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2017年2月27日

山姥【やまんば】を呼ぶ木とは?

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 今回は、サワフタギという樹木を紹介しましょう。日本の野山に自生する木です。北海道から九州まで分布します。谷間や沢沿いに、よく生えます。沢に蓋をするかのように伸びることから、サワフタギ(沢蓋木)という種名になったといわれます。
 サワフタギは、別名の多い種です。有名な別名としては、ルリミノウシコロシと、ニシゴリとがあります。どちらの別名も、ある程度、意味が推定されています。
 ルリミノウシコロシは、「瑠璃実の牛殺し」の意味のようです。本種に、瑠璃色の果実が付くのは、本当です。けれども、「牛殺し」のほうは、実態がわかりません。本種を、ウシを殺すのに使ったという、明確な証拠は、ありません。
 ニシゴリのほうは、もとは「ニシコリ」でした。現在でも、方言名で、本種をニシコリと呼ぶ地方があるようです。ニシコリとは、漢字で書けば、錦織【にしこり】です。布に関係した名ですね。昔、本種の灰を、布を染める媒染剤にしたからといわれます。
 媒染剤【ばいせんざい】とは、布などを染料で染める時に、一緒に混ぜて、発色や色の定着を良くする物質です。昔は、特定の植物の灰が、よく用いられました。
 サワフタギや、サワフタギの近縁種の灰は、媒染剤として、平凡なものでした。サワフタギの近縁種で、ハイノキという種名のものがあります。サワフタギと同じ、ハイノキ科ハイノキ属に属します。ハイノキの名は、ずばり、「灰の木」の意味です。
 現在は、サワフタギを媒染剤に使う話は、ほとんど聞きません。かわりに、美しい瑠璃色の果実や、初夏に咲く白い花を観賞するために、栽培されることがあります。
 サワフタギについては、面白い言い伝えがあります。昔、山の中でこの木を焼くと、その匂いにつられて、山姥が現われた(!)というのです。昔の人は、山姥を呼ぶために、わざわざ、この木を焼いたそうです。なぜ、そんなことをしたのでしょうか?
 昔は、山の中で、長い間、孤独に暮らす人がいました。炭焼きや、狩猟などのためです。そういう人は、さびしくて、「山姥でもいいから、来て欲しい」と思うことがあったのでしょう。そんな願望が生んだ言い伝えだと思います。
図鑑↓↓↓↓↓には、
サワフタギ
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 過去の記事でも、サワフタギの仲間を取り上げています。また、染料や媒染剤にする植物も、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
クチナシは、口無し?(2014/1/3)
灰から錦【にしき】? ハイノキの仲間(2012/11/23)
万葉時代のハイカラ植物? ケイトウ(2010/8/20)
キブシ、キフジ、どちらが本当?(2009/2/27)
源氏物語のヒロインも嘆く? ムラサキの運命(2008/6/6)




2017年2月24日

オオカミは、獣肉以外も食べる?

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 オオカミ(狼)といえば、代表的な肉食獣ですね。誰もが、子供の頃、童話で、オオカミの話を聞いているでしょう。「オオカミと七匹の子ヤギ」で語られるように、オオカミは、ヒツジ(羊)やヤギ(山羊)などを襲って食べるものと思われています。
 それは、間違いではありません。ただ、家畜を襲って食べるようになったのは、歴史的には、最近のことです。人間が、家畜を生みだす前から、オオカミは生きていました。当然、その頃には、野生の草食獣を襲って食べていました。
 テレビ番組などで、野生のオオカミが、シカ(鹿)などを襲う場面を見た方も、いるでしょう。あのように、オオカミの主食は、シカなどの有蹄類だとされてきました。
 ところが、最近の調査で、「そうとは限らない」という結果が出ました。肉食獣が、獣肉を食べるのでなければ、いったい、何を食べるのでしょうか?
 それは、魚です。カナダで行なわれた調査で、少なくとも、海辺に棲むオオカミは、食べ物の多くを、海に依存することがわかりました。中でも、多いのは、サケ(鮭)です。
 サケは、産卵期になると、大量に川に上ってきますね。あれを利用できるなら、確かに、有利でしょう。じつは、サケは、シカよりも、蛋白質と脂肪とが、豊富だからです。
 サケの産卵期には、オオカミの食料のうち、なんと四分の一が、サケで占められるといいます。先述の、カナダでの調査結果です。「魚食オオカミ」ですね(笑)
 二〇一七年になって、かつての日本にも、「魚食オオカミ」がいたらしいとわかりました。北海道にいた、エゾオオカミ(蝦夷狼)です。エゾオオカミの一部は、カナダの海辺のオオカミと同じように、サケなどの海産物を、大量に食べていたようです。
 エゾオオカミは、とっくに滅びているのに、なぜ、そんなことがわかったのでしょうか? 残された標本を調べたからです。科学技術が進んだおかげで、骨などの標本から、食べていた物がわかるようになりました。これだから、標本を残すのは、大事ですね。
 エゾオオカミが滅んだことは、取り返しがつきません。せめてもの供養に、彼らが、自然界で果たしていた役割を、できるだけ、詳しく知りたいものです。
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残念ながら、オオカミは載っていません、かわりに、オオカミと同じイヌ科の哺乳類が、二種ほど
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 過去の記事でも、オオカミについて取り上げています。また、オオカミの食べ物になるサケやシカについても、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
エゾシカとケラマジカとは、同じ種か?(2012/6/18)
チュパカブラ? ニホンオオカミ? 謎の生物の正体は(2009/3/30)
同じ種なのに名が違う? 桜鱒(サクラマス)と山女(ヤマメ)(2006/3/20)
イヌの祖先はオオカミか?(2005/12/26)
森を育てるサケ(2005/9/13)


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2017年2月20日

マキベリーの正式名称は?

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 日本人は、健康食品が好きですね。次から次へと、新しい健康食品が流行します。今回は、最近話題の、健康食品のもとになる植物を紹介しましょう。
 それは、マキベリーと呼ばれる植物です。ブルーベリーくらいの大きさの、黒っぽい果実が実ります。この果実が、食用になります。日本には自生しない植物です。
 この植物には、正式な日本語名(標準和名)がありません。マキベリーというのは、あくまで通称です。英語のmaquiという名から、取られたのでしょう。英語では、単にmaquiだけで、ベリーberryを付けて呼ばれるのは、和製英語のようです。
 標準和名がない以上、この植物の正式名称といえば、ラテン語の学名ということになります。ラテン語の学名は、Aristotelia chilensisです。ホルトノキ科アリストテリア属の一種です。学名は長くて覚えにくいので、以下では、マキベリーと呼びますね。
 マキベリーと同じアリストテリア属で、日本に自生する種は、ありません。この属の種は、すべて、南半球に分布します。南米、オーストラリア、ニュージーランドです。このために、属名は、日本語でなく、ラテン語の学名をそのまま読んだものとなっています。
 アリストテリア属の植物は、日本では、まったく馴染みがなかったわけです。それが、急に、マキベリーが、はやり始めました。その理由は、わかりません。
 マキベリーは、南米のチリとアルゼンチンの一部に自生します。もともと、南米先住民のマプチェ族が、利用していました。アリストテリア属の植物には、他にも、このように、先住民の間で、利用されていたものがあります。
 例えば、ラテン語の学名で、Aristotelia serrataという種が、そうです。ニュージーランドに分布する植物です。ニュージーランドの先住民マオリの人々が、薬用や食用にしていました。マオリの言葉で、マコマコと呼ばれます。
 もしかしたら、今後、マキベリーの仲間として、マコマコも、日本ではやるかも知れません。しかし、マキベリーも、マコマコも、その効果は、実証されていません。美容効果や医療効果を期待せず、珍しい果物として、楽しんで食べればいいと思います。

図鑑↓↓↓↓↓には、
マキベリーと同じホルトノキ科のホルトノキ
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 過去の記事でも、健康食品として使われる植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ヤエヤマアオキは、健康食品になるか?(2017/1/23)
ワサビノキは、スーパー健康食品か?(2016/10/31)
アサイーの正体とは?(2016/2/8)
キクイモは、菊の花咲くイモ?(2015/2/13)
ローズヒップは、バラの果実?(2015/2/6)





2017年2月17日

奇跡の発見? サルダアツブタムシオイガイ

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 シーラカンスの発見物語については、多くの方が、聞いたことがあるでしょう。シーラカンスは、もともと、化石しか発見されていませんでした。とっくの昔に、恐竜と一緒に、絶滅したと考えられました。それが、生きた個体が見つかり、大騒ぎになりました。
 こんな劇的な発見物語は、他にもあるでしょうか?
 あります。それも、私たちの住む日本で、つい最近、ありました。二〇一六年のことです。化石でしか知られなかった生物の、生きた個体が発見されました。
 それは、カタツムリの一種です。サルダアツブタムシオイガイという種名です。長い種名ですね。どういう意味なのか、わかりにくいです。意味に応じて区切れば、サルダ(猿田)アツブタ(厚蓋)ムシオイガイ(虫負貝)です。
 カタツムリの中に、ムシオイガイ科というグループがいます。貝殻に、小さな虫を背負っているかのような器官があるために、この名が付きました。ムシオイガイ科の中に、アツブタムシオイガイ属というグループがいます。石灰質の厚い蓋を持つグループです。
 サルダアツブタムシオイガイは、このアツブタムシオイガイ属の一種です。高知県の猿田洞という鍾乳洞で、化石が発見されたために、この種名になりました。
 化石が発見され、新種として名付けられたのは、二〇一二年のことでした。化石は、約三万三千年前のものだとされました。サルダアツブタムシオイガイについて発表された論文を読んで、「まだ、この種は絶滅していないかも知れない」と考えた人がいました。
 それが、高知県在住の高校の講師、矢野重文さんです。奥さんとお二人で、サルダアツブタムシオイガイが生息していそうだと目星を付けた所に行き、探しました。
 といっても、殻の直径が、わずか数mmという小さな貝です。よくぞ見つけたと思います。矢野さん御夫妻の「あきらめない心」に感心します。
 じつは、ムシオイガイ科のカタツムリでは、他にも、近年に発見された種がいます。徳島県のアナンムシオイガイです。新種として記載されたのは、二〇一三年のことです。この調子ですと、ムシオイガイ科の新種は、まだ、見つかるかも知れませんね。

図鑑↓↓↓↓↓には、
残念ながら、ムシオイガイ科のカタツムリは載っていません。かわりに、日本に分布するカタツムリが、二種ほど
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 過去の記事でも、カタツムリの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
絶滅種に、再発見の可能性はあるか?(2010/3/22)
新種・珍種がざっくざく、南硫黄島【みなみいおうとう】(2008/6/10)
カタツムリの殻は右巻き?左巻き?(2007/6/18)
日本の陰の昆虫王者? マイマイカブリ(2006/8/5)
ナメクジは塩をかけると溶ける?(2006/6/23)




2017年2月14日

春は、花粉と小笠原から?

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 寒い日々が続きますね。でも、春は、もうそんなに遠くありません。今回は、ひと足早く、春を感じるイベントを紹介しましょう。国立科学博物館の、二つの企画展です。
 一つは、「花粉と花粉症の科学」です。せっかくの春でも、花粉症のために憂鬱【ゆううつ】という方も、いらっしゃるでしょう。スギ花粉症は、今や、日本の国民病といわれるほどですね。このために、「花粉」全体の印象が、悪くなってしまいました。
 本来、花粉は、ヒトにとって害になるものではありません。植物にとって、繁殖に必要な、大切なものです。花粉は、ヒトにも役に立っています。じつは、大昔から、ヒトは、花粉を食べています。蜂蜜の中に、花粉が混ざっているからです。
 近年では、花粉は、サプリメントに使われることもあります。花粉は、とても栄養バランスが良く、完全栄養食に近いからです。また、一部の植物の花粉は、薬にも使われます。例えば、ガマの花粉が、火傷に効くことは、昔から知られています。
 企画展の会場では、この他にも、花粉について、いろいろ知ることができます。
 もう一つの企画展は、「小笠原国立公園」です。東京都内にあるにもかかわらず、亜熱帯の島々ですね。真冬でも、春のようです。ここの貴重な自然を、紹介しています。
 小笠原では、ザトウクジラのホエールウォッチングが、著名な観光資源になっていますね。会場では、ザトウクジラの「ひげ」に、触ることができます。ザトウクジラの口の中に生えている「クジラひげ」です。これを使って、クジラは餌を取ります。
 ザトウクジラ以外にも、小笠原には、希少な生き物が、たくさんいます。とりわけ、小さな昆虫や無脊椎動物に、固有種が多いです。固有種にとっては、世界中で小笠原諸島だけが、すみかです。中には、野生で一株しか確認されていない植物もあります。
 固有種だけが、大事なわけではありません。本土と同じ種がいる場合でも、小笠原の個体群が、本土の同種の個体群とは、違う習性を持つことがあります。
 それは、小笠原諸島という、特殊な環境に適応した結果だと考えられます。日本が誇る小笠原の自然は、こういった種も含めて、構成されています。


 企画展「花粉と花粉症の科学」と、「小笠原国立公園」との情報は、以下のページにあります。
花粉と花粉症の科学(国立科学博物館の公式サイト内ページ)
小笠原国立公園(国立科学博物館の公式サイト内ページ) ※注:直接、pdfファイルにつながります。

図鑑↓↓↓↓↓には、日本に分布する植物が、八百種ほど、また、小笠原諸島に分布する動植物も、十種以上
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 過去の記事でも、花粉について取り上げています。また、小笠原の生物についても、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
交流は限定的? 小笠原諸島の鳥たち(2016/5/6)
再来なるか? ニシノシマホウキガニ(2015/7/10)
いろいろと役立ちます、ガマ(蒲)(2012/8/24)
小笠原諸島のトカゲたち(2011/9/26)
ユリの仲間は、チョウと仲良し?(2011/8/5)





2017年2月13日

チョコレートになるのは、カカオだけじゃない?

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 チョコレートが、植物のカカオからできることは、皆さん、御存知でしょう。カカオの需要は、世界的に増えています。チョコレートの需要が増えているからです。あの美味しさを知ったなら、チョコレートを食べたくなる気持ちは、わかりますよね。
 ところが、カカオの供給が、需要に追いついていません。それには、いくつかの原因があります。気候変動のため、これまでのカカオの産地で、カカオがうまくできなくなっていたりします。原因が何にせよ、このままでは、明らかに、カカオが足りません。
 対策の一つとして、「カカオ以外の植物で、チョコレートを作ったらどうか?」という案が出てきました。二〇一六年に、それに関わる研究結果が、発表されました。
 カカオの代わりになるかも知れない植物とは、アムラタマゴノキという果樹です。おそらく、ほとんどの方が、聞いたことがないでしょう。日本には自生しない植物だからです。インド、スリランカ、インドネシア、タイ、マレーシアなど、熱帯アジアに自生します。
 アムラタマゴノキは、カカオと近縁ではありません。カカオがアオイ科カカオ属なのに対して、アムラタマゴノキは、ウルシ科アムラノキ属に属します。アムラノキとは、アムラタマゴノキの別名です。アムラという名は、インドでのこの種の呼び名に由来します。
 カカオと遠縁でも、アムラタマゴノキから取れる脂肪分は、カカオから取れるココアバターに、成分や特徴が似ています。ココアバターは、チョコレートの原料になるカカオの脂肪分です。アムラタマゴノキが、カカオの代用になる可能性があるわけです。
 アムラタマゴノキは、これまでも、熱帯アジアで利用されてきました。若葉や花が、野菜として食用になります。果実も食べられます。ただし、生の果実は、酸っぱくて、あまり美味しくないそうです。このため、酸味を出す調味料にされたりします。
 利用されているとはいえ、アムラタマゴノキは、熱帯アジアで、ささやかに食用にされているだけです。もし、チョコレートの原料になるなら、アムラタマゴノキは、世界的に、重要な経済植物となります。アムラタマゴノキからできるチョコレートは、どんな味がするでしょうか? 実現したら、食べてみたいものです。
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残念ながら、アムラタマゴノキは載っていません。かわりに、日本に分布するウルシ科の植物が、五種ほど
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 過去の記事でも、熱帯アジアの植物を取り上げています。また、カカオなど、熱帯の食用になる植物を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
グアバの日本語名は、バンジロウか?(2016/8/22)
仏典【ぶってん】にも登場、マンゴー(2013/8/9)
バナナは、最古の栽培植物?(2013/1/18)
イグ・ノーベル賞の、バニラ【Vanilla】の研究とは?(2007/10/18)
チョコレートの原料は古代文明の遺産、カカオ(2006/2/10)


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2017年2月10日

ダチョウは、昔、空を飛べた?

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 鳥と言えば、普通は、空を飛ぶものですね。けれども、中には、飛べない鳥もいます。有名なのは、ダチョウ、エミュー、レア、ヒクイドリなど、大型で飛べない鳥たちですね。これらの鳥たちは、まとめて走鳥類、あるいは、古顎類と呼ばれます。
 古顎類(走鳥類)の分布を調べると、あることに気づきます。現生のすべての古顎類は、南半球にだけ分布します。ダチョウはアフリカに、エミューはオーストラリアに、レアは南米に、ヒクイドリはニューギニアに、といった具合です。
 古顎類には、歴史的に、つい最近、絶滅した仲間もいます。例えば、マダガスカルには、エピオルニスという巨大な飛べない鳥がいました。ニュージーランドには、モアという、やはり飛べない鳥がいました。モア科には、大小、十種以上の種が含まれます。
 このように、古顎類の分布が南半球に限られることから、古顎類は、南半球で進化した鳥たちだと考えられてきました。かつて、南半球にあった巨大大陸ゴンドワナで、早くから飛ぶ力を失った鳥として発生し、進化したのだろうとされてきました。
 ところが、二〇一六年に、この推定を覆す研究結果が、発表されました。古顎類が発生したのは、南半球ではなく、北半球だというのです。しかも、彼らは、飛べました。新生代の初め頃にいた、リトルニスという鳥が、古顎類の原型に近いとわかってきました。
 リトルニスは、現代では、とっくに絶滅しています。とはいえ、多数の化石が見つかっており、空を飛べたことは、間違いありません。リトルニスは、現代の北米やヨーロッパに当たる地域にいました。それらの地域から、世界中に、分布を広げたようです。
 リトルニス(に近縁な古顎類の祖先)は、北半球から、南半球の大陸へ進出してゆきました。当時の古顎類の祖先は、空を飛べましたから、マダガスカルやニュージーランドのように、大陸から離れた島へも、行き着くことができました。
 その後、北半球の古顎類は、絶滅しました。原因は、わかっていません。南半球に渡った仲間たちは、栄えました。進化し、数を増やしてゆく過程で、とても大きくなる種も、現われました。古顎類には、大きくなり過ぎて、飛ぶことを放棄した種が多いです。

図鑑↓↓↓↓↓には、残念ながら、古顎類(走鳥類)は載っていません。かわりに、日本に分布する鳥類が、二百種以上掲載されています。
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 過去の記事でも、飛べない鳥を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
絶滅からよみがえる、シマホンセイインコ(2016/12/23)
北半球のペンギン? ウミガラス(2015/11/27)
ペンギンが絶滅する? 南極の危機(2007/12/13)
ヤンバルクイナは絶滅寸前?(2006/10/2)
七面鳥(シチメンチョウ)はクリスマスの御馳走。なぜ?(2005/12/5)





2017年2月 6日

ヒマラヤの青いケシは、どこに生える?

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 「ヒマラヤの青いケシ」を御存知でしょうか? ケシ科メコノプシス属に属する植物たちです。このグループには、二〇一七年現在で、五十種以上もの種が属するとされます。
 メコノプシス属のどの種にも、正式な日本語名(標準和名)が、付いていません、日本に自生する種が、一種もないからです。呼び名のとおり、ヒマラヤ山脈近くに分布する種が多いです。インド、チベット、ネパール、ブータン、中国南西部などに分布します。
 日本では、一九九〇年に、大阪で開かれた、国際花と緑の博覧会をきっかけに、有名になりました。この博覧会で、「ヒマラヤの青いケシ」が、大きく取り上げられました。
 青いケシと呼ばれても、メコノプシス属のすべての種に、青い花が咲くわけではありません。赤、ピンク、黄色などの花が咲く種もあります。とはいえ、全体的には、青い花が咲く種が多いです。ヒマラヤなどの高山では、青い花が、いっそう美しく見えます。
 一九九〇年の国際花と緑の博覧会では、ブータンの国花として、メコノプシス属の一種が紹介されました。その種にも、日本語名がありません。ラテン語の学名で、Meconopsis horridula【メコノプシス・ホリドゥラ】という種です。
 ところが、ブータンの国花とされるのは、この一種だけではないようです。Meconopsis grandis【メコノプシス・グランディス】という種も、ブータンの国花と紹介されることがあります。どちらの種も、ヒマラヤの高山地帯で、見事な青い花を咲かせます。
 こうなっているのは、メコノプシス属の分類が、いまだに流動的だからでしょう。この属の多くの種は、ヒトが行くのが難しい、高山に自生します。このために、研究が難しいのですね。新種が発見されたり、別の種だとされたものが、同種だとわかったりします。
 二〇一六年には、ブータンで、三種が発見されています。ラテン語の学名で、Meconopsis elongata【メコノプシス・エロンガタ】、Meconopsis gakyidiana【メコノプシス・ガキディアナ】、Meconopsis merakensis【メコノプシス・メラケンシス】という三種です。
 これら三種は、ともに、標高四千メートルほどの山岳地帯で発見されました。青いケシの名にふさわしく、三種ともに、青から紫色の、美しい花を咲かせます。
図鑑↓↓↓↓↓には、
残念ながら、ヒマラヤの青いケシは載っていません。かわりに、日本に分布するケシ科の植物が、七種ほどが掲載されています。



 過去の記事でも、ケシ科の植物を取り上げています。また、高山に自生する植物を、取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
ヒナゲシの英語名は、ポピーpoppyか?(2016/5/2)
富士山と白山、植物が多いのは、どっち?(2015/6/12)
薬用にも、観賞用にも、エンゴサク(2015/4/24)
ムラサキケマンの「ケマン」とは?(2014/4/25)
ヤマブキ(山吹)? いえ、違います(2011/4/29)




2017年2月 3日

絶滅危機の理由は? ゴマシジミ

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 日本に分布するチョウ(蝶)の一種に、ゴマシジミがいます。シジミチョウ科ゴマシジミ属に属します。この種は、とても分布域が広く、日本国外にも分布します。朝鮮半島、中国から、中央アジアを経て、ヨーロッパ中央部に至るまでが、分布域です。
 こんなに分布が広いなら、ちょっとやそっとでは、絶滅しそうにないと感じますね? ところが、現在の日本では、ゴマシジミの数が、非常に減っています。すでに、絶滅した地域もあります。以前から、ゴマシジミの分布には、不思議な点がありました。
 それは、分布域が、不自然に不連続なことです。例えば、北海道から九州にまで分布するのに、四国には、いません。また、東北地方日本海側の秋田県・山形県では、近年まで見られましたが、二〇一七年現在では、絶滅したと考えられています。
 大都市圏ならともかく、四国や東北地方のように、比較的、自然が残る地域で見られないのは、謎でした。二〇一六年に、この謎を解く研究結果が、公表されました。
 謎を解く鍵は、ゴマシジミの幼虫の、特異な食性にありました。
 ゴマシジミの幼虫は、成育する地域により、食べ物が違います。多くの地域では、ワレモコウという植物を食べます。けれども、それは、三齢幼虫までです。その後は、アリ(蟻)の仲間、クシケアリ属の幼虫を食べます。植物食から動物食へ、大転換ですね。
 クシケアリ属のアリも、多くのアリと同じように、土の中に巣を作ります。たくさんの兵隊アリが、巣を守ります。そんな所へ、何の武器もなさそうな幼虫が、どうやって入るのでしょうか? 驚くことに、アリ自身が、ゴマシジミの幼虫を、巣に運び入れます。
 なぜ、クシケアリ属のアリたちは、そんなことをするのでしょうか? ゴマシジミの幼虫は、体から、甘い蜜を分泌します。これが、アリの大好物なのですね。アリたちは、ゴマシジミの幼虫を、敵だと認識できないようです。
 ゴマシジミの幼虫が育つには、ワレモコウと、クシケアリ属のアリと、両方が必要です。クシケアリ属のアリが減った地域では、ゴマシジミも、減ってしまいます。そういう地域が、日本各地にあるために、不自然な分布になったと考えられます。
図鑑↓↓↓↓↓には、
残念ながら、ゴマシジミは載っていません。かわりに、日本に分布するシジミチョウ科のチョウや、アリの仲間が、十種以上が掲載されています。



 過去の記事でも、チョウやアリの仲間を取り上げています。よろしければ、以下の記事も御覧下さい。
花に来ないチョウがいる?(2015/5/4)
都会派のチョウ? ヤマトシジミ(2014/2/24)
アリの巣に、居候【いそうろう】がいる?(2013/8/5)
アリとアブラムシとシジミチョウとの関係は?(2013/4/8)
肉食性のチョウ(蝶)がいる?(2010/8/9)