2006年2月 3日
鮟鱇(アンコウ)鍋にはならないチョウチンアンコウ
深海魚の中で一番有名なのは、チョウチンアンコウでしょう。有名なわりに、その実態は知られていません。極めて珍しい魚だからです。獲れたものは貴重なため、みな標本にされます。私の知る限り、食べたという報告はありません。
「えっ? アンコウ食べたことあるよ」という方もいるでしょう。よく混同されますが、鍋などにして食べられるアンコウと、チョウチンアンコウは違います。アンコウは、アンコウ目アンコウ科に分類されます。チョウチンアンコウは、アンコウ目チョウチンアンコウ科に分類されます。
彼らは、まず、棲む深さが違います。アンコウ類は、500mくらいまでの海にしかいません。チョウチンアンコウ類はもっと深く、700m以上の深海に棲みます。
次に、暮らし方が違います。アンコウ類は、海底にべったり貼りつくようにして暮らします。ほとんど泳ぎません。海底にいやすいように、上下に平たい体型をしています。対して、チョウチンアンコウ類は、深海の中層を漂うように泳いでいます。体型は平たくありません。むしろ丸っこいものが多いです。
アンコウ類にもチョウチンアンコウ類にも、頭の上に「釣り竿」のようなものがあります。これはイリシウムというものです。アンコウ類のイリシウムは光りません。チョウチンアンコウ類のイリシウムは、まさに提灯【ちょうちん】のように光ります。彼らはとても暗い深海に棲むので、イリシウムの光で餌になる動物をおびき寄せます。
チョウチンアンコウ類の特徴として、雌雄の大きさがひどく違うことがあります。イリシウムを持ったチョウチンアンコウは、じつはすべて雌です。雄はイリシウムを持たず、雌の十分の一以下の大きさしかありません。まったく別の種のようです。アンコウ類はこんなことはありません。雌雄ほぼ同じ大きさで、区別しにくいです。
チョウチンアンコウの仲間には、小さな雄が大きな雌に寄生する種があります。雌の体に雄がかじりついて、一生を過ごします。これは、出会いの少ない深海魚ならではの工夫です。人間からは情けなく見えても、彼らなりに必死に生きているのですね。
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には、残念ながらチョウチンアンコウは載っていませんが、アンコウ鍋にするキアンコウは、掲載されています。是非ご利用ください。
アンコウ鍋にするキアンコウのコラムアンコウは釣りの名手
松沢千鶴
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初めましてチョモと申します。
チョウチンアンコウの解説を探して貴サイトにおじゃましました。
アンコウとチョウチンアンコウの違い興味深く読ませていただきました。
はずかしながら確かにアンコウといえばチョウチンアンコウだと思っていました。
勉強になりました、ありがとうございます。
コメントありがとうございます > チョモさん。
アンコウとチョウチンアンコウは、混同されることが、とても多いですね。チョモさんばかりではありません。
喜んでいただけたなら、記事を書いた甲斐があった、と思います。