
 もう一つ、カイコガの繭と違うのは、クリキュラの繭には、細かい穴が、たくさん開いていることです。網目状の繭です。中の蛹【さなぎ】が、透けて見えます。
 この繭は、そのままで、たいへん美しいです。この繭を切り開いて、シート状にした物が、日本で売られたことがあります。私は、東急ハンズで売られたのを見ました。黄金に輝く、見事なものでした。繭は、そのままの形で、装身具にもされています。
 繭からは、糸をつむぐことができます。しかし、現在の技術では、つむいで絹糸にすると、繭の時ほどの金色の輝きがありません。これは、いかにも残念ですね。何とかして、元の金色の輝きを保ったまま、絹糸にできるように、研究されている最中です。
 じつは、クリキュラについては、その分類も、研究途上です。熱帯アジアのどの地域に、クリキュラ属のどの種が分布するのかさえ、よくわかっていません。日本で手に入るクリキュラの繭は、ラテン語の学名を、Cricula trifenestrataという種のようです。
 Cricula trifenestrataの幼虫は、マンゴーやアボカドなどの葉を食べます。つまり、これらの果樹の害虫です。それが、繭を利用できるとしたら、カイコと同じく、非常に役立つ益虫になりますね。いつか、黄金の糸で織られた布を、見てみたいです。
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、クリキュラは載っていません。かわりに、日本に分布するガ(蛾)が、二十種ほど掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、ヒトの役に立つ昆虫を取り上げています。また、ガ(蛾)の仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
洞窟に棲むガ(蛾)がいる?(2015/11/6)
富士山の謎のガ(蛾)たち(2015/10/30)
騙すつもりはないけれど、テントウダマシ(2011/10/10)
カツオブシムシは文化財の敵?(2007/10/19)
テントウムシのおしゃれには意味がある(2007/2/9)
などです。


2015年12月14日

クリスマスツリーは、氷河期の生き残り?

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 今年も、日本の街角に、クリスマスツリーが輝いていますね。本場のヨーロッパでは、ドイツトウヒやヨーロッパモミの木が、クリスマスツリーにされます。
 ドイツトウヒも、ヨーロッパモミも、本来、日本には、自生しません。現在は、栽培されていることもあります。日本には、本場ふうのクリスマスツリーに使えるような、近縁種は自生しないのでしょうか? あります。例えば、ドイツトウヒの近縁種としては、エゾマツや、ヤツガタケトウヒといった種が、自生しています。
 エゾマツも、ヤツガタケトウヒも、ドイツトウヒと同じ、マツ科トウヒ属に属します。エゾマツは、種名のとおり、北海道に多く自生します。北海道以外では、本州中部や紀伊半島などの高山に、わずかに自生するだけです。暑さに弱いためです。
 ヤツガタケトウヒは、とても希少な種です。世界中で、日本にしか分布しない、日本特産種です。日本の中でも、本州中部の八ヶ岳付近にしか、自生していません。野生のヤツガタケトウヒは、多く見積もっても、数千本しかないといわれます。絶滅危惧種です。
 ヤツガタケトウヒは、なぜ、こんなに数が少ないのでしょうか? エゾマツと同じように、暑さに弱いことが、一因です。日本の平地では、暑過ぎて、生きられないのですね。
 何万年も前、日本が氷河期だった時代には、ヤツガタケトウヒは、日本全体に、広く分布していたと考えられています。同じ時代には、エゾマツも、おそらく、日本全体に、広く分布していました。両種とも、寒さに強いからですね。
 氷河期が終わると、ヤツガタケトウヒやエゾマツの退潮が始まりました。日本の多くの地域は、暖かくなって、彼らの生存に適さなくなったからです。
 ヤツガタケトウヒは、高い山へと登って、そこで、取り残されてしまいました。エゾマツは、北海道へ逃げたものと、本州の高い山へ登ったものとに分かれました。本州のエゾマツ個体群は、エゾマツの変種トウヒとされています。
 ヤツガタケトウヒは、野生の個体は少ないですが、栽培されることもあります。円錐形の、美しい樹形になるからです。本場のドイツトウヒにも負けない、見事なツリーです。

図鑑↓↓↓↓↓には、エゾマツとヤツガタケトウヒ掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、クリスマスに関連した植物について、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
クリスマスローズはクリスマスに咲かない?(2007/12/3)
ポインセチアはクリスマスの花?(2006/12/14)
コデマリとクリスマスローズ(2006/5/17)
西洋ヒイラギはクリスマスに、ヒイラギは節分に(2005/12/23)
クリスマスの飾りは豊饒【ほうじょう】のしるし、ヤドリギ(2005/12/12)
クリスマスツリーはモミではない?(2005/11/28)
などです。


2015年12月11日

一挙に十種以上!? シマドジョウ属の新種たち

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 ドジョウは、皆さん、御存知の魚ですね。童謡にも登場するほど、昔から、日本人に親しまれています。ところが、ドジョウの仲間の分類は、二十一世紀になっても、確定していません。コイ目【もく】ドジョウ科の分類は、今なお、検討されている最中です。
 ドジョウ科には、多くの属が含まれることは、確実です。それらのうち、ここでは、シマドジョウ属を取り上げましょう。日本の本州、四国、九州に分布するドジョウです。
 かつて、シマドジョウ属には、シマドジョウという種が、ただ一種だけ含まれると考えられました。けれども、二十世紀の半ばには、シマドジョウ属には、多くの種が含まれるという説が、広く認められるようになりました。
 シマドジョウ属の種シマドジョウから、まず、イシドジョウという種と、ヒナイシドジョウという種とが、分離されました。その後の種の分離は、なかなか進みませんでした。
 多種が混ざっていることが確実視されながらも、シマドジョウという種が、図鑑などで採用されることが、長く続いてきました。二〇一〇年代になって、シマドジョウというあやふやな種を廃止して、多種に分離することが、提案されました。
 種の分離が進む前から、形態の特徴に基づいて、シマドジョウ属は、便宜的に、グループ分けがされてきました。シマドジョウ種群、スジシマドジョウ種群、ヤマトシマドジョウ種群、イシドジョウ種群です。これらのうち、イシドジョウ種群は、前記のイシドジョウと、ヒナイシドジョウとを合わせたグループです。
 シマドジョウ種群は、四種に分けられました。ニシシマドジョウ、ヒガシシマドジョウなどの種です。スジシマドジョウ種群は、少なくとも、五種に分けられることになりました。アリアケスジシマドジョウ、タンゴスジシマドジョウなどの種です。
 ヤマトシマドジョウ種群は、いまだ、研究が進んでいません。当面、オオヨドシマドジョウという一種だけが、分離されています。他にも種があることは、確実です。
 シマドジョウ属の分類は、今後も、しばらくは落ち着かないでしょう。普通の人には、正しい種名を知るのが難しい状況が、続きそうです。
図鑑↓↓↓↓↓には、ドジョウが掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、ドジョウの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
アユモドキ亜科の分類は?(2013/11/4)
アユモドキは、アユの仲間か?(2013/10/28)
どじょっこにも、いろいろいます(2010/4/26)
などです。



2015年12月 7日

ナナカマドは、魔除けの木?

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 ナナカマドは、日本の九州以北に自生する木です。といっても、温暖な地方では、高い山にしか、見られません。涼しい所を好むので、北日本に多いです。北海道などでは、街路樹や公園樹にされています。紅葉や、赤い果実が美しいからです。
 ナナカマドの果実は、秋に、真っ赤に熟します。小さな果実が、まとまって付くために、目立ちます。それは、鳥を呼び寄せるためです。鳥に果実を食べてもらうことで、排泄物とともに、種子をばらまいてもらう戦略です。
 真っ赤な果実は、ヒトにとっても、美味しそうに見えますね。ヒトも、食べられるのでしょうか? 食べても、害はありません。しかし、美味しくもないそうです。
 ナナカマドと同じ、バラ科ナナカマド属には、果実が、ヒトの食用になる種もあります。日本に自生する種の中では、タカネナナカマドなどが、そうです。タカネナナカマドは、本州中部以北に分布します。ナナカマドより、もっと涼しい所を、好むのですね。
 タカネナナカマドは、ナナカマドより、大きい果実を付けます。色は、ナナカマドと同じく、真っ赤です。味は、甘酸っぱいと聞きます。そのまま食べるより、ジャムにしたり、果実酒を作ったりすることが多いです。
 日本に分布する種以外でも、食用になるものがあります。中で、有名なのは、セイヨウナナカマドでしょう。種名のとおり、ヨーロッパから、北アジアに分布する種です。
 セイヨウナナカマドの果実には、苦味があります。この苦味が好まれる場合もありますが、より食べやすくするために、苦味の少ない栽培品種も作られました。
 セイヨウナナカマドと言えば、ヨーロッパでは、伝統的に、魔除けの木とされます。なぜそうなったのか、確定的な理由は、わかりません。おそらく、寒々しい冬にも、真っ赤な果実を付けていることが、生命力を感じさせたからでしょう。
 セイヨウナナカマドの果実には、ビタミンCが豊富に含まれます。このために、多少まずくても、食べる意味があります。昔のヨーロッパ人は、食べ物の少ない冬に、セイヨウナナカマドの果実に、救われていたのかも知れません。
図鑑↓↓↓↓↓には、ナナカマドが掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、魔除けにされる植物を取り上げています。また、果実が食用になる植物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ローズヒップは、バラの果実?(2015/2/6)
ナツメ(棗)は、夏芽【なつめ】?(2013/8/23)
クマツヅラは、魔法の植物?(2011/7/15)
北国の魔法の植物? イケマ(2010/1/1)
花も実もある魔除けの木、モモ(2006/3/3)
などです。


2015年12月 4日

北半球のペンギン? ウミガラス その2

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 先週のこのブログで、ウミガラスとペンギンとについて、取り上げましたね。今回は、その続きです。ウミガラスとペンギンとは、なぜ、あんなに似ているのでしょうか?
 例えば、ウミガラスもペンギンも、腹部が白く、背中が黒っぽいという配色が、同じですね。この配色には、意味があると考えられています。有力な説として、敵や、獲物の目をくらます効果があるというものがあります。
 背中が暗い色なのは、海面下に潜っている時に、上から見えにくい効果があります。腹部が白いのは、下から海面の方を見上げた時に、見えにくい効果があります。海面の明るさと、腹部の白さとが、まぎれやすいからです。
 ウミガラスとペンギンとには、大きな違いもありますね。最も目立つ違いは、ウミガラスが、空を飛べることでしょう。ペンギンが飛べないのは、翼が小さ過ぎるからです。
 空を飛ぶには、体に対して、一定以上の面積がある翼を、持たなくてはいけません。しかし、「水中を飛ぶ」には、空を飛ぶよりも、体に対して小さい翼のほうが、有利です。
 では、ウミガラスのように、「空も水中も飛ぶ」ためには、どうしたらよいでしょうか? 体を小さくすることです。小さければ、空を飛ぶための翼も、小さくて済みます。ということは、「水中を飛ぶ」翼としても、使いやすいわけです。
 ここに、興味深いデータがあります。ウミガラスなどのウミスズメ科の鳥たちと、ペンギン科の鳥たちとの、体の大きさを比較したデータです。
 現存するウミスズメ科のうち、最も大きい種は、ハシブトウミガラスと、オオハシウミガラスです。どちらも、全長40cmから45cmくらいです。いっぽう、ペンギン科の種で、最も小さいのは、コガタペンギンです。全長40cmくらいです。
 ウミスズメ科の最大種と、ペンギン科の最小種とが、同じくらいなのは、このあたりが、「空水兼用の翼にできるかどうか」の限界点だからでしょう。ハシブトウミガラスや、オオハシウミガラスは、ぎりぎりの条件で、空を飛んでいるわけです。コガタペンギンは、限界ぎりぎりの「空を飛ぶこと」を捨てて、水中専用の生活を選びました。
図鑑↓↓↓↓↓には、、ウミガラスと同じウミスズメ科のカンムリウミスズメが掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、ウミガラスや、ペンギンの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
北半球のペンギン? ウミガラス(2015/11/27)
鳥の夫婦は、みんな仲良し?(2014/12/15)
南極の魚は、凍らない?(2014/7/7)
北極と南極には、同じ生き物がいる?(2009/2/21)
ペンギンが絶滅する? 南極の危機(2007/12/13)
南極にペンギンがいて、北極にいないのはどうしてですか?(2006/6/22)
などです。


2015年11月30日

野生のイチゴは、存在しない?

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 今回は、芸術品というより、日用品の中に登場する植物を、紹介しましょう。ワイルド・ストロベリーです。ウェッジウッドという、イギリスの陶芸品のメーカーを、御存知でしょうか? そのメーカーのティーカップなどに、登場するものです。
 ウェッジウッドのワイルド・ストロベリーの絵柄は、シンプルです。「イチゴ」のつると、愛らしい赤い果実とが、描かれています。多くの方は、あの「イチゴ」は、日本で普通に売られている「イチゴ」と、同じ種だと思ってらっしゃるのではないでしょうか?
 じつは、違います。ワイルド・ストロベリーは、日本で普通に売られ、食べられている「イチゴ」とは、別の種です。その種は、正式な日本語名(標準和名)が、定まっていません。エゾノヘビイチゴや、ヨーロッパクサイチゴなどと呼ばれる種です。
 日本で普通に売っているのは、標準和名を、オランダイチゴという種です。オランダイチゴには、野生のものは、ありません。果実を食用にするために、人工的に作られた種だからです。その点からも、ワイルド(=野生の)・ストロベリーとは、違うわけです。
 英語でwild strawberryと言えば、エゾノヘビイチゴ(ヨーロッパクサイチゴ)を指します。もともと、英語圏で、strawberryと呼ばれていたのは、この種でした。オランダイチゴが作り出される前には、この種が、「食用のイチゴ」でした。
 エゾノヘビイチゴ(ヨーロッパクサイチゴ)は、十七世紀くらいから、ヨーロッパで、食用に栽培されていました。しかし、十八世紀にオランダイチゴが生まれてからは、商業的に売られる「イチゴ」の地位は、オランダイチゴに独占されてしまいました。
 日本には、エゾノヘビイチゴ(ヨーロッパクサイチゴ)は、自生しません。栽培植物として入ったのも、最近です。日本では、趣味的に、ごく少量、栽培されるだけです。このために、日本人には馴染みがなく、標準和名も、定まっていないわけです。
 エゾノヘビイチゴという名は、誤解を招きやすいです。日本のヘビイチゴと、ヨーロッパのエゾノヘビイチゴとは、近縁ですが、同種ではありません。エゾノヘビイチゴと、オランダイチゴとのほうが、近縁同士です。同じバラ科オランダイチゴ属に属します。

図鑑↓↓↓↓↓には、オランダイチゴと、日本のヘビイチゴが掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、イチゴの仲間を取り上げています。また、イチゴ以外の果物についても、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
日本のナシと西洋ナシとは、違う? 同じ?(2014/11/14)
ヘビイチゴとオヘビイチゴとは、違う? 同じ?(2013/4/26)
ブルーベリーは、一種じゃない?(2012/5/25)
イチゴ(苺)にも、いろいろあります(2012/5/11)
マタタビは、ヒトも食べられる?(2012/3/9)
などです。


2015年11月27日

北半球のペンギン? ウミガラス

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 ペンギンが、南極付近に分布することは、よく知られていますね。でも、ペンギンは、南極にしか、いないわけではありません。南アフリカ、南アメリカ、オーストラリアなど、南半球に広く分布します。北半球には、ペンギンはいないのでしょうか?
 正確には、ガラパゴスペンギンの一部が、北半球にも分布します。それ以外に、ペンギンにそっくりな鳥が、北極の周辺に、分布します。日本付近の海でも、北海道などで、「ペンギンにそっくりな鳥」を見ることができます。
 それは、ウミスズメ科の鳥たちです。中でも、ウミガラスという種は、とりわけ、ペンギンに似ています。ペンギンのように、「直立」型の体型をしているからです。頭から背中にかけて黒く、腹が白いという配色も、ペンギンと同じです。
 鳥に詳しくない人に、ウミガラスの写真を見せれば、誰もが「ペンギン」だと言うでしょう。それほど似るからには、ペンギンとウミガラスとは、近縁なのでしょうか?
 違います。ペンギンとウミガラスとは、「他人の空似」です。ペンギンとは、ペンギン目【もく】ペンギン科に属する種の総称です。ウミガラスのほうは、チドリ目【もく】ウミスズメ科ウミガラス属に属する一種です。目【もく】が違うのは、遠縁なもの同士です。
 なぜ、遠縁なのに、こんなに似ているのでしょうか? 生態が似ているからです。どちらも、比較的、寒冷な海に棲んで、海の生き物を捕食します。捕食の際には、海に潜ります。特徴的なのは、潜水した時に、翼を使って泳ぐことです。
 同じ水鳥でも、例えば、鵜飼いに使われるウなどは、足だけを使って潜水します。けれども、ウミガラスなどのウミスズメ科の鳥たちと、ペンギンとは、翼を使って潜水します。水中で翼をはばたかせるので、まるで、水の中を飛ぶように見えます。
 水中を「飛ぶ」には、空を飛ぶよりも、面積の狭い翼のほうが、有利です。ペンギンは、空を飛ぶことを捨てて、水中を「飛ぶ」有利さのほうを、選びました。
 ウミガラスは、空を飛ぶことを捨てませんでした。空を飛ぶことにも、有利な点が多いからでしょう。北の海では、空を飛んで繁殖地に来るウミガラスが、見られます。

図鑑↓↓↓↓↓には、ウミガラスと同じウミスズメ科のカンムリウミスズメ掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、ペンギンや、ウミガラスの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
鳥の夫婦は、みんな仲良し?(2014/12/15)
南極の魚は、凍らない?(2014/7/7)
北極と南極には、同じ生き物がいる?(2009/2/21)
ペンギンが絶滅する? 南極の危機(2007/12/13)
南極にペンギンがいて、北極にいないのはどうしてですか?(2006/6/22)
などです。



2015年11月23日

ゴッホの糸杉とは?

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 今回も、芸術作品に登場する植物を、紹介しましょう。今回取り上げるのは、イトスギ(糸杉)です。ゴッホが、何度も画題に取り上げたことで、知られますね。
 じつは、「イトスギ」と呼ばれる植物には、二十種以上の種が含まれます。ヒノキ科イトスギ属に属する種を、「イトスギ」と総称します。ゴッホが描いたのは、ヒノキ科イトスギ属のうち、どの種でしょうか? これに答えるには、少々、問題があります。
 ゴッホが描いたイトスギの種は、ほぼ間違いなく、確定されています。ラテン語の学名を、Cupressus sempervirensという種です。ところが、この種の正式な日本語名(標準和名)が、確定していません。複数の日本語名が、並立している状態です。
 私が知る限りでも、ホソイトスギ、セイヨウイトスギ、イタリアイトスギといった種名があります。単に「イトスギ」を、Cupressus sempervirensの日本語名とすることもあります。これは、他のイトスギ属の種と、紛らわし過ぎますね。
 こうなってしまったのは、もともと、日本には、イトスギ属の種が自生していないことが、原因でしょう。と書くと、驚かれる方が多いかも知れませんね。イトスギ属の種は、公園の木や庭木として、日本で、平凡に見られるからです。
 日本にある「イトスギ」は、すべて、ヒトが植えたものです。日本に限らず、イトスギ属の木は、街路樹や公園樹として植えられることが、多いです。
 日本の「イトスギ」の大部分は、ゴッホが描いた「イトスギ」と同じ種です。ホソイトスギなどという日本語名の種ですね。この種は、地中海沿岸から西アジアにかけてが、原産地です。ゴッホが「イトスギ」を描いた舞台は、原産地の南フランスでした。
 近年、日本の園芸店で、よく売られるようになったのが、モントレーイトスギです。ゴッホの「イトスギ」(ホソイトスギ)とは別の、イトスギ属の種です。「ゴールドクレスト」という品種が、有名です。モントレーイトスギは、原産地が、北米大陸です。
 ホソイトスギのすんなりした立ち姿は、どの地域でも、人気があります。そんなイトスギも、ゴッホの手にかかると、揺らめく炎のような形になるのが、面白いですね。

図鑑↓↓↓↓↓には、イトスギ(ホソイトスギ)が掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、芸術作品に登場する生き物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
オフィーリアは、バイカモの流れに身を浸す?(2015/11/16)
ターナーの松とは?(2015/11/9)
悪名No.1? ヘクソカズラ(2014/8/1)
エミール・ガレの愛したトンボとは?(2011/9/12)
プラナリアは、美術モデル?(2010/1/18)
聖母マリアと白百合【しらゆり】の関係(2006/5/18)
などです。


2015年11月20日

決戦! モグラ界の勢力争い その2

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 先週、このブログで、日本のモグラに関する話をしましたね(決戦! モグラ界の勢力争い(2015/11/13))。今回は、その続きの話をしましょう。
 先週、コウベモグラやアズマモグラに比べて、小型のミズラモグラは、山地に追いやられていると書きました。日本には、ミズラモグラより、もっと小型のモグラ類がいます。ヒミズと、ヒメヒミズです。どちらも、日本固有種のモグラたちです。
 ミズラモグラでさえ、狭い山地に押し込められているというのに、もっと小さいのでは、いったい、どこで、どうやって暮らしているのでしょうか?
 じつは、ヒミズと、ヒメヒミズとでは、まったく状況が違います。ヒメヒミズのほうは、ミズラモグラに似た状況です。分布が、山地に限られています。ところが、ヒミズのほうは、本州・四国・九州の全体、五島列島や対馬にまで、広く分布します。
 小ささをものともせず、ヒミズの分布が広いのは、なぜでしょうか? ヒミズの場合は、体が小さいことが、有利に働いたと考えられます。
 体格にあまりに差があると、食べ物やすみかが、競合しません。たとえて言えば、同じ草食動物でも、ゾウとリスとでは、競合相手にならないのと同じです。ヒミズは、コウベモグラやアズマモグラとは、体格差があり過ぎて、対決せずに済んだのでしょう。
 モグラ科の中では、ヒミズは、原始的なほうだとされています。まだ、完全には、地中生活に適応していません。半地中生活をしています。このことも、有利に働いたと考えられます。地中の食べ物やすみかだけに、頼らずに済むからです。
 しかし、ヒミズとヒメヒミズとは、直接、競合相手となりました。
 ヒメヒミズは、ヒミズよりも、小さいです。日本で最も小型のモグラです。ヒミズと同様、完全な地中生活者ではなくて、半地中生活をします。このために、ヒミズと真っ向から対決することとなり、小型なのが災いして、負けてしまったのでしょう。
 ヒメヒミズは、ヒミズよりも、さらに原始的なモグラだと考えられています。貴重な種ですが、近年、数が減っているようです。ヒミズに追い詰められているのかも知れません。

図鑑↓↓↓↓↓には、ヒミズ、ヒメヒミズなどの、日本のモグラ類掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、モグラの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
決戦! モグラ界の勢力争い(2015/11/13)
食虫目【しょくちゅうもく】とは、どんな哺乳類?(2010/5/3)
ネズミでないネズミがいる?(2007/12/21)
日本はモグラの標本国?(2007/1/26)
などです。



2015年11月16日

オフィーリアは、バイカモの流れに身を浸す?

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 芸術の秋にちなんで、今回も、美術作品に登場する生き物を、紹介しましょう。今回、取り上げるのは、ジョン・エヴァレット・ミレイの絵画『オフィーリア』です。
 オフィーリアと言えば、シェイクスピアの戯曲『ハムレット』のヒロインですね。彼女は、川で溺死する、悲劇の人です。ミレイの『オフィーリア』は、川で息絶えた彼女を描いています。水に浮かぶ彼女の手前に、白い、小さな花が、点々と咲いています。
 日本では、この花は、バイカモ(梅花藻)だと説明されてきました。しかし、その説明は、生物学的に厳密に正しいかと言えば、そうではありません。
 バイカモという種は、日本固有種です。ヨーロッパには、自生しません。ですから、この花が、種としてのバイカモであるはずはありません。
 ただ、ヨーロッパには、バイカモの近縁種が、何種も分布します。『オフィーリア』に描かれたのは、そのうちの一種でしょう。キンポウゲ科キンポウゲ属バイカモ亜属のうちの、どれかの種です。これらのヨーロッパ産の種には、日本語名が付いていません。
 バイカモ亜属の種は、どれも、互いに似ています。どの種も、淡水中に生える水草です。細かく切れ込んだ形の葉が、水に浸っています。水中から茎を伸ばして、水上に、白い五枚の花弁がある花を咲かせます。
 ミレイの『オフィーリア』には、種を区別できるほど、明確な特徴が描かれているわけではありません。このために、種をはっきりと決めるのは、難しいです。
 単純に、ミレイの故郷イギリスで、最も平凡な種が選ばれたと考えるなら、ラテン語の学名を、Ranunculus aquatilis【ラヌンクルス・アクアティリス】という種でしょう。
 種が確定できなくても、バイカモ亜属であることは、まず、間違いありません。「バイカモ」ではなくて、「バイカモ亜属の一種」、あるいは、「バイカモ類の一種」としておけば、生物学的に正確な説明といえます。
 普通は、美術作品に、そこまで生物学的知識を求める方は、いませんね(笑) でも、知っておけば、ちょっと自慢できる豆知識かも知れません。
図鑑↓↓↓↓↓には、日本に自生するキンポウゲ科の植物が、十種以上掲載されています。
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 過去の記事でも、芸術作品に登場する植物を取り上げています。また、バイカモ亜属に近縁な、キンポウゲ科の植物も、取り上げています。
ターナーの松とは?(2015/11/9)
仙人の薬になる? センニンソウ(2012/11/16)
属名で混乱中、ヒエンソウ(飛燕草)の仲間たち(2011/5/27)
オダマキの花の角【つの】は、何のため?(2008/5/16)
などです。


2015年11月13日

決戦! モグラ界の勢力争い

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 モグラは、地中に棲む哺乳類として、知られますね。日本には、およそ七種のモグラがいます。これらのモグラの分布を調べると、面白いことが、わかります。
 日本のモグラの中で、最も数が多い種は、コウベモグラか、アズマモグラだろうといわれます。この二種は、種名のとおり、おおむね、西日本と東日本とに棲み分けています。コウベモグラが西日本、アズマモグラが東日本です。
 コウベモグラとアズマモグラとが、まったく同じ条件で争ったら、コウベモグラのほうが、強いようです。コウベモグラのほうが、体の大きい個体が多いからです。このために、コウベモグラは、じわじわと、東日本へ分布を広げつつあります。
 しかし、アズマモグラのほうも、負けてばかりいるわけではありません。西日本でも、アズマモグラが、がんばっている地域もあります。紀伊半島などが、そうです。
あ 日本には、アズマモグラよりも、さらに小さいモグラもいます。例えば、ミズラモグラです。まともに争ったら、ミズラモグラは、アズマモグラやコウベモグラに敵いません。
 そこで、ミズラモグラは、山地へ活路を求めました。土が肥えて、食べ物の多い平地は、コウベモグラやアズマモグラに取られてしまったのですね。
 ミズラモグラは、日本の本州各地の山に棲みます。岩手県の北上山地、静岡・長野県境の赤石山脈、三重・滋賀県境の鈴鹿山脈、島根・広島・鳥取・岡山にまたがる中国山地などです。みごとに、分断された分布ですね。
 おそらく、何万年―あるいは、何十万年―も昔には、ミズラモグラが、本州全体に、広く分布していました。その後、アズマモグラに追われて、山地へ逃げ込んだために、現在のばらばらな分布になったと考えられます。
 ミズラモグラの次には、アズマモグラが、一度は、日本の平地を制覇したのでしょう。その後、大陸から、コウベモグラ(の祖先に当たる種)がやってきたと考えられています。今度は、アズマモグラのほうが、追われる立場になりました。
 モグラたちは、土の下で、人知れず、激しい勢力争いを、続けています。

図鑑↓↓↓↓↓には、コウベモグラ、アズマモグラ、ミズラモグラなど掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、モグラの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
食虫目【しょくちゅうもく】とは、どんな哺乳類?(2010/5/3)
ネズミでないネズミがいる?(2007/12/21)
日本はモグラの標本国?(2007/1/26)
などです。


2015年11月 9日

ターナーの松とは?

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 芸術の秋ですね。それにちなんで、今回は、ヨーロッパ絵画に登場する植物を、紹介しましょう。絵画の中で、名脇役となっている樹木です。
 ヨーロッパの絵画を見ていると、地中海沿岸地方(南ヨーロッパ)を描いた作品に、ちょっと変わった形の樹木があるのに、気づきませんか? 幹の下の方には、枝分かれがなく、上の方にだけ枝があって、こんもりと、緑の帽子をかぶるような木です。
 具体的に、そのような木が登場する作品を、挙げてみましょうか。イギリスの画家、J.M.W.ターナーの『金枝』に、典型的な、そのような木が描かれています。
 文学の世界では、夏目漱石の『坊っちゃん』に、このターナーの絵が言及されていることが、知られます。『坊っちゃん』の中で、その樹木は、「ターナーの松」と呼ばれています。『坊っちゃん』にあるとおり、この木は、マツの一種です。
 でも、日本のマツとは、似ても似つきませんね。日本のマツは、幹がまっすぐに伸びることが、少ないです。枝は、幹の下の方からも出ていて、「ターナーの松」のように、上の方ばかりが緑になることも、珍しいです。
 日本人が見ると、このようなマツは、「絵に描くために、デフォルメされたんじゃないの?」と思ってしまいますね。ところが、そうではありません。南ヨーロッパには、実際に、このような樹形になるマツが、自生します。イタリアカサマツという種です。
 イタリアカサマツという種名は、まことに、ふさわしいです。上の方で枝が広がる様子を、「笠をかぶっている」と、たとえたのですね。変にデフォルメしなくても、そのままで、絵になる木です。日本のアカマツやクロマツと同じ、マツ科マツ属に属します。
 ヨーロッパのギリシア神話には、イタリアカサマツが登場する逸話があります。それによれば、アッティスという美少年が、イタリアカサマツに姿を変えられたといいます。
 こんな神話が生まれたのも、イタリアカサマツの姿が、「豊かな髪を持つヒトが、すっくと立つ」ように見えたからではないでしょうか。その姿のおかげで、イタリアカサマツは、神話や芸術にインスピレーションを与えています。
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、イタリアカサマツは、載っていません。かわりに、日本に分布するマツ科の植物が、十二種ほど掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、マツ科の植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
現代では嫌われ者? スギ(杉)(2012/2/10) (※スギはスギ科ですが、ヒマラヤスギは、マツ科に属します)
世界で最長寿の樹木を発見!(2008/4/23)
クリスマスツリーはモミではない?(2005/11/28)
などです。


2015年11月 6日

洞窟に棲むガ(蛾)がいる?

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 洞窟に棲む生き物と言えば、何を思い浮かべますか? 多くの方は、「コウモリ」と答えるのではないでしょうか。確かに、コウモリの多くは、洞窟をすみかとします。けれども、洞窟に棲むのは、コウモリばかりではありません。
 種は少ないですが、洞窟に棲む昆虫がいます。今回は、そのような一種を紹介しましょう。マエモンオオナミシャクです。シャクガ科ナミシャク亜科の、ガ(蛾)の一種です。
 マエモンオオナミシャクは、いくつもの点で、ガの常識を越えています。その一つが、洞窟に棲む点です。洞窟に棲むのは、成虫だけです。幼虫は、普通に野外にいて、植物を食べます。幼虫の食べるのは、クマヤナギや、クロウメモドキです。
 マエモンオオナミシャクの成虫は、初夏に羽化して現われます。ところが、普通のガなら、活発に活動するはずの夏に、ほとんど活動しません。涼しい洞窟の中で過ごします。秋になると、外に出てきて、飛び回ります。十二月頃まで、外で活動します。
 普通のガであれば、秋に活動したら、冬には死んでしまいます。しかし、マエモンオオナミシャクは、違います。真冬には、また洞窟に入って、外より暖かい環境で、越冬します。翌年の春まで生き延びて、また外に出て、活動します。
 春先に活動するのは、生殖のためです。春、交尾を終えて、産卵して、次世代に命をつないでから、成虫が死にます。成虫の寿命は、十か月ほどに及びます。こんなに成虫の寿命が長いガは、珍しいです。この点だけでも、ガとして、異例です。
 マエモンオオナミシャクの成虫が棲むのは、どんな洞窟でもいいわけではありません。溶岩洞窟という、火山の噴火に伴ってできた洞窟にだけ、棲みます。このために、マエモンオオナミシャクの分布は、溶岩洞窟のある地域に限られています。
 溶岩洞窟の中で、マエモンオオナミシャクの成虫は、何を食べているのでしょうか? これについては、わかっていません。何も食べないのかも知れません。
 洞窟の中には、ガを食べるコウモリという敵もいます。こんな所で、なぜ、マエモンオオナミシャクは、暮らすのでしょうか? 彼らの生活は、謎だらけです。

図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、マエモンオオナミシャクは、載っていません。かわりに、日本に分布するガ(蛾)が、二十種ほど掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、ガ(蛾)の仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
絶滅寸前の害虫? ニカメイガなど(2015/8/21)
空を飛ぶ毛虫がいる?(2015/3/23)
サカキの葉を白くしたのは、誰?(2015/3/2)
上には上がいる? 有毒生物の世界(2014/8/4)
などです。



2015年11月 2日

コーヒーノキは、何種もある?

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 秋の夜長、眠気覚ましに、コーヒーを飲みながら読書する方も、いらっしゃるかも知れませんね。今回は、コーヒーの原料であるコーヒーノキについて、紹介しましょう。
 コーヒーの原料が、コーヒー豆であることは、皆さん、御存知でしょう。豆というからには、コーヒーノキは、マメ科の植物なのでしょうか? いえ、違います。
 豆というのは、外見が豆のようだから、そう呼ばれるだけです。コーヒー豆とは、コーヒーノキの種子に当たります。コーヒーノキの果実の中にある種子です。
 コーヒーノキは、アカネ科コーヒーノキ属に属します。この属には、何十もの種が属します。それらの種が、すべて、コーヒーの原料になるわけではありません。現在、世界各国で、普通に飲まれるコーヒーは、大部分が、二種のコーヒーノキからできています。
 というと、「たった二種? そんなはずはない」と思う方が、いらっしゃるでしょう。コーヒーがお好きな方なら、コーヒーには、たくさんの銘柄があることを、御存知のはずです。モカ、ブルー・マウンテン、キリマンジャロ、マンデリン、まだまだありますよね。
 じつは、コーヒーの銘柄は、コーヒーノキの種とは、必ずしも一致しません。上に挙げた、モカなどの銘柄のコーヒーは、すべて、同じ種のコーヒーノキからできます。アラビカコーヒーノキという種です。アラビアコーヒーノキとも呼ばれます。
 アラビカコーヒーノキは、現在のコーヒー原料のうち、七割から八割を占めるといわれます。残りの二割から三割は、ほぼ、ロブスタコーヒーノキという種が占めます。栽培品種の中には、アラビカとロブスタとを交配したものもあります。
 アラビカとロブスタ以外のコーヒーノキも、コーヒーの原料になることが、ないわけではありません。例えば、リベリカコーヒーノキや、コンゴコーヒーノキは、少量が栽培されて、地元で、コーヒーとして消費されています。
 とはいえ、現在、日本で普通に暮らしているなら、アラビカとロブスタ以外のコーヒー原料が入手できることは、ほとんどありません。街のお店で飲むコーヒーも、豆を買ってきて、自宅で入れて飲むコーヒーも、この二種だと思って、間違いないでしょう。

図鑑↓↓↓↓↓には、コーヒーノキと同じアカネ科の植物が、六種ほど掲載されています。
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 過去の記事でも、アカネ科の植物を取り上げています。また、コーヒーノキのように、飲料が取れる植物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
雑草にも、花が咲きます、ヤエムグラ(2015/5/8)
お酒を出す木がある?(2015/3/13)
悪名No.1? ヘクソカズラ(2014/8/1)
ソナレムグラの「ソナレ」とは?(2014/7/18)
クチナシは、口無し?(2014/1/3)
などです。


2015年10月30日

富士山の謎のガ(蛾)たち

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 今回は、富士山に分布する昆虫を、二種、紹介しましょう。日本の昆虫の中でも、とびきりに貴重な種です。二種とも、ガ(蛾)の仲間(チョウ目【もく】)です。
 一種は、フジシロミャクヨトウです。ヤガ科ヨトウガ亜科に属します。日本では、富士山でしか、分布が確認されていません。不思議なことに、日本国外では、モンゴル、チベット、ウラル山脈南部、ヨーロッパのアルプス山脈などに、広く分布します。
 国外の分布からすれば、寒い所を好む種なのは、間違いありません。それなら、日本のアルプス山脈などにも、分布しそうなものですね。例えば、日本の南アルプスには、フジシロミャクヨトウの幼虫が食べる植物、ムラサキモメンヅルが分布しています。
 にもかかわらず、富士山以外の日本の山では、フジシロミャクヨトウの定着は、確認されていません。これは、大きな謎です。富士山は、南アルプスなどに比べると、地質学的に、ずっと若い山です。動物が移住して定着するには、不利なはずなのです。
 フジシロミャクヨトウとは別の意味で、謎のあるガ(蛾)がいます。ソウウンクロオビナミシャクです。シャクガ科ナミシャク亜科に属する一種です。
 ソウウンクロオビナミシャクは、富士山を含む本州の高山地帯と、北海道の高山地帯とに分布します。高山でしか見られない、高山性のガです。種名の「ソウウン」は、北海道の地名、層雲峡から取られています。そこに分布するからですね。
 ソウウンクロオビナミシャクが、高山性になった理由には、いくつかあると考えられています。理由の一つが、幼虫の食性です。幼虫は、高山にしか生えない、ハイマツを食べることを選びました。ここに、謎があります。富士山に、ハイマツは分布しません。
 では、ソウウンクロオビナミシャクの幼虫は、富士山で、何を食べているのでしょうか? ハイマツに近縁な、ゴヨウマツを食べているのでは、と推測されています。高山帯近くのゴヨウマツは、まるでハイマツのように、背が低くなり、厳しい気候に耐えています。
 ソウウンクロオビナミシャクも、フジシロミャクヨトウも、富士山での生態は、よくわかっていません。高山の厳しさが、生態を解明するのに、壁になっています。
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、フジシロミャクヨトウも、ソウウンクロオビナミシャクも、載っていません。かわりに、日本に分布するガ(蛾)が、二十種ほど掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、富士山に分布する生物を取り上げています。また、日本のガ(蛾)の仲間も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
絶滅寸前の害虫? ニカメイガなど(2015/8/21)
富士山と白山、植物が多いのは、どっち?(2015/6/12)
空を飛ぶ毛虫がいる?(2015/3/23)
サカキの葉を白くしたのは、誰?(2015/3/2)
上には上がいる? 有毒生物の世界(2014/8/4)
などです。


2015年10月26日

コウモリ? いえ、植物です

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 生物の種名の中には、動物なのか、植物なのか、わかりにくいものがあります。例えば、「カニコウモリ」や「ミミコウモリ」という種名を聞いたら、動物のコウモリの仲間だと思いますよね? ところが、これらは、植物の種名です。
 植物の中に、コウモリソウ属というグループがあるのですね。キク科コウモリソウ属です。このグループに属する種には、「○○コウモリ」という種名のものが、多いです。
 そもそも、「コウモリソウ」という名は、なぜ、付いたのでしょうか? 葉の形が、動物のコウモリが翼を広げた形に、似ているからだそうです。言われてみれば、コウモリソウの葉の形などは、そう見えなくもありません。想像力が必要です(笑)
 コウモリソウ属の一種に、ヨブスマソウという種名のものがあります。この種名は、かつて、「よぶすま」と呼ばれた動物にちなんで、付けられました。
 「よぶすま」とは、ムササビのことです。ヨブスマソウの葉の形が、ムササビが飛膜を広げて滑空する姿に似ることから、付けられました。葉の形を見るに、コウモリソウよりも、さらに想像力が必要とされる種名ですね。
 ヨブスマソウの種名を付けるに当たっては、おそらく、コウモリソウに近縁であることが、大きく寄与したのでしょう。ムササビは、コウモリと同じように、「夜、空を飛ぶもの」(正確には、ムササビは、滑空ですが)ですから。
 コウモリソウ属には、他にも、「○○コウモリ」でない種名の種が、属します。モミジガサ、タイミンガサ、タマブキなどです。種名とは関係なく、コウモリソウ属の種は、食用になるものが多いです。特に、モミジガサが、山菜として有名です。
 山菜としてのモミジガサは、シドケ、シトギなどと呼ばれることが多いです。春に出る、若い芽を食べます。食用にするために、栽培されることもあります。
 モミジガサ以外に、ヨブスマソウ、ミミコウモリ、タマブキ、コウモリソウなど、多くの種が、食用になります。モミジガサ以外の種は、日本では、ほとんど栽培されません。地元の人が、野生のものを採取して食べているようです。
図鑑↓↓↓↓↓には、モミジガサが掲載されています。
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 過去の記事でも、山菜にされる植物を取り上げています。また、コウモリソウと名前が紛らわしいコウモリの仲間も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ミツバウツギは、ウツギと遠縁(2015/5/29)
「山ごぼう」に御注意を(2014/10/31)
コウモリの分布の謎(2012/5/21)
コウモリは、なぜ冬眠するか?(2012/1/9)
「たらの芽」は、タラノキの芽ではない?(2010/2/26)などです。



2015年10月23日

ナミヤモリの隠蔽種【いんぺいしゅ】たち

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 以前、このブログで、隠蔽種というものを取り上げましたね(二〇一四年は、サンショウウオの当たり年? その2(2015/9/11))。この時は、日本の両生類の隠蔽種を紹介しました。今回は、日本の爬虫類の隠蔽種を紹介しましょう。
 ミナミヤモリという、ヤモリの一種がいます。このヤモリは、長い間、日本の九州南部と、南西諸島に分布すると考えられてきました。国外では、台湾と、中国南部に分布するとされています。ところが、この分布が、間違いだという意見が、出てきました。
 それは、「ミナミヤモリ」の中に、別の種が紛れ込んでいるために、そのような分布に見えているのだということです。現時点では、「ミナミヤモリ」の中に、四種が隠蔽されていたと考えられています。まだ、完全には、そうと確認されていません。
 「ミナミヤモリ」のうち、奄美大島と、トカラ列島の小宝島に分布するものは、アマミヤモリという新種であることが、認められました。ラテン語の学名も、Gekko vertebralisと付けられました。国際的に、正式に、種として記載されたわけです。
 トカラ列島の宝島に分布する「ミナミヤモリ」は、タカラヤモリという新種になりました。ラテン語の学名は、Gekko shibataiです。こちらも、正式に記載です。
 他の二種の隠蔽種については、まだ、ラテン語の学名が付いていません。正式に、新種として認められていない状態です。ただ、日本語名だけは、付けられています。
 九州の西部と、五島列島などの島々に分布するのは、ニシヤモリだとされています。沖縄本島と、久米島と、伊平屋島に分布するのは、オキナワヤモリとされています。
 これで、国内の「ミナミヤモリ」の分布地は、ほぼ、九州南部と、先島諸島だけが残る形になりました。けれども、このように、次々と隠蔽種が発見される状態では、残る分布地にも、疑問が向けられます。海外の分布地も、どうなるか、わかりません。
 九州南部の「ミナミヤモリ」と、先島諸島の「ミナミヤモリ」との間に、タカラヤモリ、アマミヤモリ、オキナワヤモリがいます。先島諸島の「ミナミヤモリ」も、九州南部の「ミナミヤモリ」とは、別種かも知れません。
図鑑↓↓↓↓↓には、ニホンヤモリ掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、ヤモリの仲間を取り上げています。また、隠蔽種についても、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
二〇一四年は、サンショウウオの当たり年? その2(2015/9/11)
日本固有種がいっぱい? ヤモリの仲間たち(2015/5/25)
トカゲモドキの美人コンテスト?(2013/11/11)
小笠原諸島のトカゲたち(2011/9/26)
ホオグロヤモリは、国際派?(2011/5/23)
などです。


2015年10月19日

属はどこですか? ミズキの仲間たち

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 植物の葉が、紅葉や黄葉を始める頃ですね。カエデやイチョウほど美しくなくても、多くの植物が、色づきます。例えば、ミズキの葉なども、きれいに紅葉します。
 ミズキは、日本の北海道から九州まで、自生する樹木です。公園や庭にも、よく植えられます。普段は目立たないので、見過ごされることが多い木です。
 ミズキが最も目立つのは、紅葉の季節でしょう。花の季節よりも、目立つかも知れません。ミズキの花は、初夏に、白く、細かい花が、集まって咲きます。華やかな花ではありません。遠くから見ると、枝の上側が、白く、けばだって見えます。
 ミズキについて、少し詳しく調べようとすると、困った事態にぶつかります。書籍やウェブサイトによって、分類や、ラテン語の学名が違うのです。例えば、ミズキのラテン語の学名は、Cornus controversaと、Swida controversaと、二種類あります。
 これは、どうしたわけでしょうか? じつは、ミズキ科の分類が、定まっていないことに原因があります。ミズキが属するミズキ科は、分類が、議論の的になっています。
 ミズキ科の中には、いくつもの属が含まれます。その一つに、ミズキ属があります。もともと、ミズキ属を示すラテン語の学名は、Cornusでした。
 ミズキ属には、たくさんの種が含まれます。ミズキ、サンシュユ、ヤマボウシ、ゴゼンタチバナなどです。これらの種は、みな、「Cornus~」という学名を持っていました。
 ところが、「ミズキ属は、複数の属に分割すべきだ」という意見が、出てきました。その案によれば、ミズキ属、サンシュユ属、ヤマボウシ属、ゴゼンタチバナ属の四つの属に分割されるというのです。属が変われば、当然、ラテン語の学名も、変わりますね。
 分割案でも、ミズキは、ミズキ属に入ります。しかし、ややこしいことに、分割案によれば、ミズキ属のラテン語の学名が変わります。それが、Swidaです。旧ミズキ属を指すCornusは、分割案では、サンシュユ属を指すことになります。
 ミズキ科の分類がどうなるか、現時点では、わかりません。しばらくは、二つの分類(ラテン語の学名)が、並立してしまうでしょう。悩ましいですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、ミズキ、サンシュユ、ヤマボウシなどが掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、ミズキ科の植物を取り上げています。また、紅葉が美しい植物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ニシキギの品種が、マユミ?(2014/12/12)
見た目どおりの孤立種? ハナイカダ(2014/9/5)※ハナイカダは、以前、ミズキ科に含まれました。
分類が混乱中? カエデの仲間(2010/11/1)
謎の植物、茱萸【しゅゆ】とは?(2008/9/1)
生き別れの親類が再会? ヤマボウシとハナミズキ(2008/5/19)
などです。


2015年10月16日

世界最大のクラゲとは?

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 世界最大のクラゲとは、どんな種でしょうか? それは、どのくらいの大きさなのでしょうか? これらの質問に答えるのは、難しいです。「大きさ」を、どう定義するかによって、答えが違うからです。長さで決めるべきでしょうか、それとも、重さで?
 長さで言うなら、世界最長のクラゲは、マヨイアイオイクラゲです。以前、このブログで取り上げましたね(世界最長生物とは?(2014/9/29))。
 しかし、マヨイアイオイクラゲは、群体生物です。多くの個体が集まって、一つの体を作っています。これでは、「個体として最大」とは言いがたいですね。
 個体として、世界最大のクラゲには、いくつかの候補があります。その一つが、スティギオメデューサ・ギガンテアStygiomedusa giganteaという種です。この、ややこしい種名は、ラテン語の学名です。日本語名は、付いていません。
 スティギオメデューサは、傘の直径だけで、1mほどあります。加えて、傘から伸びる触手が、類を見ないほど巨大です。なんと、長さが6mにもなります。触手は、四本しかありませんが、幅広く、肉厚で、重量感があります。
 こんな巨大クラゲに、海の中で出会ったら、ヒトのほうが食べられてしまいそうですね。けれども、その心配はありません。スティギオメデューサは、水深1000mほどの深海に棲むからです。深海で、彼らが何を食べているのかは、わかっていません。
 スティギオメデューサが、マヨイアイオイクラゲと同じ深海生物なのは、偶然ではありません。クラゲのように柔らかい体で、巨体なのは、海の表面近くでは、不利だからです。浅い海では、波が荒くて、体が崩されてしまうおそれがあります。
 スティギオメデューサは、刺胞動物門【しほうどうぶつもん】鉢虫綱【はちむしこう】旗口【はたくち】クラゲ目【もく】ミズクラゲ科に属します。日本で最も平凡なクラゲ、ミズクラゲに近縁です。でも、スティギオメデューサは、とても珍しい種です。
 もし、何かの原因で、スティギオメデューサが、浅い海で目撃されたら......伝説の怪物、クラーケンや、シーサーペント(大海蛇)だと思われそうですね。
図鑑↓↓↓↓↓には、ミズクラゲなどが掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、クラゲの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
クラゲダコとタコクラゲ、実在するのは、どっち?(2015/6/8)
世界最長生物とは?(2014/9/29)
一つの種に、二つの種名がある?(2013/5/13)
光合成するクラゲがいる?(2013/3/11)
不老不死のクラゲがいる?(2011/1/7)
などです。


2015年10月12日

シナモンになるのは、どんな植物?

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 シナモンの香りを知らない方は、ほとんど、いらっしゃらないでしょう。甘い中に、スパイシーさがある香りですね。八ツ橋【やつはし】などの和菓子にも、シナモンロールなどの洋菓子にも、使われます。シナモンは、どんな植物から作られるのでしょうか?
 シナモンの原料になるのは、一種だけの植物ではありません。クスノキ科ニッケイ属―クスノキ属ともいいます―の種のうち、数種が、スパイスのシナモンになります。
 クスノキ科と聞いて、「おや?」と思われた方がいるでしょう。シナモンの原料になる植物は、日本に自生するクスノキと、近縁です。クスノキは、シナモンが取れる数種と同じ、クスノキ科ニッケイ属に属します。でも、クスノキからは、シナモンはできません。
 日本に自生するクスノキ科ニッケイ属としては、他に、ヤブニッケイ(藪肉桂)、ニッケイ(肉桂)などの種があります。ニッケイからは、シナモンができます。
 しかし、シナモンの原料にされる種は、多くが、熱帯アジアを原産地とします。ですから、日本で使われるシナモンには、輸入ものが多いです。現在、「シナモン」として輸入されているものの、原料の植物には、以下の三種があるといわれます。
 まず一種が、セイロンニッケイです。この種は、原産地がわかりません。あまりにも古くから、栽培されているためです。熱帯アジアのどこかが原産なのは、間違いなさそうです。紀元前の古代エジプトでも使われていた、由緒ある香料です。
 次の一種が、トンキンニッケイです。この種の原産地は、中国南部からベトナムにかけてです。カシアという別名があります。厳密に香りを区別したい場合には、トンキンニッケイの香りを「カシア」として、「シナモン」と区別されます。
 最後の一種が、ジャワニッケイです。種名のとおり、インドネシアが原産地です。現在は、「シナモン」の原料とするために、広く栽培されています。
 厳密にいえば、ニッケイ、セイロンニッケイ、トンキンニッケイ、ジャワニッケイの香りは、それぞれ違います。けれども、それにこだわるのは、一部の菓子職人などだけでしょう。普通の人にとっては、どれも、甘くて心地よい「シナモン」の香りです。

図鑑↓↓↓↓↓には、クスノキ科ニッケイ属(クスノキ属)のヤブニッケイと、クスノキ掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、香料になる植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
香りの木は、神の木か? クロモジ(2011/11/18)
日本にも、タイムが生える?(2011/6/10)
桂【けい】とは、どんな植物?(2010/11/22)
センダン(栴檀)とは、どんな植物?(2009/5/4)
フジバカマは桜餅【さくらもち】の香り?(2007/9/10)
などです。


2015年10月 5日

天使の植物? シシウド属の植物たち

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 アンゼリカという、かわいらしい植物の名を、聞いたことがあるでしょうか? 洋菓子を作る方なら、おそらく、御存知でしょう。アンゼリカの砂糖漬けが、ケーキなどに使われるからです。アンゼリカという呼び名は、ラテン語の学名に由来します。
 洋菓子に使われるアンゼリカは、日本語名を、セイヨウトウキ(西洋当帰)という種です。セリ科シシウド属の一種です。シシウド属のラテン語の学名が、Angelicaです。
 アンゼリカAngelicaという名は、本来は、シシウド属全体を指すラテン語です。けれども、日本では、ほぼ、セイヨウトウキを専門に指す名になってしまいました。
 セイヨウトウキは、日本には、自生しません。ですが、同じセリ科シシウド属の種が、日本にも、たくさん分布します。シシウド、ノダケ、トウキ、アマニュウ、エゾニュウ、アシタバ、ヨロイグサなどの種があります。薬用や食用になる種が、多いです。
 シシウド属で、最も有名な種は、アシタバでしょう。あの、野菜のアシタバ(明日葉)です。日本で、普通に食用にされていますね。食べるために、栽培もされています。
 シシウド属では、他に、アマニュウやエゾニュウなどの種も、食用にされます。アマニュウやエゾニュウは、野菜というより、山菜です。山に生えるものを、採って食べます。
 薬用になる種としては、シシウド、トウキ、ヨロイグサなどが、知られます。中でも、トウキ(当帰)は、その種名が、そもそも、漢方薬から取られています。
 もともと、中国に、当帰と呼ばれる植物がありました。これは、セリ科シシウド属の、カラトウキという種です。中国から、薬の知識が伝えられた時に、「カラトウキに似て、同じ薬効がある植物」として、日本の植物の中から、トウキが見出されました。
 アンゼリカことセイヨウトウキにも、薬効があります。原産地のヨーロッパで、伝統的に、薬草や香草として使われてきました。日本語名が、セイヨウトウキとされたのは、トウキと近縁で、かつ、同じように、薬効があるからでしょう。
 ラテン語の学名Angelicaも、セイヨウトウキの薬効に由来します。天使(angel)のお恵みのように、よく効く薬草ということらしいです。
図鑑↓↓↓↓↓には、シシウド、ノダケが掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、セリ科の植物を取り上げています。また、薬草や香草として使われる植物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
伊吹山には、薬草が多い?(2015/6/15)
ローズヒップは、バラの果実?(2015/2/6)
ハッカ(薄荷)は、分類学者泣かせ?(2013/9/6)
日本にも、タイムが生える?(2011/6/10)
ニンジン(人参)がいっぱい?(2009/9/4)
などです。



2015年10月 2日

悪役か善役か? 寄生バチ分類

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 秋になると、「スズメバチに刺された」ニュースが、日本列島を駆け巡りますね。このようなニュースの印象のためか、ハチといえば、スズメバチを思い浮かべる方が多いようです。あるいは、蜂蜜を取るミツバチも、よく思い起こされるでしょう。
 ところが、スズメバチやミツバチのように、「集団で、巣を作って暮らす」ハチは、ハチ目【もく】の中では、少数派です。大部分の種は、単独で暮らします。その中でも、最も種の数が多いのは、寄生バチです。他の生物に寄生するハチですね。
 種の数が多いわりに、寄生バチは、目立ちません。これは、単純に、体の小さい種が多いからです。寄生する側が、寄生される側より大きいようでは、栄養が足りなくなってしまいますよね。このために、寄生生物は、たいがい、小さな生物です。
 寄生バチには、何百もの種があります。中で、最も有名で、研究も進んでいる種として、アオムシサムライコマユバチがいます。ハチ目コマユバチ科に属する一種です。
 アオムシサムライコマユバチが寄生するのは、主に、モンシロチョウの幼虫です。キャベツなどのアブラナ科植物を食べる、いわゆる青虫ですね。
 アオムシサムライコマユバチの成虫は、モンシロチョウの幼虫などに卵を産みつけます。孵化したアオムシサムライコマユバチの幼虫は、宿った幼虫の体内で、体液を吸って成長します。最後には、宿主の幼虫の体を食い破って、殺してしまいます。
 モンシロチョウにとって、アオムシサムライコマユバチは、恐ろしい敵ですね。けれども、キャベツにしてみれば、アオムシサムライコマユバチは、頼もしい味方でしょう。
 驚くべきことに、キャベツなどのアブラナ科植物は、アオムシサムライコマユバチを呼びつける仕組みを持っています。青虫に食べられた時に、特殊な化学物質を出すのです。その匂いを嗅ぎつけて、アオムシサムライコマユバチがやってきます。
 寄生生物というと、悪い印象を持たれがちですね。しかし、立場を変えれば、他の生物と助け合う、良い生物とも言えるわけです。自然界の仕組みは複雑で、短絡的に、ヒトが善悪を決められるものではありません。
図鑑↓↓↓↓↓には、マツムシソウ掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、ハチの仲間や、寄生生物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
寄生虫に寄生する生き物がいる?(2013/7/8)
ヒトデを泣かせる貝がいる?(2012/2/13)
幸せな共生の形、ドロバチとダニ(2010/12/20)
地域によって暮らしが違う蜜蜂(ミツバチ)(2006/5/12)
スズメバチは喧嘩に強い、でも寒さに弱い(2005/10/24)
などです。


2015年9月28日

マツムシソウの名の由来は?

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 マツムシソウは、日本の高原などに生える野草です。青紫の、美しい花が咲くために、栽培されることもあります。マツムシソウ科マツムシソウ属に属する一種です。
 マツムシソウ属の種は、何十種もあり、ユーラシア大陸に広く分布します。それらのうち、もともと日本に自生するのは、マツムシソウ一種だけです。
 現在は、セイヨウマツムシソウや、コーカサスマツムシソウなどの外来種が、日本でも、観賞用に栽培されます。セイヨウマツムシソウや、コーカサスマツムシソウには、人工的に作られた園芸品種もあります。でも、野生のままの花も、充分に美しいです。
 日本在来種のマツムシソウも、そのままで、適度な野性美があると思います。マツムシソウ(松虫草)という種名も、風情があって、いいですね。この種名は、何に由来するのでしょうか? 普通に考えれば、昆虫のマツムシ(松虫)に由来するのでしょう。
 ところが、マツムシソウの種名の由来は、一筋縄では行きません。私の知る限り、由来には、三つの説があります。1)マツムシの鳴く頃に花が咲くから、2)松虫鉦【まつむしがね】という楽器に、花の形が似るから、3)能の『松虫』と関係があるから、の三つです。どれが正しいのかは、以下に書くとおり、決定打がありません。
 マツムシソウの花は、実際に、昆虫のマツムシが鳴く頃に咲きます。1)は、すぐに思いつく説ですね。けれども、同じ時期に花を咲かせる種は、他に、いくらでもあります。ことさら、マツムシソウだけが当てはめられた理由が、わかりません。
 2)の説の松虫鉦とは、歌舞伎に用いられる楽器です。その形と、マツムシソウの花の形とは、「似ていると言えば、言えるかも知れない」くらいのレベルです。
 3)の説は、能の『松虫』に登場する松虫塚と、関係があります。松虫塚は、今も、史蹟として、大阪市に残ります。昔、この松虫塚に、マツムシソウが生えていたことから、名づけられたというのです。この説も、今では、確認のしようがありません。
 種名の由来を調べると、能や歌舞伎といった、伝統芸能が絡んでくるのが、面白いです。個人的には、風情ある姿と、伝統芸能とを絡めて、名づけられたのではと思います。
図鑑↓↓↓↓↓には、マツムシソウ掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、能や歌舞伎といった伝統芸能と関係のある植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ピーマンとトウガラシとは、同じ? 違う?(2014/8/8)
ミカンとオレンジとは、違う? 同じ?(2014/2/14)
ナス(茄子)の故郷は、どこ?(2011/9/30)
学名も和名も混乱中、チョウセンアサガオ(2011/8/12)
分類が混乱中、ギボウシ(2011/7/29)
などです。


2015年9月25日

海にも、クワガタがいる?

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 昆虫は、地球上で、最も栄えている生物だといわれますね。そんな昆虫が、海にはほとんどいないのが、謎とされています。そのかわり、海には、昆虫によく似た生物がいることがあります。今回は、そのような生物を取り上げましょう。ウミクワガタです。
 ウミクワガタの姿は、昆虫のクワガタムシにそっくりです。雄にだけ、大きな顎【あご】があります。ただし、大きさは、普通のクワガタムシより、ずっと小さいです。大部分の種は、全長1cmもありません。小さいために、見つけにくいです。
 ウミクワガタは、昆虫でないなら、何の仲間なのでしょうか? ダンゴムシやワラジムシの仲間です。最近、人気になったダイオウグソクムシの仲間でもあります。
 専門的には、節足動物門【せっそくどうぶつもん】甲殻亜門【こうかくあもん】軟甲綱【なんこうこう】等脚目【とうきゃくもく】というグループに属します。ダンゴムシも、ワラジムシも、ダイオウグソクムシも、みな、この等脚目に属します。
 ウミクワガタの分類を、詳しく言えば、等脚目のうち、ウオノエ亜目【あもく】ウオノエ上科【じょうか】ウミクワガタ科です。生物に詳しい方なら、ウオノエという名に、効き覚えがあるでしょう。ウオノエとは、魚類の寄生虫の名です。ウミクワガタも、幼生の頃には、魚に付いて血を吸う寄生虫生活をしています。
 ちなみに、クワガタムシを含む昆虫は、節足動物門の昆虫綱【こんちゅうこう】に属します。綱【こう】のレベルで分類が違うのは、たいへん大きな違いです。
 大きく分類が違うのに、なぜ、昆虫のクワガタムシと、等脚目のウミクワガタとは、姿がそっくりなのでしょうか? ウミクワガタは、クワガタムシと同じように、雄同士が、雌をめぐって、大顎で争うのではないかと考えられています。
 「考えられています」というのは、ウミクワガタの生態が、よくわかっていないからです。何しろ、小さいために、発見して、観察するのが、容易ではありません。ウミクワガタ科には、何種いるのかさえ、わかっていません。今後も、新種が見つかる余地が、大いにあります。新種を発見したければ、ウミクワガタの研究者になることですね(笑)
図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、ウミクワガタは載っていません。昆虫のクワガタムシは五種ほど掲載されています。ban_zukan.net.jpg
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 過去の記事でも、「他人の空似」の生物同士を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
シャコとアナジャコとは、違う? 同じ?(2013/4/15)
シラウオ、シロウオ、どちらが本当?(2008/2/29)
アマツバメは世界最速の鳥?(2007/10/15)
などです。


2015年9月21日

犬や猫のハギ(萩)がある?

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 ハギ(萩)といえば、日本の秋を代表する花ですね。以前、このブログでも、取り上げました(ハギという植